-Side Episode-07 依頼
「さ~てと、今日も薬草採取にでも行こうかね~」
ギルド会館のクエストボードを見つめ、その風貌に似合わぬ呑気な声を放つ白銀の鎧を着込んだ男が一人。
「ヴォルフさん、またですか?偶にはもうちょっと、こう、討伐とか……」
時々話す様になった知り合いのの冒険者の一人であるクラース君がヴォルフに突っ込みを入れてくる。
中級モンスターの甲殻や金属などを繋ぎ合せた中々上等な鎧を着ている青年で、黒い短髪が彼の若々しさをアピールしている。
「そりゃ襲いかかって来るなら俺も動くけどそうじゃないなら無理に働く必要も無いかな~ってな」
「はぁ……お金持ちな人は平和でいいですね……」
この王都ラグナの冒険者ギルドでヴォルフの事は結構有名になっていた。
それも”成金冒険者”というなんとも不名誉な二つ名で、である。
なぜこんな不名誉な二つ名がヴォルフについているのかというと、装備だけはご立派でしかも顔が抜群に良く、薬草採取などの簡単な依頼しかこなさない。仮に討伐することがあったとしても、それはスライムや角うさぎなどの主にEDランクが狩るような低級な獲物ばかりだからである。
しかもヴォルフがこの王都きっての高級宿である”月明かりの旅亭”を拠点として寝泊りしているのを冒険者達が知ったことが更に拍車をかけ今に至る。という訳だ。
「そもそも俺は成り上がりたいとか金儲けしたいとかそういうのが目的で冒険者になったわけじゃないからな~」
「へ?じゃあ何が目的で?」
「そうだな~、人探しというか……もの探しというか……まあ、なんだ!情報が集まり易そうだから冒険者になったって感じだな」
「はあ、なんか色々と理由があるんですね…………。あ!じゃあ俺と一緒に護衛任務しませんか?ちょうど貴族の一人であるカルド候から護衛依頼が来てるんですよ!もしかしたら貴族様の情報が手に入るかもしれませんよ!」
カルド候……ねえ。聞いたことねえな。けど貴族と知り合えば何かしら伝手とかが出来るかも……。
「ん~、どうしてもって言うなら別に構わんが…………俺を誘うメリットってあるのか?」
「ありありに決まってるじゃないですか!いや単に金持ちだからお近づきになろう!とかその辺の冒険者でも考えているような理由じゃなくて、俺はヴォルフさんが実はスゲー人なんじゃないかって思ってるんですよ!」
クラースがヴォルフを評価しているというのは本当である。
第一に彼はCランクの冒険者であり、しかも新参のパーティだが急激な勢いで成長している将来有望な”飛竜の団”のリーダーでもある。
こんな将来性抜なCランクの実力者が未だに最低のEランクに留まっているヴォルフにわざわざ敬語で接している。それこそがクラースがヴォルフを評価している何よりの証なのである。
クラースの力強い熱弁にヴォルフが少しの間腕組みをして悩んだ後、こう答えた。
「そう……だな……。そこまで言うんなら俺も同行させてもらおうかな」
「よっしゃ!決まりですね!そんじゃ名指しで協力依頼の申請を出しときますんで、後で参加しといてください」
「ああ。わかった」
「え~っと、それじゃ今日の昼ごろに俺達が拠点にしている宿で顔合わせと作戦会議をしますんで、お願いします。あ、場所わかりますよね?」
「ああ、大丈夫だ。それじゃ俺は申請が終わったら一旦宿に戻るよ」
「わかりました!」
クラースとしばしやり取りをして、依頼の参加をいつものクレアさんに頼んだ。
本当は今回の依頼は実力不足ってことで参加できないはずだったのだがクラース君が”荷物持ちだから!”という適当な言い訳と俺のスマイルでなんとか通った。
これでもしクレアさんが上に怒られるようなことがあるなら……うん、その時は素直にお詫びしに行こう。
「しかし護衛任務か……何が要るんだろ。まあ一応用心だけはしとかないとな」
ギルド会館で依頼の参加を済ませた後、俺はいつもの高級宿”月明かりの旅亭”に戻りリビングでうんうんと唸っている。
