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姪とオンライン!  作者: 漆之黒褐
幕間 『REAL SUMMER COMMUNICATION』
82/115

幼女 no Adult

「ふっふっふ~。どうだ、若いだろう。羨ましいだろう」

 ハリセン滅多打ちの刑に処したことですっかり気が晴れたのでしょう、自称幼女(?)はなんかグラビアモデル雑誌にでも出てきそうなポーズを取っていました。

「だからと言って手を出すなよー。一応、人妻だからね~」

「手を出すなら間違いなく隣にいる娘の方に手を出す。120%ありえん」

 スパーン、とまた軽快な音が鳴りました。

「で、何で来たんだ? さっきも彩華ちゃんに言ったが、マナー違反だぞ」

「ちゃん……」

 バラしちゃいけないって言ったばかりなのに、彩華ちゃんことササメさんったらまたバラしちゃって。折角、俺ちゃん頑張って白を切り通そうとしたのにね~。ね~。

「リンりゃんに呼ばれたからだよ。私達、まぶだちまぶだち。ねー」

「ねー」

 ダブルリンちゃんが合体ポーズしてまっす。とっても仲が良さそうでっす。

「ああ、精神年齢が近いからか」

 スパーン、とまた軽快な音が鳴りました。褒め言葉だったのに……。

 しかし……まぶだちって古い言葉だね。チーちゃんもユキちゃんもちょっとだけ首を傾げてます。リンちゃんもたぶん意味を知らないまま使ってるんだろうな~。まぁ友達の最上級形みたいなものだからニュアンスは伝わっていると思うけど。

 ササメさんの方をチラッと見る。あ、視線そらされた。どうやら今度の犯人もササメさんっぽいです。ばらさないでよ、もう。折角リアルじゃ一度も会った事がな……あれ、たまにラジオ体操に混じってた? バカナ……まるで違和感がナイダト!?

「しっかし……カズミちゃんは本当に男だったんだね~。もうお姉さんって呼べないじゃん」

「そんなことより、幼女なのに一児の母? 御前いったいいくつだ」

 鬼門通るの実は大好きです。でもマゾじゃないですよ。

 今度はまずリンちゃんとチーちゃんの合体技が炸裂致しました。海老反り固めです。一人の力では無理でも、二人の力を合わせればこの通り。ああ、効く……気持ち良いな~。

 その横では、むすっとしたユキちゃんがシェラーリちゃんの手をとって猫パンチを連打しています。その顔は、意図的に失言した俺の事を叱っている顔でした。メッなのですわ、だそうです。

 んで、一番やばいのは正面にいたササメさんでしょう。竹刀の切っ先が俺の喉仏に当てられてました。つまり、甘んじて海老反り固めを受けておかないと、首を下げた瞬間にぐふっとなる仕組みです。

 別の意味でやばかったのが、左右から攻めてきたクロヒメちゃんとエルフちゃんです。そのですね、腰の辺りをですね、ふかふかしてくるんですよ。押してくるんですよ。くすぐったいんですよ。この状況下でそんな事されたら力が抜けた瞬間に背中がゴキッと折られるか首にガスッと入っちゃう可能性があるのです。だからやめて~!!

 尚、リンネちゃんは不参加です。暢気にお茶を飲んでました。でもそれ、俺のお茶です。たぶんチーちゃんが煎れたと思われるデンジャラスティーです。

 あ、やっぱり吹きだした。予想通りでしたが、想定外のダメージを受けました。目がぁ……目がぁ~っ! 俺に向けて吹き出さないで下さい! チーちゃん特性の毒ドリンクによる毒霧攻撃を受けました。

 顔にかかった液体の一部をちょっと舐めてみます。にが……。でも幼女エキスが配合されているのできっと身体には良いです。若返りの効果があるかもね。

 それはそれとして、十六文キックが飛んできました。俺のせいじゃないのに……あ、縞パンだ。ゴチになります。でも、いい年した大人がそれを履くのですか。死魔パンですよ。似合っているから別に良いけどね。

「彩ちゃん、なんでこいつのために短剣打ったの?」

 ようやく落ち着いてきたところで話題が俺の短剣の話に。既に宿題そっちのけです。散乱していた主題はいつの間にかリンちゃん達が片付けていました。思い出させない気ですね。

「魔が差しました。今ちょっと後悔しています。早まりました」

「ふーん。でもあれってさ、見方を変えれば恋愛的な要素も含んでるんだよねー。桃花の紋は私用限定の印だったのに、それをこんな奴にあげちゃってさ。あたしすっごくショックなんだけど~?」

