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姪とオンライン!  作者: 漆之黒褐
第一節 『VALKYRJE SONG』
14/115

巫女侍 find

「貴女が、リンちゃんが世話になったという御仁ですか?」

 振り向くと、そこには場違いに和装で身を包んだポニーテールの少女がいた。しかも黒髪。いったいいつの時代の人ですか?

「そういう貴女は、リンネちゃんのお母さんですね。お初にお目に掛かります。俺はカズミと言います」

「おや? 娘から聞いていましたか。初めまして。リンネの母、ササメと言います。漢字で書きますと【細】になります。以後、お見知りおきを」

 む……適当に勘で応えたのに、当たってしまった。見た目からして10代後半の女性姿だったので、それはないと思ってたんだが。奥さん、弄っていますね?

 なんかリンネちゃんが「あんた誰!?」って言ってたけど、無視無視。今はお子様の出る番じゃないですよー。

「時に、それは特典装備ですか?」

「いえ、オーダーメイドです。少し値が張りましたが、良い仕事をして頂きました」

「とてもお似合いですよ。まさに和美人って感じです。そのポニーテールも可愛らしい」

「フフ……嬉しい事を言ってくれますね。カズミ殿は、失礼を承知で言わせて貰いますが、もう少しお洒落に気を使われた方が良いかと思います。素材が良いのに勿体ない」

 流石にその褒め言葉には、俺は難色を示す。やっぱり、誤解される前に自己申告しておいた方が良いだろう。しかし、カズミ殿ねぇ……。

「……先に言っておく。よく間違われるが、俺は見た目はこんなでも中身は男だ」

「お洒落に性別は関係ありません。しかしそうですか……カズミ殿は、そういうプレイ方針なのですね。かくいう私も見ての通りのプレイ方針ですので、色物同士、意外と話があうかもしれませんね。これは良い拾いものを致しました」

 プレイスタイルは和美人の侍巫女さんかな? この分だと、昔からゲームで遊んでいる根っからのプレイヤーかもしれない。センねぇちゃんやマリリンも、十年に十年したらこんな感じに育ってしまうのかねー? 見た目の若さとは裏腹に年上の色っぽさが滲みでてるけど、ちょっと複雑な気分。

「ところで、そろそろリンちゃんを離してやってはくれませんか? 本当はお仕置きするつもりだったのですが、この(えにし)に免じて許そうかと思います」

「ん? ああ、そういえばそんなのがいたな。すっかり忘れてた」

 手を離すと、噛み付いてきた。ガウって、御前は犬か。

「立ち話も何ですから、そこでお茶でもどうですか? このちっこいの、俺に何か用があったみたいですし」

「ちっこい言うな!」

「そうですね。実はというと、カズミ殿に用事があったのは私の方なのですが」

「ん?」



♪♪♪♪♪♪♪♪姪とオンライン♪♪♪♪♪♪♪♪



「やはり、お茶は玉露に限りますね。こちらの世界にもあって良かった」

 そう言うブルジョワさん。和美人スタイルを誇示するためか、顔がキリッと整ったまま全然砕けません。笑顔が格好良いって、どこまで頑張ってそれを貫き通すつもりなのか。ちょっと悪戯心が(くすぐ)られます。しかしね。

「やはり港街は良いです。物が多いので、色々と手に入りやすい」

 こんなバリバリの洋風キャッフェで、かなり浮きまくってますよ、ササメさん。持ち込みの湯飲みに、持ち込みの茶葉。ウェイターさんったら、かなーり困ってます。

 隣でムシャムシャとお行儀悪くパスタっぽいものを食べてるリンネちゃんもね。格が高そうなお店なのに、店の雰囲気ぶちこわし。迷惑料取られないかな……。

「では、そろそろ本題に入りましょうか。実は、カズミ殿の持っている武器の修理に使われた素材の事に関してなのですが」

 俺が視線を向けると、リンネちゃんが明後日の方向に目をそらした。口元に黒い海苔がついてます。本当に海苔って名前なのかは分からないけど。

「いや、別に返して欲しい訳ではありません。本当は私が使用する予定の物だったのですが、私達の間での理由はどうあれ、カズミ殿は正当な対価をし払っています。その点に対してカズミ殿に非はありません。私の了承を得ず、勝手に使用したリンちゃんにはお仕置きが必要ですが」

