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転生先は三代目魔王さまです  作者: 神坂将人
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透明の羽根

 「…………、俺の勝ちだ」


 「…………うん、負けたよ、君の、いや、君たちの勝利だ、魔神軍」


 預言者達が堕天使を呼んだ時に他の魔族や獣の気配はすでに消えていた、それすらも堕天使に捧げられた生贄だったのだろう。


 「完敗だ、さすがは原初の血族でありながら、魂で繋がった一人で二人、いや、一億を超える軍隊の戦力を誇る魔人、ただ昔から存在するというだけのただの肩書きじゃあ、届かなかった」


 「なぁ、話してくれないか、あんたさ、実は世界の粛清なんて、する気なかったんだろう」


 「…ちょっと違うかな、する気ないんじゃない、出来ないんだよ、負けたおかげで色々思い出したよ、じゃあ話そうか」


 ~???年前 天界~


 あの時わたしは天使として神に仕えていた。天使と言っても今の人間と変わらない、起きて、食事をして、与えられた事をこなして、疲労と欲で寝て、その繰り返し、特にその事に疑問なんてなかったし、不服も無かった、そんなある日


 「おい、■■■■■、■■■■を見なかったか」


 「いや、見てないが、どうしてわたしに聞くんだ」


 「■■■■■が一番■■■■と一緒に仕事してただろう。今日も同じ仕事で時間も同じだし、せっかくなら探してそのまま仕事してくれよ」


 「■■■■とは仲良くもないよわたしはただの同族さ」


 今となっては自分の名前もあいつの名前も思い出せない。ただ、あの時にわたしの歯車は狂いだした。


 「■■■■、ここにいたのか」


 「■■■■■、仕事?」


 「お前を探してそのまま一緒の仕事だ、来い」


 「…うん」


 あいつは従順だった自分から動くこともなく何をすることもない奴だったが、次の日もその次の日も、いつしか、あいつは仕事以外は同じところにいてそこは、あいつの特等席になっていた。


 「■■■■、またか」


 「■■■■■?今日の仕事は終わったはずだよ」


 「…いいや、お前ずっとここで何を見ているんだ」


 「…あれ」


 あいつが見ていたのは地上だった、中でもあいつは人を見ていた。


 人は我々とほとんど違わないのに弱く儚く脆い存在だった、飢えても食わずして餓死し、液体につかり、しばらくすると浮かび上がったと思っていたら死んでいて、自身で生きようとしている奴なんていなかった。


 「…楽しいのか、見ていて」


 「…うん、特に良いのが…あれ」


 「…どれだ?」


 「見えない?あそこ」


 「いや、見えないというよりは…距離がありすぎてどれの事を言っているのか…」


 「ほら、これで、見える?これこれ」


 やつが見ていたのは、その中で畑を耕し、家畜の世話をして、必死に生きようとしている一人の人間だった。最初はあり得なかった、ただ、無価値に生きて無意味に死んでいく人にあんな奴がいるなんて


 「あんな奴、ほとんどいないな」


 「うん、ああいうの、いいと思うんだ」


 「どこがだ、あんなおかしい奴のどこが―」


 「おかしいのは悪い事じゃないよ」

 

 「?」


 「僕は庭とかでおかしな形の石とか見つけるとね、嬉しいんだ、それと同じ、おかしいのは悪くない寧ろいい事なんだよ」


 「いい事…か」


 それからは、わたしもあいつと同じく時間を見つけては下界を見るようになった。


 (いい事)


 翌日もその翌日も、いつしかそれがわたしたちの日課になっていた。


 (いい事、良い事、いい…)


 しかし、いつしか私の心は歪んでいった。


 (そんなにいい事なら、もっといいことにしてやろうじゃないか、お前も楽しませてやるよ)


 そうして、わたしは線路を作り出しその上を走る為のレールを創り出した、予想通り下界に生きる人々は勝手に敷いたレールの上に立ち走った。その姿は愉快で私はレールを敷いて敷いて敷きまくった。そして、わたしは―


 現在


 「結局、わたしは罪深いことをしただけだったんだな、ねぇ、わたしは間違っていたのかな」


 「…正解なんてないさ、ただ、君は友達のためにした事がねじ曲がっちゃっただけなんだよ、友達が魅力を感じた景色を無理矢理作ることによって、他の人が苦しんじゃったんだよ」


 「…ねぇ、今も、因果は必要かい?」


 「…僕はこの世界に来ていろいろなものを見てきました…だから、言えるんです。この世界のみんなは、もう。自分で歩けますよ…ありがとうございました…お元気で」


 そう言うと自分は懐から一つのナイフを取り出して、堕天使の心臓を貫いた。


 「…これは」


 突き刺したナイフは、ここに来る前におじいちゃんから渡されたもの、おじいちゃんはこのナイフを「天国への鍵」と言っていた。龍の逆鱗で創られたそれは、刺したこの世ならざるものを天に帰す物だと、龍は元は天国への門であり鍵だった。


 「そうか、わたしは、間違ってなくとも、もう必要なかったんだ、そう、だったんだ…あぁ、もっと、も…っと、はやくに、き、づいて、い、たら…なぁ…」


 涙がつう、と頬を伝う。

 

 「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…」


 「…許すよ、だから、今はその透明な翼を広げて反省して…さようなら…わが友、ガブリエラ」


 「っ!………あぁ、ただいま、行ってきます」


 最後に確かに見た、この世界のすべてには透明な翼が生えている、それは、常に羽根を落として、透き通る色は、何よりも、綺麗だった。

次回5月24日月曜日予定

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