↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
姪とオンライン!  作者: 漆之黒褐
第二節 二章 『ACCELERATION WORLD』
70/115

メイド to Private Area

「シン、この町見覚えあるっすか?」

 ないっすよ。出不精の俺ちゃんには港町エルファシル以外の町並みはサッパリです。あ、ちなみにリアルでも出不精だけどデブじゃないよ~。標準体重ちょっと上ぐらいです。姪と暮らすようになって何故か御飯が美味しくて美味しくてつい食べ過ぎちゃってます。ダイエットそろそろ考えようかなぁ。

「見覚えはありませんが、あそこにお城が見えるので王都ではないでしょうか?」

「お、ほんとっすね。カズミんちから一気に王都フェネシスっすか。らくちんっすねぇ」

「え、ここ王都なの? やった! クエストとミッションが進む」

「そう都合良く行けばいいのですが」

 フェネシスって名前、どっかで聞いた事があるなぁ。さて、どこだったかなぁ。

「そうなると、やっぱりあの豪邸は王族さん達が用意してる緊急用の脱出経路の一つか何かでしょうか?」

「その可能性は大っすね。もう少しよく調べたら王城へのワープ方陣も見つかったんじゃないっすか?」

「それが見つかっても僕達が使う訳にはいきませんけどね」

「今でもお尋ね者になる可能性が高いのに、お城にまで侵入したら国をあげての人狩りになっちゃいます」

「いっそ皇国に喧嘩売っちゃう?」

「お隣の帝國に行く伝手があるなら兎も角、そんなもの売っても安く買い叩かれるだけですよ」

「この国、戦争しているのでしたか」

「早い人はもうマスコンの一兵卒として前線に行ってるそうですね」

「あ、チュートリアルでやったあれっすね」

「ミッション進めないとマスコンって参加出来ないんだったよね?」

「この王都で発生する第三ミッションまでクリアする必要があるそうです」

「うわー、遠そう」

「実際、大変だったそうです。紹介状の入手、入隊試験の突破、連続した訓練クエスト。今は傭兵を募集していないみたいなので、正規の方法でこの国の兵士になる以外にはマスコンに参加する方法がないそうです」

「流石シンっすね。相変わらず情報が早いっす」

「情報は命ですから」

 なんか色々と聞き慣れない言葉が出てるなぁ。何となく分かるけど、何となくしか分かりません。

 この国の名前が確か……あれ、なんだっけ? センねぇちゃ~ん、ちょっと教えて~。ふむふむ、神聖フェネシス龍皇国ですか。あ、この王都と同じ名前だ。だから聞き覚えがあったんだね~。あれ? どこで聞いた事があったんだっけ?

 んで、隣の国の名前は……助けてマリリン! え、知らない? センねぇちゃんもう一度ヘルプミー。ほうほう、ミネルヴァ帝國ですか。そことこの国が戦争してるんですねぇ。え、国力比は10倍ぐらいはあるって? やばいじゃん。

 マスコンの方は分かりました。チュートリアルでやったあれです。マスターコンバット、つまり戦争シミュレーションです。マスコンと呼んでるのはプレイヤーだけですけど、こっちの世界の人達はちゃんと戦争と呼んでるみたいですね。

 そっか~、あれが出来るんだ~。でもミッションをクリアしないといけないのね~。俺ちゃん、ミッション何も受けてないな。面倒臭そうだったから、選択肢が出た時にNOを選択しちった。町に帰ったらちょっと進めてみようかな~。

