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姪とオンライン!  作者: 漆之黒褐
幕間 『REAL SUMMER COMMUNICATION』
80/115

姪 to Summer Wars

本話より毎月7の倍数の日に投稿致します。

「遂に決着を付ける時が来ましたね、マリリン」

「そうだね、センねぇ。私、センねぇとは一度殺りあってみたかったんだよね。剣士と魔法士が戦ったら剣士が絶対に勝つって言われてるみたいだけど、そんな事はないって私が証明してあげるよ」

 場末の決闘状を思わせる荒野に向かい合う2人の美少女。

 右にいる少女は片手に水竜を象った剣を持ち、自然体に構えていました。白と青のコントラストに彩られてた一風変わった髪色を持つ少女は、ブルーマリンのような青い瞳で己が敵の姿を映しています。

 対する左の少女は、赤い宝玉を丸呑みしている虎顔の大きな杖を身体の前で地面と水平にに構え、不敵な笑みをその顔に浮かべていました。燃えるように赤い三角ハットの下からはみ出ている灼熱色の長髪に、サファイアのような赤い瞳、そして赤い魔法衣。全身を赤一色で染めたその姿は間違いなく魔法士のそれで、少女が炎系の法術使いだというのは誰がどう見でも分かっちゃう事でしょう。むしろそれで水系の法術が得意だったら詐欺です。

「勝てるのですか、この私に」

「勝つ。それが私の宿命だから」

 竜虎相打つ。

 水竜剣スイフィードセイバーと炎虎杖エンフィードスタッフという、まさにそれっぽい武器をたまたま持っていた事で、2人の決闘はまさに竜と虎の戦いとなってました。

「センねぇの屍を燃やして私はもっと強くなる」

「勝っても負けても恨みっこなし。全て水に流しましょうね」

 同時に2人が得意とする属性は、相手に取っては苦手とする属性です。与えるダメージが倍増するなら、受けるダメージも倍増。

 つまり2人の戦いが長引くという事はまずありません。

 戦いは早期決着。

 青の剣士センねぇちゃんが接近戦に持ち込んで押し切るのか、それとも紅の魔女マリリンが巧みに距離を取って得意の炎系法術で俺ちゃんを含む全てを焼き尽くしてしまうのか。

「カズねぇとのデートは渡さない!」

「譲りませんよ」

 手に汗握る熱いバトルが、今始まる!

 ……というか、何故こうなった?



♪♪♪♪♪♪♪♪姪とオンライン♪♪♪♪♪♪♪♪



 夏。夏休み。夏休みの宿題。夏休みの宿題を手伝わされる。

 その報酬は、新しい水着選びにつきあわせてあげるというものでした。

「最初に私達のプリティーな水着姿を見れるんだよ、これは是が非でも手伝わないといけないよね!」

 という謎理論を突き付けられた俺ちゃんは、姪3人の宿題と大乱闘演武を繰り広げていました。

 いえ、決して姪の水着姿を拝みまくりたいという訳ではなくてですね。実は物凄く楽しみにしているという訳でもなきにしもあらずでして。いえ、めっちゃ楽しみではあるんですけど、そこには邪な感情はありませんよ。純粋な姪煩悩です。姪煩悩全快です。

「これで……私達、の……夏は……安泰、です♪」

 まだ夏が始まったばかりだというのに夏の終わりのような心境を味わっている俺ちゃんをよそに、姪3人衆は夏の予定作りに励んでいました。

「おじさま、猫ちゃんの手を借りたいのですの?」

 やめて~。今の俺ちゃんにぷにぷに地獄の誘惑をしないで~。ユキちゃん、その猫の手じゃないからね。

 ああ……ぷにぷに癒される。シェラーリちゃんは俺の癒しの天使です。

 とまぁ、そんな夏が今年もやってきました。実は毎年の事だったりします。夏の定番と化しています。

 最初は今から遡る事うん十年前。姉の我が儘から始まってしまった苦行です。その理由はどうあれ、一度前例を作ってしまった事で毎年のように姉は俺に夏休みの宿題を嬉々として押し付けるようになりました。

 そしたら次は妹が俺に甘えてきて……その話が時を経て、どうも姪3人にも伝えられてしまったらしく。今では俺ちゃん、夏休みの宿題お片付けまっすぃーんとして3人に認識されてました。甘すぎる俺様の性格が憎い!

 まぁ、宿題を片付ける時(ヽヽヽヽヽ)にはご褒美が待っているんですけどね。片付けた後にご褒美が待っている訳じゃありません。毎回姪の水着姿が見れるというのがご褒美じゃありません。俺ちゃんのご褒美は、必ず姪がこの時期に遊びに来てくれるという事です。

 ただ、今年は春からずっといるのであんまり有り難みが……。俺って欲張りなんでしょうか。

 まぁそれはそれとして、今年の夏は事件が起こりました。但し、事件は起こっても名探偵も姪探偵も出てきません。姪犯人はいましたけど。

 事件はゲームの中で起きてるんじゃない、ここで起きているんだ! ……とつい叫びたくなるような、そんな一幕です。

「どうも、お邪魔致します。これは詰まらない物ですが……」

 姪3人に囲まれて夏休みの宿題に精を出していたら、突然に女子高生ちゃんが家にあがり込んできてくれました。わお、大事件ですね。これなんていうご褒美タイムですか?

