真 to Real Talk
「マコっち、プリン食べる~? チーちゃんが作ったやつ」
「遠慮しておきます。食べると身体が痺れてお泊まりコースにされてしまいそうですので」
「む……ばれてる」
「前科がありますからね。僕は一度引っかかった罠には二度と引っかかりません」
「粗茶ですが、ですの」
「あ、これはご丁寧にどうも。いただきます……うっ!?」
「マコちゃん、ゲット」
「意外な、ところに……伏兵、が……」
「ふ、不覚……」
「フッ。俺はリンちゃん達が喜ぶなら何でもする男だ」
「わーい」
「わーい、なのですわ~」
戦利品は丁寧に宝箱(俺の部屋)にしまってしまいましょう。お布団敷いて、枕を二つ並べて、シン君を寝かせて。あとはリンちゃん達が寝静まる夜を待つばかりでっす。
「えっと……どこまでが冗談で、いつまでこの演技を続ければいいのでしょうか?」
「夜明けのコーヒーを飲むまでだな。ちなみに既に連絡済だ。親御さんの許可は取ってある」
「またこのパターンですか……まぁ、その可能性を理解してて遊びに来る僕も僕ですが」
「あ、阿綺羅くんは許可でなかったから帰って良いぞ。ほれ、サッサと帰れ」
「相変わらず俺の扱いが酷いっすね……」
「今日はメグちゃんとカナちゃんもお泊まりする予定だからな。危険な狼は排除しておかないと」
「いやいや、俺より危険な狼がすぐ目の前にいるっす。みんなまとめて美味しく食べられちゃうっす」
「今日はパジャマパーティーなのだ~」
「奉仕し甲斐があるのですわ。メイド冥利に尽きるのですの」
「ぱじゃぱじゃ……じゃぱじゃぱ……ぱじゃ、じゃぱ……」
ちなみに余談ですが、そのパジャマパーティーには俺は参加出来ませんでした。大人はシャットアウトでした。うう……とっても楽しみにしてたのに~。折角、頑張って3人の親を説得したのに~。
「それにしても……世間は狭いな。まさかこんな近くにマコちゃん達が住んでいるとは思わなかった。彩華ちゃん達もそうだし」
大いに腕を振るったお夕飯の後。姪3人衆が双子の姉妹を連れてお風呂に入っている間にシン君との親睦を深めちゃいましょう。というか、中断された話の続きをしないとね。今がチャンスです。色んな意味で。
「そうですね。いくらリアルで住んでいる土地ごとにプレイ開始場所が固定されいるからといって、ここまで近いとは僕も思いませんでした」
「ん? そうなのか? ランダム配置じゃないのか?」
「知らなかったのですか? メイドオンラインは、プレイヤーが住んでいる土地ごとに開始国が決められているんですよ。各地に設置されているサーバーを中心に、その周りに住んでいる人は自動的にそのサーバー……つまり同じ国から開始する事を余儀なくされます」
「珍しい仕様だな。それだと地域ごとにプレイヤーの数にかなりの差が出るんじゃないか?」
「そうでもありません。VR機器スリフィディアは抽選によって購入できる人が決められていますからね。地域ごとに当選者の数を決めておけば、その心配はありません」
「……強者ゲーマーの親を持ってる子供は、当選確率の高い地方への引っ越しを余儀なくされていそうだな」
「ははっ……実はそういう情報も確かに聞いています。まぁ、大半の子供はそれを喜んでいますがね。ただ、出来れば季節外れの転校生になりたかったという願望もチラホラと」
微妙に人口が過疎化している地方への貢献も含んでいたんだねぇ。
「夏に発売された新型は誰でも購入可能でしたが、やはり開始国は住んでいる地域に依存していたそうです」
ブルジョワどもめ……。夏に販売された新型は目ん玉飛び出るぐらいの価格だったので、一般家庭では購入は無理です。家が傾いちゃいます。人生も傾いちゃいます。
「ところで、カズミ氏は僕達以外でリア友はいないのですか?」
「いる訳がない」
「即断定ですか。これも世代なのでしょうね。カズミ氏はリアル割れというのに忌避感を持たれているようですが、今の時代はむしろリアル割れが普通だというのは御存知でしょうか?」
「……そうなのか? 随分と危険な世の中になったな」
「確かに安全とは言い難いですが、秘匿して引き籠もられるよりは良いかと。少子高齢化が進みネット世界があまりにも便利となっている今、カズミ氏のように毎日会社勤めしなくとも家で仕事が出来るようになった結果、出会いがほとんどなく結婚出来ない男女が世間には溢れかえっています。ならばいっそオンラインでの出会いをリアルでの出会いに変えられるようにと、子供のうちから情報を開示する癖をつけさせてしまえというのが現在のネット世界の方針です」
「俺は別に結婚出来ない側じゃないんだがな。結婚しないだけだ」
「結婚していない人は皆そう言います」
「いや、本心……」
「とてもそうは見えません」
「つー」
「かー」
えっと……何の話でしたっけ? 俺が独身を貫いている理由ですか?
