64 赤き魔法少女はパフェを頬張る
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WAHOO!ニュース 【速報】ICO「インビジブルを野良と同等に扱う」
対異界生物対策機構(ICO)は15日、公式サイトにて「インビジブルを野良の魔法少女と同等に扱う」との声明を発表した。また、声明が遅れたことについては「組織内で意見が分かれ、決定が遅れた」と説明した。
「野良」とは、ICOの管理下にない魔法少女の通称だ。ICO所属の魔法少女は野良の魔法少女が問題を起こした際、魔法により鎮圧することが許可されている。今回の声明に関しては、インビジブルが問題を起こさない限り、ICOは積極的に攻撃しない姿勢を示したと言える。
インビジブルは霧が丘街で最初に目撃され、魔物勢力との関与を疑われていた人物だ。世間から不安の声が多く上がっていたが、不定期に行われる配信活動などを通じて、少しずつ一定数の支持を獲得していた。
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そんな中、魔法少女がインビジブルを巻き込む形で魔法を行使し、関与した魔法少女や対応を先送りしていたICOへの非難が相次ぐ状況となった。その後、インビジブル本人から「立場をハッキリすべき」と指摘を受けたことで、ようやくICOが重い腰を上げた形だ。
昨今増加しつつある予期せぬ魔物災害に迅速に対応するため、ICOは「今後の意思決定プロセスを大幅に見直す」と述べている。引き続き、インビジブルやICOの動向に注目したい。
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・やっと方針を決めたかと思えば、まさかの野良認定。一時期は不良なんて言われていたぐらいの扱いをするなんて、まるで誠意が感じられない。インビジブルには同情する。
・その場しのぎの決定。結局インビジブルが問題を起こしているかどうかの判断が魔法少女一人一人に委ねられるのなら、何の意味もない。
・私はここで敵味方を断定しないのはちょうどいい落としどころだと思った。基本は味方で、敵対したら敵として扱う。普通のことじゃないの? 急に手のひらを返すほうがむしろおかしい。
・「今後の意思決定プロセスを大幅に見直す」? ICOの仕事の遅さは今に始まったことではない。魔物に壊された家の補償費を請求したが、支払いまで半年かかった。
・俺の地元のICO支部はかなり仕事が早かった。都会ほど被害量も増えるだろうし、窓口がパンクしている可能性はある。ただ、組織の幹部層がモタモタしているのは魔法少女側にも響くから早急にどうにかすべきだね。
・木を見て森を見ずとはまさにこのこと!! インビジブルばかり構っていないで、魔物災害予測精度の低下に対する対策や、魔法少女の働き方の見直し、ストーカー対策。もっと考えることは他にある! 魔法少女がいなくなったらこの国は終わる!!
・インビジブルを支持している人の心理が全然わからない。魔物が人間社会に潜り込むためのマッチポンプかもしれないし。この間収益配信とかやってたらしいけど、こんな奴に投げ銭するなんて正気じゃない。
・僕はインビジブルの「自分の姿を映したい」という願いを応援するために寄付しました。好き嫌い問わず、姿が知られることは一定の公益性に繋がると思います。ファンなら言わずもがな、嫌なら避けることもできますし。
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「はぁ……」
そこはカフェの個室席の一角。店内の空気を満たせそうなほどの深いため息を零したのは、アカネであった。
インビジブル――謎多き存在にして、アカネが殺しかけてしまった少女。
インビジブルを巻き込んで攻撃してしまった日以来、周囲が自分をどう思っているのかが気になって、どうにも落ち着かない時間が増えていた。家族が、マスコミが、そしてインビジブルがアカネに向けている目が――すべてが気になって仕方がないのだ。
一応、インビジブルに直接謝罪して許してもらい、表向きは一件落着になっている……と、思っている。だが、その実、インビジブルが内心で復讐心を滾らせている可能性がないと、誰が言いきれるだろう?
そのせいだろうか、気が付くとニュースを確認し、見ず知らずのネット民の言葉を無心にスワイプして眺める癖ができていた。そのくせ、確実に自分が絡んでいる記事のコメントは怖くて見ることができないのだから、どうしようもない。
魔法少女として活動する以上、注目を集めることには慣れているつもりだったが、こんなザマでは自惚れであったと言わざるを得ない。
「……ほんと、モエギはよくケロッとしてられるわね……」
アカネの脳裏に、相方の緑髪の少女が浮かぶ。
事件直後はアカネと同じく動揺していたものだが、事態が収束するとみるなり、すぐにぽわぽわした雰囲気で活動を再開したのだ。確か、昨日の夜も雑談配信をしていたはずだが……少しあの能天気さを分けてほしいものだ。
アカネは息を吐いてできた穴を埋めるように、前もって注文していたパフェに添えられたスプーンに手を伸ばした。
前々から、アカネはスイーツ巡りが趣味であった。だが、ここ最近はストレスのせいか、甘味の摂取量が明らかに増えている。良くない兆候だとは理解しているが、気を付けるのは明日からでも大丈夫だろう――そう最初に思った日から、そろそろ一週間は経つだろうか。
「……活動、休止しようかなぁ」
口の中でアイスを溶かしながら、誰にともなくアカネは呟く。
魔法少女は、常に魔物と戦うストレスに晒されることもあり、比較的緩い条件での休養が認められている。今のアカネに必要なのは、何よりも時間なのかもしれない。
もう少ししたらアカネの同業の友人、フミがここに来る予定だ。ちょうどいい機会だし、このことについて相談してみようか。……いや、もう少し慎重に考えてから切り出すべきか――。
あれこれ思い詰めながら口にパフェを詰めているうちに、時間はどんどん過ぎていき――あっという間に約束の時間になった。
「――アカネちゃん、お待たせしました! 遅れちゃってごめんなさい!」
「いいのよ、アタシが早く来ただけなんだから。せっかくだし、フミの分のパフェも頼んでおいたわ」
「本当ですか? ありがとうございますっ!」
フミの笑顔に、アカネはふいと顔を逸らした。実のところ、これはアカネが気を利かせたわけではなく、自分用のパフェを二つ注文していただけの話だった。その真相が悟られる前に、早急に本題に入らねばならない。
「早速だけど……大事な話があるのよね?」
今回、話がしたいと切り出したのはフミの方だった。わざわざ魔法少女に支給されている端末経由で連絡してきたのだから、きっと重要な話に違いない。
「そ、そうなんです。でも話があるのは私じゃなくて、これから来てもらう人っていうか……じゃあ、ええっと。驚かないでくださいね……?」
「……?」
ひとこと前置きしたフミはスマホを手に取ると、誰かへ向けてメッセージを打ち込んでいた。
どうやら外で誰かを待たせているらしい。フミがメッセージを送信したような動作をした直後、カフェの入り口に取り付けられたベルが軽やかに響く。そしてコツコツと軽やかな足音が近づき――アカネ達が座っている個室の前で足を止めた。
現れたのは、漆黒のゴシックドレスに身を包んだ、人形のような少女だった。透き通るような銀髪に、吸い込まれそうなほど深い輝きを秘める、紅い瞳。
見間違えるはずもない。この少女の正体は――。
「――先日は世話になったな、アカネ。今日は落とし前をつけてもらいに来た」
「い、インビジブル……」
アカネはこの瞬間、己の死を悟った。最後の晩餐は、パフェで決まりだ。




