学校一の人気者の3エンカウント
「お前も災難だったな」
親父が珈琲を飲みながら言う。因みにブラックではなく
角砂糖を4つくらい溶かした奴。
「自棄に簡単に信じたな」
「いやなあ、そもそもお前が犯罪何ぞに手を染める訳無いだろうからな。
何たって滅茶苦茶ヘタレだし」
この人、実の息子をヘタレ呼ばわりしやがった。
「先輩にも似たようなこと言われたぞ......その信頼はマジで要らんから
早く捨ててくれ」
俺が角砂糖の入っている瓶を持ち上げて、角砂糖一個の大きさに
少々引きながら言うと、親父は笑いながら
「はっはっはっ、あの人も中々分かっているな。それにしても
幻中さんだって? 初めて聞く名前だが、お前が助けようとするなんて
よっぽどだな。知り合いか?」
と、そう聞いてきた。
「よっぽど、とか言っておきながら友達ではなく知り合いかと聞く辺り
親父も分かっているな。そう、御察しの通り一応同じクラスで同じ部活の奴だ」
補足すると、親父には基本前科部のことは話していない。
親父が知っているのは自然を観察する部だということと、部長が
白嶺先輩だと言うことだけだ。
「同じクラスで同じ部活......ラブコメのヒロインじゃねーか!
芦原さんに続き二人もフラグ立てやがって......」
ちょっとこの人頭おかしい。
「ばっか。そもそも、財布を盗る現場を目撃したら普通何かするだろ」
「いや、だって『人の不幸は蜜の味』とか『幸福とは他人の不幸と等価値』だとか
言ってるお前が人助けをするなんて普通じゃないだろ」
何か紫髪の子が脳裏に浮かんだが、これは何の暗示だ?
「違うな。俺は財布を盗むような奴と同じ校内に居ればいずれ
自分の財布も盗られるんじゃないかと危機感を抱いて、自分の
財布を盗られる前に対処しただけだ。決して人助けではない」
俺がそう言うと、親父は珈琲を一口飲んで
「何だその超ツンデレ理論」
と呆れたように言った。
「その結論はどう考えてもおかしい」
ツンデレと言うのはだなあ、めぐたんみたいなのを言うんだぞ。
......めぐめぐとめぐたん、どちらが良いだろうか。
「いや、だってどう考えてもお前、人助けの為にやったじゃん」
「その心は?」
「親父だからな、子供のことは何でも......大体分かる」
何で、ちょっと弱気になってんだよ。
「さいですか......」
「まあ、学校の教師ならきちんと調べてくれるだろうが......。
もし、お前が本当に盗んだことになったら言えよ。何とかしてやるから」
やっぱ、イケメン過ぎるわこの人。
「それより、親父」
「ん、どうした?」
そう聞いてくる親父に俺は角砂糖の瓶を見せて
「角砂糖使いすぎだ。糖尿病になるぞ」
と、ため息を吐きながら言った。
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「・・・・」
「・・・・」
翌朝、随分慣れた通学路を歩き学校へと向かう。それだけの筈だった。
それなのに......。
「......はあ。朝から貴方に出会うとは、なんと言う拷問かしら?」
先程から黙っていた調月は不意に口を開いてそう言った。
因みに言うと、上里さん世界の拷問器具にも詳しかったりする。
「此方も朝からお前と会うなんて、そうそう喜ばしいことじゃないからな?」
最近、コイツと良く会う気がするな。
「せめて貴方と同じ学校で無ければ、途中で別れられるのに......何故
私の居る学校に転校してきたの?」
流石に理不尽過ぎる。何だコイツ。
「俺もお前が居ると知っていたら別の学校に転校してたかもな」
俺は皮肉の様に言い返す。実際、今の学校を気に入っている訳でもない。
嫌なリア充多いしな。
「じゃあ、今からでも転校するのはどうかしら?」
調月は顔色一つ変えずに言う。
「生憎今の部活、結構好きだからな。無理だわ」
それに、幻中や白嶺先輩、小戸森、宗里先生辺りは嫌いじゃない。
「そう、私のお陰ね」
調月は勝ち誇ったような笑みを浮かべてそう言う。
「どんな狂った解釈をしたらそうなるのか分からんが、一応そう考えた理由を聞こうか」
「勿論、私が居るだけで癒しになるからよ」
誰か頭のお医者さん読んできてください。
「ならない。というか、ストレスの原因にしかならない」
「失礼ね。因みに私の将来の夢は女性版のヒモ志望よ」
調月は事も無げに言う。
「何と無くそんな気はしてた」
調月の日頃の怠惰さを見ていれば良く分かる。いや、調月も
美少女といえば美少女なのだが、性格がかなり難有りだから養ってくれる
男は少ないだろう。
「何もしないで、好きなことだけして生きていく、なんて自分に正直で良いでしょう?
