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姪とオンライン!  作者: 漆之黒褐
第三節 『LEGEND OF DARKNESS』
98/115

メイドの Partner

 プレイヤー一人を助け出すだけのミッションだった筈なのに……なんでこうなった!

「へ~、そうだったんすか~。みなさん、西にある村の住人だったんすね~。それは災難だったっす」

 シン君を助けに来た筈なのに、全く予定になかった大勢のNPCさんたちを助け出す事に成功致しました。しかも彼等彼女達はもはや住む所もなくなり、俺達にすがるしかないとか。老若男女、戦闘力がまるでなさそうな人達――一部、なんか獣も混じってますけど――がゾロゾロとそれぞれのパートナと共に歩いています。彼等は皆、プレイヤーがキャラメイクしたNPCなので、本当に統一性がありません。同じ村に住んでましたと言われても首を傾げるしかないでしょう。ってか、明らかに家畜やペットと思わしき獣ちゃんと意思疎通してる人達はいったい……。

 これから彼等はパートナーとなったプレイヤーに第二の人生を用意してもらった上で、必要に応じて各々の能力をプレイヤーのために使ってくれるそうです。お爺さんはこれからミッチリ修行して魔法使いになって共に闘ってくれるそうです。ちっちゃい少女は使い間の猫を探したあと、魔女になって戦闘したり生産したりする予定です。、巨大ひよこちゃんはペットとしてプレイヤーの家に住み込みモフモフされるのを待つだけだそうです。お帰りなさい、ピヨピヨだそうです。他にも、自分そっくりなメイドさんやらナイスミドルな中年紳士やら狼さんやら色々です。

 お爺さんを作ったレイ君は、いったい何を思ってそんな人物をキャラメイクしたのでしょうね。魔法使いとして役に立ってもらう以外にも執事として頑張ってもらうそうですが、何故かその頑張り先がユダちゃんのお店の予定なのは何故に……。もしかして毎日お店でてんてこ舞いのユダちゃんを思っての事なのかなぁ? 本当なら可愛いショップ店員のお嬢さんを作りたかったみたいですけど、親密になるとユダちゃんとの間に亀裂が間違いなく入りそうなので、お爺さんにしたのかも。

「私、犬が欲しかったんですよね。嬉しいです」

 センねぇちゃんは自分よりもちょっと大きい日本狼さんをチョイスしていました。『犬ではないのだが……』と日本狼さんがダンディーな声色にて念話チャットで喋ってましたが、みなさんパートナーとの会話で忙しいため誰も気にしていませんでした。センねぇちゃんはその太い首に抱き付いてモフモフしているため心ここにあらず。えっと、その狼さんって家で飼うんですよね? となると必然的に俺も一緒に世話する事になるんですよね? 餌とか何を用意したらいいのかな~。やっぱお肉かな~。プチポちゃんですくすく成長したりしないかな~。餌代、誰が捻出するんだろ……。

「世の中には自分とそっくりさんが3人いると言いますが、まさかこんな所で出会えるとは思えませんでした。これから宜しくお願い致しますね」

 などと言っている確信犯はユリアちゃんです。この世界ではユリアちゃんとユダちゃんは若干容姿が異なっているため、そっくりな双子さんと言うには微妙なそっくりさんです。その二人の中間に位置するような女性をユリアちゃんはキャラメイクし、しかもその姿はメイドさん。レイ君と同じようにユダちゃんを思ってのことなんですかね。もしくは、似た容姿の女の子を使ってレイ君を誑かそうとしてるとか……いえ、考えすぎですね。ユリアちゃんはそんなどす黒いオーラは纏っていません。双子の妹の彼氏を奪うなんて、そんな……ち、違うよね? 違うと言って!

