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マフィアのボスが私を男だと思っている。  作者: puni0023
第二章 ディ・ネーロ・ファミリー

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第46話 進捗確認

午後。


束の間の休憩時間。


幹部室にはコーヒーの香りが漂っていた。


ヴィクトルは資料へ目を通し、ルカはノートパソコンを操作している。


ノアはソファへ深く腰を下ろし、マルコは椅子を前後に揺らしていた。


そこへレオンがコーヒーを片手に入ってくる。


「お疲れ」


幹部たちもそれぞれ軽く返事をする。


しばらくは他愛もない仕事の話。


静かな時間が流れる。


ふと。


マルコがレオンを見た。


「ボスさぁ」


「ん?」


「郁」


「全然進んでなくね?」


一瞬。


部屋が静かになる。


ヴィクトルは苦笑し、ノアはコーヒーへ口を付けた。


ルカだけは興味深そうにレオンを見ている。


レオンは少しだけ首を傾げると、小さく笑った。


「ううん」


「大丈夫」


マルコが眉を上げる。


「何が?」


レオンは迷いなく答えた。


「郁はね」


「嫌だったら、ちゃんと嫌って言う子だから」


その場にいた全員が頷く。


「確かに」


マルコが苦笑した。


「あいつ変なとこ真っすぐだもんな」


「うん」


レオンは微笑む。


「だから」


「今返事がないってことは」


一拍置く。


「ちゃんと考えてくれてる」


その言葉には迷いがなかった。


ノアが腕を組む。


「自信あるな」


レオンは笑顔のまま頷いた。


「あるよ」


「焦らない」


「待つのは得意なんだ」


あまりにも自然に言うものだから。


マルコは思わず吹き出した。


「いやいや」


「普通そこ不安になるだろ!」


「毎日好きって言って」


「毎日流されて」


「よく心折れねぇな!」


レオンはきょとんとした。


「折れないよ?」


「なんで?」


「……」


今度は幹部たちが黙る番だった。


レオンはコーヒーを一口飲み、穏やかに続ける。


「好きだから言ってるだけだし」


「返事を急がせたいわけじゃない」


「郁が納得して」


「自分の答えを出してくれたら、それでいい」


その声はどこまでも優しかった。


ヴィクトルはふっと笑う。


「ボスらしいですね」


ルカも短く頷く。


「誠実」


マルコが呆れたように口を挟む。


「いや」


「かっこいいこと言ってるけどさ」


「毎日『好き』って言うのは重いからな?」


レオンは首を傾げた。


「そう?」


「うん」


「重い」


「でも」


レオンは少しだけ照れくさそうに笑った。


「やめる気はないかな」


「好きだから」


一瞬の沈黙。


それを破ったのは、意外な人物だった。


「なるほど」


ノアが、コーヒーカップを置いて口を開く。


普段なら、それで終わるはずだった。


けれど。


「毎日『好き』と言い続けるのは、簡単なようで難しい」


「照れも遠慮もなく、同じ熱量で伝え続けられる人間は少ない」


「しかも」


一拍。


「相手の返事を急かさない」


「不安を見せない」


「それでいて、行動は一切変えない」


「これは、余裕ではなく覚悟だ」


「つまり」


ノアは腕を組み、結論づけるように言った。


「お前は、想像以上に本気だということだ」


長い。


いつもの三倍以上、喋っている。


マルコが真っ先に固まった。


「……え」


「ノア、しゃべった」


ヴィクトルも目を丸くしている。


「今のは、驚きました」


ルカに至っては、キーボードを打つ手を完全に止めていた。


「……ノア長い」


当のレオンだけが、きょとんとしていた。


「褒められてる、のかな?」


ノアは何事もなかったかのようにコーヒーを飲む。


「事実を言っただけだ」


その一言で、いつもの調子に戻った。


けれど。


部屋の空気は、まだ驚きから抜けきれていない。


マルコが我に返ったように呟く。


「……今日のノア、なんか変じゃね?」


ヴィクトルも同意するように頷いた。


「ええ。それは私も」


ルカも小さく頷く。


「……珍しい」


誰も、レオンの惚気そのものには、もう驚いていなかった。


その頃。


当の本人は何も知らずに訓練場で汗を流していた。

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