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姪とオンライン!  作者: 漆之黒褐
第二節 二章 『ACCELERATION WORLD』
79/115

姪と After Event

「おじさまおじさま。起きてなのです。朝なのですの。ラジオ体操に行く時間ですの。だから早く起きるのですの。じゃないと遅れちゃうのですわ」

 んん……身体が揺れている。地震だろうか。それともまさかマリリンがまたプチプチメテオを乱射しているのだろうか。迷惑だな。俺の安眠を妨害しないでよ。俺ちゃん寝付きが悪いんですから一度起こされちゃうとすぐには眠れないんだから、朝ぐらいゆっくり寝かせてよ。

「なんだか今日は皆さんおかしいのですわ。リンねぇ様もチーねぇ様もなかなか起きてくれないのですの。おじさまも全然起きてくれないのですの。いつもなら私の方がほっぺたチューで起こされる筈なのに、今日は誰からもそれがなかったので寂しいのですの。だから今日は私も同じ方法でおじさま達を起こすのですの。恥ずかしいけど仕方がないのですの。ラジオ体操の皆勤賞を逃す訳にはいかないのですの」

 何だか身体が重いのですの。誰かが乗っているのですわ。苦しいのですの。うなされてしまいそうなのですの。ですのですの。……ですの?

「では、いくですの。おじさまにチュッチュするのですわ」

 お腹に乗っていた何かが胸へと移動し、頬に生暖かい感触が。まるでついばむようにソフトなタッチでチュッ。とても小さくて可愛らしい唇が俺の左頬に触れました。

 え? 俺ちゃん実は起きているんじゃないかって? くすくす、もちろんでっす♪ こんな嬉しいシチュエーション、滅多にないですからね。

 いつもはリンちゃんのフライングエルボーが襲い掛かってきたり、チーちゃんに口と鼻を塞がれて呼吸を強制停止させられてますから。可愛い姪との愛あるコミュニケーションの一貫として、毎日わざと受けてたりしまっす。

 だから今日もわざとなのですわ。くすっ。

「うーん、起きないのですの。きっともっとチュッチュが必要なのですわ。もっとおじさまにチュッチュするのです。おじさまが起きるまでチュッチュしまくるのですの」

 チュッチュしまくってくれなのですわ。ユキちゃんって意外と大胆なんですね。きっと将来は旦那様を毎日とても喜ばせてくれる良いお嫁さんになりますね。

 まぁ、俺ちゃん絶対にユキちゃんの結婚を認めないけど。ユキちゃんを娶ろうという不届きな輩が現れたら俺ちゃん修羅にでも悪鬼羅刹にでもなりますよ。

 それは兎も角、ユキちゃん朝のお勤めグッジョブです。100点を越えた100点をあげちゃいまっす。

「う~……おじさま全然起きてくれないのですの。わたくしすっごくピンチなのですわ。わたくし一人でラジオ体操には行っちゃダメなのですの。一人は危ないのですの。わたくし可愛すぎてすぐに攫われちゃうのですの。だからどうしてもおじさまには起きて欲しいのですの。起きてわたくしをラジオ体操する公園まで護衛して欲しいのですわ」

 チュッチュの連打が両頬の浴びせられるなか、ユキちゃんが俺の身体をユッサユッサ揺らしながらそんな事を言ってきます。うーん、そろそろ起きた方が良いかな~。これだと俺ちゃん悪者になっちゃうな~。でもユキちゃんにもっとチュッチュしてもらいたいし~。

 ……あれ。両頬に同時にチュッチュされてる? ユキちゃんは一人しかいないのに?

「みなさま、もっと頑張ってチュッチュするのですの。ほっぺただけじゃなくて唇にもしちゃうのですの。これだけ頑張っても起きてくれない意地悪なおじさまのファーストキッスをみなさまで奪っちゃうのですわ」

 え……みなさま? わっ! 唇にキスされた! しかもその後なめられた!?

 そして噛まれた!

「いたっ!」

「あ、ようやく起きてくれたのですの」

 思わず声をあげて目を開くと、そこにはユキちゃんのプリティーな顔……じゃなくて、白い毛で覆われた猫ちゃんの顔がありました。シェラーリちゃんのキュートな顔がアップでありました。左右にはクロヒメちゃんとエルフちゃんもいます。猫ちゃんのハーレムでっす。

 って、ちょっと痛いですマイラブリー子猫ちゃん達。あなた達の舌は凄くザラザラしてるんですから、顔を舐めないで下さい。鼻をペロペロ、目の舌をペロペロ、唇をペロペ……そこはらめぇ!