「うっし。捕らえられてた奴等も救出したことだし、これでこのクォーターも終了だな」

「次はいよいよ最終クォーターの逃亡戦ですか。まさかこんな不利な条件が待っていたとは思いもしませんでしたが、あなたは私が命にかえても守ってみせます」

「その言葉、俺に向けて言ってないよな……そっちの誰とも知れない男に言ってるんだよな? つーか、どっかで見た事あるような……」

「気のせいです」

「そうか? うーん……確かにどこかで……」

「……目元が私にそっくり? えっ?」

 何やら不穏な空気を醸し出し始めている親子の会話はさっくり無視して。というか、まだ肝心のシン君を助け出していないんですけど~。こっちが本来の目的なんですけど~。忘れないでくださいよ。

「あれ? シン、どうしてこんな所にいるんすか?」

「やはり皆さんでしたか。ご無沙汰しています」

 うわっ、レイ君まで忘れてた!? おーい……。

 お爺さんの背中を押しながら階段をのぼっていると、前から聞き覚えのある声が聞こえてきました。あれ、シン君? なんで牢屋の中にいないの? 折角、こっそり拷問器具を鎧の中に忍ばせてシン君の待つ牢屋へ向かってたのに。あんなことやこんなことをしてシン君を可愛い声で鳴かせようと思ってたのに。残念でっす。

「急にイベントが始まったかと思うとキャラメイクするよう指示があり、それが終わると作ったばかりのキャラが僕を牢から助け出してくれてビックリしました。その分だと、皆さんのイベントと連動して僕にも恩恵があったようですね」

 やたらと巨大なモンスターがお爺さんの前にいるので姿は見えませんが、間違いなくシン君の声です。ちなみに、俺の視界を遮ってる巨大なモンスターさんは――大きいだけで一応人ですけどね。でも大きすぎてもはやモンスターとしか思えません。身長3メートル越えてました――血が大好きな美少女作です。きっと、大きいと血も吸い放題とか思っているのでしょう。あとは、乗用? 可愛い少女が肩に座ってウツラウツラしていました。いいな~、らくちんそうで。

「……おう、坊主。元気だったか?」

「今、間がありませんでした? まさか僕の事、忘れていたりしました?」

「気にするな。減るもんじゃねぇ」

「僕ってそんなに影が薄かったかなぁ……」

「そんな事より、わざわざ助けに来たんだから感謝しなさいよね」

「あ、ツンだ。ツンツン」

「ツンはいりまーす」

「誰がツンよ! 指差すな!」

「ミッキーにもついに春が……ほろり」

「いや、私の事を心配する前に、ねぇやとねぇねの方が心配なんだけど」

「女子校に春なんてないわよ。はぁ……共学だった中学生に戻りたいなぁ」

「兎に角! シン君、無事でよか……って、何よあんた。割り込んでこないでよ」

 邪魔なお爺さん巨人さん三姉妹ちゃん達をぐいっと押しのけてシン君の前にやってきます。うん、やっぱりシン君だ。間違いありません。そのシン君の隣にいるのは……女性のお侍さん?

 ……はっ! まさかシン君は、ササメさんみたいなのがタイプなのか!?

「初めましてだにゃー。拙者、ニャにゃくさと申す者だにゃー。以後、お見知りおきをお願いしますだにゃー」

「「「「「「「「「……」」」」」」」」」

 シン君の肩にポンっと手を置いて、首を横に振りました。うん、色んな所で間違ってますよ。猫耳尻尾ないのにニャ語だったり、見た目は格好良いお侍さんなのにニャ語だったり、美人が台無しになるような猫のような笑顔を浮かべたり、色んな意味で萌えられません。シン君、どうしてこんなキャラ作ったんですか? ああほら、皆さん呆気にとられているじゃありませんか。

「相変わらず、シンの趣味はよく分かりませんね」

「ツッコむのは時間の無駄っすから、さっさととんずらするっす」

「?」

 猫侍さんは首を傾げていました。うん、NPCに罪はありません。罪と罰は彼女を作ったシン君にあります。拷問器具、持ってきて正解だったかも……。あとでみっちりお仕置き致しましょう。ぐへへ……。