それは秘密です♪
「そんな訳でして、東雲彩華氏……オンライン名ササメ氏が僕達にリアルを明かし、そして僕達のリアルを明かしたのは別に不思議な事ではありません。地域密着型とも言えるのかもしれないメイドオンラインで、フレンドになったプレイヤー同士がリアルでは意外と近くに住んでいるというのはデフォです。特に子供の場合は学校で繋がっている可能性大ですからね。学年や学校が異なっても意外と簡単にリアルで出会えるものなのですよ。ネットで合同授業をしている学校も多数ありますし」
「なるほど。つまりマコちゃんは俺にこう言いたいわけだな? 彩華ちゃんをこれ以上虐めないで下さいと」
「……虐めてたのですか? 僕はただ東雲氏より話を聞いてフォローしただけなのですが」
「……」
「……」
「え~と……ほら、可愛い子にはつい悪戯しちゃう的なノリでな」
「カズミ氏の場合、可愛い云々に関わらず子供は虐めて遊んでいるだけのような気がしないでもないですが。阿綺羅さんは可愛いですか?」
「プラチナむかつく。リア充爆発しろ」
「その言葉を平然と言えるカズミ氏は、果たして中身は大人なのか、それとも子供なのか……」
「自称、永遠の二十歳直前だ」
「それはまた微妙な。大人なのか子供なのか、一番ハッキリ言えない時期ですね。ちなみにその設定は学生ですか? 高卒の社会人ですか?」
「フリーター」
「いい年して遊んでいる口ですか。ニートでないところがまだ救われてますね」
えっと……何の話でしたっけ? いつまで脱線するんだろ。
「先にも言いましたが、カズミ氏の考えは古いです。今はリア友当たり前の時代です。少子化が進みネットが進化した今、むしろ出会いはオンラインでというのが基本です」
「基本なのか……」
「メイドオンラインではリアルステータスの情報自体がありませんが、最近のオンラインゲームでは写真付きリアルステータスを初めから開示して出会いを求めているのが普通ですね。情報詐欺を警戒して国が管理している住居ネットとも繋がっている場合が多く、情報を偽る事が難しいゲームも多いです。中には顔はリアルと同じになってしまうゲームもあります」
「嫌な世界だな」
「そう思うのはカズミ氏より上の世代の人達が多いですね。ただ、カズミ氏の時代でも出会い系サイトなるものがあったと思いますが?」
「あれは大半が嘘で塗り固められているか、目的が全く別だったりする」
「おかしいですね。僕の得た情報だと健全な出会いも少しはあったようですが」
「少しと言ってる時点で肯定しているだろ。まぁ実際に、あ~いうのは犯罪目的なのがほとんどだったからな。リスクを承知で利用している人は多かったが、裏では組織ぐるみで人の弱みにつけ込んで色々と悪い事をしまくられていた。個人情報の機密云々など無いに等しく、決済にカードデータを入力したら最後、忘れた頃に金を引き出されて多額の被害を受ける。さくらも多いし、弱みを握った相手を使用して非合法の商売をしたり新しいカモを釣るため利用したりとやりたい放題だ。正直、あれに手を出してまともに結婚まで漕ぎ着けたヤツを俺は知らない」
「それは思い切り偏見な気がしますけど。まぁ確かに、旧世代の出会い系と名がつくものは、その名前の通りの世界ではなかったというのが世間一般の認識みたいですね。となると、僕の父さんと母さんは数少ない例外だったという訳ですか」
未経験者は語る。怖い所には思いっきり恐怖を感じて決して手を出すべきではないと。これ、恙無く平和な人生を送るための秘訣です。俺みたいにね。人間不信、出不精というバッドステータスがついてしまう可能性も高いですけど。
「現代の出会い系は、初めから相手の姿は仮想アバターである事を前提に、まず相手の内面を見るところからはじまります。アバターの造りを見ればその人がどんな人かもある程度予測出来ますし、リアルでは緊張してうまく口が動かず喋れない人でもオンライン上であれば喋れますしね。チーちゃんのように。デートコースも最初からインプットされていますし、リアルのデートではなかなか受けられないAIのフォローも受ける事が出来ます。知ってますか? 出会いと初デートがオンラインだったカップルの結婚率は、リアルのそれを遙かに上回っているんですよ」
「俺とマコちゃんの出会いと初デートもオンラインだったな」
「あれ、僕達オンラインでデートしましたっけ? リアルが初デートじゃありませんでした?」
指摘する点が間違っている気がします。でもそれとなく拒絶の意思を示してきたことだけじゃ分かりました。しくしく。いえ、健全な反応ですけどね。
「子供の出会いは良いが、大人の出会いはどうなるんだ? 夏の新型が発売されるまでは確実に親子プレイヤーしかいなかったから、下手したら浮気にならないか?」
「カズミ氏のようにリアル割れに対し忌避感を持っている方が多く、また子供の目があるためかリアルの交流はほとんど行われていないみたいですね。僕の親のようにゲームをしていない親も結構いるみたいですし。カズミ氏は人妻がお好みですか?」
