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姪とオンライン!  作者: 漆之黒褐
第一節 『VALKYRJE SONG』
13/115

幼女 repair

 連れて行かれたのはどでかい工房。一度入った事があるけど、暑苦しかったのですぐに逃げ出したのを覚えている。裸マッチョの親方達を見て気分が悪くならない訳がありません。

「趣味悪いよねー。マスコットキャラとか置けばいいのに」

 そういう問題じゃないと思う。普通、君達のような小さな女の子は、あれを見たら泣きだすんじゃないかなー?

「だから私は幼女じゃないから!」

 まるで説得力がありません。

「それじゃ、チャチャッと済ませちゃうね。カズミお姉さんが魔王でも倒しに行く前に」

 工房の中で一番大きな炉の前にリンネちゃんが向かう。工房の中には当然他のプレイヤーの姿もあったが、流石にこの炉は高級すぎるのか、誰も使っていなかった。手数料を聞いたら凄かったし。一回につき一万って……そりゃ、誰も使わないよな。

 修理に必要なのだろう、所狭しと様々な素材が床に並べられていく。かなり多い。いったいあの小さな身体のどこにこれだけの物を隠し持っていたのだろうか? ああ、そういうスキルがあったんだっけ。

 最後に取り出したアイテムには何だか見覚えがあったけど、それを思い出す前にリンネちゃんが炉の中に俺の武器を入れる。先に修理が大変な方を選択したのか、特典武器であるナイフが炉の中で赤く彩った。

 取り出して、槌で打つ。素材を炉にくべて、ナイフを入れる。また取り出して、槌で打つ。今度は素材をナイフに重ねて一緒に炉にくべる。ドロッと溶けた素材がナイフに馴染んできた頃にまた出して槌で打つ。どうやってそのやり方とか順番とか調べたんだろうな。

 ポイポイと無造作に素材を扱っている様がなんとも違和感があったが、最後にレア素材っぽい見覚えのあるアゴと液体でナイフを打ち終えた時。

 突然にナイフが光輝いた。終了を知らせるエフェクトだな。眩しいよ。

「わ……なに、これ……!?」

 って、おい。御前が驚いてどうする。それ、御前の仕業だろうが。

「何に驚いてるかは知らないが、とりあえず先にもう一本すませてからにしろ」

「うん……」

 割高な炉の使用料を躊躇いなく払ったリンネちゃん。人の金だと思って、随分と迷いがないよな。それだけの金額を稼ぐのに、俺がいったいどれだけ苦労しているか……リアルマネーの話ですよ? 22万9800円というね。かなり無駄にしちゃったけど。

 トンテンカンっという音がまた工房に鳴り響く。一時は先程の眩しい光に驚いた周囲の者達も、リンネちゃんが何事もなく槌を振り始めたのを見て、すぐに自分達の作業へと戻っていった。

