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姪とオンライン!  作者: 漆之黒褐
第二節 二章 『ACCELERATION WORLD』
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冥土 no War

 夜空に突如として赤い光が瞬きました。

 世界を紅色に染める赤き月……否、赤く燃える隕石の出現に、戦場にいるほぼ全ての人達が空を見上げました。

 その瞬間、大地を穿つ程の轟音が周囲一帯に鳴り響きます。

 それ何の音?

 俺ちゃんが着地(地面に激突)する音です。痛いです、ヴァニーちゃん。いくら落下ダメージが固定ダメージではなく最大HPの%ダメージだからといって、あんな高さから落とされたら痛いに決まってます。普通なら死んじゃってます。ああでも、もしかして俺ちゃんが大陸外からの訪問者(プレイヤー)だって知ってるから、万が一は無いなって高を括ってたんですかね。確信犯だったんですかね。いえ、絶対確信犯ですね。

 兎も角、俺ちゃんが……漆黒の覇者ダークナイト・シュツルムカイザーX様が戦場に舞い降りました。文字通り、舞い降りました。いえ、落ちました。威風堂々といった演出は流石に出来ませんでした、くすん。

 早速、命令を出しましょう。出しちゃいましょう。何しろ俺ちゃんは指揮官なのですから。

「全軍、全力後退! 緊急待避せよ!」

 と叫びつつ、我先に回れ右して率先して逃げました。だってね、いきなり調子に乗ったマリリンが最大威力で隕石魔法を放ってるんですから。逃げないとヤバイです。というか、俺が此処にいる事を知っててそんなの撃ってこないで! 昼間の状況とは違うんですから!

 俺の突然の号令に、皆が一斉に逃走を開始します。その中に何故か敵の姿もありましたけど、そんな事は些細な事です。ただ、一人だけ呆気にとられて俺の方を見ているだけの人とすれ違いました。すれ違っちゃいました、俺以上に暗黒な鎧を着てるあの人に。

「レイさん!」

 うん、どこからどう見てもレイ君ですね。その鎧、また着ちゃったんだ。

 とりあえず、他人の振り他人の振り。他人事じゃないけど他人の振りしちゃおっと。

「全軍反転、全力防御! 耐衝撃体勢を取れ!」

 そう叫んだ瞬間。

「ヤッホー。お姉さん元気してたー? またまた僕ちゃんがサポートしてあげるよー」

 いや、このタイミングで時間を止めて出てこなくて良いから。物凄い爆風がこっちに向かってきてるってのが在り在りと見えまっす。爆風に吹き飛ばされて宙を飛んでる兵士さん達が物凄くリアル過ぎですって。

「あ、ちなみにプッ君とピクリンはお仕事中だから今回は僕ちゃんだけね。プッ君は地上にいるお姉さんのお仲間さん達のサポート中で、ピクリンはお空にいるあのこわーい魔女さんと和気藹々中でーす」

 そんな情報も別にいりません。あ、でもプッ君こと学者妖精プクーラ君はシン君と馬が合いそうだな~。二人のトークに花が咲きそうです。

 あと、ピクリンっての止めようよ。なんか運んで戦って増えた後、食べられちゃいそうです。哀愁漂ってる名前に似てるのに本人の印象とかち合ってないです。というか、また首絞められますよ~?

「お姉さん、心の準備オッケー? タイムストッパーを解除しちゃうよ~? それじゃ、レディーごーっ♪」

 ノリノリですね。何か良いことあったのかな?

