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FrameWorks  作者: シロイヌ
14/24

-Side Episode-05 宿

俺は今エレノアの案内の元、高級な宿があるという通りに来ている。

なぜ具体的に場所を案内しないのかというと、エレノア自身利用したこともないし、ここに来るような用事も無かったので細かい案内も出来ないという事らしい。


「この辺の通りは主に、かなり高位の冒険者や地方の貴族様などが泊まりにくるような場所です。とはいっても、私はとてもここに泊まれるような身分もお金もないのであまり詳しくは知りませんけど……」


「いや、十分だろ。どんな人間だろうが金払いさえ良ければ最低限のサービスはしてもらえるもんだ」


まぁ、場合によっては貴族御用達で一見さんお断り、なんて店もあるかもしれんが。


その後も俺たちは歩き続け、一件の宿を見つけた。

見た感じは巨大な、海外にありそうな(おごそ)かな雰囲気の建物であり、パッと見でも五~六階はありそうな建物だ。


「ふむ……ここにしようか」


「うわ~ヴォルフさん勇気ありますね~。私なんてこの建物を視界に収めるだけで精一杯ですよ」


なんだか言動が急に貧乏臭くなってるぞ。エレノアよ。

ふむ、しかしそうだな……


「なぁエレノアよ……お前もこんな宿に泊まって見たくないか?」


「ええ!!??け、けどそれはなんだかさすがに申し訳ないというか……だって、ヴォルフさんこの後も食事を御馳走してくれるんでしょう?」


「細かいことは気にすんな。それに今日だけだし。まぁなんだ、道端に落ちていた金貨の入った小袋を拾って一晩だけいい思い出来たとでも考えとけ」


「うう~ん……でもそれはいくらなんでも…………あ!それじゃあヴォルフさんと一緒の部屋にして下さい!それならいいです!」


いきなり何を言い出すんだこの小娘は。

むしろ同室だと俺の方が気遣うわ!


「いやいや、金ならいくらでもあるんだから遠慮すんなって!!」


「イヤです!私はヴォルフさんと一緒がいいんです!!」



……え?今なんて?


どうやら自分の発言内容に気付いたらしい。発言したエレノア本人もしまった!?という感じで顔を赤くしている。


「……え~と、俺と一緒でいいの?というか一緒が(・・・)いいの?」


なんだか、気持ち悪いような、恥ずかしいような、もどかしい空気が流れている。


「…………はい」


赤くなった顔で俯きながらも小さくはい、と答える。

不覚にもカワイイと思ってしまったのはここだけの話だ。


「はぁ、……んじゃ一緒の部屋にするか?」


「はい!」


最後の言葉はまるで”言質(げんち)はとったぞ!”とでも言わんとするかのような元気な顔だった。

相変わらず赤かったけどな。





宿に入るために中々立派な玄関をくぐると、そこは現代のホテルなどと変わらないような光景だった。

正面にはチェックインを行うためのフロントがあり、左右の広々としたスペースには休憩や談笑を行うための物だろう、フカフカな個人用の椅子が円卓を囲うように配置されており、それらが8セットほど置かれている。

構造としては昼間に尋ねたギルド会館をもっと豪華にした感じだろうか?


俺はエレノアを引き連れさっそくフロントに向かう。

エレノアの方は完全に雰囲気に呑まれて委縮してしまっているが。


俺はそのまま進み、フロントにいた一人の女性に声をかける。


「すいません。少しいいか?」


「はい、どうぞ。私はフロントの担当のミラルダと申します」


ミラルダという女性は緑がかった黒髪を短くまとめており、知的な雰囲気を感じさせる女性だ。

服装も制服をビシッと着こなしている。


「部屋は空いているか?今日こちらの宿に宿泊したいんだが?」


ギルド会館の時にも使った妙に雰囲気のある声でミラルダというフロントの女性に語りかける。


「は、はい!空いています!えっとお一人様用のシングルルームを初めとして、ツイン、ダブルの三種と最高級のスイートがございますが……」


俺の鎧姿や声色に驚いたのか、少し詰まりながらもしっかりと答えてくれる。

どうやら普通に泊まれる店のようだな、ここは。


「それじゃあスイートで頼む」


迷いなく答えるスイートの答える。

いやあ、なんだか気分がいいなあ。


「え!?え~っと、スイートルームは一泊二日の二名様で30万ルクほどするんですが……ご予算の方は……」


30万ルクか……日本のホテルと比べたらふざけんな!って言いたくなるぐらいの値段だが、まぁ今の俺からしたらまったく問題ないレベルの値段だな。


「さ、……30十…………万ルク……!!??」


やはりというべきか、エレノアの奴は仰天してやがる。

俺が奢ってやるんだから値段なんて気にしなくていいのにな。


「問題ない。これで払えるか?」


俺はギルドカードを取り出しミラルダに見せる。


「あ、冒険者の方なんですね。ではこちらで一旦預からせていただきます」


なにやら納得したようでカードを受け取る。

冒険者ならスイートに泊まってきてもおかしくないとかいう常識でもあんのか?