「とりあえずは補給だな。え~っとデータの中になんか使えそうな奴は~っと」
FrameWorksで遊んでいた時に製作した大量の小物やアイテムなどの一覧を高速で流していき、とりあえず使えそうなものを片っ端から召喚していく。
「お、この水筒超便利じゃん。とりあえずこれっと。次は~」
ヴォルフが最初に手に取ったものは圧縮水結晶という特殊な水差しである。簡単にいうと長さ20㎝程度のクリスタルの様な筒に容量にして25メートルプール程の水が丸々入ってしまうというものである。
一応この世界にも類似のアイテムがあり魔法の水差しという名前で売られているのだが、水が20リットルしか入らない上に魔法のアイテムという事でかなりのお値段なのでその辺の冒険者にはとても買えない代物になっている。とはいっても冒険者に限らずそれなりの大人数で旅を行う際は必須とも言える代物なので持っている者は結構多いが。
「え~っと、何かあったら大変だし回復薬もいるよな……さすがにアムリタやエリクシールは不味いよな…………死者蘇生なんてしちまったら大騒ぎだ。となると……」
ヴォルフが手に取ったのは美しい装飾の施された瓶。中にはキラキラと蒼い輝きを放つ液体が入っている。
「エクスポーション…………これもちょっとやりすぎだな。ハイポーションとポーション数本程度でいいだろ」
大仰な装飾の施された瓶を適当に投げ捨て、中に翠の輝きを放つ液体の入った細身な瓶と、先ほどと様な同じ色合いだが輝いてはいない液体の入った瓶を数本取り適当に麻袋に入れる。
「しっかし、どこぞのRPGの真似事で作ったモデルがこんなところで使えるとはな!備えあれば憂いなし!って奴かな?」
「後は……解毒剤に閃光玉に煙玉に…………」
この後ヴォルフは色々と詰め込みすぎで、かなりカオスでこの世界ならあり得ないレベルの最高級品ばかりが入った奇跡のような旅道具一式が完成した。
中には爆弾のような物も入っており当然威力も凄まじいことになっている為、もしもこれらをぶつけられることになるモンスターがいるとしたら悲惨としか言いようがない。
「よお~っし!こんだけありゃ何が起きても大丈夫だろ!あ、もうそろそろ昼じゃねえか。クラース君のところに行かねえと」
旅道具が完成したということでご機嫌な気分で向かうヴォルフ。もしこの場にいつものブレーキ役であるエレノアが居たならば”そんな過剰な準備はいりませんから!”と盛大に突っ込んでいただろう。
「ここか……」
鶏冠と大きな肩当が目立つ白銀の鎧を着込んだ男がぼけっと宿を眺めている。なんだコイツ?とでも言いたげな人々の視線をどうでもいいと受け流し、さあ中に入ろうとドアノブに手を掛ける。
中に入ると一階は食事をとるための開けた空間になっており丸い机といくつかの椅子がセットになり4~5個ほど置いてある。
「あ……!お~い!ヴォルフさん、こっちこっち!」
今朝方見たクラースが手を振りアピールしてくる。どうやら他のパーティメンバーは既に揃っているようだ。
ヴォルフがそれに気づき近づくと、確保しておいたのか指定の椅子を示し着席するように促す。
「ああ、ありがとう」
「いえいえ、これぐらい!」
爽やかな笑顔で返してくるクラース。だがどうしてだろう。反対側に座っている女性メンバーの目が何やらギラギラしているというか、座っているというか……。
「さて、最後のメンバーであるヴォルフさんが到着したってことで、さっそく紹介と作戦会議を始めていきたいと思います!」
声量も大きくよく通った声でしっかりとかつ堂々と喋るクラース。さすが新鋭気鋭のパーティのリーダーというだけはある。
「まず俺達のパーティは飛竜の団です。基本は討伐重視で冒険に出かけてますが時々こうやってご指名が入ったりしたら依頼の方もこなしていくって感じですね。他に~……」
なるほど今回の依頼は飛竜の団への名指しだったのか。俺が誘われたのは普段と違う慣れない依頼だから念には念を、といったところなのだろうか?
