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目覚めたら馬小屋でした

新作です。十話まで投稿します。その後はストック切れるまで1日一話ずつ更新していきます。




 「……ええっと、ここは……どこだ?」


 そこは先程まで居た、六畳間の俺の部屋ではなかった。


 あえて言えば納屋。もう少し詳しく言えば馬小屋が適切だろう。なにしろ俺のすぐ真横で、強烈な獣臭さを放ちながら、馬が飼い葉を食べているのが見受けられるからだ。


 俺の部屋が馬小屋になった? そんなわきゃねぇ! 家に畑はあるが、馬なんか居た覚えはない! そもそも部屋が馬小屋になっていた覚えもない!


 一体全体何なんだと、馬小屋の出口を出ると。そこは自分の知っている景色ではなかった。


 「……はあっ!?」


 そこは古い日本家屋のような建物が立ち並ぶ、何処か時代錯誤な印象を受ける場所だった。


 確かに祖父母達の家があるのは田舎だ。しかし、こんな古い大河ドラマでしかお目にかかれないような建築物は近所には無かった、筈だ……。


 「……おちつけ。落ち着くんだ俺。()()と決まった訳じゃない。まだ慌てるような時間じゃない。そう、ゆっくりと深呼吸をして、現状の確認をするんだ」


 今の混乱する現状から落ち着くために。俺は自分の事から確認するように思い出す。


 俺の名前は鈴木一郎すずき・いちろう。年齢は三十五歳で独身。現在の職業はヒキコモリだ。


 両親は幼い時に亡くなり、代わりに祖父母達に、まあそれなりに、なんら不自由なく育てられた。


 高校卒業後はすぐに就職活動を開始。すぐさま就職先が決まり、慣れない仕事だったが、祖父母達に早く恩返しが出来るようにと頑張って働いていた。そして二十五の時。少しでも恩返しをという思いから二人に小旅行をプレゼントするが、その旅行中不慮の事故に遭い、二人とも……。


 両親の時は幼すぎた為か、両親が亡くなったと知らされてもそれほどショックがあった覚えはなかったが、祖父母が亡くなったと知らされた時は、まるで深い穴にでも落とされているように、心に喪失感がハンパなかった。


 葬儀が終わり、仕事に復帰したが、そんな状態がいつまでも続いていたために仕事はミスの連発……。さすがに自分でもこれはダメだ、会社に迷惑が掛かると感じ、退職をした。


 その後は転々と仕事を探したが、どれも長続きせず。会社が近くなるからと借りていたアパートの契約を切り、昔祖父母と共に住んでいた空因寺という寺院であり住まいでもあった、実家に舞い戻る。


 山奥、とまでは行かないが、そこそこの田舎。しかも昔は周辺地域の地主の一族であったらしく、余程の豪遊暮らしをしていかなければ、残りの人生を十分に暮らしていけるほどの資産を遺してくれていた。


 祖父母と共に暮らしていた時は手伝いをしていたから、畑で俺一人が食べられる分の作物を作っていこうとやってみるが、半年ほどで自分には向かないと諦め放置した。今では畑は作物ではなく雑草が生い茂っている。食べ物などは電話一本で配達してくれる方々がいるのでその方が楽だ。文明万歳。


 ここから話さなくても理解できるだろう? なにしろヒキコモリと語っているんだ。


 俺はじいさんばあさんが居なくなった時、同時に人生の張り合い、みたいなもんを無くしちまった……。


 何をやるのも無気力、とまではいかないが、長続きがしなくなっていた。自分でも不思議なくらい胸にポッカリと空いたような、そんな感覚が長く続いていた。そうして、気づけば十年の月日が流れていた。


 そんな状態でこの家に住むようになってから外に出て町に行ったなんていうのは、年に一回か二回あったくらいじゃないか? それ以外ではネットで見つけたゲームをしては、ある程度やって満足すると、次のゲームを探すという作業的な毎日を繰り返した。


 そんな生活がこの先もずっと続くんだ。でも、何処かでこんな生活を終わりにしなくちゃいけないと思いながらも送っていた。


 ーーーはずだったんだが。









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