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異世界の放浪者と  作者: 天音時雨
第一章 鬼の子
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第五話 "鬼の子"の噂

異世界に到着です。

「…ここか。」

ふわり、と着地して辺りを見渡す。

周りにあるのは草原と木々。そして、廃墟寸前の神殿らしき建物。

「随分とまた…妙な所だな…」

近くに町とか村とか…人がいそうな場所がない。或いは…わざと離れているとか…?

そう考えていると、足音が聞こえてきた。

「…おや、君は旅人かい?」

話し掛けてきたのは旅人風の青年だった。身に付けている装備は所々痛んではいるが手入れされている。

「…まあ。あんたはそこの神殿?みたいなやつ…なんかわかるか?」

俺がそう聞くと、青年は一瞬目を見開いたがすぐに微笑した。

「あれ?噂を知らない?」

「噂?…かなり遠くからきたからよくわかんねぇんだ。」

「そうなんだ。ならいいや。」

そう言うと青年は周りをキョロキョロと見渡し、声を潜めて言った。

「…そこの神殿には"鬼の子"がいるんだ。オレの故郷に伝わる話では、その"鬼の子"に近づいたとき、近づいた者には災厄が降りかかる、と。今も同じで絶対に近づいてはならない。」

それだけを告げるとまた人のいい笑顔を浮かべた。

「て言う訳なんだ。旅人の間でも噂になってるから…君も早い内にこの場から移動した方がいいよ。近くにオレの故郷の街があるから!」

「ああ。忠告どーも。」

そう言うと青年は笑顔のまま去っていった。

青年が見えなくなってから俺はもう一度、神殿の方を見た。

「"鬼の子"ねぇ……」

"鬼の子"とかいうとだいたい忌み子とかを意味する。となると、あの神殿には忌み子が封印されている、或いはまつられている…?

それとも、かなりヤバイ魔物か厄神か。姿が子供のようだからそう呼ばれるパターンもある。

「情報収集ついでにさっきの旅人が言ってた街にでも行くか…。」


そう呟いて青年が去っていった方に歩き出した。




街はごく普通の感じだと最初は思った。

だが、よく見ると門番や兵士の数が異様に多い気がする。

(…まあいい。情報収集するか)


道具屋や宿屋、話しかけられた時に神殿や"鬼の子"について訊きまくる。

ある程度わかってきたときにはもう日が暮れていた。この時間帯になれば人数が一気に減る。仕方なく宿屋に泊まることにした。


宿屋で食事を取ったあと、客室で先程の情報収集で得たことを考える。


まず、"鬼の子"は忌み子だという説が多いこと。一部は厄神とも言われているみたいだが、「災厄が降りかかる」という事と合わさってできたのかもしれない。


次に"鬼の子"と関わった人物の子孫がいるとの事。どうやら貴族のようだが…聞けるなら聞いてみたい。


ふと、窓を見ると雲ひとつない夜空が広がっていた。同時に神殿の事を思い出す。

あの神殿に"鬼の子"がいるとしたら…いつ活動するのか。

どうやら夜に活動すると噂がたっていて、町に入ってこられないよう兵士達が神殿と街周辺を見回っているらしい。

実際に神殿近くに人影を見たという情報もあるから尚更見回りを強化してるそうだ。


なんとなく、宿屋のホールに降りてみると体格のいい宿屋の女将と目が合った。

「おや、どうかしたのかい?」

「…ああ。外の空気でも吸ってこようと思ってな。」

俺がそう言うと、女将は血相を変えた。

「…止めときな。夜、外に出るのは危険だよ!"鬼の子"に食い殺されちまうよ!!」

女将の意外とすごい剣幕に押されたフリをして俺は黙って頷いた。

…旅人にまで止めるとは……余程ヤバイのか?

そう思っているとホールのすぐ隣にある酒場スペースに目が止まる。

旅人より何故かこの街の兵士が多くいる。…酒はあまり飲んでいなさそうだが……何故…?

そう思ったときだ。

宿屋の扉が荒く開かれ、顔が青ざめ、冷や汗を流す兵士が入ってきた。

「いきなりどうしたんだい!?」

女将が驚いた様子で兵士に聞くと、息を切らしながら答えた。

「いっ……今…鬼の…っ…子が……神…殿前に…ッ!!」

兵士の言葉を聞いて、酒場にいた兵士達が立ち上がり、その兵士に何かを聞くとすぐに宿を出ていった。

どさくさに紛れ一緒に出て行こうとすると女将に腕を掴まれた。

「止めなさい!あんたみたいな若い者が死に急ぐんじゃない!!」

…仕方なく、女将のいう通りにして俺は客室に戻った。

窓から外を見ると、兵士が持っているのであろう松明の火が揺れているのが見えた。

その光が行く先は街の外、例の神殿だろう。


(…あの神殿に絶対何かある。)

そう確信した俺は明日、できるなら例の貴族のやつに聞いてみようと考えながらベッドに入った…。

一体これから何が起こるのやら…

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