カードを受け取ったミラルダはギルド会館でも見たプレートを取り出しカードをセットする。

カードが嵌め込まれた状態のプレートをこちらに差し出し手を当てるように要求してくる。

すると前にも見た淡い水色の光が出てくるが、今度は前回と違いカード側から出てきた光が俺の手に向かって伸びてくる。最終的に俺の手には先ほどと同じ色の光で構成された回路のような模様が浮かびあがるが、すぐに消えてしまった。


「はい、カードの確認が完了されました。え~っとヴォルフガング様ですね……え?Eランク?」


ミラルダが持つ俺のカードには何やら文字が浮かんでいるのが見て取れる。

なるほど、身分証明になるってこういうことだったのか。確かに盗まれでもしたら面倒だな。


と、そこでミラルダはなにやら疑心に満ちた表情でこちらを見てくる。


「え~と、ヴォルフガング様……でよろしいんですよね?」


「ああ」


「Eランク……でよろしいんですよね?」


「ああ」


「……」


ミラルダの頭の上に?マークが浮かんでいるのが見て取れるようだ。

いや確かに怪しいのはわかるよ。でも俺今日この街に来たばっかだから!


「大丈夫ですよ!ヴォルフさんはホントにEランクですよ!なんならギルド会館の方で確認を取って貰ってもいいですよ!」


エレノアが助け船を出してくれた。こいつを連れてきといて良かった!だがそんなにEランクということを声高に強調しなくていいから。


「はぁ、まぁ、それなら大丈夫ですね。では一泊でよろしいですか?」


「いや、三泊ほどにしといてくれ」


とりあえずはここを拠点とするが、またいい宿が見つかったらそこに移ろう。とはいっても直ぐに動き回るわけでもないし、とりあえず三泊ほどでいいだろう。


「畏まりました。では三泊で合計90万ルクになります。……あ、ほんとに支払できた」


お前まだ疑ってたのかよ!こいつも尻を叩いてやろうか?などと(よこしま)な考えをしていると、ミラルダがカードを返してきた。


「ありがとうございました。カードをお返しします」


「ん、」


「それではお部屋の案内とお付の子を紹介させていただきます。ルーシィ!」


ミラルダが、近くの花瓶に活けられていた花を直している女性を呼び寄せる。

ルーシィと呼ばれたメイド服の女性は小走りで、だが決して髪やスカートが大きく揺れないような非常に落ち着いた速度でこちらまでやって来た。


燃える様な赤い髪に赤い瞳のこの女性、髪はお下げにして作業の邪魔にならないように括られている。

だがそのあまりにも暴力的な色合いの髪に反して顔立ちはおっとりと優しい顔立ちで、そのふくよかな胸にどうにも惹かれてしまう。

長く赤い髪と短い青の髪、体型など、エレノアとは色々と正反対な子だ。


「初めましてルーシィと申します。よろしくお願いします、ご主人様!」


明るい笑顔とその体型、主に胸に見とれていると、エレノアの奴がこちらを睨んでいた。

……俺まだヘルムを被ったまんまなんですけど……なんで見惚れてるって分かったの?

女ってスゲェ……というかこえぇ。


「あ、ああ……よろしく。ルーシィちゃん」


「ちゃん!!??」


ん?何やらエレノアの奴が驚いているが……?


「ちょっとヴォルフさん!ちゃん付けで呼ぶってどういうことですか!!私は一度もそんな風に呼ばれたこと無いのに〜!!!」


なんでそんなことで怒ってるんだこいつは?

別に呼び方とかどうでもいいだろ……。


「今更そんなことどうだっていいだろ……すまんルーシィちゃん。騒がしくて。それじゃあ部屋の案内してくれるか?」


「ちょっとヴォルフさん!私はまだ納得してっ……もがが!!!」


まだ文句を言っているエレノアを無理やり担いでルーシィに案内を促す。

もういい加減に休ませてくれ。


「はい、それでは行きましょうか」





「こちらでございます」


階段をいくつか上り、ここは六階にあたる場所だ。あたりは扉も少なく部屋割りの大きさを物語っており、床に敷いてあるカーペットや壁に掛けてある何かの絵やちょっとした美しいランプなど、全てが高級感を漂わせている。


と、考えているのはエレノアだけだろう。

俺からしたらまぁまぁ、と思う程度だ。やはり先進国である日本で生活している身としてはこの程度じゃまったく驚かなくなっているらしい。

ま、あの天空城を製作の為に何度も見てるからっていうのもあるんだけどな。とってもあんな豪華な装飾や調度品に加えて、壮大で荘厳な雰囲気を纏った美しく巨大な城はFrameWorks(フレームワークス)なんてゲームの世界じゃなければ作れないだろうけど。


ルーシィが部屋の扉を空け入室を促す。

案内のままに部屋に入るとやはり想像の範囲内、といった部屋だった。

部屋の大きさ自体はかなり広くとってはあるが、備え付けられている家具や調度品を見ても、凄いとは思うが衝撃や感動を味わうといった程度ではない。


エレノアの奴は呆けながらもキラキラと目を輝かせているが。


「ふぁ~……すごい部屋……まるで貴族様や王様になったみたい……」


「ああ、そうだな」


俺は今回はからかうようなことはせず、無難な返事を返す。

感動に水を差す必要もないだろう。わざわざこんな高い部屋を取ったのは、粗悪な藁葺(わらぶ)きのベッドで寝たくないからというのもあるが、半分は色々と無茶な案内をしてくれたエレノアへの礼みたいな側面も含んでいるからな。


