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手のひらサイズの最下級妖精の前世はビジネスマン 〜落ちこぼれですが、世界一の商業都市を作ります〜  作者: @tsutsu-Chan


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脈の黒鉄と、美と癒やしの試作

「いいかエリィ、ビジネスにおいて

『得た利益をどこに再投資するか』が成長の命運を分ける」


エリィ姫の肩の上で、僕は耳元でささやいた。


「最初の金貨を使って、次はハーブオイルや薬の生産効率を上げる『金属製の機械』と『金型』を作りたい。

 この国に、金属加工の得意な職人はいるか?」


エリィ姫は少し考え込み、すぐにポンと手をたたいた。


「金属加工なら、鍛冶場のガルドさんがいるわ!

 街の人からは『頑固者』って言われてて、剣や甲冑は作れないんだけど……」


「……農具に関しては右に出るものがいない技術の持ち主で精度がすごいの!

 道具の手入れも誰より細かく調整してるわ!」


(ほう……道具の精度に異様なこだわりを持つ職人か。

 精密機械を作るには最高の才能だな)


僕たちはさっそく、街の鍛冶場へと向かった。


カンッ、カンッ、と重厚な鉄の音が響く。


汗だくになってハンマーを振るっていたのは、強面で大きな髭を蓄えた男

——ガルド親方だった。


「何の用だ、エリアーナ姫様。

 ウチには農具くらいしか置いてねえよ」


「ガルドさん!

 あなたの金属加工の技術は本当にすごいです!」


「お願いです……

 私たちの国を救う特産品を作るために、力を貸してくれないかしら!?」


「な……っ!?

 俺のことをそんな風に……!」


ガルド親方は目を見開いた。


「姫様のためなら喜んで協力したいですがね、ウチには機械や金型を作るための『金属材料』がないんです……」


悔しそうに拳を握りしめるガルド親方。


だが、僕は肩の上でニヤリと笑った。


「エリィ、心配いらないと伝えろ。

 この国を囲むあの広大な山脈……

 地層の重なりと川の鉱物成分からして、必ず高品質な鉱脈が眠っているはずだ」


「あっ、そういえばガルドさん!

 北の山裾の村の人たちが『硬くてズッシリ重い黒い石がある』って言ってたわ!

 あれって、もしかして……!」


「黒くて重い石……!?

 姫様、そいつは『黒鉄鉱』かもしれねえ!」


「不純物が少なくて、精錬すればとんでもなく頑丈な金属になる極上品ですよ!」


エリィ姫は抱えていた袋から、輝く金貨を数枚取り出した。

そして、ガルド親方の手の上にそっと乗せる。


「ガルドさん、このお金で丈夫なツルハシや搬送用の台車の手配をお願い!」


「手伝ってくれる街の若い人たちにも、ちゃんとお給料を出して、みんなで山へ鉱石を掘りに行きましょう!」


「エリアーナ姫様……!

 わかりました、すぐ準備します!」


——数時間後。


エリィ姫の呼びかけに集まった若者たちとガルド親方は、山脈の裾野へと向かった。


汗を流しながらみんなで協力して掘り出したのは、陽の光を浴びて黒光りする、見事な高純度の黒鉄鉱だった。


「すごいわ、こんなにたくさん掘り出せたわ!」


「信じられん……他国なら高値で取引される最高級の鉱石だ!

 これなら最高の圧搾機と金型が作れますぞ!」


ガルド親方は歓喜の声をあげた。

さっそく工房で、圧搾機と金型の試作に取りかかってくれるそうだ。


ガルド親方が機材を作っている間に、僕とエリィ姫は次なる『新商品』の素材を探しに森へと向かう。


「アルティ、次はどんなハーブを探すの?」


「次に狙うのは、『他国の富裕層』だ。

 そのために、癒やしの香りを放つハーブと、美肌効果のある植物を探しに行く」


僕たちは森へ入り、柑橘のフレッシュな香りがする月桂ハーブや、心を落ち着かせる効果のある紫の花を採取した。


作業場に戻り、マーサおばあちゃんの協力のもと、試作品作りにとりかかる。


出来上がったのは——

きめ細やかな泡立ちと優雅な香りを放つ『高級ハーブ美容石鹸』。

そして、枕元に置くだけで極上の眠りをもたらす『安眠サシェ(香り袋)』だ。


「さあエリィ、まずは君が第一号のモニターだ。

 この石鹸で顔と手を洗ってみてくれ」


「えっ、私が……?

 うわあ、すごい泡立ち……!

 それに、とっても良い香り……!」


洗い流した瞬間、エリィ姫が「きゃっ!?」と声をあげた。


「あ、アルティ見て!

 泥や日焼けでカサついてたお肌が、信じられないくらいスベスベでモチモチになってるわ!

 見て見て、触ってみて!」


興奮したエリィ姫が、頬を僕のいる肩の上へすりすり寄せてくる。


「おいエリィ、潰れる!

 加減してくれよ……」


僕はおしつぶされそうになりながらも、その劇的な変化に確かな手応えを感じていた。


泥まみれだったお姫様の肌が、まるで白磁のように滑らかだ。

うっとりするような、高貴な香りを纏っている。


さらにその夜。


『高級ハーブ美容石鹸』で体を洗い、『安眠サシェ』を枕元に置いたエリィ姫は、ぐっすりと深い眠りについた。


(ふっ……効果は絶大だな。

 これなら他国の貴族や豪商から、いくらでも高いバリューを引き出せる)


エリィ姫の安らかな寝顔を見つめながら、僕は手のひらの上で不敵にニヤリと笑った。


これで新製品のサンプルは出来上がった。

あとはこれを、マルコへ届けるだけだ。

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