 それも、さっきチャラにしてたよな。俺との縁って、そんなに価値があるかなー。

 ちなみに問題の素材の目星はもうついている。やっぱ、あのレア素材っぽいのだろう。

「私がカズミ殿にお願いしたいのは、その素材の取得に協力して貰えないか、という事なのです。勿論、それ相応の報酬は用意致します」

「市場に出ているのを買えばいいのでは?」

「私が欲しいのは素材そのものではなく、素材を得るための技術と経験です。勿論、素材は欲しいのですが、市場で買うとどうしても値が張ってしまいます。供給量も少ない。しかし需要は多くライバルも多い。生産職である私としては、やはりいち早く技術を確立し、素材を安定して手に入れ、安く良い物を市場に提供したい」

「欲しいのは、金じゃなくて名声という訳か」

「そう思ってくれて構いません。正確に言えば違いますが、似たようなものです」

 例え目的が金だったとしても、自分で素材を手に入れて、物を作り、売りさばく分には問題ないか。

 だとしてもだ。どうしても解決出来ない疑問がそこにはある。

「それは分かった。だが、どうして俺なんだ? 自慢じゃないが、俺は凄く弱いぞ?」

「ご謙遜を。聞けば、カズミ殿はよく北の地で狩りをしているそうですね。しかも単独で」

「確かにそうだが……他の奴等がどこでどういう狩りをしてるかは知らないが、あそこは人が少なくてのんびり狩りが出来るからな。だが最近は人も増えてきたから、そろそろ潮時かとも思っている」

「孤高を行く……か。まこと、私が想像した通り、カズミ殿らしい」

 俺、別にそんなの望んじゃいないんだけどねぇ。職業(がら)、そうならざるをえないだけだし。吟遊詩人という超不遇ジョブじゃなかったら、今頃は姪と一緒にPT狩りしたり、野良PTに入って新しい関係を構築していたと思う。

 だって、俺A型だし。昔から、なんでかリーダーじみた事させられてたし。何度か、ギルドの2代目リーダーとか、影のリーダーとか、裏ボスとかしていました。あれ、これってリーダー資質? いいように使われてただけじゃね?

「しかしなぁ……」

「今なら、もれなくリンちゃんをのしつけてプレゼントしますよ?」

「ふぇっ!?」

「いらない」

「ひどっ!」

「ならば私が、カズミ殿に武器を一品贈呈するという事ではいかがですか?」

 驚かせて、持ち上げて、落とす。そして何事もなかったように話を進める。

 ああ、リンネちゃんがちょっといじけてますよ、お母さん。それに、お母さんが出てきてからというもの、リンネちゃんの口数が物凄く減っています。やっぱり、リアルでの母親の姿と全然違うから、リンネちゃんもやりにくいのかなー。

「今の所、間に合っている。これだけで十分だ。それよりも、その素材を落とす敵ってどいつなんだ? それによっては、流石に手伝えない場合もある」

 というか、一択ね。俺が倒せるの、あの蟻くんしかいませんよ? 他の敵さんには惨敗です。

 泥人形さんには刃が通らないし、鳥さんは3次元攻撃してくるから回避しきれない。他の奴等にしても、特殊攻撃がきつくてね。それ以前に、数少ないし。うん、やっぱエンカウント率が高くても討伐経験のある蟻くんが一番。めっさ時間掛かるけど……。

「敵の名前は、グランドアント。仲間を呼ぶ事が多く、攻撃力も防御力も高い厄介な敵です」

「ん? もしかして、大きな蟻の姿をした奴か?」

「はい、そうです」

 ビンゴか。ちっ……断りたかったのに。

「ああ、なら問題ないな。手伝える」

「では?」

 天恵を得たりと、ササメさんの顔に初めて熱が籠もった。

 そうか……蟻くんから貰える素材の中に、レア物があったのか。それは随分と損した。お爺さんから聞いた情報だけを頼りに身ぐるみを()いでたから、きっと見落としてたんだな。

「ああ。これも何かの縁、付き合おう」

 リンネちゃんがたぐり寄せた縁に感謝だね、お母さん。

 ついでに俺も、ちょっと変わった親子に巡り会えたこの縁に、感謝。

「念のため、私とリンちゃんの職を明かしておきます。私は今、鍛冶士見習い・鉄/薙刀です」

「私は見習い修理士もどき・初級/剣。カズミお姉さんの武器を修理した時は、見習い修理士・初級/短剣だったけど、御陰で目標値までレベルアップしたからクラスチェンジしたばっかり。ほんと、遠いよねーこのゲーム。楽しいけど♪」

 ほうほう。生産職系だと、扱う武器の系統や素材の種類/グレードとかによっても職が違うのか。センねぇちゃんも、目的の職に就くためには多くの職を経験して必要な称号を集めないといけないって言ってたから、生産職の方もかなり大変なのねー。