「私に他意はありません。桃花の紋も母上限定としていた訳ではなく、渾身の出来の物に付けていただけの紋です」

「じゃ、桃の花言葉って知ってる? この前チーちゃんから聞いたんだけど、桃の花言葉には『私はあなたのとりこ』って意味があるんだって」

「天下無敵……チャーミング、という意味、も……ある……」

「そもそもカズミ殿が男性だと知ったのはつい最近です。異性へプレゼントした訳ではありません」

「異性じゃなくても意味は通じちゃうんだけど~? ねぇねぇ、それってあれ? あれなのかな~?」

 なんか恋バナっぽいお話しをしています。当人である俺ちゃんはどう反応して良いのか分からないのでエルフちゃんのお手々を取って遊ぶ事に致しました。せっせっせ~のよいよいよい。おちゃらかおちゃらか……あ、逃げた。カムバック、エルフちゃん!

「ならこうしましょう。カズミ殿へあげた短剣は、父上へのプレゼントだと思う事に致します」

「む……」

 攻守が逆転しました。ササメさんの恋バナが一転、リンネちゃんへの不倫のお進め話になりました。いや、それで良いのササメさん? 実のお父さんが可哀想ですよ。

 ちなみに後で聞いたところによると母子家庭でした。ササメさんがお腹に出来た時にお父さんは蒸発してしまったそうです。なんかドロッとした香りがしたのでそれ以上は追求を止めました。幼女に手を出した挙げ句、責任を放棄するとはけしからん。まぁ年齢計算してみると合法でしたけど。それはそれで犯罪臭が……。

「俺と結婚するか? 俺はまだ独身だ」

「絶対ヤダ」

 バッサリ斬られました。まぁ分かっていた事ですが。ただこの話の流れを変えるには俺ちゃんの尊い犠牲が必要だったのです。

 膨れっ面になった姪3人衆の苛烈な攻撃に耐えながら、しばし別の話題に。でも気が付いたら短剣の話題にブーメランしていました。

「……でさぁ。カズミお兄さん、そろそろ短剣の修理が必要な時期じゃない? 今度こそあたしに修理させてよ」

 お姉さんからお兄さんになりました。ササメさんが女子高生だという事を鑑みれば、実年齢は間違いなくリンネちゃんの方が上です。でも全然違和感を感じないのは何ででしょうね。

「何度も言う様ですが、カズミ殿の短剣は制作者である私が修理致します。ですので、母上はご自分の武器の修理だけで我慢して下さい」

「同じ桃花の紋が刻まれてても、やっぱなんか違う気がするんだよね~。なんか新しいスキルに目覚める気がしそうなんだよね~。だから一度だけで良いからあたしに修理させてくれない?」

「ダメです」

「え~、彩ちゃんのいけず~。じゃ、あたしが使ってる武器をたまに修理させてあげるからさ。それで手をうってくれないかな?」

「お断り致します。母上が使用している武器は母上が修理し過ぎて既に私の手にはおえなくなっていますので」

「じゃ、新しい武器作ってよ。それなら彩ちゃんにも修理出来るようになるでしょ」

「現状では今以上の一品を打てるとは思えません。諦めて下さい」

「ヤダヤダ、ヤーだ」

「そんな駄々をこねられましても……。事前に取り決めた通り、カズミ殿の短剣は私が修理致します。自分で言うのもなんですが、あれは確かにかなりのレア物です。なので母上が修理したくなる気持ちは私にも分かります。ですが、あの短剣は制作者である私が直接修理することで、使用者であるカズミ殿にも大きな恩恵が発生致します。その恩恵は母上が修理するよりもカズミ殿のスタイルにあっています」

「それ、本人に直接聞いたの? 私が修理した場合の性能アップを説明した上で」

「説明する必要はないでしょう。そもそも複数の人に修理されると性能の伸び率は急激に下がりますので、既に私が修理済の武器を母上が修理するメリットはカズミ殿にはありません。むしろデメリットが大きすぎます」

 ちょっとここで補足をいれておきますね。

 装備品の修理は、基本的に修理士さんが行う事が出来ます。もちろん、NPCでも修理出来ますが、そちらの修理だと耐久値が75%までしか回復出来ません。その点、プレイヤーの修理士さんが修理すると100%まで耐久が回復します。だけでなく、修理した装備品には修理士さんの腕や使用した素材によって様々な恩恵が発生致します。

 例をあげれば、分かりやすいもので耐久限界アップ。運が良いと装備品ランクがアップして全体的に性能があがり、素材次第では別の装備品へと生まれ変わります。

 修理士側のメリットは、当然のことながら経験値が入ります。経験値と言っても、職業レベルをあげるための経験値だけではなく、スキルレベルを上げるための経験値も手に入ります。装備品ランクが高くレア度が高いほど取得出来る経験値もガッポガッポ。加えて熟練度も入り、場合によっては新しいスキルに目覚めちゃうそうです。まぁあまり目覚めすぎてもスキル枠は有限ですので泣く泣く諦める事も多いみたいですけどね。あっちを立てればこっちが立たずです。

