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FrameWorks  作者: シロイヌ
12/24

番外編 天空城の面々

マルク編


私達は今城の厨房で今日の昼食用の作業をしている。

私のほかにも五人ほどの料理人が同じようにネギやジャガイモ、玉ねぎ等の各種食材のの下ごしらえをしている。

その手は淀みなく動き、素人から見れば凄まじい速さだと思うかもしれないが、こんなものは一流の料理人から見れば基礎中の基礎だ。


「マルク料理長。ネギの下ごしらえ終わりました」


若い料理人が自分の受け持ちが終わったと告げてくる。


「ふむ。まぁ、悪くはないな。よし次は玉ねぎだ」


私は下ごしらえの終わった食材を確認する。

若い料理人がわかりましたと告げ速足で駆けていった。

それを確認すると私は今日の献立を考える続きに入るのだった。



私の名はマルクというものだ。

この名誉ある天空城の厨房で料理長を務めさせていただいている。


最初私が偉大なる創造主の一人であるイニス様に召喚されたとき、その周りには誰もいなかった。

私がそのことで多少驚きつつもイニス様が食事をお求めになられたので私はいつも以上に張り切り、要望の炒飯を作り上げたものだ。

その後満腹になられたのかその場で寝てしまい、私はイニス様を適当な寝室まで運んで差し上げた。

その後少し暇が出来たという事で、慣れ親しんだ(・・・・・・)天空城(・・・)を歩き回り、何か変わったことがないか確認すると、見事に何もなかった。


私はそのことに若干の寂しさを覚えつつも、イニス様が私を最初に私を召喚してくれたのだ!ということに気付くとしばらくの間は喜びと、それにつられて出てしまったにやけた顔をしばらく抑えるほどが出来なかったほどだ。


その喜びを胸に抱きつつ、それほど私に期待していただいたのならばなんとしてもその気持ちに答えればなるまい!ということで、なんだか元気が無さそうに見えたイニス様に活力を取り戻していただく為に焼きたてのパンと栄養のたっぷりのスープを作り、ちょうど起きたイニス様に差し上げたら絶賛していただいた!私はもう死んでもいいかもしれない!


いやいや、私が死んだら誰が今後のイニス様の食事を作るのだ。

イニス様が新しく召喚して下さった私の部下たちの腕前も中々の者だが、それでもイニス様に差し上げる食事は私が全霊を懸けて作り上げねば気がすまん!


今考えている献立もイニス様の小さな体で無理なく美味しく食べて頂く為に、あれこれと考えているところだ。

と、そこでまた別の料理人が声を掛けてきた。


「マルク料理長。鶏の出汁取りと野菜の出汁取りの準備終わりました」


「ああ、それじゃ次は肉の下ごしらえを頼む」


とりあえず今日の料理は誰にでも食べやすいパスタにスープ、サラダにしよう。果たしてイニス様は喜んで下さるだろうか?、いや必ず喜ばせるのだ!と決心したところで私は自分専用のスペースで作業を開始することにした。





ゲオルク編


今執務室で山の様に積まれた書類と格闘しながらもそれを高速で処理し続けているこの人の名はゲオルクという方だ。

あ、申し遅れました。私はみんな大好きドロシーでっ~す!この天空城で働いているピチピチのメイドの一人なんですよ~!

……あれ、なんだか視線が冷たい?

まぁ、そんなことはどうでもいいから一旦横に置いといて。私がなぜこの部屋に来ているのかというと、一時休憩の為に紅茶とお菓子をゲオルク様にお渡しに来たからだ。

とはいっても……。


「ゲオルク様~、お~い、すいませ~ん、聞こえてますか~?」


……だめだ。全然返事が無いぞ。

ならば仕方がない。


「ゲオルク様、イニス様の御配慮により紅茶をお持ちしました」


高速で動いていた手が瞬時にピタッ!と止まり、まるで睨むようにこちらを見る。


「……イニス様が……なんと?」


どうやら”イニス様”という部分だけ聞こえていたらしい。なんという凄まじい忠誠心……なのか?

