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転生先は三代目魔王さまです  作者: 神坂将人
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助けてあげられなくて、ごめんね

 「…」


 流石に、今のラファエルに話しかけるのは気が引けるな。

 培養槽以外には、横に置いてあるパネル、ラファエルが操作していたところを見るとコントロールパネルだろうな、実験体を培養槽からの解放以外にも何かの機能があるだろうが、むやみに触って大事になったら大変だ。後で、何部隊か送って解析に回そう。


 「魔王様、これを」


 モニカが本を手渡してきた。

 中身は手記、日記のような物だった流し読みしてみると、偽王の日記らしい。最後の日付は二週間前だ。


 「半年以上も前の記述もある、何か重要なことが書かれているかもしれない、何処でこれを?」


 「あっちの部屋、両脇に机があって更に奥に扉があったけど、机に置いてあったのはそれだけ、奥の扉は後で全員で行こうかと」


 「そう…」


 その場で日記の内容を確認する。


 半年前は王の面談に来た民や、地域による視察のような、日記というよりも記録に似た文面が目立つ更にページをめくると預言者の文字が見つかる。


 「…ここだ」


 今日、妙な男が王に二人で話したいと言ってきた、左座のやつは判断を私に委ねるようだ。

 忙しいのは分かるがもう少し王をお守りする左座としての自覚を持ってほしい。


 預言者は今日私の別邸にやってきた、なぜ、私がここにいるのが分かったのだろう?奴は王の貢ぎ物と言い、いろんなものを私の前に差し出した。

 どれもこれもガラクタばかりに思えたが、魔法に精通した家臣がそれぞれにあり得ない量の魔力が込められていると驚いていた。


 今日も預言者は来た、幾つもの貢ぎ物というよく分からないものを持って来る、これだけの量は異常とは思ったが、それ以上には不審な点は見当たらない、相変わらず大きな魔力を込められているらしいが、そのような物には詳しくない、預言者、自分の名前すらも明かさないとは…しかし、それなら門番は奴の名を聞けたのでは?明日にでも当番の奴に聞いてみるか。


 今日は朝一で預言者が来た、今日の貢ぎ物は一つだと言ってようやくガラクタの品の底が付いたと思った、最後の貢ぎ物は刀だった、不思議な事にその刀を見せられた時から目が離せない、その刀がまるで意志を持っているようだ。私になにかを語りかけているような…預言者様の名前は後回しにしよう。


 すごい、この刀を握ると力が溢れてくる…!今までどれほどの業物でもこんなに手に馴染む刀を手にしたことがあっただろうか、あぁ、刀が、力をくれる、き れい  だ


 め  い   れい  王   ころす   にえを   捧げ    魔族   抹消     …  の   移植    じ  っけ   ん


 失敗、失敗、失敗、失敗、失敗、失敗、失敗、失敗、失敗、失敗、失敗、失敗、失敗、失敗、失敗、失敗、失敗、失敗


 出来た。


 「…」


 あぁ、気分が悪い、元々から悪い奴ではなかったのか、刀というのはあの血と魂を吸う魔剣の事だろう、もう壊してしまったがそれが偽王の心を汚しおかしくしてしまったということか。

 そして、最後の文字出来た。というのはおそらくあの扉の先にあるのだろう。


 「うぅ…」


 振り返ると今にも倒れそうな足取りでふらふらとラファエルが歩いてくる。


 「無理をしないで」


 「いえ、もう、お別れは済みました…進みましょう」


 マーリンが肩を貸して何とか進めるといった感じだ、足に力が入らないのだろうかだらりとつま先を引きずる感じで後ろについてくる。


 「モニカ、進もう」


 通路の先の扉を調べる、ここに来る時みたいに扉が濡れているという事はないようだ。

 それでも用心して扉を開ける。


 そこには、小さなベッドが3つ置いてあった、ベッドの上には何かが蠢いている。

 それは胎児のような見た目のおぞましい化け物だった。ギョロリとした瞳に鱗が所々に生えてその隙間にはテラテラ光る黄色い舌と牙が見え隠れしている。


 「うっ…!」


 近づくだけで吐き気を催す腐臭が鼻を突く、言葉で表現できないような、もっと違う何か、今それが目の前で生きている、直感で分かる、これは失踪した子供の体で唯一の成功作なのだろう。


 後ろで見ているラファエルの顔色がみるみる変わっている、しかし、声が出ないのだろう、今までのショックな体験が正気を削っていくのだろう。


 「魔王様…」


 「うん、分かっている」


 これは、もう手遅れだ、攻めてこのような状態では成長できたとしても理性は欠片も残っていないだろう。

 ゆっくりと近づいて、短剣を取り出し、切っ先を向ける。


 「助けてあげられなくて、ごめんね」


 その後、耳をつんざく叫び声が三つ響いた。

 それは、次第に小さくなっていき、ベッドの上にいた生き物は肉塊になり溶けていった。


 「…助けてあげる事は、出来なかったのかな」


 隣で呟くようにマーリンが話す。


 「世の中にはどうしてもできない事があります、たとえどれだけうまくやっても、誰より頑張っても、それが、例え物語であったとしても、しかし、それは正しいことをやったという自覚があれば、それは正義だと思います、それが上っ面だけの正義だろうと…」


 「…戻ろう」


 それから、数日後、完全に立ち直れない訳ではないがラファエルのメンタルは少しづつ回復していき、協会の有力者によって今までの偽王の悪事や子供の失踪事件の事が全員に行き渡り、捕らえていた民を開放した。

 新しい王についてだが、俺は辞退した、流石に、助けた結果とは言え襲ったやつが王になるなんて他の国にも評判が悪くなるだろう。

 よって、ラファエルが王女として玉座に着くことになった。

次回3月10日月曜日予定

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