「射程圏外だな。トラブルは御免だ」
「東雲花櫚氏のように独り身の方もいるようですが?」
「あれを同じ枠にはめるのは明らかに間違っているだろう。……あれは人じゃなくて化け物だ」
「酷い言いようですね。合法ですよ」
「それを言うなら彩華ちゃんも一応は合法だ」
「カズミ氏が常識人である事を切に願います」
「どこからどうみても常識人だろうが。マコちゃんの目は節穴か?」
「カズミ氏が常識人なら、僕は聖人ですね。性別を偽れないVR世界で堂々と性別を偽れる人を常識人とは言いません」
「酷い言いようだな。俺は合法だ」
「カズミ氏が合法なら僕は……無限ループに入りかけていますね。この話は一端止めましょうか」
一端と言わず永久に止めて下さいよ。そもそも、元々の話からぐあ~っとずれちゃってますよ。いったいどこに向かっているだと言わんばかりにでっす。
「それはそれとして。リンちゃんとチーちゃんの決闘、僕も見たかったなぁ。何で僕には映像メールを送ってくれなかったんですか?」
「……私闘だったからな。それに、いくら仲間内だからといって切り札を見せるわけにはいかない……と2人が言っていたな」
「本人達から口止めですか。とすると……」
「今度、闘技祭にみんなでエントリーするんだろ? 例えレイ君でも丸焦げにしてやる、とどこかの誰かさんは息巻いている」
「僕も負けるつもりはありませんが、正直チーちゃんと当たったら勝てる気がしませんね。リンちゃんの方は何とかなりそうですけど」
「2人の決闘の結果を知ってるのにか? そのチーちゃんと互角に渡り合った挙げ句、ドローに持ち込んだリンちゃんに勝てると抜かすか、この童は。良かろう……その思い上がり、俺が打ち砕いてくれよう」
「カズミ氏も参加するのですか?」
「ポップコーン味のプチポちゃん持参で観戦組だな。ちなみに彩華ちゃん達は出場しないらしい。戦闘が本職じゃないうえに稼ぎ時、加えて自身が鍛え上げた最高位の武器防具の性能を見せつけるだけというのはどうも好かないと言っていた」
「花櫚氏は兎も角、彩華氏はまるで自分が出場すれば勝利は確実だと言っているような口ぶりですね。まぁ、あの方は現実でも凄腕の剣士ですし、それに最強クラスの武器防具をつけたら優勝を狙えると豪語するのも当然かとは思いますが」
「ちなみに、俺はそもそもレベル制限があって出られないからな」
「あ、そういえばそうですね。これはうっかりしていました」
闘技祭への出場条件は最低でもレベル30以上。レベルがたった2しかない俺には遠い世界でっす。
「これはカズミ氏にも関係のある話なのですが、次回の闘技祭からはアイテム持ち込み不可となったそうです」
「ほぅ。それはまた何でだ?」
「今更しらばっくれても遅いですよ。原因は間違いなくカズミ氏が作るプチポのせいですね。ゲームバランスを著しく崩すアイテムを毎日せっせとお作りになっているという事をもう少し自覚して下さい」
「さ~て、何の事やら。カナちゃんが店に並べているプチポと俺が作っているプチポが全く同一のものだという証拠はない筈だがな」
ぴゅ~~~ひょろろろろろろろ~~。最近、口笛がだんだんと上手くなってきたな~。なんでだろう。
「リンちゃんは決闘時、カズミ氏が作った非合法のプチポを使用してなんとかチーちゃんと相打ちするまで持っていったとか」
「ちょっと待て。何故そんなところまで知っている。勝敗の行方は兎も角、その件は2人に口止めした筈なのに」
「カマかけてみました」
「……」
「そうですか……やはり、現状出回っているドーピング剤よりも遙かにヤバイ代物をカズミ氏は作っておいででしたか」
なんかだんだんと言葉が物騒になっていますね。非合法とかドーピング剤とか、なんか酷い言われようです。
「というのは嘘です。この話は実際の映像を見た彩華氏から聞いた話です。プレゼントを贈ったらイチコロでした」
「あの女……マジで奥歯をガタガタ言わせたろか」
「……カズミ氏、キャラが思い切りぶれてますよ。演技もほどほどに」
「おっとすまない。つい本性が垣間見えてしまった」
「ちなみに今のもただカマをかけてみただけで実は嘘なのですが……」
ゆ~ら~り。
「あ、捕まった。というかカズミ氏、今の動きは明らかに人間離れしていませんでした?」
顔は笑っていても冷や汗を掻いているシン君は、その後ロメロスペシャルをくらってダウン致しました。という訳で戦利品は宝箱(俺の部屋♪)にしまっておいて。
何だかやたらとお風呂からあがってくるのが遅いな~っと思ってお風呂に様子を見に行ったら(覗きじゃないよ)、さぁ大変。5人とものぼせてダウンしていました。
って、何やってるんですか!? 下手したら命に関わるんですから、ちゃんと自己管理して下さいよ。しかも5人もいて全員ダウンするって……。
年齢順に助け出して、その後は必至に団扇で煽ぎ続けました。ダブル団扇でっす。腕がとっても疲れました、まる。
みなさん、長湯はくれぐれも気をつけて下さいね。いえ、本当に……。