 あっという間に床に並べられていた数々の素材が炉の中へと消えていく。寂しくなってきたなぁ。初めてその光景を見る俺には哀愁すら感じていた。

 今度はフラッシュする事なく、修理作業が終了する。だが、出来上がったお試しの短剣は、何故か色が随分と変わっていた。ちょっとどす黒いのに、何だか艶のある色へと。

「はい! カズミお姉さん、出来たよー」

 何故かエヘヘと笑う幼女ちゃん。レア素材まで使ったのだから、結構レベルか熟練度が上がったんだと思う。現金な奴だな。

「ああ、ありがとう。失敗しなくて何よりだ」

「失敗なんてする訳ないよ。初級装備だし、高級炉まで使ったんだし」

「この世には絶対なんて言葉はない。運の悪い時には諦めが肝心だ」

「二つとも失敗して武器も素材も全部消えちゃっても、カズミお姉さんは同じ台詞が言えるの?」

「……それは自信ない」

「だったら、成功したんだから素直に喜ばないと。私はすっごく嬉しいし♪」

「何があったかは知らんが、リンネちゃんが喜んでるなら俺も喜んでおくとするか」

 俺の言葉なんて聞いてないし。自分のステータスを確認してるんだろう、見る度にリンネちゃんがクルクルと踊る。く~るくる。相当嬉しい事があったんだな。

「じゃ、俺はこれで失礼するな。ああ、そうだ。またそのうち修理に出さないといけなくなる筈だから、フレンド登録させてくれ。依頼、出してやる」

「何で上から目線! ま、いいけどね♪」

 ピコピコ、ポーンと鳴って、さくさくっとフレンド登録が終了する。

 第一フレンドげっと。

「あ、お母さんが呼んでるから私は先に行くね! またのご利用をお願いしまーす♪」

 ぶんぶんと手を振りながら工房を走り去っていくチビっ子に手を振り返しながら、受け取ったばかりの武器二つを見る。そういえば、耐久とか言ってたな。今まで全然気にしてなかったが、どうやって見るんだろうか?

 ……っと。こんなむさ苦しい所にいつまでもいたくないな。何やら羨望(せんぼう)とか憧憬(どうけい)っぽい眼差しで見てる人もいるし。というか裸マッチョのおっさんNPCまでそんな目で見てくるなよ。



♪♪♪♪♪♪♪♪姪とオンライン♪♪♪♪♪♪♪♪



「へぇー。おじさんも、ようやく修理出来るぐらいまで武器を使ったんだ。耐久って専用のスキル持ってないと数値として見れないから、見た目で判断するしかないんだよねー」

 ズルズルと即席のインスタントラーメンをすするリンちゃん。俺好みのかた麺、溶き卵入りのものに追加で野菜をいくつか入れたものが本日の朝食。あ、野菜の一部が端に避けられてる。ちゃんと食べなさい。

「ああ、やっぱりか。どうやっても見れなかったから、そうなんじゃないかと思ってた」

「戦闘主体の、私達のような……プレイヤーにとっては、忌むべき、仕様……です。……邪魔、です」

「持ち物の管理も少しはリアルっぽくか。ぞんざいに扱えば、それだけ劣化も激しくなるのか?」

「無意味に岩とか斬りつければ、刃こぼれとか凄いよー? チーちゃん、勢い余って特典武器それで駄目にしちゃったから」

「黒歴史、です……」

 頬に付いた黄身卵の欠片を処理してやる。チーちゃんはちょっと食べるのが下手だな。

 リンちゃんの方はちょっと豪快すぎ。色々飛び散って……ああ、服に付いてる付いてる。

「でも特典武器って初級装備だから、修理してもグレードアップは一回しか出来ないからねー。しかもその素材が、序盤にしては集めるの超大変なのがあるし。誰も好き好んで修理しないんじゃないかなー。そんな所もおじさんっぽいよね」

「いいんだよ。何事も経験だ」

 そうか……あいつ、それを知ってて俺に修理を勧めたという訳か。よし、次あったらくすぐりの刑でもしてやるか。お金の恨みは怖いぞー?

「そうだ。もうすぐエイプリルフールだけど、なんかイベントがあるっぽいんだって」

「どうせチマチマした事して、ちょっとだけ便利なアイテム貰えるとか、みんなで触れ合いましょう的なものだろ?」

「おじさん、夢がないよ……どこに置いてきちゃったの?」

「可愛い少女二人に、囲まれて……おじさん今、幸せいっぱい、だから……」

「否定したいような、否定するべきではないような」

「そこは肯定する! おじさん、可愛い私達にもうメロメロなんでしょ!」

 いや、そこまで力説してくれなくても。というか二人とも、自分で自分のこと可愛いって言いきっちゃうんだ? 否定出来ないのが悔しい。俺も美男子に生まれたかったなー。

「その台詞、4月1日だったら言ってもいいぞ」

 なんか知らないが、凄く怒られた。へそを曲げられた。晩御飯まで二人とも口を聞いてくれなかった。

 晩御飯をすき焼きにしたら、一気に解決したけどね。



♪♪♪♪♪♪♪♪姪とオンライン♪♪♪♪♪♪♪♪



 また二日経ったある日。

 懐も寂しくなり、もはや銀行を必要としなくなった俺。うう……。

 そんな時にはお爺さんと一緒にお茶を飲むと、ほんの少しだけ癒されます。

「時にお主。いつまで儂の家に入り浸るつもりじゃ? 若いんじゃから、己の研鑽を怠ってはいかぬよ。そろそろ狩りにでも行きなされ」

 長く居すぎたせいで、家から放り出されました。NPCなのに、随分とリアルっぽい人格だこと。厳しくも優しいお爺さん。ところでお名前、何て言うの?

