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姪とオンライン!  作者: 漆之黒褐
第三節 『LEGEND OF DARKNESS』
97/115

メイドの Prisoner of War

 ねくすと、メイドずストーリー!

 ようやく砦に入る事が出来ました。後ろから大量に襲い掛かってきたモンスターさん達に追いやられるような形で。どうやら用水路からは逃げられない仕組みにされているんですね。退路を断たれました。

「まぁ、ここまで来たらシンを助けだした後は正面入口から逃げる方が手っ取り早いっすね。大は小をかねるっす」

「意味分かんねぇぞ、おい。何が大で何が小だよ」

「コソコソが小で、堂々が大?」

「何でも良いから早く帰りたいです。ここは空気が悪くて正直気が滅入ります」

「囚人や捕虜をいれとく場所だからな。きたねぇのは仕方ねぇだろ」

「まだ用水路の方が綺麗だったでちゅね」

「きっとサハギンさん達が綺麗好きなんでしょう。自分達の住処ですから」

「ねぇやよりもお嫁さんに向いてるね」

「あんなのと比べないでよ。それにそれを言うならミクちゃんもそうじゃない」

「私はまだ年齢的にセーフということで」

「学年は違うけど私とあなたじゃ一月もかわらないじゃない……」

 3月生まれと4月生まれなんだ。って、あれ? 計算がまったくあいませんよ? 1ヶ月で出産? どうやらお二人の間にはやんごとなき理由がありそうですね。

 それはそれとして、用水路の上、砦の地下には誰もいませんでした。用水路の中にはあんなに敵兵士さんがいたのに拍子抜けです。今度も向かってくる敵さん達を千切っては投げ千切っては投げながらシン君を探して、そのまま最後のクォーターである逃亡戦になると思ってたんですけど。そうは問屋が卸されませんでした。いや、楽だから良いけど。

 ちなみに、現在の陣形は隠密陣形です。隠密スキルを持っている人を中心に陣形効果で全員の隠密性を高め、物音一つたてないようにしています。まぁ、普通に会話しちゃってる時点でもはや意味ないけどね。抜き足、差し足、忍び足。ついでにお口チャック足が欲しいです。

「ってか、死体ばっかりだね~。ゆ……」

「わーわーわーっ!」

「あー、もう五月蝿いなぁ。隠密行動中なんだから静かにしてよ」

 そう言うあなたもお口にチャックをお願いします。声の大小以前の問題です。小は大もかねますよっと。うん、俺うまいこと言った!

「それより、外が静かなのも気になります。本当ならマリリンが隕石のスコールを降らせている筈なんですが……」

「いやいや、流石にスコールはやべぇだろ。この山脈が消し飛んじまうぞ。つーか大地が割れる」

「物の例えです」

「例えが凶悪過ぎるでしょ……でもそれぐらい凶悪だからねぇ、マリちゃんのあれは」

「あれでもかなり使用には制限があるんですよ。MPもSPも一発ごとに物凄く使うので、回復ドリンクとかガブ飲みなんです。御陰で序盤はかなりお金に難儀しました。根こそぎモンスターを消し飛ばしてしまうので素材もとれませんでしたし。あんなに撃てるようになったのはカズミちゃんがプチポを量産してくれるようになってからです」

「あ、そうなんだ。良いわね~、身近に生産職がいて」

「でもそれを理由に引き籠もっちゃうので、なかなか一緒に遊んでくれないのです。私達はもっと一緒に遊びたいんですけど……どうにかならないものですかね」

「強制的にクラスチェンジさせてみたら? ほら、誰かさんみたいに悪い事してお巡りさんに捕まれば変更してくれるよ」

「俺、なんにも悪い事してないんすけど……」

「一応その手も試してみた事はあるんですけど、なんだかんだ理由つけて結局回避されてばかりで……お巡りさんも美人なカズミちゃんには弱いみたいです。何気に街の有名人だったりしますし」

 なんか物騒な情報が手に入りましたよ。へー、俺って何度か罠にかけられたことがあるんだー。リアルでお仕置きコースですね~。悪い子はお尻ペンペンの刑です。うん、今から楽しみでっす。

「あれ、そうなんだ。カズミン知名度高いんだ。あんまりクエストしてるイメージないんだけどな~。というか、街で見かけても大抵は女友達とお茶してるだけだし。クエスト斡旋所でも一回も会った事ないな~」

「……女の方とですか?」

「うん。しかも毎回違う人なんだよね~。プレイヤーとNPC見境なく。もしかしてカズミンってそっち系?」

「リアルに帰ったらお尻ペンペンの刑ですね。うん、今からとても楽しみです」

 あらあら、お互いに叩き合う事になりそうです。でも、なんだかデジャブです。前にも同じ様な事があったような~。あの時はマリリンでしたっけ?

