08 兵
はぁ……何人か召喚してみてわかったがどいつもこいつも中々アクが強いな……。
設定に従っていると言えばそうなのだが、その設定に加えて創造主至上主義的なところがあるから、なんだか物凄くこちらを上げてくる……。
従者やメイド、職人でこのレベルなのだから国……というか私という名の神に仕える兵士とかはもっと凄まじいんじゃなかろうか?と考えてしまう。
まぁ出してみなければわからない。ということでやってみるか!
といってもさすがに将軍や隊長クラスを出すのはなんだか怖かったので、低めの階級の兵士から出してみよう。
僕が今回チョイスしたのは騎士階級第七位上の兵士で名前はジーンというキャラクターだ。
ちなみにこの”七位上”という数字は騎士達の階級を示したもので、一位を除き二~七位までの階級に加えて更に”上”と”下”が存在する。つまり一位を含めて13個の階級が存在するいう訳だ。
当然僕は第一位だ。なんてったってこの国の守り神的なキャラクターだし、何より創造主だしな。
ジーンというキャラクターは下から二番目の、まぁ小さな隊の隊長……とまではいかなくてもそこそこの兵士という扱いにはなる。
よし、それじゃあいよいよ召喚してみるか!
いつもの召喚エフェクトが終わった後に現れたのは跳ねた金髪が少し幼さを強調させる青年だ。
装備は一般的なズボンにシャツの上にチェーンメイルを着て、更にその上に軍部の制服を着込んでいる。
他は、頑丈そうな手袋にブーツ、剣を保持するためのごついベルトを二つほど腰に巻いている。当然そのベルトにはブロードソードが刺さっている。
この青年が身に着けている装備はこの国の兵士が身に着けるものとしては最も一般的なものとして製作してある。
ほとんどコピペの要領でこの装備を身に纏った下級兵を製作したためだ。
といっても、こいつは特別に顔グラと名前がある兵士だ。
保存されてるキャラクターデータの中にはフルフェイスで顔を覆って内部のデータを作っていない”一般兵”なんて名前のキャラクターもあるぐらいだ。
まぁそのキャラクターの検証については後にしよう。とりあえずは目の前のコイツ、ジーンからだ。
「ん~、ん?うわ!は、初めましてイニス様!自分はジーンて言いまッス!七位上の兵士ッス!」
寝ぼけていたのか、まだ意識が完全に覚醒していない状態で答えるジーン。
「えっと、その。い、偉大なる創造主、イニス様に会えて光栄の至りッス!」
「お、おう。まぁそんなに畏まらなくていいから。リラックスしてくれ」
とは言ったものの今までの経験からして、この青年も当然主の目の前でリラックス出来ようはずもなく、案の定ガチガチに固まってしまっている。
「えっと、そんじゃジーン。色々質問があるがいいか?」
悩んでいても仕方ないのでさっさとはじめよう。
「はいッス!なんでも聞いてほしいッス!」
若いからなのか、あまり敬語の使い方はよろしくないようだ。
まぁ、そんなことは些細な問題だ。ちゃっちゃと進めようか。
「ジーン。お前が現在身に着けている装備に違和感や不備はないか?」
「?え~っと、そうッスね……」
僕の言葉を聞いて、身に着けている武器防具や衣服を触ったり引っ張ったりして確認を取るジーン。
「細かいところまではさすがにわかんないッスけど、自分が確認した限りではなんともないッス。なんか問題でもあったッスかね?」
「ふむ……」
キャラクターと一緒に召喚した武器や防具も問題なく機能するのか。
とはいっても油断は禁物だ。後で兵士が身に着けている装備を前回召喚した鍛冶師に見させるとするか。
「それじゃあ次だ。お前の所属を答えてくれ」
「はいッス!自分は駐屯兵団第一大隊第五分隊所属のジーン・ベイルッス!」
びしっ!と敬礼を決めるジーン。
ここだけは何回も練習したのだろうか?何となく顔つきしっかりしている。
え~っと、駐屯兵団か……確か原作の設定だと主に街や村などの防衛を担当する組織だったかな?そして有事の際には近隣に兵を派遣したりもするって感じだったかな?