「そんなに変かなぁ……」

 出来れば見たくなかったシン君の知られざる一面を華麗にスルーしながら上の階へ。仲間になった他のNPCさんもかなり微妙な顔をしていました。特に日本狼さん、それは流石に距離取りすぎでっす。猫と犬なんですから、猫侍さんの方が距離を取る側じゃ……あ、怯えてる……生理的に受け付けないようです。

「そう言えば、今日はあの黒馬さんはいらっしゃらないんですね」

「いや、いるっすよ? ただ、あの巨体で後ろにいられると退路を断たれたみたいに感じるっすから、少し遅れて進むようにお願いしてるっす」

 それを言ったら巨人さんもお邪魔なんですけどね。部隊のど真ん中に陣取ってるから前後が分断されている気が致しますよ。

 ……あれ? よく考えたら、あの黒馬さんが俺の相方になるのかな? マスコン限定だと思ってたんですけど、ここまでついてきたって事は、この鎧さえ着ていれば良いって事ですよね? ああ、でも流石に家で飼う事は出来ませんから、放し飼いになっちゃいますけど。

「……っと。お静かに願います。どうやらここからは敵がいるようです」

 敵拠点の只中で無駄話をしまくってた事には一切お咎めなしだった事には少し残念に思いながら、俺も動きを完全に止めます。俺の鎧、動くとガチャガチャ五月蝿いんです……ああ、もしかしてこの鎧の音はどうやっても消せないから、皆さん諦めていただけです? だったら御免なさい。この鎧、あらゆる法術の効果を弾いちゃんです。だから音を消せる法術も効かなくて……。

『当初の予定だと用水路から逃げるつもりだったんすけどね。突破した瞬間、敵さんがわんさか沸いて諦めざるをえなかったんす』

『なんとなく予想はつきます。僕も地下にはきっと隠し通路があると思い下に降りていましたから。皆さんが僕と合流しても上に向かおうとしたことから、下は無理だというのはだいたい想像がつきました』

『てかさー、あの七草って子、どうやってここまで来たんだろうねー。ちなみに私達の相方は牢屋の中に捕まってたんだよー』

『それは本人に聞いてみない事には。落ち着いたら聞いてみますね』

『今答えてあげるにゃよー。このお城の前のお殿様に用心棒として雇われていたにゃー。でも屋根の上でお昼寝してたら、いつの間にかお城が陥落してて困ってたにゃよー。あと、拙者の名前は七草じゃなくてニャにゃくさにゃよー』

『うぉっ。念話も出来るのかよ、このどら猫』

『どら猫言うにゃ! たたっ斬っちゃうにゃよ!』

『む……まさか、ウズウズ?』

『にゃにゃ? 同類かにゃ? 辻斬りするのは大好きにゃよ』

 美人の女侍さんが真顔でにゃニャにゃニャ喋る姿は異様としか言いようがありませんでいた。実はその姿は着ぐるみで、中身があったりしません? 辻斬りが大好きな人は犯罪者さんだけです。