クラースの挨拶が終わると今度はもう一つのテーブルを囲んでいるパーティの代表が立ち上がる。
「挨拶ありがとう。お前らのことは結構有名だからな、よく知ってるよ。俺は”撃剣”のリーダーを務めているオイゲンだ。んで、こいつらがそのパーティメンバー。まあ、よろしく頼むわ」
無精ひげにざんばらに伸ばした灰色の髪の男性。背中には重厚なメイスとクレイモアを背負っている。
オイゲンと名乗ったこの男がリーダーを務めるパーティがカルド候の護衛を務めるもう一つのパーティらしい。
「(なあ、クラース君やい)」
「(はい?何ですか?)」
自分達のパーティがこんな特色を持っている、これだけのことが出来る。とオイゲンが喋っている間にこっそりとクラース君に耳打ちする。
「(この撃剣のパーティさんもご指名が入ったから合同で依頼に参加しているのか?)」
「(ああ、はい。そうっすよ。なんでも経験を積んだ熟練のパーティと勢いのある若手のパーティをカルド候が指名したみたいで)」
「(はあ、なるほどねえ……)」
ぶっっちゃけ変な構成だとは思う。貴族ってんなら金持ってそうなんだからランクの高いパーティを集めりゃいいのに何だってCランクの飛竜の団と同じCランクの撃剣なんて指名したんだ?う~む、謎だ。
「……~といったところだ。俺ん所はこんなもんだな」
どうやらオイゲンがリーダーを務める”撃剣”の説明が終わったらしい。
だがオイゲンは説明が終わっても着席せず最初にクラースを見、次に俺に視線を移した。
「それで、何で”成金”がここに居るのか説明してもらえるかい?クラースさんよ」
何とも攻撃的で挑発的な言い方である。
よほど俺のことが気に食わないのか……。
「はい。ヴォルフさん臨時のパーティメンバーとして僕の”飛竜の団”に入って貰いました。もう既にギルドの方で許可は取ってあるので問題はありません」
「問題無い……ねえ?俺らとしちゃあ実力も未知数で碌に討伐経験もない輩は引っ込んでいてもらいたいんだが?」
オイゲンが大仰な手振りであっちにいけと言う様な動作を俺に向ける。
「もしも何かあればリーダーである僕が責任を取ります。それに基本的にはヴォルフさんは裏方の荷物の護衛として待機してもらう予定ですので、仮に戦闘があった場合もそちらとかち合うこともないと思います」
「ふうん……そこまで言うんなら、まあ構わねえが。だがよお”成金”。もしも俺らの仕事の邪魔をしてみろ。そんときは容赦なくそのお飾りの鎧ごと切り捨ててやるからな」
言いたいことだけ言ってオイゲン率いる撃剣のメンバーは宿から出て行ってしまった。
後に残されたのは飛竜の団のメンバーと正直うんざりしている俺だ。
「はあ……なあクラース君。ほんとになんで俺を誘ったんだ?なんかこの時点でぐだぐだに成りかけててチームワークもくそも無いと思うんだが……」
ヘルム越しに頭を掻く様な動作をしてストレスを若干紛らわす。
他のメンバーも何やら言いたいことがあるらしい。
「そうよクラース!本来なら私達と”撃剣”だけで行くはずだったのになんで”成金”なんかをねじ込んだのよ!」
身軽な装備に身を包み、肩に弓を掛けているシーフの女性がリーダーのクラースに抗議の声を上げる。
それを皮切りとして他の二人の女性も何やら小言を言ってきた。
「アタシも少し不可解だね。本当にどうしても必要なのかい?」
姉御肌で盾役なのだろうか?重武装な鎧を身に着け、傍らに大盾を置いた女性が続く。
「それともこの”成金”に弱みでも握られた?安心しなさいクー……。お姉ちゃんがお掃除してあげるからね……」
今度は細剣を腰に二本携えた包容力のある優しいそうな女性がなんだか恐ろしいことを言っている。
クラース君、自分のパーティに俺が加入すること説明してなかったのかよ……もう蔑みの目で見られるのは飽きたよ……。
というかこのパーティ女性率高いな!しかも言動から察するにクラース君モテモテじゃねえか!
爆発しろ!