「とりあえず帰りは死に戻りでいいっすかね?」

「え~。折角王都に来たのに~」

「マリリン、ここに復活ポイントを設定してしまうと、今度はマイホームのあるエルファシルに行くのが大変になりますよ」

「さっきの屋敷にいる兵士さん達を全部倒してワープゲート確保すれば良いじゃん」

「国に喧嘩を売るつもりっすか!?」

「喧嘩上等」

「カズミ氏、マリリンを増長させる発言は控えて下さい」

 くすっ。だってこれゲームだもん。と心の中で思ってみたり。

「あのワープ装置が今後使えるようになるかは、たぶんこの特殊なクエスト次第でしょうね。みなさん、気が付いてますか?」

「はい」

「うん、やっぱそうだよね」

「そうなるんですよね……信じられない事ですが」

「こういう仕掛けもしてたんすね~。メイド社、ほんと侮れないっす」

「?」

「あ、カズねぇだけ気付いてない。はてなマーク浮かべてるよ」

「まぁそこはカズミ氏ですから。これまでの常識外れの行動を見る限り仕方がないかと」

 あ、なんか酷い言われようです。ちょこっとプンスカプンな気分でっす。ぎゃおー。

「カズミ、いま何時何分っすか?」

「ん? 午後4時44分44秒だが? って、なんと不吉な……」

「そっちじゃないっす。リアルの方の時間っすよ」

「なんでそうピンポイントで引きが良いかなぁ」

「え~と……午前4時44分44秒って所か」

「いや、そこはわざわざ嘘吐かなくて良いっす。今は3時58分13秒っすね。カズミ、何か気が付かないっすか?」

「うん?」

 さて、なんだろう。別に変わったところはないんだが……いや、秒が全然進んでいない? あれ? このVR世界はリアル3分の1倍速世界だから、こっちのVR世界で3秒経てばリアル時間は1秒進む筈なのに。

 何故か……何故か、リアル時間を示す秒数字はまったく数値が増えていかなかった。

「まさか、伝説のタンマウィッチ!?」

「パパラパッパパー。た~ん~ま~う~ぉっち~」

 あ、知ってる人いた。まぁ有名な長寿アニメですからね~。耳のない青い猫型ロボットのお腹からゴソゴソと出てくる未来の秘密道具です。

 ちなみに、反応してくれたのはセンねぇちゃんです。アニメやゲームがものすっごく大好きみたいですからね~。マリリンもそれなりに好きだけど、普通の領域です。

「あの騒動で僕達も少しばかり忘れていましたけど、カズミ氏を除く僕達5人はもうとっくに強制ログアウトさせられててもおかしくない時間なんです」

「おおっ! そぅいえば!?」

「いや、マリリン。わざとらしく驚かなくて良いっすから」

「えっと……つまり? これって大事の様な……」

「大事と言えば大事ですね。ですが、技術的には可能な範囲です。恐らく僕達6人はあのワープ装置に入った事で特殊なクエストが発生し、それと同時に脳の認識速度を限界近くまで加速させられています」

「……加速世界?」

「アクセラレーションワールド?」

「わざわざ英語に直さなくても。普通に加速世界で良いと思います。但し、スリフィディアが普段行っている加速率とは明らかに倍率が異なりますが」

 睡眠型VR機器であるスリフィディアの通常加速率は、さっきも言ったように3倍。その加速率は常に一定に保たれる事で、数万人にも及ぶプレイヤーが同じ時間感覚でこのVR世界で過ごす事を可能としている。ここからはちょっとクールに。

「でも、NPCは普通に動いてるよな? 俺達だけ加速してしまったなら、あのNPC達や他のプレイヤーはほとんど止まっている事にならないか?」

「ええ、普通はそうですね。ですが……」

「ここ、たぶん俺達専用のプライベートエリアっすね。さっき知り合いの姿を見かけたっす。でもプレイヤー独特の人間じみた動きがなく、まるでNPCみたいな規則正しい動きだったっすよ。試しに話し掛けてみてもやっぱそうだったっす。俺の事、全然知ってるような感じじゃなかったっすね。誰あんた?的な反応で超ショックだったっす。ユキちゃんが冷たいっす」

 いったいいつの間に……というか、それ絶対に女の子だよね? ユダちゃんというものがありながら、レイ君まさかの浮気ですか!? これは早速ちくらねば……修羅場修羅場♪ あれ、クールモードが……。

「あ~……ちょっと現実味がなさすぎて実感がわかないんだが」

「でしたら、ログアウトボタンを押してみてはどうでしょう? 僕の推測が正しければ……って、行動はやっ!?」

 おぅ……ログアウト拒否された。え、拒否ですか!? これ、ゲームですよね?

「シン君……俺、ゲームの世界に閉じ込められたかもしれない。都市伝説だと思ってたんだが、まさか自分がそうなるとは……」

 心はブルーだぜ。危険信号は真っ赤なレッドだぜ。

 というか俺、現実世界では男……なのにこの世界では女の姿。え、一生このままなの!? だとしたらシン君、絶対に責任取ってよねっ! ……いや、巫山戯てる場合じゃないか。マジでレッド信号状態だ。

「早とちりしないでください。たぶん、僕達が置かれている現状は特殊なクエストが発生した状態だと思われます。そして今いるこの世界は、プライベート空間もしくはインスタンスエリアなどとも言いますね。言わば、僕達だけのために作られている加速世界です」

「シンちゃん、私の頭ちょっとパンクしそう。もう少し分かりやすく説明して」

「は~い、マリリンはちょっとあっちの屋台で買い食いでもしてましょうね~。後でおねぇちゃんがじっくりたっぷり説明してあげます」

「あ、それじゃあ私も付きあいます。私も難しい話はどうも苦手で。情報収集がてら、マリリンと2人で王都をかんこ……様子を探ってきますね」

 観光って言おうとしてたよ。マリリンとユリアちゃんが早々に脱落致しました。俺もあっちの方が良かったな~。でもシン君がなんか俺に説明したそうな顔してるし。語り部モード発動中かな?