「おはようございますですの、おじさま。朝なのですわ」

 してやったりの顔を浮かべたユキちゃんは、その後無事にラジオ体操に間に合いましたとさ。時間、全然余裕じゃん。



♪♪♪♪♪♪♪♪姪とオンライン♪♪♪♪♪♪♪♪



「うー……皆勤賞が~~」

 んで、ラジオ体操から帰ってきた俺達3人は(ヽヽヽ)、膨れっ面となったリンちゃんから視線をそらしつつ朝御飯を食べています。

 一連のチュッチュ事件、実は裏でチーちゃんが糸を引いていました。黒幕です。朝から毒料理を作ろうとしたぐらいに何だかチーちゃんの機嫌も悪いです。機嫌が悪くてついうっかりリンちゃんン起こすのを忘れちゃったそうです。でも俺とユキちゃんもついうっかりしてましたので同罪です。

 だから今現在、チーちゃんの機嫌が悪いという事はそっちのけで、3人とも気まずい雰囲気を出しまくってました。

「おじさん、前に言ってたよね? 俺様は朝は凄く強ぇからリン様のラジオ体操皆勤賞を全力でサポートしてやるぜ~、って。だから私、おじさんに全幅の信頼を寄せて目覚ましかけるの止めたのに……」

 いや、あの目覚ましは近所迷惑だから俺が止めさせただけなんですけど。それに、リンちゃんの目覚ましはかけてなくても、一緒の部屋で寝てるチーちゃんとユキちゃんの目覚ましはいつも通り鳴ってます。だから実は何の意味もありません。

 というか、それって俺のモノマネですか? 俺ちゃんそんなガラの悪い言葉使いしませんよ。いったいどこの世界の世紀末チンピラですか。

「この落とし前、どうつけてくれよっかな~。何買ってもらおっかな~。今度発売するベッド型のスリフィディアとか欲しいって思ってたんだよね~。あれ、一つでいくらしたんだっけな~」

 なんか危険な事をリンちゃんが口ずさんでいます。別に現在使用している首輪型のスリフィディアでも問題無いと思うんだけど。かさばらないし、首も痛くならないし。

 と思っていたら、どうやら今度発売するベッド型スリフィディアを買えば、ユキちゃんも一緒にプレイ出来るようになるとのこと。つまりリンちゃんはラジオ体操云々よりも一緒に暮らしているユキちゃんだけのけものという現在の環境の方が嫌らしいです。

 リンちゃん、なんて良い子なんだ。そういう良い子には撫で撫でしてあげましょう。あ、はねのけられた。難しい年頃なのかなぁ。うりゃ~、撫でさせろ~。リンちゃんの頭は俺ちゃんに撫でられるためにあるんだ~。

 それはそれとして、新型の方は初回版とは異なり家族限定という仕様にはありません。抽選もありません。早い者順となっているそうです。

「早い者順ねぇ……それってまた並べって事か?」

「ん~、たぶんそれは必要ないかな~」

 そう言って、リンちゃんとチーちゃんが指で例の輪っかを作って教えてくれました。金っすか。金なんっすか。早い者勝ち勝負なのにのんびり構えていても問題無いぐらいな金額なんっすか。一般庶民にはまず買えないレベルの大金っすか。

 んで、しかもそれが3つと。新規プレイヤーのユキちゃんだけじゃなくて、リンちゃんとチーちゃんもお揃いで欲しいんですか。セカンドキャラが欲しいんですか。首輪型では幾つ持ってても作る事が出来なかったセカンドキャラがベッド型なら可能らしいです。

 え? 3つじゃなくて4つ? 俺に今度はまともなセカンドキャラを作れと? いやいた、まだ買うと決めた訳じゃないんですけど……。

「さぁ我が願いを叶えたまえ!」

 さて、ここで一つの推理をたててみます。もしかして、3人ともぐるではないでしょうか。

 実はリンちゃんは朝起きていて、寝ていたフリをしていたとか。そんでもって、俺達3人が家を出たら猛ダッシュでラジオ体操をしてる公園に行って、スタンプを押してくれる黒髪美人の高校生のお姉さん――最近は黒じゃなくても良いらしいから、茶髪さんや金髪さんって結構多いんですよね。多国籍化も進んでるから余計に黒髪は希少種になりつつあります。色々試してみたい盛りの学生さんはその傾向にありまっす――に協力を要請。