『いや、そんなことより、この砦に勤めてたって事は、間取りも知ってるって事だよな』

『うん、知ってるにゃよ。敵さんの配置から今朝の朝食の献立まで調査済ですにゃ』

『おっ、なら話は早いっす。誰にも見つからずにこの砦を抜け出る道を教えてくれっす』

『ぴよぴよ』

『え? お腹が空いたんですか? すみません。もう暫くの間、辛抱してください』

『今の言葉でどうして通じたんだろう……』

『台所はこっちにゃー。見回りが来ないうちに早くこっちに来るにゃー』

『うぉ、いつの間に』

『いや、別に台所に案内して欲しい訳じゃないんだけど……』

『もう、ねぇやのピヨコンのせいだからね。ところで今日の朝食メニューは何なの?』

『毒茸と毒草の雑炊に、ふっくらしてないパンと排水にゃよー』

『……それ、明らかに人間の食いもんじゃねぇだろ。パンは兎も角として』

『え? この砦に詰めてる人達って、そんな酷い物を毎日食べてるの?』

『昨日のうちに食材を拙者が交換したんだにゃー。夜が明けたらどさくさにまぎれてとんずらする予定だったから、その置き土産にゃよー』

『おぉお……計画的犯行だ』

『ってか、それなら俺達が食堂に向かってる意味ねぇじゃねぇか。摘み食いしたら食中り起こしちまうだろうが』

『あ、そうだったにゃね。すっかり忘れてたにゃ』

 回れ右。さっきまでいた場所に戻りましょう。どうやらこっちに進むと砦の内側に進む事になるようです。袋の鼠が袋の中央に向かってちゃ世話ないですね。

 という訳で、元の場所に戻りました。そしたら、敵兵士さん達が大きな黒い馬に向けて槍を構えていました。あ、ヴェル君です。どうやら少し遅れて後ろについてきていた事が裏目に出たようです。警告を促すの、忘れていましたよ。

『あ、でっかい馬刺しにゃ』

『食いもんじゃねぇ!』

『ぴよぴよ』『ガルルゥ』『いきます!』『あ、おいっ!』

 チャラララララララララ~、ズっチャッ、ズっチャッ、ズっチャッ、ズっチャッ。

 戦闘が始まりました。ただ、何気に音楽が流れ始めたのは何ででしょうね。みなさん気が付いていませんよ。くすっ。

 っと。とりあえずそんな事は後回しにして、先陣を切って奇襲を仕掛けたひよこちゃんを追い越して――足遅いね。短いから仕方ないのかな?――日本狼さんとセンねぇちゃんが敵兵さん達に斬り掛かりました。

「……なにっ!? ぐあぁっ!」

「て、敵襲! 敵襲てきぎゃぁぁっ!」

 センねぇちゃんの刃と日本狼ちゃんの牙が同時に一人ずつ屠り、次の敵へ。敵の数は7人。つまり残りは5人。突然の奇襲に驚きはしたものの、先にヴェル君という異物を見ていたためでしょう、敵兵士さん達はあまり慌てることなくすぐに体勢を立て直しました。

 センねぇちゃんの鋭い剣閃が槍によって受け流され、日本狼ちゃんの口が槍の柄で受け止められます。しかしその次の瞬間!

「ぴよぴよ!」

 華麗に飛んだひよこちゃんのキックが、その敵兵士さん2人の身体を蹴り飛ばしました。お、意外とやります。愛玩動物に座に納まっているつもりはないという事でしょうか。

 その一撃で体勢をややぐらつかせた敵兵士さん達の眉間にトストスッと矢が刺さり、僅かに遅れて凶刃凶牙が2人の身を容赦なく貫きました。明らかにオーバーキルです。

「野郎ども! ひよこ如きに遅れをとってんじゃねぇ! 俺達もいくぞ!」

「ぴよ!」

 一瞬、「如き」と呼ばれたひよこちゃんのこめかみに怒りマークが浮かび上がった気がしましたが、すぐに喧噪に包まれて見えなくなりました。ってか、残り3人に対し、20人以上のプレイヤーがよってたかってタコ殴りって……攻勢に出ず防御に徹していたのが仇となったようです。ああ、可哀想だな~。

 などと暢気に構えていてはいけませんね。敵は仲間を呼びました。つまり、すぐにここは敵兵士さん達で埋め尽くされる可能性があるという事です。四方八方の通路からワラワラと敵が現れたらもはや袋の鼠。こちらは半数が無力なNPCなのですから――の筈なんですけどねぇ。獣ちゃん達が何だか凄く頼もしいです。一匹、猫っぽいのも混じってますけど――円陣を組んで戦うより他なくなります。そうなったら最後、なぶり殺しにされるだけです。

 つまり、ここは指揮官の腕の見せ所!

