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手のひらサイズの最下級妖精の前世はビジネスマン 〜落ちこぼれですが、世界一の商業都市を作ります〜  作者: @tsutsu-Chan


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マルコ大商隊の到着と、たくましき若者たち

地響きのような馬の足音。

重々しい車輪の音。


完成したばかりの『森の道』に、その音が盛大に響き渡っていた。


「おいおい……マジかよ。

 本当にけが人ゼロで森を抜けちまったぞ……!」


先頭の大型馬車から飛び降りてきたのは、行商隊のマルコだ。


数々の修羅場をくぐり抜けてきたベテラン商人である。


彼は額の汗をぬぐい、信じられない様子で後ろを振り返った。


いつもなら森に入れば、魔物の襲撃で馬車を二、三台失うのが普通だ。


「なのに……魔物が襲ってくる気配すらない。

 こんな安全な道ができているなんて……」


マルコが率いてきたのは、大商隊だ。

無傷でルミエール王国の町へ着いた男たちは、興奮と安堵の声をあげている。


(ふっ、奇跡でもなんでもない。

 陰で妖精警備隊が、幻と音で魔物を誘導した成果だ)


僕はエリィ姫の右肩の上で腕を組み、密かに笑みを浮かべた。


計画通りの『安全なルート』が機能した証明だ。


「マルコさん!

 無事のご到着、お待ちしていましたわ!」


茜色のパンツスタイルに身を包んだエリィ姫が、満面の笑みで駆け寄った。


「おお、エリィ様!

 立派な道ですな!」


「ありがとうございます。

 長旅でお疲れでしょう?」


「ええ。

 少し休める場所があればありがたいのですが」


「ふふっ、バッチリ用意してあります!

 皆様、『ルミエールの宿屋』へどうぞ!」


エリィ姫が誇らしげに、マルコたちをできたばかりの宿屋へ案内した。


宿屋の重厚な扉を開けた瞬間、マルコたちは息をのんだ。


『マルコ様、ならびに商隊の皆様!

 長旅お疲れ様でございました!』


店内に一歩足を踏み入れるや否や。

給仕のミナたちが、美しいお辞儀で出迎えた。


驚くマルコたちを、給仕たちが手際よく席へ案内していく。


(よしエリィ。

 ここで『一撃目の感動』を与えるぞ)


「皆様、まずは喉の渇きを癒してくださいね!」


エリィ姫の合図で、木製のジョッキが運ばれてきた。

中には透明な飲み物が入っている。


山脈の冷たい湧き水に、果汁とハーブ。

そして炭酸の気泡がシュワシュワと弾けていた。


「これは……水、でしょうか?」


半信半疑でジョッキを傾けたマルコ。

一口飲んだ瞬間、その目が飛び出さんばかりに見開かれた。


「ッ……!?

 な、なんだこれはぁぁぁっ!?」


喉を通る圧倒的な冷たさ。

炭酸の心地よい刺激。


柑橘とハーブの香りが突き抜け、長旅の疲労が一気に吹き飛んでいく。


「う、美味い……ッ!」


「シュワッとして冷たくて、喉の渇きが瞬時に消えていく……!」


「こんな飲み物、今までに見たことも飲んだこともねぇぞ!?」


「おい親方、これすげえよ!」


商隊の男たちが一斉にジョッキを飲み干し、歓喜の声をあげた。


だが、『おもてなし』はこれだけでは終わらない。


厨房からジューッ……!!と音が響く。

甘辛く香ばしい匂いが、店内に立ち込めてきた。


「お待たせいたしました!

 ルミエール特製『お好み焼き』と『焼きそば』です!」


アツアツの鉄板に乗せられて運ばれてきたのは、フワフワの生地にソースがたっぷり塗られたお好み焼き。


そして、ソースがツヤツヤと絡むモチモチの焼きそばだ。


「この匂い……たまらんっ!

 いただきます!」


マルコが大きく切ったお好み焼きを頬張った。


「んんんんっ〜〜〜〜っ!!」


ガタッと椅子を鳴らして立ち上がったマルコは、自分の両頬を叩いて叫んだ。


「なんだこの美味さはーーーっ!?

 外は香ばしく、中はフワフワで旨味が溢れてくる!」


「この黒いソースの甘みと酸味が悪魔的に美味すぎる……っ!」


「焼きそばも最高だ!

 麺の歯ごたえと香ばしさがクセになる!」


「おかわりだ、おかわりをくれーーーっ!」


店内は瞬く間に、絶賛の大狂乱に包まれた。


安全な道、極上の接客、そして食べたこともない料理とドリンク。


疲れ切っていた商人たちの心は、完全に撃ち抜かれたのだ。


「う、美味すぎる……!

 この国は天国か……!?」


絶賛しながらお好み焼きをむさぼるマルコたちを見て、エリィ姫が嬉しそうに胸を張った。


(フッ……思惑通りだな。

 食と住の満足度が上がれば、ビジネスの交渉は一気にラクになる)


僕がエリィ姫の耳元で指示を出すと、エリィ姫は深々と頷いた。


その時、商隊の中から一人の青年が進み出てきた。


「エリィ姫様、お久しぶりです!」


「あっ、リュック!」


そこにいたのは、マルコに同行していたルミエールの青年・リュックだった。


日焼けした肌と、引き締まった顔つき。

その瞳には迷いがなく、自信に満ちあふれている。


「エリィ姫様、マルコさんの元で他国を回り、たくさんのことを学んできました!

 これを見てください!」


リュックは大切そうに抱えていた革袋から、いくつかのアイテムを取り出した。


しなやかな他国の生地。

珍しい香辛料。

そして、自筆の羊皮紙だ。


「他国で出回っている珍しい素材の情報と、市場価格の記録です!

 この生地やスパイスは我が国では手に入りません!」


「我が国のハーブや技術と組み合わせれば、他国には真似できない高級衣装や料理が作れるのではないでしょうか?」


堂々とプレゼンを行うリュックの姿に、エリィ姫は目を丸くした。


「すごいわリュック……!

 ルミエール王国の未来の糧になるものを探してきてくれたのね!」


(ほう……

 ただの熱血かと思っていたが、『情報収集と市場調査』をこなしてきたのか。

 筋がいいな)


エリィ姫は深々と頷いた。


「リュック、素晴らしい成果よ!

 持ち帰った情報は、すぐに商品開発に活かさせてもらうわね!」


「はいっ!

 俺、もっと勉強して、この国をもっと豊かにできるように頑張ります!」


力強く宣言するリュックの格好良い背中を見て、地元の若者たちが顔を見合わせた。


「なあ……リュックのやつ、見違えるほど頼もしくなったな……」


「ああ、俺たちも街でじっとしてる場合じゃないぞ!」


「……マルコさん!

 俺たちも次の行商に連れて行ってください!

 商人としての仕事を学びたいんです!」


地元の若い作業員たちが、熱い眼差しでマルコに頭を下げた。


若者が外の世界で学び、成長して知識を持ち帰り、それに触発された新たな若者が後に続く。


理想的な『人材の好循環』が、今まさに動き出したのだ。


「ガハハハ、いい目だ!

 ルミエールの若者はどいつもこいつも見所がある!

 喜んで連れて行ってやるぞ!」


マルコは大豪快に笑うと、満足そうにお腹を叩いた。


「エリィ様。

 最高のおもてなしと、最高の料理をごちそうになりました」


マルコの表情が、一瞬にして『プロ商人』の真剣な目つきに変わる。


「美味い飯のお礼と言っちゃあなんですが、いよいよ本題に入りましょうか」


マルコがニヤリと不敵に笑い、部下に合図を送るのだった。

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