 何だかいつもより早く家を出て、何だかいつもより不自然なほど遅い歩みで公園に向かっていたのは何でかなぁっと思っていたんです。もしこの推理が正しければ、俺達に見つからないうちに何処かに隠れてラジオ体操に参加したリンちゃんは、ラジオ体操が終わって俺達が帰った後にラジオ体操お姉さんにハンコをポンッと押してもらって再び猛ダッシュ。やっぱり不自然なほどゆっくり歩いて帰っていた俺達3人を回り道して追い抜いて無事帰宅。あとはお布団に入って息を整えれば完了です。

 ちなみにリンちゃんを起こしたのは俺じゃなくてチーちゃんとユキちゃんでした。その頃俺は遅れた朝御飯の支度でてんてこ舞いです。今日は平日ですからね。ラジオ体操は遅れようが休もうが全然問題無くても、学校に遅刻するのはどうかと思います。ふぅ……今日がお弁当の日じゃなくて良かった。

「いってきまーす」「行って……きま、す……」「行ってきますのですわ!」

 もしかしたら一緒にゲームで遊べるかもという期待が出てきた事で、ユキちゃんはいつも以上に元気な顔して学校へと向かいました。決して俺ちゃんを最後まで騙し通せた事に喜んでいる訳じゃありません。

 さて、カタログカタログ……ぐはっ!

 新型のお値段はご想像にお任せ致します。



♪♪♪♪♪♪♪♪姪とオンライン♪♪♪♪♪♪♪♪



「ふ~ん、そんなことあったんだ~。大変だね~」

 ちょっと現実逃避するためにお昼寝がてらメイド世界にログイン。本当はログインするつもりは無かったのに、いつもの癖で寝る前にスリフィディアを首に着けてしまいました。但し催眠音波のサポートは一日一回しか機能しないので、自力での睡眠になりまっす。子猫ちゃん達がたまに遊びに来るので本当になかなか寝付けなかったです……。

 あと、メイドオンラインは基本的にリアル一日で5時間しかプレイ出来ない仕様のゲームだけど、実は少しだけ抜け道があったりします。それは一日5時間プレイしなければ、余剰の一部を少しずつストックして別の時間帯に使用する事が出来るのです。

 俺の場合、いつもログインしている時間帯がリンちゃんとチーちゃんとリアル1時間後ろにずれているので、たまに2人と一緒にログアウトしたり、微妙に時間が余った場合にはすぐにログアウトしているのです。ラララ、だから結構たまってる~。

「いや、そんな事より。さっきから聞いてるように、何で御前がこの時間帯にログインしている。今日は平日だぞ?」

 そして、偶然鉢合わせてしまったリンネちゃんと俺は今、カフェでお茶していたりします。お子様のリンネちゃんと2人きりです。これってデート? それとも「おまわりさん、こいつです! 怪しい男が幼女を誑かして家に連れ込もうとしてます!」的なシチュエーション? 俺、レイ君と同じ様に牢屋に入れられちゃうのかな~。

 いやいや、問題はそんな所にはなくてですね。この後マジで衛士さんが来て職務質問され悪乗りしたリンネちゃんの御陰で本当に捕まるところでしたけど、そこは問題ではな……い事もないですけど、それは棚上げしておいて。

 今日は平日です。学生さん達はまず間違いなく学校です。リンネちゃん、なんでいるの?

