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FrameWorks  作者: シロイヌ
17/24

09 浮島

「うぉぉぉぉぉ~!これは凄い!!」


僕の眼前に映る景色。

それは圧倒的なものだった。


中央に浮島にそびえる一つの巨大な城。それはいくつもの尖塔や各塔をつなぐ渡り廊下などが規則正しく配置され、正に神の作りだした建築物といっても過言ではないほどの威容と美しさと荘厳さを備えている。そしてその周囲を取り囲む青空と分厚い雲が天空城の神秘的で壮大な雰囲気を更に引き立てている。


「我が神よ!いけません!あまり身を乗り出しますと落ちてしまいます!」


と、興奮しすぎた僕を抑えて、憎らしいことにご丁寧にも膝の上に僕の座る位置を訂正してくれたのはイグナートだ。元男だからだろうか、こいつが若干興奮しているのがわかる。……元男の身で言うのもなんだが身の危険を感じるぞ!?

というか僕が今着ている服がワンピースなんだが肩口や足が露出しているせいでそれがさらに拍車をかけている。メイド達に言って別の衣装を用意させておけば…………この服がメイド達が用意した服だったんだ。どうやら逃げ場は無いらしい。





今僕とイグナートがいるのは騎龍の上だ。

あれからも兵やその他の職業の者達の召喚を続け、最後に僕が最も召喚してみたかった龍の召喚を行った。とりあえず操る奴がいないと駄目だろう、ということでイグナートの愛龍を召喚してみた。僕達が乗っている龍もその一体でブルー・ゲイルという種であり特に速さに長けているという設定を持つ騎龍だ。ちなみに名前はその深い青の体色から名付けて”アビス”という。


この騎龍の大きさは全長20メートルはあろうかという巨大な龍であり、全身を海の様に深い青色の鱗が覆い同じ色の巨大な一対の翼を持っている。限界まで横に広げたら体を大きく超えてしまうほど大きな翼だ。頭頂部に生える角は黄色がかった白に近い角でありそれが真っ直ぐピンと伸びている。


これだけいうとこの龍が物凄く大きく聞こえるかもしれないが、実は割と小柄な部類に入る。

強力な炎の威吹(ブレス)を吐くレッド・ブレイズやひたすら頑強であり巨大なパープル・ソーレムなど様々なタイプが存在するがそれらは30~50メートルほどの体躯を持つ。



龍の召喚に成功した時、初めて見た生の龍に僕のテンションが急上昇し、どうしても乗ってみたい!と言ったら「ならばこのイグナートが御者を努めましょう!」とイグナートが名乗りを上げたのでそのまま任せたのだが……。


「我が神よ。寒くはありませんか?この毛布をお使いください!」


「ああ、うん。ありがとう……」


近い近い!毛布はありがたく貰うから少し離れてくれ!

そのまま毛布を奪うように取り全身を覆う。体が小柄なおかげか全身を覆ってもまだ少し毛布には余裕がある。

だがやはりまだ寒いな……。普段何気なく生活している天空城もひんやりとはしているがここまでじゃない。

まぁ、高高度に存在しているんだが城なんだから当然といえば当然なんだが。

だがそれでも天空城は大空の暴風から城と浮島を守るための”風の大結界”というものが張り巡らされており、この結界のおかげで暴風に(さら)されずにこんな高所でも生活出来るのだ。……ほんとに天空城製作時に気合を入れて細かいところまで設定を詰めといて良かった。と今更ながらに思う。



「よし、それじゃそろそろ動くぞ。まずは各浮島の周囲をゆっくりと一週してくれ」


「は!」


イグナートは僕達が乗っている(くら)から伸びた龍の口元まである手綱を引き、さらに足を乗せた(あぶみ)で龍の背を軽く叩きその意思をアビスに伝える。

アビスの方もイグナートの意思を淀みなく受け取り、極力羽ばたきを抑え滑空するような姿勢を取り、その巨体に似合わぬ滑らかな動きでゆるやかに空を駆ける。

恐らくは僕が搭乗していることを考慮して、可能な限り揺れを抑え周囲を見渡しやすいように配慮したのだろう。

なんだかんだ言ってもさすが親衛隊隊長とその相棒といったところか。



大空を龍に乗って駆け抜ける…………たぶん僕は今、世界で一番贅沢な体験をしているんだろう……。

っと、いかんいかん。今回は天空城の存在する主島以外の浮島が一体どんな様子なのかを視察するのが目的なんだから。なんども城の窓から浮島が存在していたのを確認していたが一回も行ってないからな。