 などと余計な事を考えてたら防御するの忘れて爆風に吹き飛ばされちゃいました。命令を出した黒鎧の騎士様が空を飛びまっす。うきゃ~っ。

 あ、空を飛んだ御陰で戦場全体が見渡せちゃいました。隕石の炎で照らされた戦場の光景を脳裏に焼き付けまっす。ラッキー。

「右翼、遊撃部隊、即行突撃せよ! 左翼、強撃前進!」

 敵の弱点が見えたらサッサと付くに限ります。あ、右翼部隊の中にセンねぇちゃんが見えた。その後ろにシン君、ユリアちゃん、レイ君と続いてます。4人は遊撃部隊扱いなんだね。頑張って~。

 それはそれとして、なんか見慣れない命令文選択肢が幾つか表示されてます。何だろう、これ。シン君達に関わる命令かな? 必殺技っぽい名前とか範囲回復とかいうのがあります。それと、一つだけ禍々しいものも混じってます。う~ん、どうしよう。やられる前にやらしちゃおうかな~。

「漆黒の魔女ダークウィッチ・メテオプリンセスK(くりむぞん)、中央にプチプチメテオを乱射せよ!」

 いや、もう誰の事かバレバレなんですけどね。漆黒って事は、マリリンも俺と同じ様に黒い魔女服でも着させられてるのかな~。ヴァニーちゃんのセンスいったいどうなってんだろ。それとも仕様です? あと、クリムゾンの頭文字はCだからね? Kじゃありませんから。間違ってますよ~。

 敵さんの左右の連携を分断するために、中央へと隕石が雨霰と降り注ぎます。最初の巨大隕石とは違い、空から降ってくる隕石は小さく地面に激突しても3メートルぐらいの範囲攻撃にしかなっていません。たぶん、連射優先で威力を最小に留めているからでしょうね。却って質が悪い気が……俺がそう命令した訳だけど。

「お姉さん、えげつない……お姉さんが来るまではほとんど膠着状態でむしろ劣勢だったのに、一瞬でひっくり返しちゃったよ。僕ちゃん真っ青」

『どう見ても俺の力じゃないだろ。上にいるアレが原因』

「悪魔だ……」

 どちらかというと小悪魔ですね。というか、俺ちゃんの可愛い姪を悪魔だなんて呼ばないでください。黒騎士様から魔王様に変身しちゃいますよ~?

「あ、お姉さん。右翼で武将同士がぶつかり始めたみたいだよ。援護しないと」

『武将? シン君達の事か?』

「うん。模擬戦とは違ってこっちもあっちも武将クラスの人が何人も紛れ込んでるからね。ただの雑兵と指揮官だけって事はまずないから注意して。場合によってはただの一兵士がすっごく強かったりする事もあるんだから」

『リアルだな……ちなみに、相手の強さはどの程度か分かるか? ここからだと俺には見えないから分からん』

「これまで何度もぶつかってるみたいだけど、全部敗走してるみたいだね。格上という訳じゃないみたいだけど、敵さんにはヒーラーが2人もいて攻めきれないみたい。ジリ貧で押し切られてるって感じかな~?」

『了解』

「暗黒騎士、暴走せよ!」

「って、ちょっとちょっと! いきなりその命令!?」

 レイ君、骨は後でゆっくり拾ってあげるよ。だから頑張れ!

