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姪とオンライン!  作者: 漆之黒褐
第一節 『VALKYRJE SONG』
22/115

メイド no Cruel Fate

タイトルの綴り間違ってた(>_<)

Cluel >> Cruel に修正しました。報告どうもですw

「また詰まらぬ犬を燃やしてしまった」

 持ってる杖をまるで刀を鞘に収めるかのようにマリリンが振り払う。シュバッシュバッ、クルクル、チャキンという効果音が鳴った。

「今の効果音、何!?」

 ベロンっと舌を出して寝そべっているケルベロン君に勝利の言葉を呟いたマリリンが決めポーズから一転、吃驚して振り返る。してやったり。オニギリとお茶のお礼です。あれ、お礼の意味が違う? 吃驚してるけど喜んでもいましたよ。ちっ。

「カズミちゃんですね?」

 ニヤッと笑って肯定の意をセンねぇちゃんに返す。ニコっというかニヤッと微笑み返されて逆に驚かされる。うわ、早速何か良からぬ事を考え始めてる!? いや、たぶん気のせいだな。センねぇちゃんはただ単にニコっと笑っただけだ。だけだ、だけだ……。

「カズねぇ、もしかしてBGMのスキル?」

 ピンポーンというお約束の音を鳴らして答える。意外とこのスキルって便利だという事に最近気がつきました。街の外で使うとスキルの暴発が勝手に続いて敵さんを呼び寄せてしまいますが、まぁあのケルベロン君と闘ったここならばボス戦フィールド扱いで敵さんは現れないでしょう。

もしよってきちゃったら処理お願いしマース。

「カズミさんは面白いスキルをお持ちなんですね」

「面白いスキルというか、無駄スキル?」

「良いじゃないっすか。人にはそれぞれゲームの楽しみ方という物があるんっすから。俺達みたいに戦闘ばっかりしてる人もいれば、街に引きこもって生産バリバリしている人もいるっす。かと思えばNPCだと分かってるのにナンパしてNPCの女の子達とエンジョイしてる人がいたり、猫さんと戯れているだけの人もいる。あ、お爺さんの家でのんびりお茶ばかりしてる人もいるって聞いたっすね。兎に角このゲームはどう遊ぶにしてもその人の自由ですし、何より無駄に多い職業とスキルからしても、オンラインゲームの枠を越えた楽しみ方がこの世界にはごまんとあるんすよ。BGMスキルぐらい持ってても別に不思議じゃないっす」

「かくいうレイ君もマゾヒズムというスキル持ち出しな」

「そうそう……って!? 俺はそんな変態スキル持ってないっすよ!? カズミ酷いっす! 折角擁護したのに!」

 とまあそんな冗談で笑いを取って戦闘の疲れを労いつつ、改めて先程までの戦闘風景を思い出す。俺ならばこの6人を相手にどう立ち振る舞うか。俺のポジションはどこになるか検討してみる。

 後方支援はそもそもそんなスキルを持ち合わせていないので間違いなく却下。レイ君がターゲットを完全固定してくれるなら間違いなく前衛として攻撃に加わるポジションになる訳だが、問題はその位置をどこにするかだ。派手な技が多い右のセンねぇちゃん近くは邪魔になりそうなので、やはり左の慎ましやかなシン君の隣が無難か。それもレイ君に近い方の隣。急所狙いでクリティカルヒットを叩き出しつつ、攻撃を受けた際にはすぐさま後ろに下がりやすい位置がベストだろう。ハラハラドキドキなお荷物の俺は、手の届きやすい位置にいる方がいいよね。

 もっとも、永遠存在である俺にはPT戦闘はあまり縁はない訳だが。って、永遠存在なにそれ格好良い響き。

 それはそれとして、この洞窟を抜けた後には実際に俺も彼等と一緒に闘う事になる筈なので、そのイメージは今の内に作っておいた方がいい。随時戦闘行動を取っていないと経験値が入ってこないのは自動学習済だ。ここまでの道中然り、複合PTのまま闘ってたのにケルベロン君を倒した際にも経験値が俺には入ってきませんでした。ぐすん。

『汝等の力、しかと見届けた。通るがよい』

 まるで何事もなかったかのように傷一つない身体で(なんで?)起き上がったワンちゃんが脳内アナウンスを流しつつ、ゆっくりと洞窟の奥へとトテトテ歩いていく。出てくる時は左右の顔を壁に引きずっていたけど、帰る際には頭を低くして器用に衝突を回避していた。やっぱり痛いのは嫌なんだねぇ。

