冥土 no Caterpillar Sand
え~と……ちょっとマリリン視点の回想シーンに入ります。
♪♪♪♪♪♪♪♪姪とオンライン♪♪♪♪♪♪♪♪
「あ、ユリっち。あれ食べよ、あれ。お肉、お肉、サンドのお肉♪ おじさん、これ一つちょーだい」
「ウヒヒヒ、まいどあり。おっと、どうやら嬢ちゃんので今日は店じまいだね。ありがとさん」
「ん~、んまんま♪ ユリっち、これ美味しい。半分食べる?」
「もう半分もないじゃないですか。あ、全部食べた。もうマリちゃんったら最初から分ける気なんてないじゃない、ですか……マリリン!?」
「おな、かが……」
♪♪♪♪♪♪♪♪姪とオンライン♪♪♪♪♪♪♪♪
回想シーン終わり。
って、あれ? たったこんだけ? マリリン、明らかに怪しいお店で買い食いして即行お腹を壊してるだけじゃないですか。ウヒヒヒってなんですか。怪しさ抜群でっす。
「シン、マリリンがお腹壊した店を探してみたっすが、影も形も無かったっす。たぶんこれもクエストっすね」
「やはりそうですか。食べてすぐお腹を壊すのも変ですし、毒が入っていればユリさんの法術で回復出来ますからね」
「通常空間なら兎も角、人数が限定されるこの特殊空間内でそんなえげつない罠、普通仕掛けるか?」
「ここでそれが起きるとは流石に僕も思いませんでしたが、見返りもきっとそれなりのものが用意されていると思います。向こうでこの手のクエストが発生した場合には、復活した際に何かしら新しい力を手に入れる事が多かったですし。スキル枠の増加とか、職分岐先の発生とか」
なに!? スキル枠、増えるのですか。その腹痛パワーアップクエストをこなせば、俺ちゃんもスキル枠たった3つの縛りプレイから脱出出来ます!?
「カズミ氏が何を考えているのか分かりますが、この手のクエストはかなりレアですよ。固定ではなく法則性の見えない完全ランダムですから。恐らく、ただの運です。しかもスキル枠が手に入ったというのは、まだ1件しか報告がありませんし」
「運には自身がある」
「悪運は運のうちに入らないっすよ」
「マリリンはこういう当たりをよく引いちゃいますからね~。おねぇちゃんが知る限り、確かこれで3回目ですよ」
「うはっ! マリリン、運がぱねぇっすよ!」
「ちなみにセンさんは?」
「4回ほど。全て職分岐の発生でしたので、余計に大変になっただけですが」
「あー、剣士職をマスターしようとしてるセンには辛い報酬っすねー。ちなみに俺は1回だけ発生した事があるっす。報酬は……何故かこの鎧の強度と呪いレベルが上がっちゃったっすけど。解呪料金も一気に倍。ほんと泣きたいっすよ」
「僕はまだありませんね。カズミ氏は……あまり聞きたくありませんね」
いやいや、ちゃんと聞いて下さいよ。何、警戒してるんですか。俺ちゃんそこまでイレギュラーじゃありませんって。むしろ3回4回発生してるマリリンとセンねぇちゃんの方がイレギュラーでしょうに。
「そんなクエストが発生した記憶はないな」
「クエストウィンドウにはのらないっすよ。風邪か何かで寝込んだ事あるっすか?」
「常に健康体だな。元気はつらつ」
「おろな……」
「まぁ、そんな事は今は関係がありませんね。話を戻しましょうか。ユリさんも返ってきた事ですし」
あ、シン君のいけず~。ちゃんと言わせてあげてくださいよー。
「お待たせしました」
「おかえりっす、ユリちゃん。マリリンはどんな案配っすか?」
「はい。マリちゃんですが、どうやら腹痛じゃなくて、さっき食べた物の中にとっても大嫌いなものが入っていた事による精神的な食中りの様です」
「精神的な食中りって、おいおい……」
ちなみに俺ちゃんはチーズが駄目なタイプです。口の中でのねちゃねちゃ感や独特な臭いがダメダメです。吐きそうになっちゃいます。みんななんであれを平気で食べられるんだろう……。俺ちゃん、チーズじゃなくても似たようなねちゃねちゃ食感でもダメなんですよ。
「なんか、食べたらお腹の中でウゾウゾ動いたそうです。どうもその時に、Gを思い浮かべてしまったようでして」
「うげっ……なんつーものを食わせるんすか、このゲーム」
やべぇ……想像したら吐きそうになってきた。チーズを思い出してしまった事も含めて。
「一応この辺りで屋台を開いているNPCに話を伺ってみた所、それは王都名物の一つ、食用芋虫の躍り食い肉サンドだそうです。実は結構なレア食材らしく、店主の拘りもあってなかなか食べられる機会は少ないそうです。見かけたら是非食べるように勧められてしまいました」
「……」「……」「……」
「……それはつまり……」
「先程、僕達が話していたレアクエストの最も分かりやすい発生例の一つですね。運良くそのお店を見つける事が出来ても、中身を知っていればなかなか食べようと思う人はいないでしょう。特に女の方ですと、尚更」
「ゲテモノ料理なんかをトリガーに設定すんなよ……」
「マリリン、知らなかったとはいえ、勇者っす」
「え? え?」
一人、状況をよく理解出来ていないユリアちゃんには、俺がゆっくり説明してあげよう。もちろん、人気の無い場所で2人きりになってね。ユリアちゃん、まだフリーですか?
「とりあえず、マリリンはおねぇちゃんである私が看病しますので、皆さんは引き続き王都で情報収集を始めてて下さい。私もマリリンが回復したら合流します」
「そうですね。セン、マリリンの事よろしくお願いします」
「俺も付き……」
「カズミちゃんはみんなと一緒にいて下さい。マリリン、きっと今はカズミちゃんには会いたくないと思っていますから。格好悪い所を見せたくないという、ちょっとした乙女心です。でもたぶん、暫くすれば逆に甘えたくなってカズミちゃんを求める様になりますから、その時はお願いします」
「……そうか、分かった。マリリンの事、頼む」
「おねぇちゃん、任されました」
可愛らしく両手でガッツポーズをした後、センねぇちゃんは戦線を離脱してきました。……あれ、俺達って何と戦っているんだっけ? このゲームを作った謎の開発者さん達の悪意ありそうなシステム?
「んじゃ、早速二手に分かれて情報収集するっす」
「いえ、その前に確認しておきたい事が。すみませーん、ちょっとお尋ねしたい事があるのですが……」
丁度通りがかったヨボヨボのお爺さんを捕まえてシン君が何やら聞き出します。シン君の言葉が聞こえなかったのかお爺さんはそのまま通り過ぎようとしたので、本当にシン君はお爺さんを捕まえてから話を聞いています。いやシン君、話し掛ける相手間違っているでしょうに。めっちゃ苦労しながらお爺さんから何を聞き出しているんですか。それにその情報、本当にあってるの~?
あ、他の人にチェンジした。じゃなくて、複数の人に同じ事を聞いて情報の信憑性を確認しているんですね。なるほどなるほど。
「ただいま戻りました。やはり、僕の推測は正しかったようです」
「シン、何を聞いてきたんすか?」
「僕達が今いる時間軸です。最初からずっとプレイヤー達を模したNPCの数や行動がおかしいと思っていたのですが、これでようやく合点がいきました」
少しだけもったいぶってから、シン君が言いました。好きねぇ、シン君も。
「どうやら僕達は、過去に飛ばされたようです」
いや、もう何が来ても驚かないけど。




