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手のひらサイズの最下級妖精の前世はビジネスマン 〜落ちこぼれですが、世界一の商業都市を作ります〜  作者: @tsutsu-Chan


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宿屋の開業準備と、異世界B級グルメ革新

新築の木材の香りが、開けた窓から吹き抜ける風に乗って漂う。


「わあ……!アルティ、中もすごく綺麗に仕上がっているわ!」


完成したばかりの宿屋『ルミエール館』の一階食堂。

エリィ姫が目を輝かせて歓声をあげた。


木のぬくもりが残る広い空間には、手造りの頑丈なテーブルと椅子が並んでいる。


森の開拓で切り出した大樹を使って建てられた、この国で初めての宿泊施設だ。


「建物自体は完璧な出来だ。

 ……だが、ハード面が整っただけではビジネスは成立しない」


僕はエリィ姫の右肩にちょこんと腰掛け、小さな腕を組んだ。


「必要なのはソフト面

 つまり『接客スタッフの教育』と、旅人の胃袋を掴む『看板メニューの開発』だ」


「ソフト面ね!

 任せて、スタッフ候補ならもう声をかけてあるわ!」


エリィ姫がパンと手を叩く。

すると宿屋の入り口から、緊張した面持ちの領民たちが数名入ってきた。


「エリィ姫様……

 本当に私たちが、他国から来る商人さんたちのお世話をするんですか?」


「大丈夫よ、ミナ!

 あなたはいつも街の人に明るい笑顔で声をかけてくれるでしょう?」


エリィ姫は優しく微笑む。


「その温かさが一番大切なおもてなしなの!」


エリィ姫は持ち前の『人の長所を見抜く目』で、気配り上手な若者たちを集めていた。

人選としては文句なしだ。


(ふむ……人徳によるスカウト力は相変わらず素晴らしいな)


僕はエリィ姫の耳元で静かに囁いた。


「よしエリィ。

 彼らに『おもてなしの基本』を伝えるぞ。」


「まずは笑顔と挨拶、

 そして『客人を名前で呼ぶ親近感』だ。」


「はいっ!

 みんな、聞いて!」


エリィ姫が声を張る。


「まずは『いらっしゃいませ』の時の笑顔よ!

 お辞儀の角度は背筋を伸ばして三十度!」


スタッフたちがピンと背筋を伸ばす。


「それから、一度覚えたお客様のお名前は次から必ずお呼びするの!

 『ミナさん、こんにちは』って言われたら嬉しいでしょう?」


僕の指示を、エリィ姫が情熱的に噛み砕いて伝えていく。


最初はぎこちなかったスタッフたち。


だが、エリィ姫の太陽のような笑顔に引っぱられ、みるみる洗練された動きへ変わっていった。


「すごい……!

 なんだか私、本当の高級宿屋の給仕さんになったみたい!」


「ふふ、バッチリよ!

 じゃあ次は、一番お楽しみの『お料理と飲み物』の準備に行きましょう!」


訓練を終えたスタッフたちと共に、僕たちは奥の清潔な厨房へと移動した。


テーブルの上には、ルミエール王国で採れる豊かな食材が並んでいる。


清らかな天然水に、甘酸っぱい柑橘果実、そして爽やかな香りのハーブだ。


「まずはドリンクだ。

 長旅で疲れ切った商人たちが求めているのは『喉を潤す圧倒的な爽快感』だ」


(エリィ、天然水に絞りたての柑橘果汁と刻んだハーブを加えろ。

 そして例の微発泡湧き水をブレンドするんだ)


「うん!

 山から汲んできた微発泡の天然水に、柑橘とハーブをあわせて……」


グラスの中でシュワシュワと小さな泡が弾け、爽やかな香りが広がった。


完成したのは、冷たさと爽快感が突き抜ける【ルミエール特製・微発泡清涼飲料】だ。


「なにこれ、シュワッとしてて冷たくて……

 すごく美味しいーっ!」


一口飲んだエリィ姫が、目を丸くして叫ぶ。

長距離の馬車移動で喉を枯らした商人たちにとって、至高の癒やしになるはずだ。


「よし、次はメインの食事だ。

 ルミエール特産の小麦粉を使って、異世界のB級グルメ『お好み焼き』と『焼きそば』を作る」


「おこのみ焼き……?

 やきそば……?」


「ああ。

 安価で満腹になり、何より『匂い』で食欲を強烈に刺激する最強の料理だ」


僕の指示のもと、エリィ姫が小麦粉を水で溶き、野菜と肉を混ぜ込んでいく。


さらに、鉄板の上で麺と肉野菜をジューシーに炒め合わせた。


「アンド……味の決め手となる【特製ソース】だ」


果実の甘みと酸味に、ハーブや香辛料を絶妙にブレンドした秘伝の黒いソース。


それをアツアツの鉄板の上に回しかけた

——その瞬間。


ジューッ……!!


香ばしく甘辛い濃厚な香りが、爆発的に厨房中に立ち込めた!


「ひゃああっ!?

 なにこの匂い……っ!

 お腹が鳴っちゃう……!」


エリィ姫だけでなく、スタッフたちもゴクリと唾を飲み込んで鉄板を凝視している。


ふんわり焼き上がったお好み焼きと、ソースが絡みついたツヤツヤの焼きそば。


小皿に取り分けたそれを、エリィ姫がフーフーと冷まして口に運んだ。


「んんんっ〜〜〜〜っ!!」


一口食べた瞬間、エリィ姫が両頬を押さえて悶絶する。


「なにこれぇぇぇっ!?

 生地はふわっふわで、お肉はジューシーで……

 手が止まらないわーっ!」


「私もいただきますっ!

 ……う、美味しすぎる!

 こんなお料理、食べたことありません!」


「焼きそばの麺のモチモチ感とソースの絡み具合が最高だ!

 これなら旅の疲れなんて一発で吹き飛びますよ!」


スタッフたちからも大絶賛の嵐が巻き起こった。


「フッ……大成功だな。

 調理法とソースの工夫ひとつで価値は跳ね上がる。

 これで準備は100%整った」


僕が満足げに口元を緩めた、その時だった。


「エリィ様ーーーっ!

 大変です、エリィ様ーーーっ!!」


宿屋の扉が激しく開く。

見張り台から駆けつけてきた街の青年が、息を切らして飛び込んできた。


「ど、どうしたの急に!?」


「完成した『森の道』の向こうから……

 見たこともない大勢の馬車隊が、猛スピードでこちらに向かってきています!

 マルコさんの大商隊です!!」


予想よりも遥かに早い、マルコ商隊の到着だ。


「ついに来たか……。

 良し、エリィ。

 僕たちの『最高の成果』で、プロの商人たちを驚かせてやろう」


「みんな、ルミエール王国一番のおもてなしでお迎えするわよーーーっ!」


『おーっ!!』


新商品と最高峰の接客を携え、ルミエール王国はいよいよ、大陸全土を揺るがす貿易都市としての第一歩を踏み出すのだった。

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