 そのワンちゃんの後ろ姿が見えなくなると、それから暫くはヒーリングタイム。ユダちゃんが全員に愛の鞭ならぬ愛の棍棒でバシバシと叩いて体力を回復させる。またレイ君だけ頬です。その後は6人の精神力というかMPが全快するのを待つ。

 その間、あれこれと興味津々にBGMスキルの詳細を聞き出そうとしてくるユリアちゃんとシン君とユダちゃんの三人。勿論、禁則事項に触れるのでヒ・ミ・ツに致しました。口に人差し指をあてて禁則事項ですって言っちゃいます。こっそり横からプチムカってセンねぇちゃんに言われました。聞き耳たててたんだね。

 俺の職業が吟遊詩人だと察してしまったユダちゃんだけは、少しだけ複雑な顔をしてました。やっぱ、三つしかないスキル枠の一つにBGMを選んだ俺の感性は全く理解出来ないらしかった。個別念話チャットでなんでなんで攻撃は止めてー! フレンド登録は失敗だったかなぁ。でもユダちゃん可愛い女の子だし。というかちょっと精神年齢が他の子達よりも低い気がなんとなくしてます。もしかしたらセンねぇちゃんよりも若い?



♪♪♪♪♪♪♪♪姪とオンライン♪♪♪♪♪♪♪♪



「カズねぇ、いくよー」

 一人、大の字になって寝転がってるレイ君を木の枝でつつきながら遊ぶこと数分――意外と楽しいです、はい――ようやく出発する準備が整った一行が、ワンちゃんが消えていった道へと向かう。また最後尾でシン君と一緒に進む。このポジションがなんか落ち着く。

「シン君も地味に強かったな。惚れ惚れしたよ」

「ありがとうございます。でも地味は余計ですよ」

 道の先にはまた広場があり、更に分かれ道が二つ。その一つ、右側からは何か凶悪な気配を感じた。

「カズミ氏、右の道には決して進まないでくださいね。この先は天国への片道切符です」

「何があるんだ?」

「先程闘ったケルベロンさんがいます。数十段強くなったバージョンで」

 いや、なにそれ怖い。数十段って、鉄壁モードになったレイ君ですら瞬殺コースじゃないですか。なんでそんなに強くなってるんですか、ケルベロン君。もしや地獄の門がこの先に?

「カズミさんが言いたい事は何となく分かります。でも現実ですから」

「さっきのはただ俺達の力を見るためだけの超手加減モードだったんすよ。そういう風に誰かに命令されているっていう設定の」

「いつか撲殺」

「一応、近づけば先に警告されますけど、それを無視して進めばとても悲惨な最期が約束されます」

「うう……生きたまま食べられる恐怖が」

「思い出させないで下さい」

「それ、天国じゃなくて地獄への片道切符じゃないか」

「アハハ。そうとも言いますね」

 という訳で、左向け左。外が近いのかうっすらと先が白くなっている道を進みましょう。俺はこんな所で犬のおやつにはなりたくありません。

 このメイド世界、なんとなく思ってたけどかなりグロテスクな状況が平然と起こるんだね。

 そう思った矢先。

 本当にグロテスクな映像が俺の瞳に映し出された。

「……え?」

 油断していた、というのは嘘になるだろう。警戒はしていた。先頭を行くレイ君はあれで意外と生真面目な性格らしく、会話中でも常に前を向いて周囲に注意を払っていた。

 その彼の首が強制的に胴体と切り離され、宙を舞いながら驚きの声をあげている。レイ君の瞳の先は眼下にある俺達の方へと。その一つ、俺にベッタリとくっついてるユダちゃんの方へと向いていたのを俺の瞳は確かにとらえていた。……って、え?