 万全の状態を通り越してグレードアップまでしてくれた二つの武器を手に、今日もビッグな蟻くんと戯れます。でもだんだんとこの辺りも人が増えてきたので、新しい狩り場を見つけないとなー。

 今までは泥人形さんや鳥くんが厄介であまり近付かなかった人達も、レベルが上がってきたからだろう、とても狩りやすい蟻くんと死闘を繰り広げるPTがポツポツと現れていた。時間効率を考えると俺みたいなソロじゃなくてPTで狩る方が確かにいいよね。

 武器が強化された御陰なのか、クリティカルポイントを狙わなくても最近では蟻くんを10分ちょい程度で俺は倒せるようになっていた。なので最近は時間も計って、タイムアタックを始めている。果たして、最短では何分で蟻くんを倒せるのか!

 現在の記録、9分58秒。

 100m走の世界記録じゃないんだから、もうちょっと早く狩れるようになりたいよ。あっちは単位が違うけどね。ああ、疲れるー。

 でも、最初の頃に比べると恐ろしくタイムが縮まっている。通常ダメ1、クリティカルダメで2だったのが、通常ダメで比較的2以上のダメージを与えるようになったのかな? いや、本当にそんな悲しい数値しか叩き出せないんだったら悲しいけどね。実際の数値だと、たぶん2桁ダメージだと思う。

 いや、考えるのはよそう。悲しくなるし。どうせ、俺のレベルは上がらないんだ。だから相手が強かろうと俺が弱かろうと関係ない。俺はチマチマと蟻くんのアゴと体液を回収して、いつか大量にプレイヤー露店へと持って行って嫌がらせするんだ!

 あれ、趣旨変わってる?

 そんな時、ピンポーンという音が鳴り響いた。

 センねぇちゃんとマリリンはもうログアウトしてる時間。現実と仮想、あわせて二回目となるお休みの挨拶も聞いている。

 なので、さて誰だろうと思って念話をすると、ついこの前フレンド登録しあったリンネちゃんだった。修理させろっていう催促かな?

『やっほー。カズミお姉さん、元気してるー?』

 マジでやめて、お願い。リンちゃんと被るから。

『ああ、そういう事だったんだ。リンちゃんだっけ? 確かに私のキャラ名と被ってるねー』

 という訳で事情を話してみたら、意外にもすんなり受け入れてくれた。ついでに改名もしてくれると嬉しい。さぁ、そのキャラを消して、新しいキャラ作って人生やり直せ。

『やだよ! 折角ここまで頑張ってレベル上げたのに、そんな理由でやり直したくないよ!』

『まあ、それはもう少しおちょくってからにしておいて。今日はどうしたんだ? お母さんに捨てられて、人恋しくなったのか?』

『だからおちょ……って、くぉら! やっぱりおちょくってたのか!』

『気が付いてない方が悪い』

『悪くないよ! 絶対カズミお姉さんの方が悪者だよ!』

 ああ、やっぱり面白い奴だな。ちゃんとノッてくれる相手は久しぶりだ。

『いいから、用件を言ってくれ。今、戦闘中なんだ』

 しかも絶賛修羅場中です。BGMでの敵寄せ失敗して、久しぶりのフルボッコ状態だぜぃ。はい、調子に乗りすぎていました。

『だったら念話チャットに出ないで、今取り込み中の定型メッセージ送り返せばいいじゃん』

『……いや、そんな機能知らない。そんなのあったんだ』

『あれ? チュートリアルクエストで、ピクリちゃんから親切丁寧に教えて貰ったでしょ?』

『諸事情により、ショートカットされました』

 ああ、やっぱりあのチビ妖精が本来なら教えてくれる機能だったのか。お爺さんからはシステム面の事は全然聞けなかったし、やはり一番まともだった学者妖精プクーラ君の提案は聞いておいた方が良かったな、と今更ながら後悔していますとも。