「それより、シンのヤツどこにもいねぇな。まさかマリリンが空から攻めてきた事で殺されちまったか?」

「縁起でもないこと言わないでください、ヤッさん」

「誰がヤクザだゴラァ! いてこますぞ、われ」

「しっ、お静かに。一応、隠密行動中なのですから、もう少し声のトーンを下げて下さい」

 いや、そもそも喋らないで欲しいんですけど……。もしくはPT念話チャットにしてくださいよ。こんなの、隠密でもなんでもないです。

「この階にある牢は全部調べ終わりましたね。上の階に行きまちゅか?」

「それ以外にどんな選択肢があるんだよ」

「諦めて帰る!」

「ねぇね、ここまできてそれはないって」

「敢えてこのタイミングで火をつけるってのもあるぞ?」

「そもそもそんな予定はありませんし、そんな事をしたら私達もピンチになりますよ。前門の敵、後門に火です」

「後門に火って……なんか卑猥っす。おな……」

「その先は言っちゃダメ。シャットアウト」

「う、御免っす」

「屁でも河童でも何でも良いからさっさと行くぞ。もうすぐ夜明けだ。ぐずぐずしてたら寝てる兵士も起きて行動を開始し始めちまうぞ」

「ああ……私が折角とめたのに……」

「寝てる間にブスッと……ウズウズしちゃいます」

「血は、目覚める寸前が一番濃厚で美味しい……」

「そうなのですか? 今度カズミちゃんで試してみますね」

 なんか背筋に悪寒が……やばい、俺は毎日1時間遅れでログインしてるから、目覚めは確実にチーちゃんよりも後なんだよな~。チーちゃんのことだから本当に血を吸ってきそうだし。

 明朝、寝ている俺の上に馬乗りになって俺の首にそっと牙を立てて噛み付いてくるチーちゃん……む、なんか別に良いような気がしてきましたでっす。これって見方を変えれば抱き付いてきてるって事ですよね? しかも寝込みを襲っているって事ですよね? 言いかえると夜這い……じゃありませんね、夜襲でっす。闇討ちでっす。ふ~、危なかった。いけない思考に走るところでした。俺がヴァンパイアゾンビになって一生チーちゃんに尽くす吸血奴隷物語がスタートしてしまうところでした。それだとお尻ペンペンの刑をするタイミングがなくなっちゃいますよ。

「こっちの階は下よりも少し綺麗っすね」

「下の階は拷問部屋もかねてるんだろう。そういう器具も階段横に一杯並んでいたしな」

「これとかです?」

「って、持ってくるなよそんなもん。いったい何に使うつもりなんだよ」

「引き籠もってるカズミちゃんをこれでビシバシ叩いて外に連れ出そうかと」

「……お馬さんごっこ?」

「いや、何故そこでそんな可愛い光景を思い浮かべる……何度か実際にやられた事あるが、洒落にならんぞあれ」

「この人が犯人です」

「え、私? 全然そんな記憶ないんだけど……」

「まぁ幼少の時だったからな。覚えてなくても仕方ねぇだろ」

「ちなみに、前はお母様がつか……」

「いや、その先は出来れば言わないで欲しいっす。マジで怖いっすから……俺、将来的に身の危険を感じてるっす」

「あらあら、レイ君の良い人はそっちの趣味も持っているのね。今度紹介してもらおうかしら」

「えっと……私の妹のことなのですが……」

「御免なさい。あの子は私の手には余るわ」

 ユダちゃん、あなたはいったいどれだけ危険人物指定されているんですか。手に余るって、つまりそれは指導するべきところがないって事ですか? うん、ユダちゃんには絶対に鞭は手に取らせないように致しましょう。お店に飾っているやたら刺々しい鞭とか、特に!

