姪と Contents
「ふぅ……ようやく落ち着いたみたいですね」
「そうだな。ようやく2人きりになれたな、マコちゃん」
そっとシン君の肩に手を回して、そのまま一気に!
「……もう一度聞きますが、どこまでが冗談で、いつまでその演技が続くのですか?」
あ、シン君の目がジトッとしてる。ゾクゾクしちゃいますよ。
「ノリが悪いな、マコちゃんは」
「ここまで付きあっている時点でノリはかなり良い方だと思うのですが」
ぐったりしたリンちゃん達を介抱し、本人達の希望もあってそのままメイド世界へと送り込んだ後。再び居間で俺とシン君はお茶を飲みながら一息ついていました。
昼間のうちに必要な機器の設置およびスリフィディアの設定をお出かけモードに変えてあるので、ユリアちゃんとユダちゃんは俺の家からでもメイド世界にログイン出来るようになっています。同じようにシン君もログイン出来るのですが、どうやら今日は俺のログイン時間にあわせていつもより1時間遅れてログインしてくれるようです。付き合い良いね、シン君。
「ロメロスペシャル! ……をかけられる前の話の件ですが」
技名を強調されました。何か嫌な事でもあったのかな?
「正確には、誰からも具体的な話は聞いていません」
「フッ、シン君との話は既に終わった事だ。悪く思うな」
「僕の事は遊びだったんですね……これで満足ですか? ドラマみたいな台詞を吐いて有耶無耶にしようとしてもそうはいきませんよ。カズミ氏のプチポは最重要危険物です」
「棒読み禁止」
「まず、僕はリンちゃんから彩華氏と花櫚氏がカズミ氏宅に寝泊まりする話を聞きました」
あ、強引にスルーして話し始めちゃった。シン君の事だから、語り始めたら止まらなそうだなぁ。麻痺茶でも入れて強制的に語り部モードを終了させてしまおうかな~。そしてそのままお布団に直行して、ムフフな関係をば……。
「彩華氏にその話を振ると、カズミ氏の短剣修理の権利をめぐって花櫚氏と揉めたとか。
またその同日、何やらチーちゃんの機嫌が良かったのでその理由を聞くと、今度カズミ氏とお出かけしてい~っぱい欲しい物を買ってもらえるんだって何故か自慢されました。
更に後日、彩華氏が珍しく新しい木刀を持っていたので気になって話を聞いてみると、カズミ氏の買い物に一日付きあってあげたらご褒美に買ってもらったという話を聞きます。本人はおくびには出していないつもりでしたが、端から見たらとても嬉しそうでしたよ。まるで年頃の少女のようでした。いえ、失言でしたね。彩華氏は年頃の少女でした。
反面、いつも子供のような笑顔をのせている花櫚氏はかなり不機嫌でした。年齢差もあって僕は花櫚氏とはあまり仲が良いという訳ではないのですが、出会い頭から愚痴のマシンガン攻撃を受けてしまい、その日はちょっとばかり僕もブルーな気分になりましたね。花櫚氏の話を要約すると、みんなカズミ氏とデートして欲しい物を買ってもらってずるいとの事でした。
それとなくユキちゃんにカズミ氏のデートで何を買ってもらったのかを聞くと、愛を買ってもらいましたと答えてくれましたよ。カズミ氏、いったいユキちゃんに何をプレゼントしたのですか?