と、何やら女性たちの罵倒をしばらく聞き続けていたら最後に残ったローブに身を包んだ知的な眼鏡の男性が声を上げた。
「ふう…………皆さんその辺にしておきましょうよ。仮にもリーダーが決定したことなら頭からそれを否定するのでなく、何か理由でもあるのか?とか考えてみてもいいんじゃないですか?」
眼鏡をクイっとやる動作がやたら似合うこの知的な男性の声で一旦治まった女性達。
その反応を見て場を切り替えるために知的な男性が自己紹介を始める。
「先ほどは申し訳ありませんでした。私はこのパーティのメイジを担当しているカールと言います。短い間ですがどうぞよろしく」
細く、そして長い指の手を差出し握手を求めてくる。
なんだか人間らしい扱いというのが随分久しぶりに感じるぞ……。
「これはご丁寧に。俺の名前はヴォルフガングだ。よろしく頼む」
さすがにヘルムを付けたままは無礼なのでここにきてようやく脱ぐ。なぜ顔合わせなのに今までヘルムを取っていなかったのかというと、”単に目立つのがイヤだから”だ。
ヘルムを取り握手を返すと俺の素顔に驚かされたのか、先ほどまでポーカーフェイスが若干崩れている。
ついでの先ほどまでやかましく騒いでいた他の三人の女性も同様にだ。
「いや、これは驚かされました。”成金冒険者”の話はそこそこ有名ですが素顔の方はあまり話されていませんからね。ほら、あなた達も挨拶してください」
「ふ、ふん!顔だけ良くても一旦外に出ればすぐにションベン漏らして泣きわめくわよ!……私の名前はラウラ、別に覚えなくてもいいけどね!」
なるほど金髪の貧乳がラウラね。後この子、微妙にツンデレの匂いがするな。
「アタシの名前はセシリー。まあ見ての通り盾役さ。守って欲しかったらなんでもいいから少しは活躍してほしいね」
燃える様な赤い髪に赤い瞳の鎧の上からでも分かるナイスバディの女性。どうやらこの女性はあくまでも不確定要素の危険性を説いていただけでそこまで俺に敵意があるという訳じゃないらしい。なんだか姉御!って呼びたい気分。
「最後は私ですね。クラースの姉のクリスタです。もしクーを騙しているのならば…………その時は容赦しませんからね…………」
クラースと同じ色の長髪を後ろで一本に括っているこの女性。
おっとりした雰囲気の柔らかな女性だな~などと呑気な感想を抱いていたさっきまでの俺をぶん殴りたい。触れれば切れる様な剣呑な雰囲気を携えた女性だ。たぶんこの人が一番”やばい”気がする。
「いやっはっは!皆最初の掴みはばっちりだったみたいだね!」
そこで今まで黙っていたクラース君がようやく声を出した。
この野郎…………いけしゃあしゃあと…………。
「まったく、クラースは…………それよりいい加減説明してもらえませんか?なぜ急にヴォルフさんを引き入れたのか」
カールが呆れながらもしっかりと話を進めて行ってくれる。
このパーティの両親はメイジのカールとガードのセシリーだけらしい。なんだか帰りたくなってきた。
「それなんだけど…………ぶっちゃけどうしてもヴォルフさんが必要ってわけでもないんだよね」
「はあ!?それってどういう事よ!?」
あまりの展開にラウラが思わず立ち上がりクラースに聞き返す。俺も同じセリフ吐こうとしてました!
「まあ、落ち着いて聞いてよ。ヴォルフさんを入れた最大の理由は”勘”。ここまで言えばだいたいはわかるんじゃない?」
その言葉を聞いて知的なカールとお姉さんらしいクリスタが考える仕草をする。どうやら思うところがあるらしい。
だがラウラとセシリーにはあまり意味が伝わってないようだ。
「勘って、そんなあやふやなもんでわざわざ荷物になりかねないような奴を引っ張って来たってのかい?」
「そうよそうよ!そんなの外してもいいじゃない!」
「まあ待ちなさい。まだ付き合いの長く無い二人には分からないかもしれないけどね、クーの勘って結構侮れないものなのよ」
「ええ、普段はアレですが、ここ一番のクラースの勘は恐ろしいほどによく当たるんですよ」
なんだそりゃ。獣の本能でも宿ってんのか?それとも馬鹿と天才は紙一重的なアレか?