「えっと、鑑賞中のところ申し訳ありません。お部屋の案内の続きをさせて頂いてもいいでしょうか?」


「あ、は!はい!失礼しました!」


呆けていたエレノアがようやく意識を取り戻す。


「それでは部屋の案内を続けさせていただきます。まずこちらはリビングでございます。その窓からラグナ王国を一望できる景色は他の貴族様からも絶賛されているほどなんです!」


確かに、中々綺麗な景色だ。

時刻はもう夕方ごろか、全体的に青みがかった空と夕日の茜色が混じり合いなんとも言えない色を出している。

だが一望といってもそこまで凄い景色には見えんが……。まぁ、他に高い建物も無いし、見渡せると言えば見渡せるが……。



「次に案内するのは当宿自慢のトイレとお風呂です!魔法石を利用した最新の物でございます!」


ルーシィちゃんが自身満々に案内してくれたのは水洗のトイレとシャワーだ。

なんでもごく一部の大貴族の屋敷や王城を初めとした特別な施設にしか付いていないものらしい。

トイレはつまみを押すと水が流れ排泄物を洗い流し、シャワーはノブを捻るとなんと!お湯が出て来るらしい。


「こちらのトイレとお風呂はいつでも使い放題になっておりますので気軽にご利用下さい」


…………うん、便利なモノって失って初めて気が付くんだね。

汲み取り式のトイレとか、風呂は水をぶっかけるだけで終わりとか、とても現代日本人の俺には耐えられないわ。金があってホントに良かった……。


「後は寝室などの部屋になります。次に食事などは申していただければいつでもお運びいたします。また何か用事や問題があればこの水晶石をご利用ください。一階のフロントに繋がっておりますので常時受け答えが可能です」


そういってルーシィは寝室の棚に置いてある青紫色の水晶を指す。


「うん、ありがとう。お疲れ様」


「いえ、とんでもございません。それではごゆるりとお過ごしくださいませ」


そういってルーシィちゃんは部屋を後にした。




「ねぇヴォルフさん……私が今まで見てきた”高級”ってなんなんでしょうか……」


何か静かだと思ったらエレノアの奴、このホテルで見せつけられた経済格差に打ちひしがれてやがる。

というかこいつの”高級”って精々「今日はお肉を食べよう!」とか言って安い鶏肉とかを食べて満足してるイメージだ。


「さぁな、まぁ今だけはこの”高級”を全力で楽しみ尽くせばいいじゃねぇのか?安心しろよ。金はちゃんと払ってやっから」


「ヴォ、ヴォルフさ~ん!!!私一生ついていきます!!」


エレノアの奴が涙を流しながら抱き着いて来ようとするが、片手で頭を押さえつけ全力でそれを阻止する。


「ちょっと!抱き着くぐらいいいじゃないですか!!」


「うるせぇ!下心が透けて見えるんだよ!」


その後しばらくぎゃーすか騒ぎ合った後、鎧とクレイモアを寝室に置きフロントへ向かった。

ああ、肩が……というか全身が軽いぜ。まぁ今までそんなに鎧の重さに苦労していたというわけじゃ無かったが。





鎧を脱いで軽装になった俺はさっそくエレノアを引き連れフロントに向かう。

フロントでは先ほどのミラルダが変わらずに業務をこなしていた。


「よ、少し出かけて来るよ」


「…………?」


なにやら不思議そうな顔をしている。一体誰だ?といった感じだ。


「はぁ…………俺はヴォルフだ。コイツを引き連れているのを見て気づけ」


「え、ええ!!??ヴォルフさんですか!!??い、いやでも確かに声は先ほど聞いたものと同じだし……ええ!!??」


「ふふふ……相変わらずモテモテですね~」


なんでそんな驚くんだよ。さすがに傷つくわ!

しかもブリスの店の時と同じようにエレノアの奴はドヤ顔してやがるし。相変わらずこの顔はむかつくな。というかさりげなく腕に巻きつこうとするんじゃねぇ!


「なんならギルドカードの確認でもするか?」


「い、いえ、さすがにそこまでは……へぇ~、ヴォルフさんって鎧の下はそんな顔だったんですねぇ~……」


ミラルダが頬を赤らめながら見てやがる。

そんな簡単に一目惚れしちまうほどなのか。なんだか今の俺の顔面はまるで兵器のようだな。


「それよりも夕食を食べに少し出てくるから。それじゃあな」


「あ、はい……」


ミラルダは気の抜けた声で返事をし、軽く手を振り見送りをする。


外に出てみれば、時刻は完全に夕方だ。

後30分もしない内に日は完全に落ちるだろう。

ちょうどいい時間だ。それじゃさっそく飯屋に行くとするか!

二話連続投稿です。


六時にもう一話投稿します。

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