再び彩華氏と話をして、カズミ氏とのデートの約束を取り付けた日を聞き出します。ちょうど彩華氏と花櫚氏がカズミ氏宅に寝泊まりした日だそうですね。その理由を聞くと、短剣の修理の話がまた出てきます。ここでようやくリンちゃんとチーちゃんが決闘をしたという話が僕の中で繋がりました。恐らく彩華氏と花櫚氏の代理決闘をリンちゃんとチーちゃんが行ったのですね。当時は闘技祭の話で盛り上がってましたから、その流れでお二方は決闘での決着を当事者方に提案したのではないかと思われます。デートはその勝利報酬といったところでしょうか。ちなみにカズミ氏の性格上、ユキちゃんは無条件でデート券を手に入れたのだと思います。
その後、チーちゃんに決闘の話を振ってみると愚痴が零れてきました。リンねぇはずるい、と。そこで改めて決闘の様子を聞いてみたのですが、どうも話の内容を聞く限りでは、撮影者であるカズミ氏が死体となって撮影していた訳ではない事が発覚致します。撮影の関係上、決闘はバトルロイヤルモードで行わなければなりません。バトルロイヤルモードでは死亡してもホームポイントに飛ばされませんからね。死んでも撮影は可能です。にも関わらず、あちこちに動き回るお二方の戦闘にカズミ氏はずっとついて回っていたとか。おかしな話ですよね。
彩華氏と花櫚氏にも裏を取りました。よくあんな映像を撮れたものだと。
最後のピースは、メイド世界のカズミ氏宅をリンちゃんの許可を別件でこっそり得て物色した事で手に入れる事が出来ました。確信したのはその時です。
裏付けとしてリンちゃんから決闘した日付を再確認。その翌日、カズミ氏がメイド世界でほとんど何もしていなかった事を思い出します。プチポを量産する事もせず、ただただ家の掃除や整理整頓ばかりしていましたよね。
カズミ氏。あなたは黒です」
「そろそろ寝る時間だな。歯磨きはしたか?」
「知らないフリをしてもダメですよ。カズミ氏、いったいあなたは何を作ったのですか? 僕の推理では、長時間HPもしくはMP、SPを超回復し続ける秘薬だと考えています。プチポと錬金術スキルの特性上、それは十分にあり得る可能性だからです。実際に作れるとは思ってはいませんでしたが、カズミ氏のスキルレベルを考えれば十分に可能な範囲だと最近になって気が付きました。そしてその証拠をこの前見つけてしまいました」
「……マコちゃん、気が付いてるか?」
「……何にですか?」
「今、俺達は二人きりだ。それはつまり、俺がマコちゃんの口を強引に封じてしまえば、それで俺の問題は解決するって事だ!」
「なっ!?」
「観念するんだな。俺のテリトリーに入ってきたのが運の尽き、マコちゃんの命運は俺の掌の上だと今頃気付いてももはや遅い。さぁ、こっちへ来るんだ。なに、安心しろ。痛くはしない」
「カズミ氏、あなたという人は……やはり僕の考えは間違っていなかった。カズミ氏は悪だったのですね!」
「……ノリ良いね、マコちゃん」
「そこで素に戻らないで下さい。真面目に付きあった僕が恥ずかしいじゃないですか。というか、降ろしてくれませんか? お姫様抱っこされるのはちょっと……」
「子供はもう寝る時間だ」
「歯磨き、まだしていません」
「おっと、そうだったな。はい、あーん」
「自分で磨けます。やめてください」
「遠慮するな。俺のテクニックは一流だぜ。それはユキちゃんが証明してくれる」
「ふぐっ!? ……ひゃめてふははい。ふすふったいへふ」
「ほーれ、すぐに気持ち良くなーる。どんどん気持ち良くなーる」
「!!?」
「おっ、意外と感度良いんだな。まぁ、口の中を他人に蹂躙されるってのは滅多にないからな。それこそキスをしている時ぐらいか。人によってはとても気持ち良すぎて、それだけで気をやってしまうんだとか。物知りなシン君なら、それぐらい当然知ってるよな?」
しかし返事はありませんでした。既にシン君は意識が混濁していました。あらあら、お早い昇天ですね。
……って、あ。呼吸困難に陥ってる。泡立て過ぎちゃったみたいです。やばやば。
気付くのがもう少し遅ければ殺っちゃってたかもしれませんよ。あぶ……。
え~と……えいっ! 証拠隠滅だ! スリフィディアつけてこのまま夢の中へ飛ばしちゃえっ!
