魔女の見送り
「まぁ、私が言えるのはここまで、船の修理もあらかた終わったわ、後は、どこに行きたいか教えてもらって後、丈夫にしてほしい所があったら教えてね」
さっきの話が頭から離れない。それはみんなも一緒だろう。それはそうだ今まで尻尾すらつかめていない奴らの情報が一人の魔女によって引き出されたのだから
「あぁ、場所は交易都市サディーだ。丈夫にしてほしいのは機関や管などのパイプ暴れてもびくともしないような」
「うんうん、OKOK…ってちょっと、待って交易都市サディーってマジ?」
「?何か問題でもある?」
「確か、あそこは今ちょっとした事故があってね水棲の魔物が暴れているから、近づけないかも…」
「それなら、簡単に倒せばいいんじゃない?」
「あのね、そんなことをしたら、奴らにもバレるんじゃない?私だったら効率の方を優先して日和ってるところを狙うそれに、相手は水棲の奴、地上にいる奴なら問題ないが襲われた後水中じゃ分が悪い」
なるほど、確かに魔物は多種多様だ、陸上では弱いが特定のフィールドだと何十倍の強さにもなる魔物もいるだろう。
「うーん、少し遠回りになるけれど、地底の方から行った方が安全じゃないかしら」
「地底?ここから大陸まで掘れと?」
「そんなわけないじゃない、確か、交易都市サディーが出来た直後に使い古された廃墟を利用して地下施設を作ろうとした時、海と繋がっている大階段を見つけた。とかそんなこと聞いたことがあるわ。そこに船を止められるんじゃない?一般開放されてないし、うかうかしていられないなら、急がば回れと善は急げ、思い立ったが吉日を同時に行うべきでしょう」
善は急げと思い立ったが吉日は同じではないのだろうか?
「さてと、そろそろ、元通りになるわ。乗船準備も出来ているだろうし、みんなを呼んで来たら?」
「あぁ、そうだね。おーい、エリアル達、みんなを呼んできてくれる?そろそろ、終わるらしいよー」
それからほどなくして、船は沈没前の姿を取り戻し、乗船も半分以上の人数が完了した。
「うん、いい仕事したわ、あっ、それと船を直したお礼として、出来れば、私とこの島の事については絶対に口外しないようにしてくれない?」
「まぁ、いいけど…それだけでいいの?これだけ、大掛かりな事をしてくれたのに」
「試練まで受けさせて、これ以上はないわ。私はここで、ただただ、不死に近い力を持て余しながら、生きていたいだけ、あっでも、その前に…」
魔女フィリシアは首の後ろに手をまわし、首飾りを外して渡してくる。
「これは餞別」
「あ、ありがとう…?」
「どういたしまして、さぁ、あなたも乗った乗った♪全員乗ったのが確認したら、船は動くようになってるわ、さぁさぁ」
少々強引に、船に誘導されてしまう。
まだ、乗船は少しばかり続きそうだ。その様子を魔女フィリシアはただただ、見守っている。
「随分と名残惜しそうにみるな、お前」
ギリアが魔女フィリシアに話しかける。
「あら、何か用?」
「…お前なのか?先代様…魔王アルトが言っていた魔女っていうのは」
「……」
「よく話していたよ、人間との和解に一役買ってくれていた魔女がいるって…でも、そいつは何の前触れもなく姿を消した…」
「…それについて、私が言えることは何もないわ、なんの事かも分からない。でも、もし私がその人の立場だったら、私が消えたのは行為に嫌気がさしたのでも、深い意味があるわけでもない、自分を見失ったから、ただそれだけ…っていうと思う」
「…そうですか、その言葉、今は信じましょう」
「私はその人じゃないもの、鵜吞みにすると痛い目にあいますよ」
「痛い目に合うのは慣れっこなので、おかわりされるまえに退散しますよ」
ギリアはひらひら手を振って船に乗り込む。
しばらくすると、乗船も出航に必要な事も全て終わり、船はゆっくりと動き始める。
重々しい音とボオオーッという唸り声の音が響く。
港には魔女フィリシアしかいなかったが、優しい笑顔で見送ってくれた。
船が遠く小さく見える時に魔女フィリシアは小さく呟く。
「ふぅ…まさか、あれを本気で試練なんて思ってくれていたなんてね。嬉しんだか悔しいんだか、複雑な心境だわ」
あの、部屋は普段私が、修行するために使っている場所、クリアするたびに迷宮が変化するし、正攻法やすぐにクリアできるものもない。それをあの子たちは純粋にそれを信じて、疑いもしなかった。
「さて、また魔力を補充しなくちゃね。でも…はぁ、二つ目の試練はクリアできなかったら半分くらいはもらおうとしたのに…少し残念、ま、あの子たちもあの子たちなりの進むべき道はあるだろうし、自分の都合でもらっちゃ悪いわね。ご武運を」
魔女フィリシアは踵を返し、森の中に消えていく。その姿は程なくして、完全に森の中に消えていく。
次回11月16日月曜日予定