「……牢に誰かいまちゅね。シン君ではないようですが」

「あ、本当ですね。助け出します?」

「ついでだ。助けてやろうぜ」

「ちゃおー。お元気ー? 思いっ切りついでだけど助けにきたよ~」

「余計な言葉が多いっすね……興醒めっす」

「どなたか鍵開けスキル持ってます?」

「任せろ。鍵開けなら得意だ」

「壊す専門ですけどね」

「鍵破壊スキルっすか……なんでそっちを持ってるんすか」

「チマチマしたのは面倒くせぇ!」

 やたらと頑丈そうな鍵がバキッと音を立てて壊されました。素手で……あれ、それってそういうスキルなの? ハンマーとか道具を使うんじゃないんです?

「おう、鍵開けたぜ。んじゃ、扉開けるぞ。一応、用心だけし……」

「えっ……」

「あ……」

 扉が勝手に(ヽヽヽ)開いた瞬間。俺以外の全員が急に動かなくなりました。あれ、どうしたんだろ。中にいるNPCがとんでもなく可愛かったり、それとも急に変身でもしたのかな~?

 などと思いながら牢屋の中を覗き込んでみると、そこには誰もいませんでした。え? 誰もいない? でも確かに皆さんは誰かが捕まっているようなお話を……。

「呆けているところ失礼致します。どうやらご自分の置かれている状況をお忘れのようでしたので」

 あれあれと悩んでいると、プクーラ君が再び現れました。小生のお仕事はこれで最後~とか言っていたのに、自ら残業しに来たようでっす。ありがとね~。

「あなたはミッションがまるで進んでいませんので、ここでのイベントからは除外されました。以上です」

 ボンっといってプクーラ君が煙となって消えました。忍法、煙隠れの術!

 すぐに回り込んで、死角から立ち去ろうとしたプクーラ君を捕まえちゃいました。普通にさようならと言って飛んでいけばいいものを……その退場方法はポックル君がよく使うので、とっくに見切っちゃいましたよん。

「楽しいですか? 小生を捕まえて」

 楽しいですか? そんな格好良い退場方法をして……と小声で耳打ちしてみたら、プクーラ君の顔が真っ赤なリンゴになりました。くすっ、可愛い♪



♪♪♪♪♪♪♪♪姪とオンライン♪♪♪♪♪♪♪♪



 暇でした。だってなかなか誰もイベントから帰ってこないんだもん。悪戯しようとしても謎のぶよぶよ透明空間が邪魔して近づけませんし、ならばアングルを変えれば絶景が見えるかな~っと思って少し頑張ってみましたが、それにはまず鎧を脱がなければならないので断念致しました。脱いでる時に誰かが帰ってきたらピンチですからね。

 仕方ないので、ポケットの中に入れていた簡易錬金術生成セットを鎧の中で使って、劣化プチポちゃんを生成しながら暇を潰しました。素材? 下の階にいけばいくらでも手に入りましたよ。何を使ったのかはヒミツです♪ 知らない方が身のためです。おもに使う人達が、ですけどね。

 ああ、そうそう。皆さんのお帰りを待っている間に2度ほど敵兵士さんが見回りとしてここにやってきました。一度目は皆さんの意識があちらの世界へ飛ばされてすぐ。二度目は下の階に素材を取りに行って帰ってきた直後です。どちらも危なかったです。

 幸いにして、敵兵士さんは牢屋に捕らえられている謎のNPCさんの恐怖心を煽るためか、地面をコツコツと鳴らしながらやってきたのですぐに分かりました。音が聞こえてすぐにそそくさと入口の裏に隠れ、敵兵士さんが通り過ぎた瞬間に……チャラリ~~、チャ~ラッチャッチャッチャッチャ~ラ、チャラリー~……口を抑えて首筋をぶすりと。必殺の仕事を致しました。本当は糸で吊してピンッてしたかったんですけどね~。今回は諦めました。