「例えば前回”霧の平原”に討伐に行った時もまだまだ余裕があったはずなのにクラースの提案で早々に引き上げることになったじゃない?そしてその後、身を隠し奇襲を得意とするミストバードの大量発生の報が流れた。これって偶然かしら?」
「ふむ…………」
「け、けどそんなの…………」
「いや~、あんときはなんか嫌な空気がすると思ったんで早急に帰ろうって提案したんだよな~」
クラース君って結構適当な発言が多いよな。とか呑気なこと考えてたけどマジかよ!?こいつは人間探知機か何かか!?
「まあ、常に当たるってわけでもないけど特に危険な状況だと抜群に読みが鋭くなる。それはずっとクラースを見てきた姉の私が証明するわ」
「僕も幼馴染として、同意見です」
「ぐぬぬ……!そ、そこまでいうなら!」
「まあ別に構わないさ。さっきのオイゲンとの話じゃ前線に出すわけでも無いだろうし」
「いや~、皆が納得してくれてホントに良かった!と、いうわけでヴォルフさん!明日は頼みますね!」
「お、おう!」
正直話についていけてないんだがなんだかもうどうでもよくなって来た。けどまあ、クラース君の勘曰く、この護衛依頼はなんだかやばい事件が起こるかもしれないらしい。気を引き締めねーとな!
それからヴォルフが去った後、宿屋の二階にあるクラースの自室にクラース、カール、クリスタの三人が集まっていた。
「それでクラース。あなたの勘はどういった方向で警報を鳴らしているの?」
「ん~、そうだね…………少なくともカルド候からはやばい感じはしない。特に警戒なんかもしなくてもいいと思う」
「では撃剣ですか?」
「そっちも白だ。成り行きで一緒に仕事をすることになった。っていうのに間違いはないと思うよ」
いつになくクラースが真剣な表情をしている。弟馬鹿のクリスタをしてこの表情は”恐ろしい”と感じさせるほど今のクラースは冴えていた。
「では一体何が…………?」
「恐らくは…………突発的な魔物の襲撃か……な?」
「魔物?でもそれっていつもあることだとも言えるけど……」
クリスタが意味が分からず聞き返す。
「というかそこまで危険だと分かっているなら断ればよかったんじゃ……」
「それは無理だよ。貴族様からの依頼は基本的に断れないし、万が一断ったらギルドと貴族双方から睨まれるしね。だからこその保険なんだよ」
クラースが手を口元に当て、しばし考える。
「俺達は今まで俺のこの勘で危機的な状況を切り抜けてきた。だからこそ今回も信じてくれないか?今回は俺の力じゃどうしようもないほどの”危機”が迫っている気がする。けどヴォルフさんが居ればその危機を切る抜けられる……ような気がするんだ」
目元に手を当て、しばし悩むカール。
「はあ……一体何が来るかも分からず、それに対抗するための伏せられたカードまで何が描かれているか分からない。というわけですか。正直逃げたい気分です」
「カール……」
「けどまあ、最後まで付き合いますよ。本当にクラースの予感が正しいなら危機的状況に陥ってもそれを突破できるということでしょう?それに、私としてはヴォルフさんの実力も気になるものでしてね!」
「あ、それは私も思うわ。あの鎧や剣が飾りなのか、本物なのか。噂じゃなくこの目で確かめたいしね!それに、お姉ちゃんはクラースのことはどこまでも信じているから安心しなさい」
クリスタがぎゅっとクラースを抱きしめる。それを見てやれやれと肩をすくめるカール。
「姉ちゃん……」
「ん~?」
「……暑苦しいから退いてくんない?」
「だ~め!」
何やら一方的にいちゃいちゃしている姉弟を放置して、一応の心構えをしておいて欲しいと伝えるためにラウラとセシリーの部屋へ向かった。
「ちょ!カール!幼馴染を置いていくな!た、助けてくれ!」
「あらクー。カールは幼馴染だからこそ家族の触れ合いに水を差さない様に退出したのよ?カールの意をちゃんと汲んであげなきゃ!」
「ごゆっくり~」
「う、裏切者~!!!」
一方その頃、肝心のヴォルフはというと……。
「お~い!エレノア!メシ食いに行こうぜ!」
「あ!ヴォルフさん!はい、行きます!」
女の子と呑気に食事の約束を取り付けていた。
ようやく始まるヴォルフの活躍!




