07 準備
マルクの言葉に色々と気付かされた僕は早速準備を始めることにした。
集中できる場所で作業しようと思い、現在は図書館にいる。
図書室じゃないのか?と思うかもしれないが図書館だ。なんせそれほどに規模が大きく城の別館として一つの建物があるくらいだからな。
図書館の構造は四階建てはありそうなホール状の建物だ。
外壁は白い漆喰が塗られたレンガ状の建物だが中は本を傷めないように木造で構成されている。そして本棚には無数の書物が収められているが、それでも入りきらないほどの本が山積みになっていたり何本もの丸められた巻物が樽の中に押し込められていたりと、まるでつい最近まで使われていたような雰囲気を感じさせる。
その中で僕は図書館の中にある机の一つに陣取り腕組みをしながら考え事をしていた。
「とりあえず作ったキャラの内で今後必要になりそうなのは……」
覚えのある奴だと、内向きな奴で
執事
メイド
料理人
庭師
鍛冶師
こんなもんか?次に外向きな奴は、
将軍や隊長及び兵士
城の警備兵
外界探索用の兵
後は参謀的な奴とか細かいところを上げると……
宰相
財務官
外交官
考えられる範囲だとこんなもんか?というか人を使う経験なんて今までなかったし、城や一組織の運営なんてしたことなかったしな……まぁ後から追加も出来るし今は出来ることからやっていくか。
とりあえず人に指示を出すことが出来る奴が必要だから執事から出してみようかな。
僕はメニューを操作してキャラクター一覧を表示させる。
その中にある内の一つを選択し”召喚”を行う。
マルクを召喚した時と同じように光の滴が集まりそれが人型を形成し、光がはじけた後には燕尾服を着た銀髪の老人が立っていた。
老人といっても175cm程度の背丈は真っ直ぐピンと伸びており見た目以上に大きく感じさせる。
顔つきは真っ直ぐ、凛としており顎回りと鼻の下の髭も丁寧に揃えられている。
今まで尽くしてくれたマルクには失礼だが……マルクよりも遥かにカッコよかった。
アバターを作成している時はなんとも思わなかったのに、実際に召喚してみると老練の達人とでもいうような雰囲気がひしひしと感じられる。
銀髪の老人が目を見開き声を同じ銀色の瞳がこちらを真っ直ぐと見据え、声を掛ける。
「初めましてイニス様。私はこの城の内向きの差配を管理させて頂いております、ゲオルクと申します。どうぞよろしくお願いいたします。」
言い終わると同時に頭を下げる。
ややしわがれながらも力強い声ではっきりと喋るゲオルク。
なんだかその雰囲気や佇まいのせいで気圧されそうだ。
「あ、ああ。よろしく」
挨拶のつもりで握手しようと思い手を出したらなんとゲオルクは一瞬迷った後、跪いて両手で握手を返した。
白い手袋越しでもわかる力強い手には驚かされる。
「はい、よろしくお願いいたします」
なんと言うか、呆気にとられるとでもいえばいいのか。これが本物って奴なのか?
今のちょっとしたやり取りだけでもゲオルクの執事として、僕としての高い意識が感じられる。
「え、え~っと。ゲオルクには主に城の管理とメイド達への仕事の手配なんかをしてもらう予定だから、よろしくお願い……じゃない。よろしく頼む!」
やはりここは支配者として毅然とした態度をしておくべきだろう。
じゃないとなんだか飲み込まれてしまいそうだ。
「畏まりました、イニス様。このゲオルク、全身全霊を持って職務を全うさせていただきます」
やはり力強い声で返すゲオルク。
後はとりあえずゲオルクの手足としてメイドを三人くらい出すとしようかな。
「初めましてイニス様!このドロシー、ご主人様があっと驚くぐらいの活躍を見せちゃいますよ~!」
妙にハイテンションで元気なのは金髪をサイドテールにしたドロシーという子だ。
目はパッチリと大きな翠の瞳で体型はやや細身といったところだろう。しかし胸の方はしっかりと出ている。
「え、えっとジェシカと申します……初めましてイニス様。あ、あの、その、せ、精一杯頑張ります!」
次の内気な子は長い黒髪が特徴的なジェシカという子だ。
髪の色と同じ黒い瞳が日本人的にも見えるがそのスタイルは非常にグラマラスで、メイド服越しでも分かるほど腰の細さに相反するように胸部が突き出ている。
「え~っと、よろしく……です、イニス様。メイっていいます。まぁ、適度に頑張ります」
最後の非常にマイペースな子はメイという子だ。
薄茶色の髪はボブカットに揃えられており非常に柔らかそうに見える。瞳はピンク色で赤い眼鏡を掛けており、背は低く体型の方もはっきり言って平坦だ。なんだか三人の中で一番アクが強そうだが……。
こうしてみると三人とも結構個性的な奴らだな……。
まぁいいや、とりあえずメイドはこんなもんかな?足りなくなったら補給すればいいだろ。
一応まだ出していないキャラもそこそこいるしな。
「え~、それじゃあお前たち三人はゲオルクの部下という事で、ゲオルクの命令をよく聞きながら職務に励むように。それじゃあゲオルク、任せたぞ」
今まで僕の後ろで控えていたゲオルクが畏まりました、と返答する。
「それではお前たちに最初の仕事を与える」
ゲオルクが、僕と会話するときとは全く違う調子でメイド達三人に向かう。
「とりあえず一番に手を付けるものとしては掃除と洗濯からだ。早急にとりかかれ」
やや厳しい調子でそう言い放つと三人は一目散に図書館を出ていく。若干一名マイペースな奴がいるが。
しかし雰囲気がさっきまでと違うような?
「なぁ、ゲオルク。そんなにきつく言わなくてもいいんじゃないか?怯えちゃうかもしれないだろ?」
「いえ、イニス様。人を使い命令する立場として、中途半端は許せないものでして。もしもお気に触られたのならば謝罪させていただきます」
急に頭を下げるゲオルク。というかそんな言い方だと僕の方が遥かに中途半端だと思うんだが……。
そういやゲオルクの設定は”非常に真面目な完璧を良しとする執事”とかいう説明が書いてあったな……。ま、まぁ”同じ主に使える天空城の面々を一平卒に至るまでとても大事に思っている”とあったし大丈夫だろ!……たぶん。
「いや、そんな謝る必要なんかないよ。むしろ僕にも至らないところや間違っているところがあったらどんどん指摘してくれ。頼りにしてるよ!」
僕がそんなに気にしていないといった風に返すと、何やらゲオルクの奴が感極まった様子で再び跪いてしまった。
「いえイニス様!今一度謝罪させていただきます!そのように自分を省み私の様な者にも気を使っていただき真に感謝の念が絶えません!今後益々の忠勤に励みます!」
………。
なんだかこれ、物凄い立派な主だと誤解されてる気がするんだが……。
いや、僕はそんな跪かれるほど立派な人間じゃないから!
マルクの言葉でようやく気付くぐらいのまるで発想力の足りなない自称一般人ですから!
まぁ、今はいいや。
とりあえず続きの召喚を行うとするか。
その後はマルク一人じゃ皆の料理を用意するのも大変だろうということで、更に五人ほどの料理人を追加し、他には庭師を二人ほど、武器や調理器具などを初めとした様々な道具を作成してもらう為に鍛冶師を六人ほど召喚した。
ようやく組織の運営がスタートし始めた……のか?
次話は兵士の召喚。




