魔王からの選択
マーリンが先代魔王とあっている頃、三代目魔王は自室に戻っていた。
「ただいま、二人とも、静かに待っていた?」
そう言った途端、本が勢いよく飛んできた。魔法で障壁を張って本をキャッチする。
「くそっ」
「そんなに、乱暴な事しちゃだーめ、折角ごはんを持ってきてあげたのに…って」
子供の女の方はベットですやすやと安らかに寝息を立てている。
ふわりと女の子の横に移動して軽くゆすると、少しずつ眼を覚ますように目をこする。
「ん…すぅ…ふわぁ~」
「おはよ、ごめんね、ケイちゃん、ごはん持ってきたよ、お腹すいたよね」
懐からパンを取り出すと、男の子の方はそのパンを奪うように取り、俺の口に押し込む。
「毒を盛ろうとしても無駄だ。お前が死ね…」
「もぐもぐ、うん、美味しかった、購買にしては美味しかった。でも、酷いなー折角、拾ってあげたのに、毒なんて盛らないよ」
まぁ、警戒する気持ちは分かるけど、森でさまよって、魔王にあって魔王城に連れてこられて、そして、ご飯を持ってきた、殺す気がないと言っても魔王が言っても説得力皆無だね、うん。
「とりあえず、食べなよ、餓死なんて、されたら、それでこそ、後味悪いし」
二人は渋々、パンを半分こして、少しずつ食べる。
「…美味しい」
ケイと呼ばれていた女の子が言葉をこぼす。もう一人の方も頬張るようにパンにかぶりつく。
「まだまだあるから、よく噛んで食べて、喉に詰まらせないようにね」
最初は半分にして食べたが今はバスケットの中にあるパンを自分で取り食べていく。
本当になんで、こんな子供達がこんな目に、タリ村…少し調べてみたけど、魔神軍の領地に囲まれている小さな村、村長が代々タリの名を引継ぎ、作物を定期的に少し魔王軍に捧げる事を条件に、未だに人間達の領地だった。
「ねぇ、君たち」
食事を終えた二人に話をかける。
「タリ村って知ってる?」
その村の名を聞いた二人の顔はとても驚いた顔を恐怖の顔をして、体がびくりと痙攣する。
ビンゴだ、二人の故郷はタリ村確定だな。
「さっき、聞いたんだよ。タリ村が壊滅したってね、残ったのは肉片や血、それら全部私たちがやったと思ってるのかな?」
「…違う、違うんだよ…勇者が、勇者が現れた、そいつは、俺たちを助けるなんて言っておきながら、兄ちゃんを…タリ兄ちゃんを…」
拳を握りしめ涙を浮かべる、声も震え、顔は怒りの表情を浮かべている。
「その眼はその時に?」
「…俺たちは、騙された…呪いだ…っ!呪いなんだよっ!!大人たちがっ!!俺たちを捧げて!!そいつらを殺してもいいからっ!!自分たちは助けろって!!前からずっと…なんで、なんで俺たちが不幸な目にあって…他の奴らは、良いことばかり…」
あぁ、そうか、似ているんだ。他の人に利用されて他人に助けてもらえない、この子達は支えられるのがお互い以外にいなかったんだ。
「…分かるのかよ…お前に…!褒めたり認めもしないくせに!!結果だけ求められて能力も成果も無いと思われて利用されることしかさせてもらえない俺たちがっ!!魔王のお前に分かるのかよっ!!」
能力が強いゆえの孤独それは俺が味わっていた孤独だ、だから他の人の力なんていらないと、期待されて、気が付いたら独りになっていた、だけど、この子達は、弱さゆえの孤独だ他人に力を貸してもらっても期待した結果にたどり着けなくて、他の人の成功のための踏み台にされてしまう事で、置いていかれてしまう。
小さな肩を震わせているこの表情は、見たことがある。見捨てられた事による恐怖心、イジメ等によるもので誰にも助けを求められず、打ち明けられず、溜め込むことしかできないもはや心の病気だ。
「そっか…いっぱいいっぱい辛い思いをしてきたんだね…ごめんね、そんなこと知らずにこっちの都合で連れてきちゃったりして」
二人をぎゅっと抱きしめる。一瞬抵抗しようとしたが、包容力のある手に安心したのか、胸に顔を当てる。
「君たちは本当は誰よりも強くて、優しくて素晴らしい子なのに、自分なりに頑張ったのに、誰からも必要とされずに褒められたりもせずにされたら、誰だって嫌になるよね?」
【そう…間違っているのは周り…あなたたちは悪くない】
頭の中で聞いたことがある声がまた聞こえた。しかし、今度は言いたいことが一致している。
「【疲れたでしょう?もし、復讐が貴方達の願いなら、私に委ねてみない?私が願いを叶えて[私]がその願いの手助けをしてあげる人間として生きるのをやめて、魔王の弟と妹として自由に生きる夢のような生を歩んでいける事を約束する】」
そう…やっぱり、この子達はそれが一番いい答えは言わないがコクコクと頷き更に強く顔を胸にうずめる。
ははっ、こういう時もっとうずめる胸があったらいいんだけどな。
嗚呼、どこでも同じだ、どの世界でもこんなに、素直で優しくて、頑張り屋さんな誰かのために動ける人間が、世の中ではないがしろにされるのだろうか、損する立場に立たなくちゃいけないだろうか、そんな人間達を見て見ぬふりをしている人間と私たち…ふふっどっちが本当の魔がつくのに相応しい存在なのか分からないわね。
「それじゃ、いつまでも何処までも見守らせてもらうわ、そうね…」
二人に新しい名前を付けてあげなくちゃいけないな、カイン・ノイシュヴァンルーデじゃあ、流石に悪目立ちしすぎるから、そうだね、折角あの兄弟の名前が片方ないっていうのも可笑しいし、ここは…
「今ある姓を捨てなさい、あなた達はアベル・ノイシュヴァンシュタインそれが新しい姓よ」
それを聞き二人は目を輝かせる。
「俺の名はアベル・ノイシュヴァンシュタイン・カイ、お姉様の弟として生きることをここに誓います」
「同じく、わたし、アベル・ノイシュヴァンシュタイン・ケイはおねえちゃんの妹になります。これからよろしく、おねぇちゃん」
ゾクゾクッと胸が高鳴るのを感じる。
「ねぇねぇ、二人共もう一回お姉ちゃんって呼んでもらっていい?」
「「お姉ちゃん」」
「うんうん!いいねっもう一回!」
「「お姉ちゃん!」」
「今度は上目遣いでもう一回」
「「お、お姉ちゃん」」
((あれ、これ何回続くんだろう))
「ワンモアセッッッ!!」
その夜は夜中の二時までお姉ちゃん呼びに快感を覚えたレンが何回もお姉ちゃんと呼ばせた。
次回12月2日月曜日予定




