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マフィアのボスが私を男だと思っている。  作者: puni0023
第二章 ディ・ネーロ・ファミリー

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第55話 はやすぎる退院

手術から三日後。


レオンは予定より早く退院した。


もちろん。


完全に治ったわけではない。


医師からは一週間の入院を勧められた。


しかし。


「仕事が溜まるから」


その一言で押し切った。


結局。


毎日往診を受けることを条件に、自宅療養となった。


医師は最後まで渋い顔だった。


「絶対に安静ですよ」


「はい」


「無理はしません」


「はい」


「本当ですね?」


レオンはいつもの笑顔で頷いた。


「もちろん」


そのやり取りを見ていた看護師たちは、小さくため息をつく。


「絶対仕事しますよね……」


「しますね」


――――――


屋敷へ戻ると。


ファミリーたちが一斉に拍手で迎えた。


「ボス!」


「おかえりなさい!」


レオンは少し照れくさそうに笑う。


「ただいま」


郁もその輪の中にいた。


レオンと目が合う。


郁は安心したように微笑んだ。


「おかえりなさい」


「ただいま」


その一言だけで十分だった。


――――――


夕方。


レオンの自室。


ベッドへ腰掛けて書類へ目を通していると。


コンコン。


「入るぞ」


返事を待たず。


幹部四人が入ってきた。


最後に郁も続く。


レオンは笑う。


「どうしたの?」


全員。


無言。


「……?」


嫌な予感がした。


最初に口を開いたのはヴィクトルだった。


「ボス」


「はい」


「書類を置いてください」


「え?」


「今すぐ」


レオンは素直に机へ書類を置く。


「……はい」


ヴィクトルは腕を組んだ。


「では」


「反省会を始めます」


レオンは苦笑する。


「反省会?」


「はい」


マルコがすぐに続けた。


「まず一つ」


「なんで退院した」


「仕事が──」


「却下」


「……」


ルカ。


「まだ三日」


「安静」


ノアも静かに言う。


「命令守ってない」


レオンは困ったように笑う。


「でも」


「往診あるし」


「だから?」


ヴィクトルの笑顔が怖い。


「医師から何と言われました?」


「安静」


「それなのに?」


「仕事」


「却下です」


レオンは肩をすくめた。


「……はい」


マルコが笑いを堪えながら言う。


「ボスさ」


「いつも郁に何て言ってた?」


レオンは少し考える。


「……無理しないで?」


「そう」


「で?」


「……」


「言ったよね?」


レオンは思わず吹き出した。


「それ」


「俺が郁に言ったやつ」


「うん」


「返す」


部屋に笑いが広がる。


郁も思わず口元を押さえた。


レオンは観念したように笑う。


「……はい」


「無理しました」


「反省してます」


ヴィクトルは満足そうに頷く。


「よろしい」


しかし。


まだ終わらない。


ノアが真っ直ぐレオンを見る。


「もう一つ」


「はい」


「庇った」


レオンは静かに頷いた。


「うん」


「好きだから」


即答だった。


マルコは額を押さえた。


「いや、そこは分かる」


「でも!」


「ボスが撃たれたら意味ねぇんだよ!」


ルカも珍しく続ける。


「ボス」


「一人」


「代わり」


「いない」


ヴィクトルも穏やかな口調で言う。


「あなたが倒れれば」


「このファミリー全員が困ります」


「自分の命も、大切にしてください」


レオンは少しだけ俯いた。


「……ごめん」


その一言に。


部屋が静かになる。


レオンは顔を上げて笑った。


「心配かけたね」


「次は」


「ちゃんと考える」


ノアが頷く。


「約束」


「約束」


レオンも頷いた。


――――――


そのやり取りを見ていた郁は。


思わず小さく笑ってしまった。


レオンが気付く。


「郁?」


「はい?」


「笑った?」


郁は少し照れながら頷いた。


「……はい」


「どうして?」


郁は少し考えて。


くすっと笑った。


「私だけじゃなかったんですね」


「え?」


「『言ったよね?』って」


マルコが大笑いする。


「そうそう!」


「今日はボスの日!」


ルカも珍しく笑った。


「新鮮」


ヴィクトルまで肩を揺らす。


「自業自得です」


レオンは苦笑するしかなかった。


「……味方がいない」


すると郁が小さく手を挙げる。


「私は」


一瞬、全員が郁を見る。


郁は少し困ったように笑った。


「皆さんの味方です」


一拍。


マルコが吹き出した。


「それボスの味方じゃねぇ!」


部屋中に笑い声が響く。


レオンもつられて笑った。


「負けた」


そう言って肩をすくめる姿は。


いつものボスではなく。


家族に囲まれた、一人の青年だった。

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