魔法の国に連れていかれなくても、働かなければこの日本という国で
甘い幸せを手にすることも案外容易よ」
もう、コイツの価値観に踏み入れるのはやめよう。うん、そうしよう。
ダメ人間になる未来しか見えない。いやまあ、働きたくないのは同意見だが
「ああ......そうですか」
俺は朝から何故こんな話をしないといけないのかと考えながら
呆れたように言った。
「ええ、残念ながら養ってくれそうな人は見つかっていないけれど」
「そりゃそうだろ」
そんなことを言い合いながら、歩き続けるとやがて学校に到着した。
昨日の件のせいか自棄に視線を感じる。
「どうやら、随分人気者になったらしいわね。良かったじゃない。
炎上商法のような物かしら?」
調月も視線に気が付いていたらしく、皮肉っぽい表情を浮かべて
そう言ってきた。
「残念ながら素の炎上だ。ほら、乾いた木ほど燃えやすいのと同じで
影の薄かった俺があんなことしたから余計炎上したんじゃないか?」
特に、あの山本とか言う奴は一年のスクールカーストの中でも
かなり上位者と見た。因みにそもそもぼっちには立場なんて物は
存在しないのである意味俺はヒエラルキーから逸脱した存在だ。
やったね、俺ツエー系のラノベで良くある強すぎるあまり権力者にも全く
従わないみたいな奴じゃん。
「どちらでも、私は構わないけれど貴方は一日中大変ね。
まあ、同情もしなければ共感もしないけれど」
そんな風に調月は手厳しい言葉を投げ掛けてくる。
「まあな。後、一応言っておくが俺は何もやっていないからな」
俺は信じてくれないことを前提に調月に言う。
「そう。まあ、私にとってはどちらが犯人でも関係無いけれど」
「全く、他人に関心がない奴だな」
俺は教師のような口調で言う。
「ブーメラン、刺さっているわよ。貴方も其処まで人に関心無いでしょう?」
酷い言われようだ。
「一応、傍観者として人間観察するのは嫌いじゃないぞ」
休み時間にやることと言えば、寝たフリと読書と人間観察くらいしかない。
「それは......分からない事もないけれど」
「だろ? 休み時間なんてまともに休む奴殆ど居ないんだから
もっと縮めて早く学校を終わらして欲しいんだがな」
実際、トイレに行ったり飲み物を飲む奴は其処まで居ない。
基本、人と話している奴ばかりだ。
「悔しいけれど、貴方に同意する部分もあるわね......それじゃあ、私は此処で」
一年生の教室が並ぶ廊下に着くと調月はそう言って、二年四組の教室へと
入っていった。
「おう、じゃあな」
調月と同じく、俺も2年3組の教室に入ると早速周りが騒ぎ始めた。
山本の取り巻きを初めとする女子達だ。そんなキャアキャアと騒ぎ立てる
女子達を横目に俺は何時もの席へと座った。
「調月も言っていたが、随分人気者になったな、俺。
最初の見向きもされないのとは大違いだ」
俺は独り言の様にぶつぶつと呟く。別に誰かへと向けて発した
言葉ではない。特に意図は無く、何時もの自虐癖がでてしまっただけである。
しかし、その静かに呟かれた言葉を確実に捉えた者も居たようだ。
「・・・大違いは大違いでも、悪い方向に向かっている気が......」
その者もまた、独り言の様に呟く。互いに意志疎通を取っているのに
互いに顔も合わせず、呟くように言葉を紡ぐ。実に妙な関係だが最近の
俺と幻中は基本このスタイルで話している。そうする理由は特に無く
気が付いたらこうなっていたのだ。
「知らね、上里さんは周りの評価を気にしない人間だからな」
俺はリュックを漁って本を取り出しながら呟く。丁度、この前本屋で買った本だ。
「・・・放課後、この前と同じ部屋に集合と宗里先生が仰っていました」
幻中は重要な事だからか、少し声量を上げて言った。
恐らく、というか確実に山本の件だろう。
「ん、了解」
俺も幻中に倣って声量を少しだけ上げて答えた。
「・・・そういえば」
幻中は再び、本に向き合って呟くように言った。
「どうした?」
俺もやや棒読み気味に本に向き合いながら言う。
「・・・挨拶がまだでしたね。おはようございます」
幻中は不意に、俺の顔の方を向いて言った。先程までの呟くような風ではなく
きちんと感情が乗った言葉だ。そんな挨拶をしてくれた幻中に俺は
「おう、おはよう幻中」
幻中の顔を見て少し照れながらもそう挨拶をした。
相変わらず、綺麗な銀髪だ。
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「やっほー、上里クーン」
学食に行く途中、階段を降りていると有馬が肩を叩いてそう言ってきた。
「おう。そのクーンは匂いを嗅ぐときの擬音か何かか?」
俺は有馬の方に振り向いてそう言った。
「え、違うってえー。これ何々君ってヤツのクーン」
いや、分かってるけどな。
「お前さ、何で一々俺に構ってくんの? 何? もしかして俺って
お前と河原で殴り合いでもした?」
何それ、青春。別に俺はそんな男臭い青春は望んでいないが。
「あー、何と無くだねー。ほら、上里君って面白いじゃんさ?」
「いや、同意を求められても非常に困るんですけれど」
面白いなんて言われたこと産まれてからも殆ど無いぞ?