「聖術剣士、抜刀! 遊撃部隊、全力攻撃開始! 漆黒の魔女ダークウィッチ・メテオプリン(なげぇな……)セスK(くりむぞん)、右翼後方に標準を変更せよ!」



♪♪♪♪♪♪♪♪姪とオンライン♪♪♪♪♪♪♪♪



 戦いは終わった。

 朝日が昇り、大地に倒れ眠る戦士達の無惨な亡骸が曝される。

 そこにはただ戦争の虚しさだけがあり、勝利と敗北の結果などどうでも良いように思われた。

「人とはかくも愚かな生き物なのか……」

「いやいや、お姉さん。いくらなんでもそれは酷すぎる気がするんだけど」

 眼前に横たわる味方の死体の数は4つ。その周りには敵国の兵士と思われる屍が積み重なり、彼等がこの戦争においてどれだけの戦果をあげたのかを物語っている。

「全員、敬礼!」

 生き残った兵士達を集め、その4人に向けて最上位の敬礼を行う。空では天馬が嘶き、それまでの喧噪とは一転して静寂に包まれた世界に哀愁が漂った。

 天馬が乗り手の命令を受け徐々に高度を落としてくる。それを手で制し、俺達は大地に眠る戦士達に背中を向けて行軍を開始する。

「これより、逃走した敵を完膚無きまでに叩き潰す! 全員、鬨の声をあげ抜刀せよ!」

 全ては彼等4人の働きを無にしないため。

 本音はさっさとこの場から退散したいから。だってそろそろ4人とも復活してくる筈だからね。会話を交わしたらこの黒騎士は俺ちゃんだよってバレちゃいそうですから。サササっと逃げちゃいましょう。

 あ~でも、マリリンの口はどうやって封じようかな~。マリリンが天馬に乗って戦線に乱入したってのはどう考えてもバレバレですからね~。気付かない訳がありません。一応、俺の方は命令を叫ぶ時に声を変えてるのできっとまだバレてない筈……。勘の良いシン君はもしかしたらアウトかもしれないけど、他3人はたぶん大丈夫? というか、プクーラ君がバラしてないと良いけど。

『俺が黒騎士だって事は内緒だってプクーラ君とピクリちゃんに口止めしておいてくれるか? ついでにピクリちゃん経由でマリリンへの口止めもお願い。これは二人だけの秘密だって言って』

「いいけど……僕ちゃんの勘だともう手遅れだと思うな~」

『御前の勘は当たらないからまだ大丈夫だって事だな。よし』

 ガッツポース。いえ~い。

「失敬な! 僕ちゃ……フガフガ」

 五月蝿い小蠅は力尽くで黙らせて、そろそろ気合いを入れましょう。

 兵士さん達にはこれは逃走追撃戦だって告げたけど、そんな訳がありません。今まで戦っていたのは強襲斥候部隊で、後ろに本隊が控えているのは間違いなし。引き際が良すぎたり、いくら倒しても敵さんの兵士がなかなか減らなかったのがその証拠です。

 この戦、最初から負け戦なのは確定していました。だから、後はどのようにして負けて、どれだけ犠牲を払わずに撤退できるかです。

「カズミ殿、前方に敵影を発見した。数は……」

「分かっている」

 一度は俺に制止されたものの、やはりその情報は告げなければならないためヴァニーちゃんが空から降りてきました。

「援軍は期待出来そうか?」

「招集は既に行っているが、王都を出発するのはまだ先の事だろう」

 ヴァニーちゃんは言い難そうに告げてきます。その後ろでは黒のバタフライマスクを付けてるマリリンがスヤスヤとお休み中。やっぱお子様には夜のお仕事はきつかったかな。もしかしたらセンねぇちゃんも死体状態のままお眠りしてるかもしれませんね。やっぱ置いてきて良かったかも。

「初めからこの部隊が時間稼ぎの捨て駒だったのは何となく分かっていた」

「気付かれていたか……流石はカズミ殿。やはり貴殿を登用したのは間違いでは無かったな。その分だと、この後の事も考えているのだろう?」

「それにはヴァニーちゃ……ヴァージニアとウィンダリアの力を借りる事になるが、付きあってくれるか?」

 あぶ……ヴァニーちゃんって言いそうになっちゃった。

「勿論だ。貴殿に我が命を預けよう。我が身を好きにしてくれ」

 そこには覚悟を決めた女騎士さんの顔がありました。ヴァニーちゃんも色々と苦労してるみたいだな~。肩書きが多すぎる時点で何となくそんな気はしていました。

 あと、一つだけちょっと心の中で指摘しておきましょう。

 最後の「好きにしてくれ」ってのは超危ない発言ですからね!?

 そこは「好きに使ってくれ」と言うべきです。じゃないと、本当に無茶苦茶にしちゃいますよ~?

「貴殿が望むなら、いつまでも」

 ……あ、フラグたってる。

 もしかして、言い間違いじゃなかった……?

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