「二人とも前衛向きにスキルを取得してるので物理攻撃以外はからっきしですが、その分自前の装備で強化しています」

「でもねー。だからというか、グランドアントのような物理一辺倒の敵さんには逆に相性が悪くてねー。全然倒せる気がしなーい」

 うんうん、確かに。盾役と魔法役がいれば、蟻くんは結構楽そうな敵かもしれないね。俺はたぶん回避系に属するから、まだなんとかなってるけど。

「カズミ殿は?」

 あ、やっぱり聞いてきた。性別は正直に言えたけど、こっちはなぁ……。

「……豪華特典版で取得した特殊な職なので、出来れば言いたくない」

 ぐっ! 良心の呵責(かしゃく)が!? 嘘は言ってないけど、やっぱり気持ちのいいものじゃないな。ああ、早くクラスチェンジしたい。1年も頑張ればレベル10に届いてくれるのかなー?

 一日15時間×365日。イコール、軽く5000時間超え。

 それ、完全に修羅道じゃん。

「ああ、特典版購入者でしたか。それならば致し方ありませんね」

「うん? リンネちゃんから聞いてなかったのか?」

「お仕置きに夢中だったので」

「ずっとお仕置きされてたから……」

 ズズズっ、と二人とも同じタイミングでお茶をすする。動作がまったく同じだ。こんな所は親子だなと思う。

「ははっ、仲が良いですね」

 リンネちゃんは気が付いてるかどうかは分からないけど。

 うん、いい親子だな。この縁は大事にしよう。

♪御意見、御感想をお待ちしています♪


リン「リンちゃんと」

チー「チーちゃんの」

「「あとがき劇場スーパー!!」」

リン「わー、わー、ぱちぱちぱちぱち」

チー「ドンドン、ぱふぱふ」


リン「ただいま参上! まっしぐらに第14話だー♪」

チー「どんどん話数が増えていきますね♪ 良い事です♪」

リン「チーちゃん、また質問! 今日は両手専用武器について質問!」

チー「また魔法の事が後回しにされそうな予感……はい、なんでしょう?」

リン「片手専用武器ってあるよね。あれってなんで専用なの?」

チー「あれ? 両手専用武器に関しての質問じゃ……」

リン「それは後でちゃんと繋がってるから大丈夫。なんでなんで?」

チー「え~と……武器系統種の中に、両手系の系統種がないからです」

リン「だからなんでー? 片手専用武器でも、人によっては両手で使えるよー?」

チー「どうやってです? 片手分の握りしかないものがほとんどだったような……」

リン「取っ手が短くても、小さな子供なら両手で使えると思うんだけど」

チー「え~と……」

リン「その逆もあるよね。いくら両手専用武器でも巨人さんとかは片手で使えるし」

チー「系統種というのはあくまで一般的な見知に基づいて付いてますので」

リン「例外は考慮外って事?」

チー「はい。同様に、見た目は突剣なのに突剣に分類されないものもあったりします」

リン「そうなんだー。それって、ちょっと損した気分だね」

チー「ただ、片手両手問題に関して言えば、それを補うスキルもあります」

リン「え、あるの?」

チー「はい。代表的なものでは、片手持ち、両手持ちがそれにあたりますね」

リン「それって、例えば両手剣スキルも持ってるとどうなるの?」

チー「片手持ちで使った場合はNGですけど、両手持ちと両手剣は両立します」

リン「わ、そういうのでも両方効果があるんだ」

チー「片手持ち、両手持ちのスキル御恵は少ないですけどね。何にでも使えるので」

リン「あー、そっか。片手持ちなら、二刀流スキルとも両立しちゃうよねー」

チー「それだけでなく、盾にも効果が出たりします」

リン「え、盾にも!? 便利じゃん」

チー「なので、メイドシリーズを少し囓っている人とかは意外と持ってます」

リン「チーちゃんは片手持ちスキルは持ってないの?」

チー「レベルが低い内は確かに便利なんですけど……」

リン「中盤以降は別のスキル取って、もっと専門化、特質化した方が便利かー」

チー「もしくは万能化ですね。欲しいスキルは一杯ありますし」

リン「職業もそうだけど、スキルもほんと多いよねー」

チー「です。なのにゲーム中は外部サイトにアクセスとかも出来ないので……」

リン「情報のまとめサイトは見れないし、更新も遅いんだよねー」

チー「しかもあまり正しくなかったりもします」

リン「でも逆にそれがプレイヤーの楽しみの幅をあげるよね!」

チー「その分、差もついちゃいますけど」

リン「あ、そろそろログアウト限界時間だ」

チー「今日はもうお終いですね」

リン「うん。じゃ、みんな。まったねー。バイバーイ」

チー「さようならですー」



♪(こっちも)御意見、御感想をお待ちしています♪

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