まぁ、そんなことはどうでもいいや。


「え~とですね、先ほど廊下でイニス様に出くわしたときに「ゲオルクはどうしてる?」と聞かれまして、執務室で缶詰状態です。とお答えしたら、「なら休憩がてらお茶でも出して労っておいて欲しい」と言われまして、こうして参上した次第です」


言い終わると同時に持ってきたお茶を机の僅かなスペースに置く。

そしてゲオルク様も一旦ペンを置き、先ほどの忙しさを感じさせぬゆったりとした動作で紅茶を一口すする。


「ふぅ、まさか我が主に対してその様な御心遣いをさせてしまうとは……後で返礼をしなくてはな。イニス様の御心を乱さぬためにも、私ももっと精進せねばならんな」


いやもう十分すぎるほど活躍しているような気がするんですが……まぁ、あまり触れないでおこう。

というかこの人紅茶飲んでるだけでも絵になるな~。威厳みたいなものがにじみ出てるよ~。


「えっと、それじゃあ私はこの辺で~……」


そそくさと執務室を出て行こうとしたところでゲオルク様に止められた。


「まて」


どきりと心臓が跳ねる。

なんだ!?私何かやっちゃった!?


「は、はい~、なんでしょうか~?」


作り笑顔もいいところだがなんとか精一杯の笑顔で答える。


「いや、持ってきてくれたお前に礼を言っていなくてな……ありがとう」


……あ、あはは。なんだかドキリと来ちゃいましたよ~///

て、いかんいかん!惑わされるな私!


「いえいえ、こんな御用ならばいくらでも!ですよ~」


「ふ、そうか。では私は仕事を再開するよ。お前も頑張ってくれ」


「はい!失礼しますね!」


そういって私は執務室を後にした。


……ゲオルク様って普段はとても厳しい感じだけど、実は私の様な者にまで気を掛けてくれるとっても優しい方なのよね。

私だけじゃなくジェシカやメイに対しても出来ないことや無茶なことは絶対に言わないし、私たちがどういう能力をもっていて、何が出来るか出来ないかをしっかり把握して仕事の割り振りをなさる。

驚くほど細やかな気配りなんかもなさるから、ゲオルク様が私たちに命令するというより、むしろ私たちがゲオルク様を頼っている状態だ。

ならば私たちがゲオルク様にいらぬ気遣いをさせぬようがんばろう。

それがゲオルク様、ひいては我らが主であるイニス様の喜びに繋がるのだから。





ジーン編


どうもッス。ジーンッス。

自分は今城の外庭にいるッス。まぁ庭といってこの城とんでもなくでかいからめっちゃ広いッス!

時々自分が勤める王城城下に配置されてる駐屯兵団は時々この城の庭の草むしりに引っ張り出されたりするっす。

庭師の人たちなんかは特に人目に付きやすい、城から四方の門に向かって伸びるように引かれた中央通路の周りの花壇や草花の手入れを担当してるッス。


はぁ、にしても暑いッス。今俺は正にその庭の草むしりをしてるッス。

この城って天空に浮いてるから普段は涼しいどころか少し寒いくらいなんだけど今は黙々と体を動かしてたから少し暑いっすね……。


と、そこで庭師のじいさんが声を掛けて来る。


「やぁ、ジーン君。ご苦労様。それにしても悪いねぇ、兵士の皆にこんなこと手伝わせちゃってさ」



なぜ自分を含む兵士達が今の段階で庭の草むしりをしているのか?これがどういうことかというと、イニス様の言葉を受け取ったゲオルク様から命令されたからっす。


「イニス様が城の庭の殺風景な現状を嘆いておられる。「城以外にももうちょっと丁寧に庭のステージを作っておけば良かった……文字通り”草”しか無い……」などと仰られていた……。言っている意味はあまり理解出来なかったが、要は庭が美しくないと仰られていることは明白だ!」