 血を見て興奮し始めているプレイヤー一同と獣ちゃん達と、血を見て血相を変えたNPC一同と。その彼等とは異なる視点で周囲を見渡します。あ、ヴェル君に騎乗しました。だから視点がみなさんより2メートルぐらい上にありまっす。異なる視点というやつでっす。

「黒助がこの部隊の指揮官かにゃ?」

 誰が真っ黒黒助ですか、失敬な。

 今まさに命令を出そうとしたら、猫侍ちゃんが話し掛けてきました。命令以外の言葉は喋るつもりはないので――あ、少し前にヴェル君を呼んでましたね。でもあれはヴェル君への命令なので、ノーカンでお願いします――首を縦に振る事でその質問に答えます。

「だったら、道案内するから拙者もそのお馬さんに乗せて欲しいにゃー」

 少し考えました。とっても重要な事です。

 ニャにゃちゃんを乗せるなら邪魔にならない後ろが良いですかね? ゆったりとした着物を着て隠しているみたいですが、そのお胸様は明らかに巨乳クラス。恐らくさらしを巻いていると思いますが、後ろから抱き付かれればきっと幸せ気分間違いなし!

 それとも合法的に抱ける前に乗せましょうかね。間違ってそのお胸様に腕があたっても事故だと言って誤魔化せます。それに、香りを嗅ぐなら断然前です。要は喋らせなければ良いだけなので、いっそ猿轡を噛ませてしまいましょうか。あとは後ろ手に縛って、俺の身体と彼女の身体を一緒に縛って……あれ? なんだか方向性が間違ってきたような?

「出来れば僕も乗せて下さい。僕は武器防具を奪われているため戦力になりません。それに、僕が死ぬとその時点でこのミッションは失敗に終わってしまいます。ならば守りやすいように目立つ場所にいた方が良いと思います」

 という訳で、前はシン君が陣取る事になりました。必然的にニャにゃ侍ちゃんは後ろに。つまりサンドイッチ!

 ああ、幸せだ……と思ってたら、良く考えたら鎧が邪魔で二人との接触点がまるで分かりませんでした。2人がすぐ側にいるという事は何となく分かるんですけど、鎧が邪魔してほとんど何にも感じませんし、兜のせいで何にも見えません。身体を動かそうとしたらいつもより抵抗が大きいなとしか感じませんでしたよ。くすん。

「いいな~、私も白馬の王子様と一緒したいな~」

「黒馬っすけどね。しかも中身は女性っす」

「黒馬に乗った女王様ってか? 皮も肉もなくして骸骨と成り果てた奴隷兵士が良く似合いそうだぜ」

「なんか萎えるな、それ……全然嬉しく感じねぇぞ」

「たーかーいーにゃー♪」

 あ、こら。立たないで下さいよ。自転車の二人乗りみたいに、俺の肩に手をかけてるのが何となく分かりました。この状態でヴェル君にジャンプお願いしたらどうなるんですようね~。ウズウズ、ジャンプしてみたいな~、ウズウズ。

「ニャにゃくさ氏、砦の出入口はどちらでしょうか?」

「あっちにゃよー。早くしないと城勤めの足軽さん達で埋め尽くされちゃうにゃよー。足軽さん達の寝床は入口とは反対の方にあるにゃー」

「だそうです。お願いします」

 あいよ。ヴェル君、いっくよ~。

「うにゃっ!?」

 あ、思わずいつもの癖でウィリーしちゃった。って、わわ! この体勢で兜にしがみつかないで! 取れちゃう! 正体ばれちゃう!

「ふー、危なかったにゃ。一瞬、三途の川が見えたにゃよ」

「……ちっ」

 あ、シン君が舌打ちした。まさか、謀ったな!?

「む……今の舌打ちは何にゃ? ……もしや、拙者の首を取りに来た、国からの刺客にゃか!?」

「あ、いえ。申し訳ありません。そう言う意味ではなかったのですが……」

「問答無用にゃ! そこになおれにゃ!」

 ああ、こらこら。こんな時に仲違いはよしてくださいよ。というか、暴れないで下さい。ヴェル君が困っているじゃないですか。 あんまりオイタをすると躾けちゃいますよ?

