その女、膨大な強さ故に
これまでの話を簡潔にまとめるとしよう。まず偽王の心を読んだ結果、あの時自分がとった行動は自分でも何をして何が起こっているのかもわからない、だけど、あの命令だけは果たさないといけない。という取っ散らかった考えだった。その仮説を幾つか立てて、おおよその情報整理をする。
「でも、ここで、偽王の心を裏付けるのが、この日記なんだよ、あいつ、元は結構几帳面な人だったらしくて、別邸や館にも多くの日記帳が見つかったの、それで、これが一番新しい日記、一日一ページ書くとするなら、2年、節約するなら5年くらいでも持つんじゃない?でも、その几帳面さは2か月前にパタリと無くなる」
日付に表すとベッドの上の化け物の幼体が成長するのを待っている状態で、まだ中途半端な成長途中で俺たちが攻めてきたってことだな。
「日記の内容がおかしくなったのは預言者が貢ぎ物を捧げた時かな?膨大な魔力が付与された道具をもらって本人が気づかないうちにその魔力で処理能力が下がっていき最後に魔剣で操り人形に…永久的洗脳だなこれは」
話を続けようとすると急に辺りの空気が重くなる、間違いない、これは魔力による威圧だ。しかし、この場にいる全員そのような行動を起こしていない。
「っ…これは…」
座っているだけで押しつぶされそうな威圧を抑えようと魔力を練るが圧が強すぎる。圧がドンドン強くなっていき、その膨大な魔力を持つ存在が今自分の背後にある扉の向こうにいる事が分かる。そして、扉が開いた。
「~♪~~~♪」
そこにいたのは青白い肌を持ち下半身が蛇のような鱗に覆われその蛇足の終わりが見えない女性の姿をしたモンスターだ、四本の手を持ちあるべき2つの目の他に額に三つ目の眼球を持っている。
「かっ、く、クククッ…そちらから来てくれるとは幸いです…先生」
圧に押しつぶされ地にへばりつきながらもマーリンが挨拶をする。
「挨拶に来ただけなのに、立つことも出来ないの?いついかなる時も気を抜かずどこから攻撃されてもおかしくない、常に周りに気を付けろ。わたしからの教えを忘れたの?口を利けるなら10点…で・も…」
モンスターは俺の首の後ろに手を回し語りかけてくる。
「圧を受けて地に伏せずに受け止めようとしているあなた…あなたが愛しい弟の孫娘のレン、であってるのよね」
その問いに答える声が出せなかった、呼吸をするのも苦しくこの空気を吸った瞬間肺が凍り付き死んでしまいそうなことが直感的にわかる。立たなければいけないのに体が動かないすぐに離れなければいけないのに恐怖で釘付けになったように震えが止まらない。
「先生、そろそろお遊びはやめてくれませんか?ほら、僕はこの通り立てましたよ」
マーリンが冷や汗を流しながらも立ち上がっていた、他にも徐々に魔力の循環を正常にして圧を抑えながら立ち上がる、ダインとレイ以外の将軍格たち、自分も冷静に魔力の抑えを全力にして、素早く距離を取る。
「…60点!油断と立ち上がるまでにかかった時間で-40点ここまでならそれで済むけど、私が魔王城にいた時よりも弱すぎることを考えると30点も下回るわよあなた達」
そう言うと、圧が引いていき、体の震えも収まった。
「初めての人もいるしご挨拶するわ、わたしはエキドナ、原初の魔人であるカイン・ノイシュヴァンルーデ・アルトの姉であり、全ての魔人の母、それが私よ」
その姿の不気味さに緊張による吐き気を感じながらも自己紹介をする。
「初めまして、エキドナさん。私はカイン・ノイシュヴァンルーデ・レン、まだまだ駆け出しですが三代目魔王を任されています」
「あらあら、あの非常識な子とは違い礼儀正しいのね、子供と親は似るというけど、あなたは母親似ねおねえさん嬉しいわ」
言葉で表すならクールビューティーと表すだろう、見た目ではおぞましさしかわかないが、話し方は普通の人と変わらなく若作りした女性みたいな雰囲気だ。
「ところで、先生は今回どのような用件でこちらにいらしたのですか?」
「今回もほぼ同じよ、調合に適したあなた達の誰かとある物を見てもらいたくて、それに心当たりがある子とお話したいのだけれど、両方できるのがここに一人♪というわけでレン魔王ちゃんは借りるわね~」
シュルルととぐろを巻かれて部屋から強引に退出される。
「あの、これから、どこに連れていかれるのですか?」
「他人行儀な喋り方しないで、でも、お祖母ちゃんみたいな言い方は嫌だし、そうね…私の子供たちのようにエキドナ様って読んでいいわ、それで、向かっている場所は…ここ♪」
そう言ってたどり着いたのは一つの客室だが、そこにいる人物にエキドナ様と接触するのはまずいと思い慌てて静止の言葉をかけようとする。
「ま、待って!そこには」
「失礼しま~す」
その部屋にはカイとケイの姿があった、二人は目を大きく見開き巻かれた自分とエキドナ様を交互に何回も見ている。
エキドナ様はズルズルと這って両脇に二人を抱えて三人の顔が並んだ。
「…あぁっ!!」
その時に分かったエキドナ様と二人に何か似ているところがあると思った、それは、あの眼だ、血のように赤い瞳孔に黄色い虹彩黒色の強膜、全く同じだ。
「二人の眼を自分と同じようにしたのはあなた…何ですか?」
「ふ、フフフッ」
にちゃり…と口角を吊り上げる。
「いや、知らないわ」
「へっ?」
「だから、おねえさん知らないわそんなの、私の遺伝子を引き継いでいるのは確定的に明らか、でも眼だけなんてありえないのよ、種族的に」
「…魔族もいろいろな種類がいるのは知っているけど、無理な物って?」
「そうねぇ…エキドナっていうのは名前ではなく種族の名前その中でも最も上位の存在、おねえさんは最上位の存在なのわたしの眷族にはラミア、ハイラミア、ラミアクイーンの順で強くなってくるそして、最終的に最上位の進化でエキドナが生まれてくるわ、でも、エキドナはね、同じ世界に2体生まれる事はないわ、それが、この子達に同じ眼があることがありえない、という意味、私の眷族が人間と結婚してその子供が同じ眼や足を持って生まれるなんてこともないのよ?」
「魔族と人間が結ばれてその子供は人間の血を多く引き継いじゃうの、全く魔族の要素を取り入れていない訳じゃないわ、老化がとても遅かったり成長が他人と比べて遅かったり見た目が人間だけど魔力や寿命は魔族の要素を取り入れてるっていうのがハーフの存在そのハーフが人間と結婚してクォータそれからドンドン薄れてきても先祖に強い魔人私は結婚なんてしていないけど、家系図に魔人がいる時点で子供は魔族の要素を取り入れて生きていく、遺伝子を埋め込まれて同じ眼になるなんてこと、そんなのやろうとした人間もいないし、いたらそいつは魔人達にとっても人間達にとっても重罪人」
「長々と話しているけど、それなりに重大な事なのよ、普段ならそういう子の処理は処刑なんだけど、元々のセンスかあなたがこの子達を受け入れて精神に強い衝撃で魔力に順応出来たのか、どちらにせよこの子達は魔族の眼を持っている時点で人間とは言えない、立派な魔族よ」
「そして、ここからが本題よ」
次回3月23日月曜日予定




