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すべての始まりはクソゲーから




 「……おお、ついにボスを打ち倒し、世界が平和になりました。めでたしめでたし。おつかれさんでした。……さてと、次のゲーム探すか。この辺のは一通りやったしな。もっと違うのは……」


 メジャーなものからマイナーまで、一度も手を出したことのないものはないというくらいに、ネットゲームをやっていた。


 ゲームのオススメやレビューからページを飛んでは、何処をどう経由してきたか忘れたが、ひとつのゲームのタイトル名から、いまだプレイしたことの無いゲーム(モノ)を発見した。


 「ええっと、『異界に送られたアナタは、そこで自分だけの物語を紡いでいく?』……昔流行ったRPGか、これは? 製作会社名がないな、自作か? 画像は今風じゃないが、これはこれで風情があるだろう」


 つまらなかったら止めれば良いのだと、ゲームをインストールする。


 少しチープなサウンドが流れ、タイトル画面が表示される。NEW GAMEを選択すると画面は切り替わり、何処と無くギリシャ神話辺りに出てきそうな格好をした女性が現れた。


 『(ザザッ)――により、貴方は住み慣れた故郷から遠く離れた異界の地へと送られます。見るもの聞くものすべてが異質となるでしょう。それに恐れを**なし、**無為の時を過ごすのも、未知なる冒険に繰り出すことも貴方の自由―――』


 「……いきなり音声が飛んだぞ。大丈夫か、このゲーム?」


 クソゲーと呼ばれる部類のゲームだったかと考えるが、それならそれでまた違った楽しみかたをすれば良いと、スキップ機能がないゲームの冒頭エピソードを右から左に聞き流しながら眺めていた。


 『旅立つ者よ。最後にこの旅立ちに同意するなら、ここに署名を』


 女性が一枚の紙を差し出す。そこにはゲーム始めによくある確認同意書の類いだった。


 「おいおい、普通こう言うのはゲーム開始前に行わないか?」


 明らかな手順違いのやり方に呆れた。このゲームはクソゲー確定だと確信が持てた。


 同意書の内容は読み飛ばす。どうせ書かれていることなどゲームの取得権利云々といった内容でしかないのだろうから。画面をスクロールさせ、最後に同意確認部分をチェックすれば良いというところで、何故か名前の記入欄があった。


 「なんだこれ? 自分の名前を入れなきゃいけないのか? それともゲームキャラの名前か? まあ住所や電話番号を記載しろって訳じゃなさそうだから、そこまでヤバいモノじゃないとは思うが」


 やっぱりアンインストールした方が良いかと考えたが、名前だけなら問題ないだろうと。その時偽名にでもすれば良いのだが、何故かつい普通に自分の名前を記入した。


 「鈴木一郎なんて見本のような名前、今時本名とも思われないか」


 俺と同名の人が居たらゴメンなさいだけど、俺より十も下の子になると、「君の親は君に何を願ってそんな名前にしたのかな?」というような日本人離れしたというか、ファンタジーな世界にしかいないような名前の子が多くいた。


 祖父母の方の天虎たかとらだったら、俺の名前も一郎ではなく、キラキラネームになってたかな? いや名字が違っても、一郎になっていた可能性は十分にあるか。


 「一昔前に大分流行ったからな。このゲームもそれに乗って作ったやつだろうけど」


 一時期は社会現象にまでなっていたくらいだ。……うん。ヤバイくらいに蔓延していたな。厨二さん的な名前(キラキラネーム)な人達が……。


 「そんな名前の新入社員の子が、()()までそれだった時は、心底体の震えが止まらなかったな」


 何を考え会社はその子を採用したのか。そのことについて真剣に考えたことは、今となってはおもしろエピソードのひとつだ。


 『旅人よ。貴方の行く道が幸福に満ち溢れん事を祈っています』


 「おっ、ようやく終わりか。クソゲーぽいからな。いったいどんなゲームになるや、ふあぁぁあ……なんか、急に眠気、が……」


 再びストーリーが流れているのを聞き流していると、ようやくストーリーの終わりが見えた。


 ところが、いよいよゲームが始まる――そう思った矢先に、突然の睡魔にまぶたが落ちる。


 急速に意識を失っていき、次に目覚めるとこの場所にいた。


 「……やべぇよ。どう考えてもこれ、異世界転移じゃね?」


ここまでの出来事を考えると、そうとしか思えなかった。








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