魔王、東へ(交渉編)
魔王城を出てイージスフォレスト、を進んでいくと、木々が無くなり始め竹林とイージスフォレストの間にまるで、領地の境界を示すように不自然に開いた場所がある。
迷わず竹林を進み始める。
ふと、自分含め、全員が足を止めた。
「…いるね」
前方約60メートルに魔力を持った生き物の気配を感じる。
「4人…いや、5人の魔人ですね。そんなに強くはなさそうですけど…」
マーリンが相手の数と戦闘力を計算しているが、関係ない。
「いきなり敵対行動を取られてはマズイ…ホビル前に出て、私はホビルの後ろに立っている他のみんなはいつでも、援護に回れるようにして」
その指示で、それぞれ、全員がばらけて一つの陣形が出来上がる。
慎重に、しかし、警戒されないように近づく。
「誰だ?」
相手がこちらに気付いた。
「!おい、こいつ見たことがあるぞ!魔神軍の幹部の一人だ!」
「…如何にも、魔神軍幹部が一人ホビル・ルーデンベルクだ。今回は、我らが主が直々に、お前らに会いに来たんだ、少しは歓迎したらどうだ?」
「我ら…?」
よし、話し合いは出来そうだ。
「みんな、出てきていいよ」
全員が自分の周りに集まってくる。
「魔神軍幹部が4人だと…!」
相手はかなり驚いているな。
それは想定内だが、武器に手を添えている。
「まぁまぁ、そんなに警戒しないでよ、僕たちは戦いに来たんじゃないんだし、その証拠に将軍格は居ても隊員はいないし、武器も最低限しか持ってきてないよ」
「…子供?」
「あぁ、申し遅れたね。私の名前はカイン・ノイシュヴァンルーデ・レン三代目の魔王です」
「…ハッ、ガキが魔王ごっこか?そんなことやるなら、お家でおままごとでもやって———」
言い終わる前に魔力を開放する。
相手の戦闘にいた人物は辛うじて立っていられるがそれ以外は身動きが取れなくなり、残りの四人は地面に押さえつけられたようになる。
昨日マーリンに教わった事だ。
魔力を辺りにひっそりと漂わせて解放と同時に空気や物質全てを抑え込むイメージを思い描く。
そうすると、相手は威圧感に押しつぶされる感覚になり、地面にへばりつく事になる。
自分より魔力が強い者だと、威力は落ちるらしいが、この反応を見るに、立っているのがリーダーかな?
「っと…これでも、私が魔王ごっこしていると思う?」
「…いや、こんなバカげた魔力持っていて疑うことは出来やしない」
「じゃあ、信じてもらえるんだね。」
しかし、状況は一歩も前進してないな。
魔王だという存在は証明できたけど、相手はこの場にいる全員を相手にしたら勝てないとは、知っているはず
「今日はそっちのボスと話しをしに来たの」
「…主に?」
「危害を加えるわけじゃないけど、それはそちらの出方によるかな?」
「…分かった、だが、少し待っていろ、今、主に会えるかどうか、聞いてみる」
そういい、相手のリーダーは竹林の奥に向かう。
「…君たちは行かなくていいの?」
「…お前らが、目を離したすきに変な動きしないか見張ってるんだよ」
その言葉に釣られたのかマーリンが口をはさむ。
「変な動きって?裸踊りとか?」
その場にいる全員が吹きそうになった。
「ぐっ…とにかく、待っていろ」
しばらくたつと、リーダーの魔人が帰ってきた。
「いいそうだ。ついてこい、お前らは見回りを続けろ」
歩き先導し始めた後をついていく。
十分くらいたっただろうか、周りには竹で作った家や竹椅子などが見え始めた。
道は整備されてはいないが人が通る道は辛うじて見える。
「…ここだ」
案内されてきた場所は先ほどまでの竹で出来たものではなく魔王城のような強固な鉄や木材を使った大きな家だ。
「主は玄関から正面の廊下の奥の部屋にいる」
そういうと、今までの道を引き返していく。
「中まで案内してくれればいいのに」
魔王城のやつらとは違ってちゃんと上下関係があるんだろう。
警戒しながら、家に入る。
カランカランと音が鳴る。
言われたとおりに長い廊下の奥に扉がある。
中に入ると中に人数分の椅子と長いテーブル、そして一人の青年が座っている。