 ギランっ。

「むむっ! その眼光、その殺気。き、貴様、出来るにゃ……」

 殺気までは出してないんですけど……。とりあえず大人しくなったから良っか。

 もはやゆっくりしている意味はないので、盾職おじさん達を先頭に全速で砦入口を目指しました。流石に通路は狭いので、疾風陣形や雁行陣形という移動速度をあげてくれる陣形は使えません。用水路では部隊が3つ以上に別れたのでPTごとに陣形を組ませていましたが、今は全員がこの場にいるうえに、NPCさん達を加えたらアドホックPTの許容数をオーバーしちゃったので、その上の同盟(アライアンス)PTになっています。

 つまりそれは、部隊全体としての陣形を組むと陣形失敗時や陣形未機能時のデメリットが半端なく大きくなってしまうということ。かといって個々に陣形を指示するにしてもこの狭い通路では戦闘を行うのはほぼ先頭か殿、もしくは横道から現れた敵さんと一時的に戦う場合のみなので、わざわざ陣形指示しても効果は薄いです。だったらもうお任せにしちゃった方が良いですよね。

 ちなみに、アライアンスPTの中に組み込まれている2つのアドホックPTの片方は、シン君にリーダーをしてもらっています。もう一方は当然俺でっす。センねぇちゃんを戦いに集中させるために、手持ちぶさたなシン君にお仕事をあげました。

 とはいっても、シン君のPT内にいるのはNPCさん達だけですけどね。実力の分からない猫侍さんや日本狼さん、巨大ひよこさん達に加え、有象無象の老若男女とそのパートナーであるプレイヤーとの関係を加味したうえで改めてPT編成を考えるのは流石に面倒なので、全部シン君に押し付けちゃいました。

「そこを右に曲がれば城の入口広場に出られるにゃー。そしてそこを抜ければ城の外に出られるにゃよー」

「もう少しっすね!」

「はん、思ったよりも楽勝だったな」

「一時はどうなる事かと思いましたが、何とか逃げ切れそうですね」

「後ろに敵でちゅ!」

「げ、前からもやってきてるっすよ。やっぱり、寝てる人達が起きてしまったっすか」

「だとしても、僕達は入口に向けて走るより他ありません」

「前の通路は俺達が塞ぐ! だから先に行け!」

「だったら俺は後ろに向かうっす! シンはそのまま真っ直ぐ砦から逃げるっす! シンが砦から出ればきっとミッションクリアっす!」

「すみません。後の事は任せました」

「はい、任されました」

「入口の広場に敵がいたら私達が掃除しちゃうよ~」

「リアルのお掃除は苦手なんだけどね」

「……私も斬って良い?」

「思う存分に斬りなさい。今日はきっとこれが最後の戦いです」

「リミッターも解除して良い?」

「それはダーメ。切り札は最後の最後まで取っておきなさい」

「最後って、いつ?」

「私達が全員死んだ後。じゃないと、私達もあなたに殺されちゃうから」

「ん、分かった。みんなが死んだら……ミンナコロス」

 ……いま、物凄くやんばい気が漏れ出たような気がしたんですけど……気のせいかな? うん、怖いから彼女だけはあの親子さん達の中で最後まで生き残さないように(ヽヽヽヽヽヽヽヽヽ)致しましょう。なんか本気で身の危険を感じました。

「一番乗り取ったー♪ ……って、え?」

「あ、ずっこい。どさくさに紛れ、て……ミクちゃん?」

「おい、何してる! 立ち止まるんじゃねぇよ!」

「どうしました?」

「御免……まずったかも……あと、お願い……」

「ミッキー!?」

 もはやこのミッションの成功は間違いないだろうと思い浮き足立っていた俺達は――その油断の代償に、かけがえのない仲間の命を失う事になりました。

 胸を矢に貫かれた少女は、驚愕する姉二人の腕の中で静かに息を引き取りました。







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