だが今はそんなに兵士を召喚したりもしないし、所属やなんかはあまり考えなくてもいいか。
今回ジーンを召喚したのも実験的な色合いが強いしな。
「ありがとうジーン。お疲れ様。とりあえず次の召喚を行いたからお前は僕の後ろで控えて護衛をしてくれ。何かあったら僕を守って欲しい」
その言葉を聞いて嬉しそうに了解ッス!っと言葉を返し、僕の後ろで待機するジーン。
さて次だ。
次に召喚する奴らは親衛隊と呼ばれるキャラクター達だ。
名前からもわかるとおり彼らは王や王族に連なるものの護衛を任せらたエリート中のエリートという設定のキャラクター達だ。
今回召喚するキャラクターも階級は三位下であり、兵という立場で見ればほぼ最上位と言ってもいいほど高位の兵だ。
僕はメニューを操作しお目当ての兵士を召喚する。
光り輝く滴のエフェクトが終わった後に居たのは全体としてスマートな形状のフルプレートに肩と腰回りを覆う湾曲した滑らかな装甲。更には海の様に鮮やかな飾りの布が先ほどの装甲に着けられている。頭部を覆うヘルムには左右の頬当てに鋭角的な飾りと、頭頂部には長い飾り羽が差してある。
武装は左の腰部分にレイピアが差してあるのみだ。
「……おお我が神よ!私のようなものを召喚していただき、正に恐悦至極の極み!」
うわぁ、なんんだかドギツイ奴が出てきたぞ。
後ろで控えているジーンもなんだか口元をひくつかせている。
「え~と、その、じ、自己紹介……お願いできるかな……?」
「これは誠に失礼いたしました、我が神よ。我が名はイグナートと申します。親衛隊の隊長を務めております。以後お見知りおきを」
ヘルムを取り恭しく跪くイグナート。
その顔は百人の乙女が居れば百人が振り向くような美貌だ。
整った青い髪に切れ長の蒼い目。細い線で形成された、まさしく王子様の様なキャラクターだ。
見た目はな。
このキャラクターは僕の護衛にと思って召喚した訳だが……チェンジとか出来ないかな……。
「このイグナート、我が神の剣となり盾となりあらゆる厄災を退け、御身に勝利を齎しましょうぞ!」
「あ……うん……頑張ってね」
などと適当な返事を返すのが精一杯だった。
大仰な言動を好む奴だなと思っていたら、何やらイグナートがジーンに突っかかってきた。
「時に君、そう我が神の後ろに控える君だ……名を名乗りたまえ」
低い温度でジーンに声を掛ける。
「うぇ!お、俺ッスか!?え、えっと、その、自分はジーンと申しまッス。ちゅ、駐屯兵団所属ッス……」
後ろに行くにつれて言葉の勢いが無くなっていくジーン。完全にイグナートに圧されている感じだ。
「駐屯兵団ねぇ……君の様な奴では我が神の護衛なんぞ勤まらんよ。私に変わりたまえ。」
恐ろしいほど冷たい声でそう言い放つイグナート。いや、そう見えているのはジーンだけで僕には睨んでいるという風にしか見て取れない。
仲間内で喧嘩すんなよ。と呆れつつ声を掛け止めようとしたその時。
「い、いやッス!」
なんとジーンが抵抗の意思を見せた。
「何?」
その声を聞き更に冷気を強めるイグナート。
「た、例え、自分よりも遥かに各上のイグナート様の命令でも自分は直接イニス様に護衛を頼まれた身ッス!イニス様が直接そのように仰るならまだしも、イグナート様の命令でこの護衛の任を譲るわけにはいかないッス!!!」
ほう……、ただの下級兵なのかと思ったらな中々どうして、意地も忠誠心も人並み以上にあるようだ。
この兵だけかどうかは分からないが召喚したキャラクター達が皆こうなら安心して、彼らに命令することが出来るだろう。
と、そこでいよいよイグナートの体から殺気に合わせて冷気の様な者がこぼれ始める。
僕はその現象に仰天した。
「(なんだこれ!ひょっとしてこれが魔力って奴なのか!?)」
い、いや今はそれよりもこの二人を止めないと、と思ったら、急にイグナートが冷気を納めてしまった。
「……ふむ、どうやらただの雑魚、という訳でもないようだ。すまなかったねジーン君。謝罪しよう」
なんと驚いたことにあのイグナートが素直に頭を下げた。
これにはジーンも驚いたようで目を丸くしている。
「驚いた。って顔をしているね。だが仮にも我らが神の護衛を任されているんだろう?親衛隊隊長としては半端な者は許せなくてね」
「い、いや、そんなことないッス!むしろ自分の方がよっぽど半端モノで……」
ジーンが何やら狼狽えている。
ジーンの様子を見て氷の微笑ではない、純粋な笑みを浮かべながらイグナートが再び跪き落ち着いた声で言い始めた。
「イニス様、もしよろしければ私を彼と同じ、あなた様の護衛の任に着かせて下さいませんか?」
どうやらこのイグナート、ただひたすらに僕を信奉する狂戦士などではなく、召喚された時に既に僕の後ろに控えていたジーンが何者かを量りたかったようだ。
なんともまぁ、さすが親衛隊隊長といったところか。ほんとに頼もしい奴だよ。
「ああ、むしろ僕の方からお願いするよ。もともとそのつもりで召喚したんだしね。よろしくイグナート!」
この後も兵士の召喚を続けある程度の人数を揃えたところで今日が終わった。
騎士の階級=貴族の階級みたいなものです。
といってもさすがに七位上のジーンは平貴族ですけど。