「我が神よ、最初の浮島です。あれは居住街区ですね」


最初に見えたのは天空城と隣り合う位置で存在する浮島である王国の民が済む街だ。パッと見でどれだけの大きさがあるのかはわからないが巨大な街だということだけはわかる。

家の様式は統一されており、外壁は白く屋根はオレンジや薄茶の様なレンガの屋根が見える。スペインの様な街並みだ。街の合間には広場にように開けた場所があり噴水などが水を流しているのが見える。


「なかなかキレイな街だな……だがそれだけで……少し寂しいな…………」


この街に人は一人も住んでいない。……まぁ仕方ないといえば仕方ない。そこまで召喚して管理する余裕もなければキャラデータも実は持っていないのだ。

僕とヒロが考え再現しようとしたのはあくまでも天空城が基本であり、それ以外の部分にはそこまで力を注いでいない。この街並みも”らくがき倉庫”からの家モデルを適当にコピペして配置した簡単なものだ。


「我が神……」


イグナートが心配そうに見つめてくる。

そんなに見つめて来るな。なんだか怖いから。


「……居住区はわかった。さぁ次だ!」


「は!」


僕の呼びかけでイグナートがアビスを操作し次の浮島に向かう。


次に見えたのは巨大なごつごつとした岩山とそれをドーナツの様にぐるりと取り囲む草原で形成された浮島だ。山の大きさは居住区のある浮島よりもさらに大きく、草原の広さも相応のものになっている。


「この浮島が採掘場ですね。まだ手を付けてはおりませんがいずれは開発なさるので?」


「……ああ」


やっぱりおかしいな……。いやまだ決めつけるには早い。もう少し見まわってからだな。


この浮島は先ほどイグナートが言ったように希少な鉱石が採掘される場所だ。

天空の王国の武器を作成するため、軍事力を維持するための場所が必要だろうという事で作ったものだ。まぁ原作になぞらえて、という理由もあるが。


だが今は細かいところはどうでもいい。他の浮島は一体どうなっているのだろうか……?




「視察の結果はどうでしたか?我が神よ」


最後の浮島からの帰り道、イグナートが問いかけてきた。


「ああ、うん。とっても有意義だったよ……」


今回の視察を終えてわかったこと。

それは変化……いや適応しているとでも言えばいいのだろうか?


そもそも前の居住街区や採掘場を見た時点でかなりの違和感を感じていたがこれではっきりした。

それは、今ここに存在している各浮島は現実に存在しても違和感のないレベルで巨大化している、または設定だけで実際に作っていないはずの浮島が存在しているということだ。


例えば居住街区の街並みだが、僕とヒロはあの街をあそこまで大きく作ってはいない。実際にFremeWorks(フレームワークス)で作っていた時の大きさは500メートルも無い程度の大きさだ。

当然と言えば当然だろう。製作していたのは僕とヒロの二人だけなのだ。いくらデータはらくがき倉庫から引っ張ってこれるといってもたかが街一つ作るのにそこまで凝ったことはしていない。それ以外の部分、天空城とそこに住む者達のキャラクターの作成に主な労力を割いていたからだ。


他の施設も同様だ。

先の採掘場を初めとして、農産物を栽培するための農園区や牧畜や騎龍の飼育、軍の訓練などにも使用される大平原、生命の樹(セフォロト・ツリー)の加護を受けて伸び伸びとした美しい自然の栄える”生命の森”など、原作に存在していたそれぞれの浮島が既に召喚されており、かつそれらの浮島が”正しい大きさや形”で再現されている。