「要約すると、マイホームの地下ダンジョンにあったあのワープ装置を越えた事で特殊イベントが発生した。そして、技術的には可能だとされている高位の時間加速率が適用されたインスタンスエリアに飛ばされた。ここで何らかのクリア条件を達成するもしくは制限時間がくるまではログアウト出来ない。そういう事か?」

「あの……僕まだ説明してないんですけど。しかもあってるし」

 ふっふっっふっ。伊達に年はくっていないのだよ。年はね。自分で言ってて悲しいけど。

「僕の推測を付け足すなら、本来はもっと加速率を抑えていたと思います。と言っても50倍ぐらいは平気で加速されていそうですが。恐らくログアウトまでの残り時間によって加速率を変化させていると思います。ただ僕達はロスタイムを含めても残り10分はなかったと思うので、かなり加速させられているのではないかと。先程からずっと秒が進むまでの時間を計っているのですが、もうすぐ10分経ちます。つまり僕達は最低でも600倍には加速している計算になりますね」

「理論上で可能な加速率は?」

「僕の知る限りでは1000倍以上ですね。ですが、よく話に聞く達人同士の戦いでは、一瞬が1万倍にまで認識が引き延ばされるそうですから、それ以上の可能性もあります」

「いや、技術的に可能なという意味で」

「それはマシンスペック次第でしょう。昔、以下のような話をお父さんから聞いた事があります。当時世界第4位にあったスーパーコンピューターの話なのですが、1秒間に1京回計算する事の出来るそのスーパーコンピューターでも、人間の脳1秒間の活動を計算するにはそのコンピューターでは40分の計算に匹敵するんだそうです。その頃から時代は進化していますが、僕達が使っているのは家庭用マシンですからね。まだまだ脳には処理速度の余裕があるんじゃないでしょうか」

 ちなみに、京というのは万億兆のその次にあたる数字の単位です。京の次は垓(がい)だったかな? んで、40分は2400秒だから、少なくとも脳と同じ処理速度を得るには1秒間に2400京回の計算が出来なければダメと。だったら1垓回計算出来る奴でいっか。

 家庭用で1垓パソコン。うーん……数値がべらぼうすぎて頭の回転が追いつきません。本当に俺の頭ってそれだけのスペック誇ってるのかな~。記憶云々がなければ、暗算し放題じゃない。40分かける60秒は~、とか悩まなくて済む筈なんだけどね~。となると、やっぱハードはよくてもソフトの問題か。

 人間の脳(ハード)は良くても人間の頭(ソフト)が滅茶苦茶悪い。早く電脳化の時代こないかな。ついでに老化も寿命も取っ払って欲しいです。

「まぁそんな算数の話は今はいいっすから、これからどうするか決めるっす」

 せめて数学って言ってよレイ君!

「まずどこを拠点に動くか決めましょう。それからツーマンセルで情報収集。そもそもこれがいったいどんなクエストなのか分かりませんので、そこが分からない事には動きようがありませんね」

「拠点はとりあえず今日はあそこの宿屋で良いんじゃないでしょうか? ログアウト出来ないという事は、普段なら全く気にしなくていい睡眠も取る必要があるかもしれませんし」

「そうですね。いくら超加速したVR世界といえど、24時間ずっと動き続けるのは脳の負担が大きすぎると思います。精神的にも辛いですし」

「いっそ3食もきっちり取るっす」

「となると、今夜は寝る事を前提としましょうか。セン、宿の手配お願いできますか?」

「はい。じゃ、ちょっと行ってきますね」

 みんなでお泊まりか~。部屋割りはどうなるのかな~。誰と一緒のお部屋なのかな~。2人部屋しか空いてなかったら、俺ちゃんものすご~く難しい選択肢を迫らせそうですけど、まぁその時はその時。ちょっと楽しみ~。

 などとワクワク気分でいたら。

「あの、すみません! マリリンが!」

 突然、王都観光もとい情報収集に行ったユリアちゃんが慌てた様子で帰ってきました。

 え? マリリン、まさか本当にこの国に喧嘩売っちゃったの?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。