 倒した敵兵士さんの身包みを剥いで、中身は下の階にぽいっ。何だかとっても悪人になった気分です。まぁこの世界では既に何千人もの敵兵士さんの命をマスコンで奪ってしまっているんですけどね。今更罪悪感なんて……うう、御免なさい。俺がやりました! だからカツ丼を……。

 それにしてもお腹減ったなぁ。プチポちゃん飲んでもお腹は膨れないし、そもそも俺はアイテム収納系のスキルを持っていないので、鎧の中に隠して持ち歩くしかありません。でも鎧の中は蒸れるので、お弁当とかっていれておけないんですよね。美女の汗が染み込んだ御飯というのも乙なものですが、それが自分のものとなると流石に……それ以前に中身は男ですから~。いや、他人の汗でもいい気はしませんけど。俺にそんな変態趣味はありません。

 兎に角、この鎧姿でいる限り、俺は食事を取れません。道中にセンねぇちゃんやレイ君達はオニギリやサンドイッチを広げてワイワイ食べてましたけど、俺だけなーんにも食べてません。ユリアちゃんがお裾分けをくれましたけど、兜を取る訳にもバイザーを開ける訳にもいきませんからね。丁重にお断りさせてもらいました。ああ、あの時とりあえず貰っておくだけ貰っておけば……そのまま腰とかに吊しておけば……あ、でも汚い用水路を通っていたので、やっぱりバッチくて食べたくないですね。

 プチポちゃん作りもそろそろ飽きてきました。普段使わない素材を使っているか、かなりの色物プチポちゃんになってますけど、使うのが俺じゃ無ければ問題なしです。

 ちなみにこんな感じプチポちゃんが出来ています。




 アイテム名:プチプチカーズドリンク・プチ・納豆風味

 生産熟練度:2

 効果:使用するとHPに1のダメージを受ける。

    クラスAの状態異常・呪いを発生。1秒ごとにMPとSPに一定時間回復不能な1のダメージを受ける。(継続時間5秒、回復不能時間120秒)。

    全属性耐性-5%(回復不能時間中のみ)。

    被クリティカルヒット率+12%。

    クリティカル効果発動率+3%(効果が倍になる)。

    死亡すると不死者化する(回復不能時間中のみ)。




 アイテム名:プチプチドラッグドリンク・デンジャラスプチ・ビフテキ風味

 生産熟練度:1

 効果:使用するとHPが1回復する。ヒーリング効果で1秒ごとにHPが1回復する(継続時間60秒)。

    クラスSの状態異常・狂乱を発生。

    クラスSの状態異常・高揚を発生。

    高確率で、10秒ごとにHPとMPとSPに10のダメージを受ける。

    状態異常回復無効。

    クリティカルヒット率+20%。

    クリティカル効果発動率+5%(効果が倍になる)。

    HPがゼロになっても動き続ける(ヒーリング効果継続中のみ)。




 アイテム名:プチプチ偽アムリタドリンク・ミニプチ・キビヤック風味

 生産熟練度:1

 効果:使用するとMPとSPが10回復する。半径20メートル以内の全員のMPとSPに10のダメージを与える。

    クラスSの状態異常・悪臭を発生。使用者の周囲20メートル以内にいる全員に1秒ごとにMPとSPに1のダメージを与える。(最大継続時間3600秒)。

    全属性耐性+10%(悪臭発生中のみ)。

    クリティカル効果発動率+33%(効果が倍になる)。

    被クリティカル効果発動率+33%(効果が1/2になる)。

    敵対心+20。

    NPCの友好値-5。




 うん、取り扱いが物凄く危なっかしいプチポちゃんが出来てしまいましたね。ドリンク飲料としては間違いなく使えません。使うのが俺じゃなくても問題ありありでした。こんな性能じゃ味方だけじゃなくて敵にも使えませんよ。

 生産熟練度も1や2でこの効果ならあげたくないな~。下手に熟練度あげたら、神でも悪魔でもイチコロなプチポちゃんが出来てしまいそうで怖いです。

 ただ、使い道がない訳じゃありません。この色物プチポちゃんを素材として使えば、運が良ければ使える性能だけが新しく配合したプチポちゃんに残ってくれます。クリティカルヒット率+20%とか、敵対心+20とか、地味に恐ろしい性能を秘めていますからね。うまく抜き出せれば今以上に高性能なプチポちゃんが作れます。

