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マフィアのボスが私を男だと思っている。  作者: puni0023
第三章 平穏な日々

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第66話 相思相愛

翌朝。


幹部室には、コーヒーの香りが漂っていた。


ノアは新聞を読み。


ルカはパソコンを開き。


ヴィクトルは今日も優雅にコーヒーを淹れている。


マルコは大きく欠伸をした。


「眠ぃ……」


その時。


扉が開く。


「おはよう」


いつもの柔らかな笑顔。


レオンだった。


続いて郁も部屋へ入る。


「おはようございます」


レオンは郁を見る。


昨日と何も変わらない笑顔で。


「好き」


一秒。


部屋が静かになる。


そして。


マルコが机を叩いた。


「朝一かよ!」


ルカは画面から目を離さない。


「通常運転」


ノアはコーヒーを飲みながらため息をつく。


「静かに飲ませろ」


ヴィクトルは苦笑した。


「砂糖より甘いですね」


郁は耳まで真っ赤になった。


「お、おはようございます……」


レオンは嬉しそうに笑う。


「うん」


「今日もかわいい」


「ボス!」


幹部室は朝から笑い声に包まれた。


――――――


午前。


執務室。


郁が書類を持ってレオンの机へ向かう。


「ボス」


「この書類ですが──」


レオンは書類を見る。


……前に。


郁を見る。


「かっこいい」


郁はぴたりと止まった。


「……」


「聞いてます?」


レオンは笑う。


「聞いてる」


「書類も」


「郁も」


マルコが後ろから笑う。


「仕事しろ!」


ヴィクトルも肩を震わせていた。


「恋人になっても変わりませんね」


郁は小さくため息をついた。


「もう……」


それでも。


少し嬉しそうだった。


――――――


午後。


幹部会議。


レオンは珍しく真面目な顔で説明を続けていた。


「次は南地区の警備を──」


全員が資料を見る。


真剣な空気。


五分後。


レオンの視線が、ふと郁へ向く。


そして。


「かわいい」


静寂。


マルコが頭を抱えた。


「我慢しろ!」


ルカがぽつり。


「五分」


ヴィクトルが時計を見る。


「今日は記録更新ですね」


ノアは冷静だった。


「五分も我慢した」


「十分だ」


郁は顔を覆った。


「もう……」


レオンは首を傾げる。


「だめ?」


マルコが即答する。


「会議中はだめだ!」


部屋中が笑いに包まれた。


――――――


それからというもの。


レオンは毎日のように言った。


「今日も好き」


「今日もかわいい」


「今日もかっこいい」


何度言われても。


郁は照れる。


「もう分かりましたから……」


レオンは満足そうに笑う。


「うん」


一拍置いて。


「でも言う」


「どうしてですか?」


郁が困ったように聞く。


レオンは少しだけ考える素振りを見せた。


そして、当たり前のように答える。


「好きだから」


「毎日伝えたい」


その一言に。


郁は何も言い返せなくなってしまった。


――――――


仕事終わり。


夕焼けに染まる廊下。


二人きり。


静かに歩いていた。


レオンが郁を見る。


「今日もお疲れさま」


「お疲れさまでした」


少しだけ沈黙。


郁は足を止める。


「……レオン」


「ん?」


恥ずかしい。


でも。


今日は。


少しだけ勇気を出した。


「……好きです」


レオンが止まる。


「……」


「……」


「…………」


完全に固まった。


郁は苦笑する。


「またですか」


レオンはゆっくり顔へ手を当てた。


「……」


「ごめん」


「まだ」


「慣れない」


郁は思わず吹き出した。


「ふふっ」


「レオンも」


「毎日言ってるじゃないですか」


レオンは照れ笑いを浮かべる。


「言うのと」


「言われるのは」


「全然違う」


郁は小さく笑った。


「そうなんですね」


二人は顔を見合わせる。


そして。


同時に笑った。


穏やかな夕日が、二人を優しく照らしていた。

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