「そこで二人の庭師と兵士諸君で協力して庭の整地を行ってもらう。庭師は主要な通路の飾りつけだ。兵士諸君には伸びすぎている雑草の類を間引き、滑らかな草原を作ってもらう」


とまぁこんな経緯があって庭の草むしりをやっているッス。

朝からずっとやり続けたおかげで大分綺麗にはなっているッス。ちなみに自分以外にもイニス様が追加で20人ほど兵士を召喚されたので一応人手はあるッス。とはいってもこの兵士は自我や意思はあるけど中身がないゴーレムみたいな奴ッスけどね。



「いや、大丈夫ッス。みんなもイニス様の為に何かしたくてしょうがないって感じッスからね!」


これは本当のことだ。イグナート様が召喚された直後は色々あったけど、やっぱり自分が護衛をやるよりイグナート様の様な優秀な者が担当した方が絶対いいッス!と言った。……言ったはいいものの、やっぱり栄誉ある我らが主の護衛なんて二度と出来ないだろうな~、と思わずため息をついてしまう。


「まぁ、そんな気を落としなさんな。どんな小さなことでもイニス様はしっかりと見ていて下さる。ならば我らはイニス様を信じ、与えられたその(めい)を果たすだけ!……だろう?」


まさしくその通りだ。こんな草むしりという雑用でもイニス様は必ず労に報いて下さるお方だ!そう考えればなんだか気力が湧いてきた。


「うし!なんだか元気が湧いてきたッス。それじゃもういっちょ頑張るッス!」


そうだ、うじうじしてても仕方ない。ならば男は黙って結果で語るッス!

見てて下さいイニス様!このジーンはどんなことでも立派にやり遂げて見せるッスよ!!!


そんなジーンの後姿を腕組みしながら納得したように頷いている庭師のじいさんが居るのだった。


「若いねぇ……」





イグナート編


私は今城の工房にいる。

辺りは強烈な熱気が包み込み、鎧を身に着けている私はその場にいるだけで汗が出てきてしまうほどだ。

巨大な歯車が絶え間なく動き続け、重厚なハンマーで鉄を叩いている者、グラインダーで研磨加工を行っている者などがいる。


私はその鍛冶師の中で一際大きな、”親方”と呼ばれるドワーフと話し合っている。

盛りだした筋肉がいかにも彼の力強さを物語っており、その眼光は職人特有の妥協無き鋭さを持っている。


「隊長さんよ、言われた通り各種インゴットの成分の調査と加工方法の確認やっといたぜ。どれも問題なく使えるよ。魔物の素材なんかも同様だ」


彼に頼んでいたのはイニス様に頼まれた、各種素材の調査だ。

城の倉庫の中に文字通り山ほど放り込んであったインゴット等の金属素材や伝説級の魔物の素材などが保管されており、この素材が本当に使用可能かを調べていたのだ。


「わかった。ご苦労だったな」


「ああ、別にかまわんよ」


イニス様が言うには「これらの素材のデータはヒロが持っているから、追加の召喚が出来ない」と仰られていた。

意味はよく分からんが、新しくこれらの素材を手に入れるには各浮島の採掘や下界に降りての魔物討伐をせねばならんから、面倒やリスクばかりが増えてしまうということだろう。


今我らは動きだしたばかりで、分からないことだらけだから下界の調査が完了するまでは慎重に歩を進めていこう、という話だ。


「今は少数精鋭、もしくは必要最低限の者達しか召喚しておられないから大丈夫だとは思うが、それでもこれらの素材が無駄遣い出来る状況という訳でもない。可能な限り無駄を生まないように、少ない素材で最高の逸品を仕上げて貰わねばならんからな」