 いや~、それにしてもプチポちゃんの生産バリエーションは凄いですね~。普通のポーションだと素材もほとんど固定化されていたり、効果もただHPが回復するだけだったりして作りがいがまるでありません。その点、プチポちゃんはほとんど何でもありです。スキルレベルや生産熟練度が低いと性能は何それ?的なものですけど、失敗覚悟で混ぜ合わせたり素材を変えたりすれば本当に色んな性能の物が作れちゃいます。

 まぁそれは俺のスキルレベルが異常に高いから作れる訳ですけどね。スキルレベルが50やそこらじゃ本当に毛が生えた程度の性能のプチポちゃんしか作れません。生成しようとしてもまず失敗しますし、例え出来たとしても俺が作ったプチポちゃんのように壊れ性能にはなりません。

 まったく、吟遊詩人さまさまですね。職業レベルは相変わらず2のままですけど、その職業レベルが上がった時に一緒に上がった各スキルレベルが軽く3桁を越えているので、他のプレイヤーからみたらもはや神の領域です。一生懸命プチポちゃんを作って100万個もユダちゃんの商店に納品した甲斐がありましたよ。

 あ、ちなみにさっき例にあげたプチポちゃん3つを試しで混ぜ合わせてみたらこんなものが出来てしまいました。




 アイテム名:プチプチヘルドラッグドリンク・デンジャラスプチ・キビヤック風味

 生産熟練度:1

 効果:使用するとHPに1のダメージを受ける。半径20メートル以内の全員のMPとSPに10のダメージを与える。

    クラスSの状態異常・狂乱を発生。

    クラスSの状態異常・高揚を発生。

    クラスSの状態異常・悪臭を発生。使用者の周囲20メートル以内にいる全員に1秒ごとにMPとSPに1のダメージを与える。(最大継続時間3600秒)。

    状態異常回復無効。

    クリティカルヒット率+20%。

    クリティカル効果発動率+41%(効果が倍になる)。

    死亡すると不死者化する(悪臭発生時間中のみ)。

    敵対心+20。

    NPCの友好値-5。




 そのうちマリリンに持たせて、敵さんのど真ん中に空から投げ入れてもらおうかな~。味方が誰もいないところで使えば、間違いなくとんでもない効果を発揮してくれそうです。

 ってか、このデンジャラスプチポちゃんの性能を突き詰めていけば、港街エルファシルを襲ってきた例の狂人鬼さんが出来てしまいそうな……例えば、年季の入った錬金術師さんが戯れに作ったプチポちゃんを、誰かが誤って使用してしまったとか……倉庫の整理中、棚の上から落ちてきてバシャっとか。

 うん、あんまり考えないように致しましょう。家に置いておくのも禁止です。だってマリリンとセンねぇちゃんがたまに廃級プチポちゃんを持ち出して面白半分に使ってるみたいですからね。2人とも鑑定スキルを持っているので、性能も見ればだいたい分かるらしいですし。

 ちなみに、スキル枠は最初の時点では10個しかありませんけど、上位の職に初めてクラスアップした時に1枠増えるそうです。なので、例えば第四段階目の中位下級職までクラスアップしたことのある人はスキル枠13個あります。豪華特典版のVR機器を使用しているマリリンとセンねぇちゃんは更にスキル枠が2個多いです。

 その増えたスキル枠で、2人は鑑定スキルを取ったそうです。やっぱりアイテムの種類が見て分からないと結構苦労するそうです。モンスターさんから素材をとるにしても、何がどういうアイテムか分からないと、アイテム収納空間に入れても《グラントアントの何か》《グランドアントの謎液》とかいう名前が陳列して、何があるのか分からないそうです。しかもスタックする事も出来ず――同種類のアイテムを一括して一つのアイテム欄にまとめることでっす。×99個とでも言えば良いですかね?――無駄に場所を取ってしまうんだとか。なので、今ではもうアイテム収納系スキルと鑑定スキルを持つのはプレイヤー達の常識だそうです。