「「「「「「え?」」」」」」

 というその言葉を俺を含む他6人が同時に発してすぐ。レイ君の頭が洞窟の壁へとぶつかりバウンドする。「いたっ」というレイ君の妙に場違いな悲鳴の声。地面にぶつかり再び「いだっ!」という強い悲鳴。

「えっ? えっ? えっ?」

 俺達の視界の中でコロコロと転がりながら、理解不能な映像を見ているレイ君の口から連続する疑問の声。その頭が何かに当たって止まる。自身の足に当たって止まる。そして何かによって踏まれる。次の瞬間。

 レイ君の頭だったものはぐしゃりといって踏み潰され、ただの肉塊へと変化した。

「……」

 誰も理解が追いつかない。認識が追いつかない。しかし現実だけは更にその先へと続く。

 首なしの姿となったレイ君の胸から突然ズバっという音と共に鋭い何かが突き出てきた。それが何であるか俺はすぐに理解する。手だ。爪の長い手だ。続く光景もかつて何かのホラー映画で見た事があるので予測できる。予測通りになった。

 レイ君の胸を貫いた両手が左右に無理矢理開かれ、人の身体が縦に真っ二つに裂かれる。

 なんだこれは。いったい何が起きている。分厚い金属の鎧ごと貫いて、その鎧ごと真っ二つに裂く? 何の冗談だ。

 驚きすぎて誰も声を発する事が出来ない。震えているだけだ。震えているのは俺の腕を胸に抱いてくっついていたユダちゃんだ。ゲーム世界での事とはいえ、恋人を目の前でグロテスクに殺されたユダちゃんの腕が俺の腕を強く握りしめる。痛い痛い。その痛みが俺の意識を現実へと繋ぎ止める。その痛みの御陰で現実を冷静に見る事が出来た。

 ようやく死亡判定を受けて掻き消えていくレイ君の身体。その向こう側にいた者が姿を現す。

 人だ。だが目がいってる。猛獣のような瞳だ。狂った者の目だ。口はゾンビのように開かれ、低い苦鳴の声を上げている。犬歯が見えている。例えるなら、狂人の鬼。それが、そこにはいた。

 狂人鬼が現れた。

 狂人鬼の瞳が新しい獲物を見つけて、瞳を向ける。俺の方へと向ける。

 やばい。やばすぎる。殺される。そう悟った瞬間――。

「いやぁぁぁぁぁああああああああ!!」

 ようやく現実を認識した誰かが悲鳴を上げた。耳を鋭く打つ悲鳴が洞窟内に響き渡る。

 刹那、悲鳴に反応した狂人鬼の瞳が動く。その時、俺は既に動いていた。叫んでいた。

「逃げろ!」

 目の前で超加速した狂人鬼の魔の手が今し方悲鳴を上げた少女へと襲い掛かる。間一髪、引き抜いた短剣の刃がその手をとらえ、上に弾き飛ばす。ガキンという音と、人の手だというのにとてつもなく堅い手応え。もうこれは人の手ではない。化け物の手だ。

 この状況下においても動ける可能性のある者を脳内で瞬時に当たりをつける。咄嗟の状況でも我を失わないだろう者を選抜する。

「シン君、ユダちゃんを頼む! マリリンはセンねぇちゃんとユリアちゃんを!」

「え?」

「うん、わかった!」

 選抜の片方は失敗した。現実を認識しきれなかったシン君と、その場にへたり込んでしまったユダちゃんを守るべく俺は動く。狂人鬼が振るった凶悪な攻撃力を誇る腕をバックステップで躱し、もう一度大地を蹴って二人の側へ。攻撃が繰り出されるよりも先に動いていなければ躱せないレベルの攻撃速度。速すぎる!

 だが再び、その選択が失敗であった事を理解する。

 後退しつつ攻撃の意志を示してしまったマリリン。法術の詠唱。それを察知した狂人鬼の意識が俺から離れマリリンへと向かう。

「構うな! 逃げろ!」

 そう叫んだ時には既に遅かった。

 恐ろしい速度で再び移動した狂人鬼が、無造作にも見える動作で腕を振るう。まさに一瞬。居合い斬りの速度すらも軽く越えていそうな速度で振るわれた腕が、その五指から伸びた鋭い爪の刃が、マリリンとその隣にいたセンねぇちゃんの胴をなぎ払っていた。

 バシュっという音と共に血飛沫が舞う。二人の姪の身体が斜めに斬り裂かれる。たった一撃。それで二人の姿はすぐに霞となって消え去っていった。HPがゼロになり死亡判定を受けた。

「あ……あ……」

「くそっ!」

 突然現れ、突然に猛威を振るい始めた狂人鬼。その圧倒的な力を持った存在の前に、ただ一人ユリアちゃんだけが残される。あまりの恐怖で声が出ず、マリリンの手によって無理矢理引きずられていただけの少女が一人、その場に残されてしまった。真正面に取り残された。