「いらっしゃい、魔神軍の皆さま。私が東方魔人軍当主であるダインと申します」
「…」
「おおっとこれは失礼、どうぞ、お座りください。お飲み物はご自由に」
ダインが指をパチンと鳴らすとテーブルに紅茶や麦茶、ジュースなどがペットボトルに入った状態で置かれる。
「さて、今回は話し合いに来たという事らしいですが、どのような内容でしょうか?」
「…そうですね。何から話しましょうか」
とりあえず、全部話してもいいだろう。
これまでの、事や勇者の事その疑問の事全てを
「…なるほど、つまり、勇者がそんなにいてもしそれが本当なら、ターゲットが魔神軍奴らだけではなく、我らも対象になっている可能性があるそのために、今は我々と協力してほしいと」
「まぁ、そんなところ、実のところ魔神軍に入ってほしい、が本音なんだけど、この地はそのままでもいいし、出来る限りなら譲歩するつもりだよ」
「俺たちが魔神軍に?いいよ」
「そうだよね。流石に多くの魔人を従えているんだもの、いきなり、魔神軍に入るのも、急な話飲めるわけない…えっ?」
意外な答えに呆気にとられる。
「えっ?えっ?いいの?なんでそんなに簡単に?」
「あー、そうだね、じゃあ少し昔話をしようか簡単に」
ダインが言うには昔ダインの父親が魔人軍を作り始めたころ先代の魔王、つまり自分の祖父が、ダインの父親が作った魔人軍をスカウトしにきたらしい。
ダインの父親は自分の力をなによりも強いと絶対的な自信があったらしく、一対一の決闘を申し込み、負けた方が相手の傘下に加わるというもので、先代の魔王はその勝負を受け、開始十秒で勝った。
しかし、相手は傘下になるどころか逃げて必ずいつか勝つなどと負け台詞を散々と吐いていったらしい。
「それでさ、俺はその時、まだ自我が芽生えて間もない頃だったから、どっちが悪いとか、分からなかったんだ。まぁ、今だから言えるがこっちが悪いよな。それで、リベンジに燃えていたが、家が崩落して下敷きになって親父は死んじまった」
家族が他界してしまった事については悲しいことなのだろうが、自分勝手なダインの父親の我儘な性格を思うと死んでしまおうがなにも言えないどころか全員が冷たい目を天井へ向けた。
「ごほんっと、とりあえず、魔神軍に入ることに俺は賛成だ。だけどな、みんなは反対だろうよ。」
「何か理由が?」
「みんな、魔神軍が嫌いなんだよ。親父みたいな負けず嫌いが多くてね。子供が生まれたら教育では魔神軍の悪いデマを流したりしてね。多分納得させるには、負ける必要がある。」
つまり、魔神軍VS魔人軍で戦うという事か。
「うーん、でも、家の軍はほとんど出払っているんだよ。」
「そこで、だ。君たち五人で俺たちを相手してよ!」
俺たちというがまさか…
「もしかして、君も戦うの?」
「俺は、過去のいざこざはどうでもいいんだけどさ、やっぱり、あんたらが俺たちの上に立つことに相応しい人物か見極めさせてもらうんだよ。後、こっちの軍なんだけど多少は殺しても構わないけど、俺とヨアケガラスは加減してくれ、俺たちが死ぬとこっちの奴ら死ぬまでお前らを襲うことやめない」
「い、いや、戦力補給目的だから今回全員殺傷能力低めな武器を持ってきてるよ…」
「あっそうなの?まぁ、いいか、じゃあ、開始時間はいまから、一時間だ。そのうちに軍のみんなに話通すからよ。全力で楽しもうぜ。開始地点は最初にあった見回り隊と出くわしたところで、それじゃ!」
一方的に話を切られ決まってしまった。
「はぁ、結果的にこうなるのかぁ」
「仕方ないな、俺の再生能力の良い所ここで見せるのはもったいねぇがいっちょやるか!」
「わたしもやろーすばやいうごきでーあいてをほんろーしちゃうよー」
「はぁ、魔法の試し打ちに耐えられる人はいますかね」
「ふ、ふふふ、魔王様見ていてくださいね。リネア、必ず活躍してご覧にいれます」
なんかみんなスイッチは行っちゃったみたいだね。
「とりあえず、開始地点にいって、心構えて置くように!」
そして、戦いの火ぶたが切られる。
次回9月30日月曜日予定