「これはご丁寧にどうも。いつも3人がお世話になっています」

「お世話されてまーす」「お世話……しちゃって、ます……」「なのですの」

 女子高生ちゃんは知ってる人でした。毎朝のラジオ体操でハンコを押してくれているお嬢さんです。ポニーテールに纏められた艶やかな黒髪に、優等生そうな眼鏡をかけた少し格好良い系のお嬢さんです。剣道をやってるそうです。所持品に1メートルぐらいの長袋を持っていました。護身用かな?

 まぁまぁ、よくぞ起こし下さいました。いや、本当に。どうぞおくつろぎ下さい。

「ううう……なんでこうなったっ!」

「私達の……健やかなる、休み……が……」

「ここはサイコロの神様にお願いしますのですわ。えいっ!」

 宿題を広げている居間に案内して、お茶を煎れて一息吐きます。夏休みの宿題を俺に押し付けていた事がばれました。その結果、お嬢さんの目が光り3人は渋々夏休みの宿題をする事になりました。

「本当に良いのか? 折角遊びに来たのにわざわざ宿題の手伝いをしてくれなくても良いんだぞ?」

「性分ですので。お気になさらないで下さい」

「損な性分だな」

「そうでもありませんよ。貸したものはきっちり返してもらうようにしてますので」

 お嬢さんがニコッと。あ、俺への貸しも入ってるんだ。

「チーちゃん、この四字熟語は何て読むんだ? 意味は分かるんだが読みが分からん」

「それ、は……イドクセイドクと、読む……のです……」

「難しい言葉を知っているのですね」

「毒が関わってるからだろう。というか、作文に毒の作り方やその解毒薬の作り方を書くな。いったいどこの学会に出すつもりなんだ」

「そんな事が書かれているのですか? 少し見せてもらっても宜しいでしょうか」

「どうぞ」

 夏休みの宿題を俺に押し付けているとは言っても、作文や日記などは流石に本人達が書いてます。すぐに分かる問題とかの答えも書き込まれてたりします。別に宿題全てを俺がしている訳じゃなくて、一応は一度手を付けた後のものが俺に回ってきます。全フリは流石に俺ちゃんがメッてしますので。

 んで、ついでに作文のチェックとかもしています。誤字脱字チェックですね。本分は弄りませんよ。

「おじさん。次、これお願いね」

「はいよ」

 一番年齢が上のリンちゃんから渡される宿題が一番難関です。だからたまに悩んじゃいます。唸っちゃいます。

 でも今日だけは大丈夫。頼れる現役女子高生さんがいますから!

「この問題、分かるか?」

「えっと……どの問題でしょう」

 何故かちょっとだけ固まっていたお嬢さんが、時の流れを思い出したかのようにすすすっと身体を寄せてきて俺の手元を覗き込んできます。あ、手がちょっと触れた。それに何だか良い香りがします。シャンプーの香りかな? 家を出る前にシャワーでも浴びて身体を清めてきたのでしょうか。

「おじさま、ていっですの」

 などとちょっとした至福の時を喜んでいると、背中にユキちゃんキックを受けました。どうしたんだろ。何か嫌な事でもあったのかな?

「おじさん……これ、食べて……ください……さっきの作文に、書いてある……自信作、です……」

 随分と危険な自信作があったものですね。しかもこれ、毒薬と解毒薬のどっち基準の作品ですか? もちろん後者ですよね?

「うりゃ~っ!! リンちゃんスーパーフライングボディプレス!」

「それは流石に危ないから却下だ」

 ドタドタと壁に向かって走りジャンプ。そのまま三角飛びして襲い掛かってきたリンちゃんの身体を真正面から受け止め、お返しのタワーブリッジを決めちゃいます。

「ギブ、ギブっ! おじさん、その技反則!」

 難関に挑戦して敢えなく玉砕、その腹いせに俺ちゃんを攻撃してくるのは止めましょう。暴れたくなる気持ちは分かりますけど、その技マジで危ないからね。二度としちゃいけませんよ。

「あの……つかぬ事をお聞きしても宜しいでしょうか?」

 いつの間にか宿題そっちのけで3人+3匹対1という超変則的な戦闘状態へと突入した俺達に、それまで呆気に取られて目を見開いていたお嬢さんが意を決して聞いてきます。

「ん? 混じりたいのか? 何でもありのプロレスルールだから、お嫁にいけなくなっても良いというなら別に止めはせんが」

「それは遠慮させて頂きます」

 ちょっと残念。もしもの場合はちゃんと責任を取ってあげるのに。

「ずっと確信が持てなかったのですが、益々自信が持てなくなったので思い切って直接聞くことに致します」

 右脇にユキちゃんを捕らえ、左腕で上下逆様にしたリンちゃんを抱え、右足はチーちゃんに関節技っぽい謎技を掛けられ、頭の上を高いところが大好きなクロヒメちゃんに占領され、背中にエルフちゃんが爪をたててぶら下がり、一番危険な場所付近をシェラーリちゃんの猫パンチが繰り出されている最中。

 お嬢さんが何やら意を決して聞いてきました。

「あなたはカズミ殿でしょうか?」

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