 どっちもない俺は……くすん。

 それにしても、みんなまだかな~。たぶん、俺がここでみんなを守っていなくても、敵兵士さん達はイベント中のみんなの事はスルーしてくれると思うんだけど……だからといって、一人で上の階にいってシン君を捜すのはみんなに失礼だと思います。それに一人だとやっぱり怖いですし。

 ソナーを使って敵の居場所を探るということも、この時間だと止めた方が良いですね。1のダメージを与えるということは、下手したら寝ている兵士さん達全員をいっぺんに起こす事になっちゃいます。その辺は色んなゲームでお馴染みの仕様ですね。中には爆睡してて気が付かないNPCもいるかもしれませんけど……あまり楽観視するのはやめましょう。

 そして、目覚めた後は一騒動。急に全員が起きるわけですから、その異常事態に誰かが気付かない訳がありません。きっとてんやわんやし始めることでしょう。そうなると、一人タワーディフェンスなんてことに……それにいくらイベント中で敵さんにスルーされると言っても、イベントが終わった後には間違いなく万全の準備を終えている敵さんと接敵することになりますからね。シン君を助け出したらサッサとこんな所はおさらばするんですから、敵は少ない方が良いでっす。だから敵の皆さんは、そのまま寝ていてくださいな。

 ……あれ? なんか忘れているような……そもそも、敵が寝ている事を前提とした救出作戦でしたっけ? ん~、何を忘れているのかちょっと思い出せません。大切な事だっと思うんですけど、さーて何だったかな~。ま、そのうち思い出す事でしょう。

「ふむ……私が一番かな? 少し急ぎすぎたか」

 などと頭を悩ませていたら、ようやく第一号さんがあちらの世界から帰ってきましたよ。やっほー、おかえりー。

「なんだ、あなたも既に帰っていたか。だが、相方が見えないようだが?」

「あの……その人は?」

 一番手で帰ってきたのはフレイヤちゃんでした。その彼女の後ろには、ボロ衣を着たか弱い少女。NPCさんですね。急に現れました。きっとあの牢屋の中に入っていた謎のNPCさんなのでしょう。

「この救出部隊の隊長だ。確か名を……ぷぷっ」

 あ、思い出し笑いされた。ちょっと傷付くなぁ。

「その異様な姿、雰囲気……もしや、かの有名な漆黒の覇者ダークナイト・シュツルムカイザーX……ぷぷっ……様では?」

 NPC少女ちゃんにも笑われた!? やっぱ早まったかなぁ、このネーミング。シュツルムじゃなくてシュバルツにしとけば良かったかなぁ。え、そういう問題じゃない?

「そうですか……あの伝説のお方が、わざわざ私達(ヽヽ)を助けに来てくれたのですか。なんと光栄な事でしょう」

 うん? 私達、ですか? それって、シン君とあなたという意味です?

「ちわー。お待たせしたっすー。待ったっすか~?」

「ほうほう、こちらの方々がお主の仲間か」

 レイ君の横に、ヨボヨボのお爺ちゃんが現れました。でも目はぎらついてます。まだまだ現役いけそうな眼光の鋭さです。杖をついていますが、きっとそれは仮の姿。きっとあの杖には刃が仕込まれているんですね。よく牢屋内に持ち込めましたね。

「お待たせ致しました」

「ぴよっ!」

 今度はユリアちゃんと、その横に黄色い謎の巨大生物が現れましたよ。そのシルエット、ひよこです? でも大きさが実物と全然違いまっす。人の頭ぐらい大きいひよこさんです。ってか、牢屋の中に捕まってるのって人だけじゃないんだ。

「おう、帰ったぜ」

「やー、お待たせー。みんな早いんだねー」

「はぁ……メイキング失敗しちゃったかも……ただいま」

 もう驚きませんよ。イベントから帰ってきたら、その横には見た事もないNPC達の姿がゾロゾロと。その連続でっす。それはつまり……。

「一気に人数倍っすね」

 どうやらこのイベントは、NPCの相棒をゲット出来るイベントだったようです。いや、それは別に良いんだけど……。

「半分はほぼ足手纏いだけど、こんなんで無事逃げ切れるのかなぁ」

「やるしかありません」

 一気にミッション難易度が跳ね上がりました。

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