第59話 裏切り者
決戦前日。
政府庁舎。
会議室には警察、政府、ヴィンチェンティ・ファミリーが集まっていた。
最終作戦の確認。
その時だった。
ルカの携帯が震える。
「……」
画面を見た瞬間。
表情が変わる。
「ボス」
レオンが顔を上げる。
「どうした?」
「情報」
「漏れてる」
会議室が静まり返った。
ノアが眉をひそめる。
「確定か」
ルカは静かに頷く。
「敵」
「もう」
「本部から移動」
ヴィクトルが資料を見返す。
「そんな……」
マルコが机を叩いた。
「また先回りか!」
警察長官も苦い顔をする。
「作戦は」
「中止だ」
――――――
誰も口を開かなかった。
レオンだけが静かに考えている。
やがて顔を上げた。
「情報を知っていた人間を洗い出そう」
大統領が頷く。
「そうだね」
警察。
政府。
ヴィンチェンティ・ファミリー。
三つの組織。
作戦内容を知る者は限られている。
――――――
一時間後。
ルカがパソコンを閉じた。
「いた」
全員が画面を見る。
政府関係者。
一人の名前が表示される。
大統領の第一秘書。
長年、大統領を支えてきた側近だった。
部屋の空気が凍り付く。
「……まさか」
大統領は静かにその名前を見つめる。
「彼が」
警察長官が頷く。
「通信履歴」
「送金記録」
「すべて一致しています」
秘書は警察へ連行された。
――――――
取調室。
「なぜだ」
警察官の問いに。
男は力なく笑った。
「娘が」
「誘拐された」
誰も言葉を失う。
「助けたければ」
「情報を流せと」
「……言われた」
涙がこぼれる。
「私には」
「それしか」
「できなかった」
――――――
会議室。
報告を聞いた全員が沈黙する。
大統領は静かに目を閉じた。
「……そうか」
怒らなかった。
責めなかった。
ただ。
一言だけ。
「辛かったね」
その言葉に。
男は崩れるように泣いた。
「申し訳……ありません……」
――――――
長い沈黙。
マルコがぽつりと呟く。
「胸糞悪ぃ」
ノアも静かに頷く。
「ああ」
ヴィクトルは資料を閉じる。
「これが」
「サルヴァトーレのやり方です」
レオンは静かに窓の外を見た。
「だから」
「終わらせないと」
――――――
大統領が立ち上がる。
ゆっくりと全員を見る。
「作戦を変更します」
警察長官が地図を映した。
「情報は漏れています」
「なら」
「相手が予想しない形で動く」
ルカが新しい地図を表示する。
「地下」
「搬入口」
「監視」
「少ない」
レオンが微笑む。
「いいね」
地図を見つめる。
「サルヴァトーレは」
「俺たちが正面から来ると思ってる」
「なら」
「裏をかこう」
マルコが笑う。
「久しぶりに」
「ボスらしい顔したな」
レオンは少しだけ笑った。
「負ける気はないよ」
――――――
大統領も頷く。
「では」
「これが本当の最終作戦です」
レオンは全員を見渡す。
「一人も欠けず」
「帰ろう」
「はい」
その返事は。
今までで一番力強かった。