 ちなみに街の外に出てモンスターを狩れば職業経験値は入ります。しかしスキル経験値は入りません。スキルに関連する事を行わないとスキル経験値は手に入りません。スキル熟練度も右に同じ。

 それでもう一つの修理方法ですが、それは実際にその装備品を作った制作者の手による修理になります。他人が作った装備品は修理出来ません。

 制作者が修理すると何が違うのか。まず修理した装備品の性能がたまに上がります。装備品ランクもあがりますが、その枠から外れた性能アップが見込めます。武器なら斬れ味などの攻撃系性能値が、防具なら防御力とかですね。この点は、修理士が修理する事による耐久限界アップと同じ原理です。

 そして運が良いと、その装備品に設定されている各種限界値を突破する事があります。その中には装備品ランクも含まれていますし、性能アップ可能回数も含まれています。但しその反面、限界値突破時には耐久値が逆に下がってしまったり、装備品ランク限界はあがったけど結局そこまでランクが上がらず無駄に性能アップ可能回数を消費しただけに終わったりと、良い事だけじゃないみたいですね。化ける可能性がある分、リスクもあります。

 制作者側のメリットは、その装備品を作った時に使用した全スキルの熟練度ボーナスの発生と、新スキル取得条件の解放です。

 耐久限界値がアップする事によって長時間の狩りや修理費の軽減が期待出来る堅実型の修理士に依頼するか。それともただひたすらに強者を目指して制作者に依頼するか。

 後者の場合は確実にお抱えになるので、制作者と使用者は仲良くなる必要があります。でも時間は有限、いつでも修理出来る訳でもなく、また普段から修理素材を持ち合わせているとも限らないので意外と難易度が高かったりします。耐久や性能によって修理素材も変わってしまうようですし。

 加えて、複数人によって修理された装備品は修理時に性能が上がりにくくなるというデメリットが検証によって判明しています。その縛りも含めて、どの選択を取るかはプレイヤー次第です。修理士も職人も、どのプレイヤーを、どの装備品をお抱えにすれば自身にとって最も都合が良いか選択する必要があります。

 ササメブランドも、そこから始まったそうです。

「修理したいな~。カズミお兄さんの短剣、修理したいな~。最後の一回分でも良いから修理したいな~。それならデメリットも少ないと思うし~」

「カズミ殿はあまり戦闘を行わないので、あと半年はかかるかと」

 俺ちゃんって戦闘系じゃなくて内政系ですからね。リンちゃん達に連れ出されない限りマイホーム警備員です。まぁマイホームには幽霊さん達がいっぱいいるので俺の警備は必要有りませんけどね。彼女達、とても人見知りなのか初対面の人には暴れてくれます。ポルターガイストが起こるので、見知らぬ誰かが敷地内に入ってきたらすぐに分かります。

「ねぇねぇ、譲って~」

「譲りません」

「じゃあ、カズミお兄さんに直接お願いしよっかなぁ。大人の魅力で」

「では、私は若さを利用してカズミ殿が心変わりしないように繋ぎ止めましょう」

 リンネちゃんが俺の腕を身体に抱き込み、ササメさんが俺の左手を握ってきます。おお……美少女二人が俺の事を取り合ってますよ。一人は少女じゃなくて幼女のような妖怪(合法ロリ?)ですけど。

「もちろん私を選んでくれるよね、カズミお兄さん。うっふ~ん」

「カズミ殿、今度ラジオ体操の後にジョギングでもいかがですか? とても気持ち良いですよ」

 どっちも何か間違っている気がします。でもこれはこれでOKです。

 ついに俺にもハーレム期が!? ……もとい、もて期がやって来たのかな?

「カズミ殿」

「カズミお兄さん」

 だが同時に究極の選択が! 俺はどっちを選べば良いのだろう。

 若さ最強、現役女子高生の大和撫子ササメさんを選ぶべきか。

 それとも、見た目は幼女、実年齢は秘密のバツイチリンネちゃんを選ぶべきか。

 いやいや両方ゲットして親子丼というのも捨てがたい。

 う~む、悩んじゃいます。俺には可愛い姪が3人もいるので、2人を構ってあげる時間はあまり取れません。姪8、二人は合わせても最大で2が限界でっす。それでも良いなら5人まとめて面倒を見てあげますよ。

「ねぇねぇ、そんなに決められないなら決闘で決めない?」

 その瞬間、修羅場から修羅が2人誕生致しました。

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