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もちろん、呼び出し。


嫌な予感はしていたが、まさか入学式の日に学院に入る直前で足止めを食らうとは思わなかった。


馬車から降り、豪奢な門を通り、さあ学生としての一歩だと校舎に足をかけた瞬間、背後から呼びかけられ、振り向くと同時に大の男達によって取り囲まれた。唖然としたまま、呼びかけた者を探すと、いつの間に近付いたのか少年が目の前にいた。ホワイトブロンドを靡かせた麗しの少年はーーールアノール・アラン・リスイン第三王子だった。


「君が、イヴ・スニネンかい?」


優しげで通る声をした彼は、長い睫毛から大きな瞳を輝かせこちらを窺く。透明感溢れる存在に、これが王族かと実感する。


「左様でございます、ルアノール・アラン・リスイン様。」

「これから学友になるのだから、アルで良いよ。」

「大変有り難く存じますが、他の学生の目もございます。敬称を省略するのはご容赦戴ければ幸いです。」

「……そうだね。ならルアノールで手を打とう。」

「有り難き幸せでございます、ルアノール様。」


口を開けば突然愛称で呼べと告げる彼に、父が述べた“自己顕示欲”は窺えず、内心首を傾げる。


「僕は何と呼べばいいかな。」

「イヴとお呼び下さいませ。」

「分かった。イヴ、早速だけどお願いがあるんだ。」

「お願い、ですか。」

「僕と友人になって?」


朝早くから待ち伏せして、友人になる事を請う王子様に残念なものを見るような目を向けてしまう。想像を遥かに斜め下へ越えてきた。その後も友人になって欲しい理由を論理的に述べ始めた彼の残念さはとどまる所を知らず、校長の長いお話を拝聴する前にスタミナを削られ、もうどうとでもなれと頷いてしまった。


「ありがとう!!これから友人としても好敵手としても宜しくね!」

「…光栄に存じます。遅れてはなりませんので、会場へ向かいましょう。」

「うん!」


半分以上聞き流しながら、嫌でも耳に入ってきた音を振り返る。どうやらライバル認定されたらしく、僕のライバルになる者は則ち友人だ!と熱弁を振るう様は恐怖さえ感じた。


旧友が“推し”について語る際に似ている事を思い出し、そっと心に蓋をする。性格まで似ていたら厄介事を招くだろうなぁ、今回はどうか刃傷沙汰や絞首とかされなきゃいいけど、と深海に届けと言わんばかりの溜息を漏らす。


斯くして、学院において暫定初の友人が出来た。


入学式が始まり、学院長、生徒会、新入生を担当する学年主任の挨拶から、新入生を代表する王子様へと移る。保護者間にいらぬ軋轢を生みかねない為、保護者代表の挨拶は省略するようだ。王子様は残念さを微塵も見せず、流麗に祝辞を読み上げる。最後に、脇に控える教師へマイクを通さず何かを伝え壇上を去った。


その後は特に何事もなく式を終え、各自の教室へ向かう生徒が行き交う中、再び背後から声をかけられる。振り向けば、王子様。背後から出没系王子って嫌だなと思いながら、王子様と共に歩く。


「ねえ、クラス同じだったね!」

「そうですね。ルアノール様と並び講義を受けるなど恐れ多いですが、宜しくお願い致します。」

「そんなに堅いと寂しいから、もっと楽に話してよ。本当は、敬称も嫌。ここでしか息が抜けないんだから、お願い。」

「承知いた…わかった。堅苦しいのは止めるから、早く教室に行こう。」


結局、王子様の美貌と周囲の目を前に心が折れ、敬語を止めた。護衛が怖い。頼むからそう睨まないで、寧ろその王子様を管理してくれればと願うも伝わらず、一方で隣の王子様は笑みを深める。


教師後方のドアを開けると既に教師が何か説明を始めており、急いで着席をする。


「今来た者!名を述べよ!」

「ルアノール・アラン・リスインと申します。」

「遅れてしまい申し訳ありません。イヴ・スニネンと申します。」

「承知した。私はこのクラスを担当するニコラス・レフティだ。次から気を付けるように。」


教壇に立つ男性、レフティ教諭は手元のノートに何かを書き込み、説明へ戻る。あれが名簿だろうか。ざっと教室を見渡した限りでは、生徒は約20名程、女子は5名と男子が多いようだ。王子様を除けば特筆すべき家系の者はおらず、安堵する。貴族同士の面倒事は避けるに限る。


「………これにて、初回講義を終了する。殿下とスニネンは前へ来るように。」


絶対、王子様のせいだ。


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