お休みなさい、シン君。良い夢を見て下さいね。
♪♪♪♪♪♪♪♪姪とオンライン♪♪♪♪♪♪♪♪
「カズミ氏、ひとつ聞きたい事があるのですが、宜しいですか?」
「宜しくないな。今は戦闘に集中しろ、シン君」
「……はい」
はてはて、これで何度目でしょうか、このやりとりをするのは。シン君ったら、ログインしてからずっと何かを俺に聞きたそうにしています。何か気になる事があったんですかね~。何でしょうね~。
「カズねぇ、そっち行ったよ~」
「あいよ。シン君、任せた」
「はぁ」
ログインしてすぐなので、いつものようにコルヌリコルヌの大迷宮へ遊びに来ています。まだ時間がちょっと早いためか、リンちゃんやシン君達のフレンドさん達はまだ集まっていませんでした。ですが、1PT6人は揃っちゃってるので、いち早く大迷宮に突撃しています。気を遣う相手が少ないのでちょっと楽ですね。
大迷宮の入口は港街エルファシルを南に向かい、低レベルの人達がとてもお世話になる雑魚モンスターさん達が大量に屯している草原を突っ切り、サンドウォームさんや蟻地獄さん達がいる小さな砂漠を越えた先に聳え立つ広大な山脈を少し登った先にあります。レベル2だと入口に辿り着くまで何度も死にかける羽目になるのですが、そこはマリリン達が守ってくれるので安心の一言です。というか、死んだら思い切り怒られますので死に物狂いでモンスターさん達の攻撃を避けまくってます。
錬金術スキルを持っている手前、至る所で鉱石や化石などの素材を採取したくなるのですが、いつも泣く泣くスルーしています。あれがあればあのプチポちゃんが……あのプチポちゃんを作る時に一緒に混ぜたら新種が出来そうだなぁ……などと物欲しそうな瞳を向けてはいつも諦めています。その御陰で、大迷宮で一緒に遊んでいるフレンドさん達から――カッコ男性プレイヤーが多いですね。一部、お姉様と呼んでくる女性プレイヤーもいますけど、カッコ閉じ――帰り道にちょっと採ったからあげるって言われてプレゼントしてくれるようになりました。何気に女性キャラというアドバンテージを利用してる俺だったりします。
でも、嘘は吐いていませんからね? ちゃんと皆さんには会ったその時に中身は男だと言っています。みんな笑って冗談だとして受け流しちゃいますけどねー。
「そういえばカズねぇ。私達って昨日、いつ寝たんだっけ? なんか記憶が無いんだけど……」
うぉっと。そういえば意識を混濁させたままオンライン世界に飛ばしちゃった人達がここにもいたんでした。忘れてましたよ。
「風呂に入った後、そのまますぐに寝ただろ。9時前に歯磨きしろよ~っと言いに行ったら、スリフィディアも付けずに気持ち良くみんな寝てたぞ」
「あ、そうなんだ」
「すみません、お手数を掛けてしまい。しかしその御陰でログインする事が出来ました」
「どういたしまして。ただ、流石に歯磨きは無理だったから、朝起きたら真っ先にするんだぞ。もし万が一にでも虫歯になったら、一生痛い思いをする事になるからな。歯医者に通うのも面倒だし」
「はい」
「カズミちゃん、お姉ちゃんはパジャマを着た記憶もないのですが、どうしてでしょう? それどころか、下着を履いた記憶も、お風呂からあがって身体を拭いた記憶も無いのですが」
「忘れているだけだろ。センねぇちゃんは毎日の着替えの記憶を全部覚えているのか?」
「いえ、それは流石に……。そうですね、忘れているだけですよね」
真実はいつも一つ! 何から何まで頑張りました、とだけ言っておきましょう。
姪3人は兎も角、ユリアちゃんとユダちゃんは名誉のために黙っておくことに致します。微妙なお年頃ですからね。特にユダちゃんの場合、将来を誓い合った相手がいる手前、何をどうしたのか口が裂けても言えませんよ。
ちなみにユダちゃんはいつも通り街に残ってお店を切り盛りしています。いつの間にかプチポちゃん専門店というレッテルまで貼られている有名店の店長さんです。近々、鉱山都市ヴィオレスクか王都フェネシスのどちらかに2号店を出す計画なのだとか。但し戦争がどうなるか分からないのでまだ迷っているそうです。
「そろそろみんなが来る頃っすね。拠点まで戻るっす」
「では、レイ君の介錯は俺が……」
久しぶりのご登場、白羽懐剣『細桃花・一美』を取り出してレイ君の首筋に当てます。
「そっちの拠点にはまだ帰るつもりはないっす!」
「遠慮は無用だ。大人しく死に曝せ」
「斬れてるっす! 思い切り頸動脈が斬れてるっすよ! 冗談にしてもやりすぎっす! ……あれ、でもHPが減ってないっす。何でっすか?」