「わかっとるよ。だからこその事前調査だろう?」


つまりはそういうことだ。

後に繋がる失敗を極限まで減らすために、今だけは多少の損害には目を瞑るという訳だ。


「分かってくれているようで何よりだ。しばらく経てば下界調査の為の装備を作ってもらう為に忙しく働いてもらう予定だから、今しばらくはゆっくりやっていてくれ」


「あいよ、んじゃ儂は作業に戻らせてもらうよ」


そういって親方は持ち場に戻って行った。

それを見届けた後に私も工房を後にする。




天空城はある程度掃除が完了したのか壁面や廊下等が美しく磨き上げらていた。


「ふむ、やはりこの城は美しい……我が神が惚れ込んでいるのも頷ける」


私は暖かな光が射しこむ中庭沿いの廊下を歩いている。

しばらく歩いていた後、意外な人物を発見した。なんとイニス様だ。

なにやら男子トイレと女子トイレの前を往ったり来たりしているが……?


「如何なされました?我が神よ?」


私が声を掛けるとイニス様がビクッ!と跳ねた。


「わっ!?……はぁ、イグナートか……。いや別に何もないよ?うん」


目を逸らしながら微妙に顔を赤くしつつ答えるイニス様。

しかしどう見ても困っているようにしか見えんのだが……はっ!まさか!?


「もしや我が神!お一人でトイレが出来ないのですか!?ならばこのイグナート!全力でお供いたしましょう!!!」


「違うわ!!!」





イニス様の為を思って言ったのだが物凄く怒られてしまった……。一体何が悪かったのか……?


一人悶々と廊下を歩いていると何やらメイドの二人組が見える。

あれは……。


「君たち」


私は彼女たちに声を掛ける。振り向いた二人は黒髪に豊満な肉体の女性ジェシカと、柔らかな薄茶色と赤い眼鏡が特徴的な小柄な女性メイだ。

彼女達がこちらに振り向く。


「あ、イグナート様。どうもこんにちは」


「こんちは……」


ジェシカは柔らかな笑顔で答え、メイはいつものマイペースな調子で答える。


「どうされました?イグナート様?」


ジェシカが私に問いかける。

ふむ、同じ女性なら何かわかるかもしれんな。私はそう思い彼女らにトイレの前でのことを話した。



「う~んそうですねぇ……何かトイレに入りにくい事情でもあったんでしょうか?あ!お化けが出たとか!」


「何!化け物だと!この天空城に出て来るとは命知らずな奴め!その命、無き物と思え!!!」


私が思わず剣に手を掛け早速件のトイレに向かおうとしたら、ジェシカに止められてしまった。


「じょ、冗談です!冗談ですから落ち着いてください!」


なんだ冗談か。まったく人騒がせな。

私が怒気を納めるのに合わせてジェシカもその大きな胸を撫で下ろす。


「ふむ、化け物では無いとしたら……何が原因なのだ?」


「え~っと……なんでしょう……?」


と、そこで今まで黙っていたメイが口を開いた。


「…………ひょっとして、」


「「ひょっとして?」」



「……生理なのかも」


メイが指を立てながら、僅かに垣間見える程度のドヤ顔をしている。


「「…………」」


「さて、私は仕事に戻らせてもらうよ。ではな」


「はい頑張って下さいイグナート様」



「あれ~?」


辺りには微妙に生暖かい空気が流れている。

後には寂しい空気を纏ったメイだけが残されていたのだった。







真実


「このアバターが変更が出来ないということは、僕の体は今女の子のそれになっているということだ……」


つまり!


「女子トイレに……入らなければ、いけないのか!?」


まるでそこが地獄の門に見えるかの様にトイレが待ち構えている。

今の体で生きていくうえで避けては通れない試練がタクミ、いや、イニスを待ち構えているのだった。

少しだけ各キャラの掘り下げをしてみました。


イニス(タクミ)はまだその体に慣れてないようですね。

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