 すぐに助けに向かうが、間違いなく間に合わない。間に合わなかった。

 一瞬だけ何故か躊躇った狂人鬼が、その凶刃を振るう。振るわれた腕よりも一瞬早く、腰を抜かしたユリアちゃんが後ろに倒れる。その差が一瞬だけユリアちゃんの命を永らえさせた。

 狂人鬼の五指に服が斬り破かれ、少女の柔肌に血の線を刻み込む。破かれた服の先から見えた胸。まだ幼い胸。少女の域を出ていない小さな胸。その姿がすぐに血に染まる。間違っても役得などという映像などではない。痛々しいとしか思えない映像。

『な、な、な、何があったっすかーーー!?』

「ユリアちゃんっ!」

 レイ君のPT念話チャットを無視して俺は叫ぶ。逃げろなどとは言わない。そんな言葉を掛けた所でこの状況下では無意味だ。彼女は動けない。動ける訳がない。恐怖ですくんだ身体は脳から発するどのような命令も受け付けず、その脳すらも未だ思考停止したまま。その彼女をその場から救い出す手段は、あの敵を何とかする以外にない。

 しかし間に合わない。一瞬だけ運良く命を永らえた事は、果たしてその彼女にとって本当に運が良かった事なのだろうか。その一瞬ですら、俺がその場に間に合うだけの時間には足りなかった。

「いやっ……」

 致命傷を免れた事を理解した狂人鬼が、再び凶刃を振るう。今度は狙い違わずユリアちゃんの身を無惨に斬り裂いた。拒絶の悲鳴を発したその口ごと真横に斬り裂かれ、少女の首付近一帯が五指によって六つに綺麗に分かれる。スプラッタな映像が俺の瞳に映る。生きたままの顔が切断される。

 そして驚愕した顔のまま、ユリアちゃんの身体は他の三人と同様に死亡判定を受け、霞のように掻き消えていった。

 その場にグロテスクな状態へと成り果てた彼彼女達の姿は残らない。先程レイ君が元気な声を発してきたように、五体満足の姿で復活地点へと飛ばされただけ。

 そう割り切るには、あまりにも重い映像だった。

 なんだよこれ。これがイベントだったとしてもやりすぎだろ。非常識だ。

『俺達も死に戻りする』

 これ以上の抵抗をした所で意味がない事を悟り、俺はPT念話チャットでそう宣言する。しかしそれでもまだこの事態は収束しない。

 俺の方へと振り向いた狂人鬼が、その五指に血を滴らせながら狂った瞳で俺の姿をとらえる。否。人生の経験値差から現実をしっかり受け止める事ができ多少なりとも抵抗した俺ではなく、その向こう側にいる無抵抗な二人へと狂人鬼の意識が向かう。

 何が正解で、何が失敗だったのか。そんな解答はどこにも存在しない。どのように動いたとしても、この狂人鬼の前では全て意味をなさない。

 再び超速度で動いた狂人鬼を追って俺も動く。放心したままのユダちゃんと、一部始終をすべて瞳に収めてしまい引きつった顔を浮かべていたシン君。敵が狙うのはどちらか。

 答えは、狂人鬼に背中を向けていたユダちゃん……ではない。この狂人鬼は反応のある者の方を好んで狙う傾向がある。故に狙われたのは、狂人鬼をハッキリと認識していたシン君の方。

 そのシン君の真横へと回り込んだ狂人鬼が直線的な攻撃で襲い掛かる。それより一瞬早く俺の身体が間に入り、振るった短剣がその腕を斬り弾く。斬れない!? 弾かれた!

 と認識した時にはもう俺とシン君の身体は狂人鬼の五指に串刺しにされていた。

「カズミ氏……」

 せめてもの抵抗。レイ君のように身体を真っ二つに引き裂かれないように、俺は狂人鬼の腕を両手で掴んで固定する。筋力差を考えれば無駄な行為だ。だがやらないよりはましだろう。気持ち的にだけでも。

