魔王城のアフタヌーンティー&ピーストーク
東の魔人軍を配下に加えた数日後、魔王城の中は静まり返っていた。
魔王城の空いている部屋をそれぞれ与えたのだが、みんな「まだ持ってきていない荷物がある」と言って、行き来している。
モニカとホビルもその手伝いをしている。
そして、リネアとマーリンは自分と魔王城の中庭で、アフタヌーンティーを楽しんでいた。
「ふぅ…こうして、手伝いに行かないことが申し訳なく思えるな」
自分たちだけとはいえ、戦闘時以外では作ったパッシブスキルは発動しないみたいだし、力仕事は足引っ張っちゃうから、やめたほうがいいってリネアに無理矢理止められた。
「そんなことありませんよ。もし、廊下などでうろうろしていたらそれこそ、失礼ですし」
マーリンが紅茶を啜りながら言う。
「そうですね、こうして、三人でお茶会を楽しむのもいいものですから、そういう事は言わない方がいいですよ。楽しめないでしょう?」
「あっごめん」
それぞれ、紅茶を啜りながら駄弁りあう。
「それにしても、こうやって、特定の人とこうやって、お茶をするのは無かったから…」
今までは、全部食堂で食べていたから、自分だけではなく他の魔人たちも一緒しているように感じた。
「から?」
「まだ、二人の事あまり知らないと思ってね」
今まで、いろんな事が会って自由がなかったからこうしているのが新鮮な感じだ。
「私はともかくリネアの事も?」
考えてみたら、まだ自分の事を調べるだけでいっぱいいっぱいでもあったから聞く機会が無かった。
(一番時間かかったのが自分の性別のことなんだよね)
お手洗いもお風呂も、未だに緊張する。
「自己紹介の時も当たり障りのない範囲でしたから、そんなに詳しくは…」
「はぁ、少し呆れました。でも、魔王様の性格からして少し納得してしまいます」
それはどういう事とツッコミそうになったが、こらえた。
「コホンッとりあえず、こうやってお茶会を開く事すら少ないでしょうし、雑談交じりに話しましょうか」
「それにしても、随分とマーリンと普通に接しているよね。最初は嫌そうな顔を浮かべていたじゃない」
その言葉を聞くと嫌そうな顔に戻して語りだす。
「それは、こいつが私の妹をたぶらかしたからですよ。それ以外には実力もあるし知識も豊富だし魔法も魔術も天才的で非の打ち所が性格や変人以外ないやつです」
普通に非の打ち所があるんじゃないか。
「ていうか妹居たの?見たことないけど」
「魔王城の指示などであまり会えないんですよ。まだ、800歳ですが魔王様と少ししか背が違わないので、可愛くて可愛くて、それに、モニカと似ているんですよ。無垢なる赤ちゃんのような愛しさがぎゅうっと凝縮したような最高にラブリーなゴスロリを着た時の恥ずかしさの顔ときたら」
早口で多弁になったんだけどスイッチ入っちゃったよ
「おーい、戻ってこーい」
「すいません、少し取り乱しました」
「でも、たぶらかしたなんて人聞きが悪いな。ただ城下町の保護施設のオーナーだったからそこの利用者には優しくしなきゃでしょう」
「それで、久しぶりに会っても話の話題があなたとの会話なのよっ!!」
本当にクールの欠片もないなこの時のリネアは
「頻繁に会いに行けばいいじゃない。こっちの世話は他の人にしてもらうから」
「そうすれば、魔王様もマーリンにたぶらかされるのではと心配で」
今、話に出てきたが城下町と言うのは魔王城の地下三階層から下の超巨大地域だただでさえ大きい魔王城よりも大きくて非戦闘員や一般の魔人たちの住宅なども存在しているいわゆる娯楽施設だ。
「そういえば、聞いただけで行ったことはまだないんだよな」
やることはやったと言っても他人の事だけで自分を労う事はやっていないし、それに、まだ他国方面に行った奴たちの帰りも待っていた方がいいと思うし
「魔王様、魔王様、クリスタルにマトゥッターのチャットが届いてますよ」
マーリンの声に気付いて画面を表示してみたらそれぞれの方面に行った将軍格達の任務進行の中間報告が合計40通も届いていた。
「うわぁ…最近忙しかったとはいえこんなに報告が…」
帰ってきたら、クリスタルで報告書プリントアウトで出来たりするから、わざわざこれでしなくていいのに、暇かよこいつら…
「生存確認もできるから馬鹿には出来ないんですけどね」
いつの間にか口から独り言が漏れ出ていたらしい。
「えっと…何処まで話したんだっけ…そうそう、妹の話が終わった辺りだね、じゃあ、引き続きリネアの家族構成とか聞こうかな」
「家族構成ですか?うーん、前に言ったように魔獣や魔族が人間を喰って魔人になった者同士が結婚してその子供達が将軍格なのは言いましたよね、種族としては母がサキュバスで、父親が吸血鬼としか言えないんですが」
「へぇー、あれ、でもリネアって食事とか普通だよね血とかそういうのは飲まないの?」
普通だったら親がそういうものしか食べられない種族なら同じものを食べるんじゃないのか?