「新商品、刃に塗って使うタイプのプチポちゃんを作ってみた。斬ったけど斬れてな~い」
「まるで手品みたいですね。それもユダちゃんのお店に卸すつもりですか?」
「まだ少し早いだろう。狙うならクリスマスシーズンだな。新春の隠し芸でも使える」
「カズミ氏、思い切り御自身が仕入れ元だと暴露していますね……リアルでの問答はいったいなんだったのでしょうか」
「それ以前に、もはやプチポでもなんでもないですよね、それ。カズミさんはプチポだけでいったいどれだけのバリエーションを作るつもりなのですか?」
「目標、一万種類!」
「それにいったい何の意味が……」
「いや、レベルを上げる条件の一つなんだ、これが。性能がちょっとでも違えば良いから意外と簡単だと思ってたんだがな。意外とこれが難しくて難しくて、つい」
「出来心でもあまり変なプチポを作らないで下さいね。じゃないと、ユダちゃんのお店がいつのまにか怪しいお店に様変わりしてしまうので」
店長がユダちゃんだから、最初から手遅れな気もしますけど。撲殺用の杖とかの種類が豊富な店っていったい何でしょうね? センねぇちゃんが作った多種多様な毒料理も店頭に並んでいまっす。ロシアンルーレットピザなんてのが結構人気があるそうです。
「やっほー、お待たせー。待ったー?」
「「「待ったよー。待ちわびたよー。遅いよマリちゃーん」」」
開口一番、見事にハモりながら迎えたのは少女3人組。左から順に青、黄、赤という信号みたいな色合いをした装備を着けている、いったいどこのヒロインユニットだと言わんばかりの格好をした可愛い子ちゃん姉妹です。なんでもいつかリアルデビューして売れっ子アイドルになるのが夢だとか。ちなみに歌は致命的に下手ですけど踊りは得意だそうです。
「あ~、今日もカズミンいるんだ」
「好い加減、引き籠もれば?」
「お守りするの面倒なんだよね~。あたしが介錯してあげよっか?」
と言った感じの女の子さん達です。歌が下手でこの性格、アイドルになれない理由が思い切り分かりますよね。顔とプロポーションは良いんだから、路線をグラビアアイドル系に変えたらどうですか?
「あまりそう邪険にするな。彼女が可哀想だろう」
そう言ってフォローしてくれたのは、マリリンが何度もアタックして籠絡したお姉さん剣士です。でも思い切りサバ読んでます。言葉の端々に、たま~にですけどユキちゃんクラスの幼さが見え隠れしています。つまり、年上に見えるように頑張っちゃってるお子様なんですね。試しにこっそり勘で年齢を囁いてみたら、物凄く動揺してくれました。ビンゴだったようです。
「カズミ君、今日も宜しく頼みます。回復は任ちぇまちたよ」
ちなみに本人はこの事には気が付いていません。格好良く決めたつもりでいます。このギャップ萌え、どうやって処理すれば良いんでしょうね? 難しい案件でっす。
「さっさと行こうよ。私、早く斬りたくてウズウズしてるんだから~」
「へっ、血が騒ぐぜ。今日も勝負だぜ、ヤス」
「誰がヤスだ、ゴラァ。つーか盾職の癖に俺と張り合おうとすんな、ボケ」
「あんたも盾職でしょうが。てか、なんで私、こんなのとつるんでるんだろ。マジわっかんねー」
「幼馴染みの腐れ縁ですね。私も好い加減、あなたとは縁をきってしまいたいです」
「お腹、空いた……血、吸って良い?」
それ以上に処理に困るのが、この6人。てんでバラバラの性格なのに、何故か戦闘になると息ピッタリになる不思議ちゃん達です。男性2人は盾職で、腕前ならレイ君よりも上。残り4人の女性陣は全員同じ装備を着てるうえに職業もまったく同じ。死ぬ時も一緒らしく、レベルも同じだそうです。経験値は流石に微妙に異なっているみたいですけど。
んで、彼等の中身ですが、なんと親子4世代だそうです。父親が誰なのかは一目瞭然ですけど、誰が母親で誰が娘なのかは未だに分かりません。俺の勘では、1番目と6番目に発言した女の子が子供だと思います。戦闘狂に血を吸いたがる娘というのは何だか将来がとっても不安になりますけどね。
「いただきます」
あ、俺の血を吸わないでっ!?
「ごちそうさまでした」
今日も血を吸われてしまいました。いつか俺も吸血鬼になっちゃうのかなぁ。とっても身近にいる美少女さん達の血はとても美味しそうですね。あ、信号少女3姉妹の血は不味そうな気がするのでパスです。レイ君の血も右に同じ。
「とりあえず今日はこの人数だね~。誰がリーダーする~?」
それでは本日も大迷宮の攻略、始まりでっす。