「(まさか異世界に飛ばされた結果、僕とヒロが夢見た天空の王国の”真の完成形”を拝めることになるとはね……)」


いや、ひょっとするとここは文字通り、異世界……なのかもしれないな。

ただ僕らの作ったFrameWorks(フレームワークス)がここに現れたのか、元々似たような城や街があって僕らがここにやって来たのか確認する方法が無いだけで……。


「我が神……?」


「なんでもないよ……さぁ、戻ろう」


「は!」



天空城から少しだけ外れた位置にある兵舎のグラウンドにアビスは降り立った。

ここは主に兵の基礎的なトレーニングや訓練を行うための場所だ。

そしてそこには何時から待機していたのか、ジェシカが上着を持って待機していた。


「おかえりなさいませ。イニス様、イグナート様。イニス様、中のテラスに温かいお飲物を用意しておりますのでしばし御寛ぎ下さい」


お辞儀をし終わると同時にジェシカが毛布を回収し、僕にさらさらとした上品な上着を自然な動作で羽織らせてくれる。

そしてそれをごく当たり前の様に受け入れる。なんだか色々と慣れてきてしまっているな。


「ああ、ありがとう」


「それではイニス様。各浮島の視察、真にお疲れ様でありました。私は警護任務に戻らさせていただきます」


「いや、イグナート。せっかくだからお前も飲んでいけ」


「え、いやしかし我が神よ。私の様な者が創造主たるイニス様と同席するなど畏れ多く……」


「じゃあ、創造主命令だ。拒否権はない!」


こういう言い方でもしないとイグナートを含め、堅物な奴らは休むなんてことをしないからな。

無理やりにでも休息を取らせるくらいがちょうどいいようだ。


「……畏まりました、我が神よ。ご命令とあらば、お供させていただきます!」


イグナートがにっこりとほほ笑み、忠誠のポーズを取る。

ホントに普段からそうやってキリ!っとしてたら何の文句も無いんだがな~。

こいつはどうも忠誠心が行き過ぎてストーカー気質なところがあるように感じるからな。


「ではこちらへ」


ジェシカの案内でイグナートとテラスへと向かった。




マルクが用意してくれたお茶と茶菓子はとても美味しかった。クッキーも市販の物などと比べようがないほどの絶品だった。だが唯一気に入らないのが……出てきた飲み物がココアという点だ。

いや、別にココア自体に文句があるわけじゃないよ?ホントにとても美味しかったし、冷えた体も芯から温まったし。

けどやっぱ子供の味覚に合わせてんだな~という感が否めないよな……。いや実際子供ですけど。



「それでは我が神よ。至福の一時でありました。また何時かこのような褒美を頂ける様に努めさせて頂きます!」


「ああ、お疲れ」


そう言ってイグナートは深く礼の姿勢を取ると、颯爽と城内に消えて行った。


「ホントに仰々しい奴だな~」


「まぁ、イグナート様ですからね」


給仕をしていたジェシカがクスリと小さく笑い答える。


「そうだな、イグナートだからな」


ジェシカの言葉に大いに納得する。


「さて、僕も私室に戻るよ」


「畏まりました。お供はどうなさいますか?」


「ああ~。いや、別にいいよ。また用事があったら呼ぶからさ」


「畏まりました。ではその様に」


礼儀正しいといえばそうなんだが、やはりついこの間まで普通の大学生をやっていた僕にこの辺の対応はキツイ。

何かある度にメイド達が積極的に世話をしてくるからだ。

今回のお供なんかはまだいい方で、やれ「衣装を整えさせて頂きます!」とか「髪の毛のセットをさせて頂きます!」とか毎日言ってくる。

特に今までで一番きつかったのは「湯あみのお世話をさせて頂きます!」だったな。

思えばあれを経験したおかげでこんな風に尽くされることに慣れることが出来たのかもしれんな…………。抵抗は無意味だと悟ったよ、ヒロシ……。




現在は僕の私室だ。広々とした部屋には天蓋付きのキングサイズのベッドと丸テーブルが置かれている。

ここは天空城内の各部屋の中でもかなり高い位置にある部屋で、窓から見える景色は絶景の一言だ。

大部分は雲に隠れてしまっているが、隙間から覗く各浮島の様子や下界の海の様子などが見て取れる。


「~~。良い風だ……」


窓から流れてくる風が僕の頬を優しく撫でる。

さて、気分を入れ替えたら続きを考えるか。


僕は丸テーブルに置いてある紙束に色々と書き込みをしながら考える。


「ん~、とりあえず目下の目的としてはヒロの奴の捜索としてその準備に……」


イニスが書き込んでいる文字は日本語によるものだ。おそらくイニスとヴォルフ、すなわちタクミとヒロシ以外の者が見ても内容を認識することは出来ないだろう。


「下界の調査任務を任せたいが……やっぱり少人数が一番かな?大人数で行動すると結構目立つしな……」


これからの目的、それはヒロシの捜索で決定している。

だが行き当たりばったりに行ってもほぼ間違いなく出会えることは無いだろう。幸いヒロシは現在ヴォルフのアバターで行動しているのだろうというおおよその当たりはついているが、さすがに白銀の鎧を着込んだ男を知らないか?と世界中の人間に聞けるわけでもない。

それに下界に何があるのか?誰が居るのかといった具体的な情報は何も知らないのだ。何も知らない場所でどこに居るかも分からない人物を探せなんて無茶で無謀というものだろう。

というわけでここは身動きのとりやすい少人数の精鋭に現地の情報を取得してもらうという方針で行こう。とイニスは決定した。


イニスが召喚できる”龍”は皆一様に威吹(ブレス)と飛行が行えます。ただ龍ごとに得意技が異なるだけなのでアビスが威吹(ブレス)を吐けないというわけではありません。

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