 身体を貫かれているが、痛みはほとんどない。むしろ違和感の方が大きい。これがゲームの世界だ。非現実世界。

「共に逝こうか、シン君」

 最後にシン君へと向けて精一杯に柔らかくて軽くした言葉を口にしてから――これはゲームなのだという事を暗示させ安心させるための言葉を発してから、俺達もまた死亡した。

 それが、最悪の選択肢。

 すぐその後で、俺はその事を後悔する事となる。

♪御意見、御感想をお待ちしています♪


リン「リンちゃんと」

チー「チーちゃんの」

「「あとがき劇場スーパー!!」」

リン「わー、わー、ぱちぱちぱちぱち」

チー「ドンドン、ぱふぱふ」


リン「第22話だよ~♪ みんなちゃんと見てる~?」

チー「リンねぇ! 私達殺されてる!?」

リン「え? ……あ、ほんとだ。サクッと殺されてる」

チー「まさかの一撃死です……」

リン「しかも二人いっぺんに殺されてるねー」

チー「紙防御なリンねぇなら兎も角、私まで一撃死なのはちょっとやばいです」

リン「そう? もしあれがゲーム後半級の敵さんならあれくらい普通じゃない?」

チー「あ、そういえば……。道を逸れた先のケルさんもそういえば一撃死です」

リン「だよねー。他にも、防御無視とか即死技なら、こういう事あるよー」

チー「急所攻撃でも可能性あります。……あまり驚く事ではなかったんですね」

リン「うん。でもレイレイの鎧まで真っ二つなのは異常だけどね」

チー「やっぱりちょっとやばやばの敵さんです!」

リン「まぁ、今はあまり気にしてもしょうがないと思うよ。ただ運が悪かった!」

チー「運、ですか……。あそこにあんな敵さんと遭遇する可能性って零な気が……」

リン「出会ってしまった時点で零じゃないよー。その出会いは大切に♪」

チー「あんな変なモンスターさんとの出会いは大切にしたくないです」

リン「それよりもねぇ、私が気になってるのはケルちゃんのドロップ品」

チー「ケルさんのドロップ品ですか? それが何か?」

リン「私、なんにもドロップしてない……チーちゃんはどうだった?」

チー「私は三つほど貰いました。ちょっとホクホクです♪」

リン「一個私にちょうだい!」

チー「え? いつもみたいに街に帰ったらちゃんと山分けにしますけど?」

リン「じゃなくて! 手元に何にもないのがちょっとイライラするの!」

チー「イライラですか。何となくその気持ちは分かります。では、はい。どうぞ」

リン「わーい。って、チーちゃんこれレアドロップアイテム!?」

チー「大切に持ってて下さいね♪ 間違って装備しちゃダメですよ♪」

リン「え? あ……やば。つい嬉しくてちょっと身に付けちゃったんだけど……」

チー「ええ!? それ、装備すると専用装備になって売れなくなるアイテム……」

リン「わー、ごめん! 【火】属性装備だったから、思わず……」

チー「……」

リン「……ちなみにこれ、どれぐらいで売れるの?」

チー「……七百万」

リン「超級レア!? きゃー!?」

チー「というのは嘘です。高くても数十万ですね、それ」

リン「あう……それでも十分に高い。チーちゃん、本当にごめんなさい!」

チー「ん~」

リン「かくなるうえは、腹を斬ってお詫びを……」

チー「別に良いんじゃないです? リンねぇ、その装備よく似合ってますよ♪」

リン「え……許して、くれるの?」

チー「はい♪ リンねぇがそれでまた強くなるなら、別にそれでもOKです♪」

リン「ありがとー。そして、本当にごめんなさい。次からは気をつけます……」

チー「問題なしです。着たくなる気持ち、私も分かりますから」

リン「だよねー。これ、本当にちょっと着てみたくなるよねー」

チー「ですです」

リン「という訳で、ケルちゃんの着ぐるみゲット♪」

チー「……問題は、他の人とPT中はそれを装備していられない事ですけどね」

リン「うん。流石にこれ着たままは、PTの人達には悪いかなーって思っちゃう」

チー「性能はとっても良いんですけどねー。着ぐるみはちょっと……」

リン「しかもレア物だから、地味に相場は高いし……」

チー「ちなみにリンねぇ。着ぐるみそれで何個目です?」

リン「七個目♪」

チー「……リンねぇなら渡した瞬間着ちゃうかなと思った私は正解でした」

リン「あ、称号が増えてる♪ なんちゃって着ぐるみコレクターだって♪」

チー「リンねぇに喜んで貰えて私も嬉しいです」

リン「じゃ、今日はこれを着たままみんなとバイバイするね♪」

チー「もうそんな時間ですか。時が経つのは早いです。あっというまです」

リン「というわけで、今日はこれでお終いだよー。ばいばいだよー、ワン!」

チー「まだの御来読をお待ちしています♪ リンねぇ、せめてガウッで……」

リン「ガウッガウッガウッ! 三つ首だから、鳴き声もさんばーい♪」



♪(こっちも)御意見、御感想をお待ちしています♪

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