 まさか学校にも通わない超幼女級……いや、それは流石に年齢制限で引っかかるか。

 兎も角、今はリンネちゃんがログインしていい時間じゃありません。

「ほら、たまには休みたいって思う時あるじゃん。今日はそれ」

「……それは計画的犯行か?」

 つまり仮病。俺ちゃんも昔、魔が差してそういう事をしようとした事があります。まぁすぐにばれて姉と妹に左右を固められ学校に連行されましたけど。あの時はめっちゃ恥ずかしかった……。

 親しき仲にも礼儀あり。親しき仲を見せつけるのは羞恥プレイ。

「それでそれで? カズミお姉さんはササ……お母さんが愛をこめて打った短剣と、マリちゃんの想いが詰まったプレゼントの短剣と、どっちをメインウェポンにして戦ったの? その答え如何では、あたしは二人の愛をぶち壊す悪鬼にも叶わぬ恋を応援するキューピットにもなるんだけど?」

 俺の問いを無視したリンネちゃんが何やら物騒な事を言ってくるので、その可愛いおでこをデコピンしてスルー。友情は愛ではないのだよ。家族愛は恋ではないのだよ。勘違いしちゃいけません。

「勝てない戦は戦わずに逃げる、これこそ最強の兵法だ。どっちも抜いてない」

 ちなみに何の話をしているかというと、例のマスコンバットです。どこかの無能な指揮官さんのせいで戦場に散っちゃった4人に敬礼をした後の話でーす。もちろん、色々と情報を伏せたうえでのお話ですけどね。プライベートダンジョンは兎も角、加速世界のプライベートエリアの事や俺がマスコンで指揮官をしていたっていう話はぐにっとねじ曲げて隠しています。

「あ、逃げたんだ。でも大軍に囲まれたんでしょ? どうやって逃げ切ったの?」

「俺には最凶のプリンセスがついてるからな。俺の前に道が無ければ作ればいい」

「……今、最強って言葉が強いって漢字じゃなくて大凶の凶を使ってるように聞こえたんだけど、気のせいかな」

 気のせいです。

「マリちゃんのあの魔法、色々と反則だよねー。結構噂になってるって知ってる?」

「噂にならない方がおかしいだろ」

「だよねー。あの魔法、結構色んな人がキャラ削除を繰り返したりしてゲット出来ないか試してるみたいなんだけど、今の所誰もゲット出来てないんだって」

「俺達が使ってるのは豪華特典付きの超なんちゃら版だからな。キャラ削除が出来ない代わりに一度限りのそういうチャンスがあったんだろう。マリリンはどうもそういうのを引きやすい質らしいし」

「そういうのを見越した複数機持ちの廃プレイヤーも何人かいたらしいけど、その人達でもチュートリアルクエストの報酬スキルにはあがらなかったんだって。だから、今ではマリちゃんのあの魔法は一人限定のユニークスキルじゃないかって話にもなってるってのも知ってた?」

「それは……ちょっとやばそうだな」

「うん。超やばいかも。マリちゃんも魔法も派手だから特にね……」

 派手な魔法を派手にぶちかますのが好きなマリリンなので、その噂もあっと言う間に派手に広がっていた。まぁ魔法が魔法だけに、いくらマリリンが自重してもいずれはばれる訳だが。例の超高額な新型スリフィディア発売まで一度も使わず封印し続けるとかでもしない限り、その問題からは逃れられないだろう。

「というわけだから、カズミお姉さん。夜道には気をつけてね♪」

「いや、何で俺が?」

「だって、一番噂になってるのはカズミお姉さんの方だから。そんな物騒なユニーク魔法を使う女の子の姉妹で、お姉さん自身も特殊なユニークジョブで、しかも今もっとも人気のあるお母さんお手製の業物短剣をただでもらい受けてて、最近やたらと性能の良いポーションを卸している凄腕の錬金術師で、何よりお婿さんにしたいプレイヤーナンバーワン! かっこ、女性プレイヤー限定のアンケート結果です、かっこ閉じ」

 え!? 俺ちゃんいつの間にかそんな事になってるの?

 というか俺、キャラは女性なのでお婿さんってのは間違ってます。いえ、中身は男なので必ずしも間違いという訳ではありませんけどね。でもきっと本当の事を知ったら一気に票が減っちゃうんだろうな~。誰も信じてくれないけどねー。



♪♪♪♪♪♪♪♪姪とオンライン♪♪♪♪♪♪♪♪



 何はともあれ、例の加速世界イベントは無事に終了致しました。

 あの後、戦場から撤退してすぐに世界が暗転し、気が付いたらお布団の中で眠っていたという、まるで夢オチの様な現象。ユキちゃんの可愛い声が耳に入ってきた事でここが現実世界だって分かりました。

 とりあえず、この事はみなさんご内密でお願いしますね。喋っちゃダメですよ~?

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