『……カズミお姉さんって、やっぱり規格外だったんだね。それだけ聞いたら、私もだいたい分かっちゃったよ』

『他言するなよ? 恥ずかしいし』

『それは約束出来ないなー。カズミお姉さんには色々とおちょくられてるし』

『よーし、そこでちょっと待ってろ。すぐに口封じに向かう。命の保証はするがな』

『見つけられるもんなら……って、ええっ!?』

 後ろからガシッとリンネちゃんの頭を鷲掴みして、こちらに向かせる。

「死に戻りで飛ばされる蘇生ポイントの近くにいたら、そりゃ簡単に捕まるだろう」

 お金さん、さようなら。

 リンネちゃん、コーンニーチハー。

♪御意見、御感想をお待ちしています♪


リン「リンちゃんと」

チー「チーちゃんの」

「「あとがき劇場スーパー!!」」

リン「わー、わー、ぱちぱちぱちぱち」

チー「ドンドン、ぱふぱふ」


リン「よい子のみんな、お待たせしました~。第13話でーす♪」

チー「こんにちはです」

リン「チーちゃん、しつもーん」

チー「はい? いきなりなんですか、リンねぇ」

リン「昨日、あれから私の持ってる杖を調べてみたんだけどさー」

チー「よく敵さんを叩いてるあれですね……本来の用途違うのに……」

リン「両手棍、木杖、突杖、魔杖、火玉杖、ワンド、ステッキて出た」

チー「リンねぇの持ってる杖は、先端に赤い宝玉がついてましたね」

リン「うん。だから火玉杖だね。それはいいんだけど」

チー「?」

リン「もし私が、木杖と火玉杖の二つのスキル持ってたらどうなるの?」

チー「二つとも効果があるだけですけど?」

リン「それってつまり、より強くなるって事だよね?」

チー「はい」

リン「なら、さっき言ったスキル全部持ってたら、全部効果つくの?」

チー「はい。そしてスキルを鍛えれば武器一つで色んな技が使えるようになりますね」

リン「それ、すごいね! とっても強くなれるじゃん!」

チー「でもその分、他のスキルが覚えられなくなりますよ?」

リン「あ……」

チー「スキル枠は10個までなので、あまり固めてしまうのはお勧めできません」

リン「だ、だよね? 魔法士の私だと、魔法とか覚えてないと……」

チー「いっそ別の前衛職に転職した方がいいですね」

リン「むー……スキル選び、結構難しいねー」

チー「です。一点集中でスキルを覚えて一極型になるのも良いですけど……」

リン「色々覚えて万能感もやっぱり欲しいよねー」

チー「だから私は、片手剣関係のスキルは3つまでに抑えています」

リン「後は何を覚えてるの?」

チー「筋力上昇とか速度上昇とか、あと【水】属性の法術スキルも二つ覚えてますね」

リン「あ、チーちゃんも法術使えるんだ」

チー「リンねぇみたいに強いのは使えませんが」

リン「剣士職はMPも少ないから、頻繁に使える訳でもないよねー」

チー「です。どちらかというと、剣技に付加したりする事が多いです」

リン「自己回復は?」

チー「徐々にHPが微少回復するのならばあります。瞬間回復系はないです」

リン「あ、だからチーちゃんよくアイテム使って回復してるんだね」

チー「リンねぇもそうですね。むしろ私よりも使用回数が多い気が……」

リン「だって私、紙防御だし」

チー「それだけじゃ納得できない部分が色々とあるような気もしますけど」

リン「うん、スッキリ! モヤモヤ解決!」

チー「昨日に引き続き、お役に立てて光栄です♪」

リン「モヤモヤも解決したところで、今日もそろそろお開きだね」

チー「え、もうです? ……またリンねぇの魔法について聞けなかったです……」

リン「明日もまた見てねー。絶対だよー?」

チー「気兼ねなくまたお越し下さい。それでは、失礼致します」

リン「バイバーイ」



♪(こっちも)御意見、御感想をお待ちしています♪

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