「私の場合はお互いの食べ物が人間の体液なのですが、それが、お互いに拒絶反応を起こして食べられないんです。もし、食べたとしても不味いとしか思えなくて…」
魔人も色々大変なんだな。
「マーリンの家族は?」
「ん?僕の家族は分かりませんよ。魔人族の捨て子でそれを拾われたので、私の本当の両親の事と分からなくて、魔人族って事しか分かりません」
何気なく聞いた質問が爆弾発言になってしまった。
「…ごめん」
「謝る必要なんてどこにもありませんよ」
それでも、罪悪感が沸いてしまう。
でも、家族がいるのはいいよね。
「僕にはもう生きてる家族がいないし」
それを聞いたら二人が小首をかしげた。
「まだ先代の魔王様は生きてますよ」
「200年前に余命半年と言われながらまだまだ元気ですからね、結局、今は離れの塔に住んでいますが余命宣告も取り消されましたしね」
それは、流石に前世でも前代未聞だろう。
「なるほど、それじゃあ、あった事ないわけだ」
これ以上は踏み込んだらツッコみきれないと思い質問を変える。
「そういえば、前にした緊急会議の時、変装魔法をした者達から伝書魔が来たとか言ってたけど、なんで、クリスタルじゃなかったの?監視があったわけでもないし」
「クリスタルはまだ一般販売はされていませんよ。仕事でストレスが溜まりやすい特級兵士から上の階級にしか販売していないんですよ。一般販売したら、みんなだらけるでしょう?」
確かに正論だ。
「それに中継局が無い場所では電波が拾えませんからね。実際に私が帰る時にしたチャットも偶然帰り道に中継局の電波をキャッチしたからで一分ぐらいで圏外になりましたが」
そうか、圏外や高いところだと電波が拾いにくいんだっけ。
「でも、伝書魔とかだと字が上手くないと読めないよね」
「確かに一理あります。しかし、プリントアウトできるのは機械にプリント用紙とプリント内容を記録したクリスタルが必要ですからそれらを持っていくわけにはいかないし」
ギリアが帰ってきたら測定板のようにコンパクト化をお願いしてみるか。
「あっ、いたいた、お三方、そろそろ荷物運びが終わるので城内案内をお願いしたいとダインがいっているんですが」
話が一段落した所でホビルがヨアケガラスと一緒に呼びに来た。
「おや、もう終わりか、いつでも楽しい時間はあっという間に過ぎて行ってしまいますね。今度は城下町のカフェなどどうです?今度はモニカとか誘って」
マーリンがそういうが
「魔王様は時間が空ける事はありますが、私は彼らの指南を頼まれているから…ごめんなさい」
「………なら仕方ないですね。今度はモニカを誘って三人でお話ししまょう」
最初にボソッとそれはそれで好都合って言ったぞ。
少しの不安を抱きながら、お茶会は終わりを迎えた。
魔王、東へ(準備編)で後書きに書いた。新小説ですが今月の下旬から上げさせていただきます。予定より遅れてしまい申し訳ございません。
次回10月19日土曜日予定