いや、俺は上里さん芸人の素質あると思ってるけど。
「でもさあ、上里君みたいな人ってこの学校にあんま居ないよ~?」
それは俺を周りとは違う特殊な奴だって遠回しに
言ってるんですか、そうですか。
「大半のグループからはつまらない陰気キャとか
空気の読めないぼっちとか思われてるみたいだけどな」
俺が面倒臭そうに言うと、有馬は突如目付きを変えて口を開いた。
「まあ、上里君の性格上基本的にこの学校の生徒の性質とは
合わないとは思うけど......僕は嫌いじゃないよ、そういうの」
・・・・・・・・・・・。
「お前、今なんか雰囲気変わった?」
先程のアホそうな感じではなく、とても大人びていた気がする。
「ええー、気のせいっしょー。僕は至って普通だよー」
しかし、気が付くと有馬からは先程の雰囲気はきえていて
元の様子に戻っていた。
「いや、滅茶苦茶話し方が聞き取りやすかったし絶対あれはお前じゃない」
あんな聞き取りやすい言葉を話すのは有馬じゃねえ。
「いや、酷くねー?」
「酷く無い。むしろ解離性同一性障害(Dissociative Identity Disorder)を
疑うまである」
あ、さらっと難しい病名が言える俺ポイント高い。
「何だそれー? 上里君、物知りだねー」
「何か微妙に貶してないか? その言い方」
「えー? んなことないってえー」
......有馬の雰囲気が変わったように感じたのは本当に気のせいか?
話し方がアホそう過ぎて狡猾キャラが道化を装っている説が出てきたぞ。
「取り敢えず、俺はめぐめぐが待ってるから学食に行かせて貰うぞ」
俺は有馬にそう断って歩き出す。
「んじゃあ、僕も途中まで着いてくねえー。ほら、部室で弁当食うからあ」
「......勝手にしろ」
俺はぶっきらぼうに答える。
「そーいえばさーあー?」
学食へと向かう途中有馬が話しを始めた。
「どうかしたか?」
「ほら、前に会ったとき答えて貰えなかったけどお、何で前科部に入ったの?」
そういえば、そんなこと聞かれてたな。
「別に理由なんて普通だぞ? 楽そうでまあまあ楽しそうだったから」
他にも理由はあるがその根幹を為すのはこの二つだ。
これがサッカー部とかだったら入っていない。
「でもさあ、皆は前科部のこと嫌ってるでしょー?
わざわざ皆に嫌われるかもなのに入ったのー?」
「俺が入りたかったから、それだけだ。別に好きな部活に入ることが
悪事な訳でも無いだろ? あの部活がどれだけの部活なのかは
とある人に熱弁されたから今更言われなくても分かってる」
俺がそう言うと、有馬は急に止まって
「ふぉえー、あ、彼処が部室だからな此処までねー。
僕は上里君のこと好きだよー」
そう言い残して、廊下を走っていった。
「危ない、おい。人にぶつかるぞ......聞こえないか」
俺はその場でため息を吐いて、学食へと向かった。
最近、ため息の数が多い気がするが......それが何を意味するかは考えたくはない。
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学食に着くと俺は何時も通り小戸森を探した。すると、
また誰かが俺へと近づいてきた。
「おい」
其処には見覚えのある男が立っていた。
「......井上だったか? 約束があるんで用ならなるべく早く済ませてくれよ」
井上......下の名前は知らないが確か山本の恋人らしき奴で
俺を殴り飛ばした奴だ。
「お前、その態度はなんだよ? 夢華に聞いたぞ、教師にも自分は
やっていないって主張したんだってな? 嘘を付くなよおまけに
盗んだのは夢華だあ? 濡れ衣を着せるにも程が有るだろ」
井上は相当怒っているらしくその声はかなり響いており
周りからも注目されている。
「言いたいことはそれだけか? ならもう行くぞ。これ以上人気者に
なるのも不本意だからな」
俺は敢えて冷静に興奮している井上に言った。感情的になって何も見えていない
相手を冷静に対処して相手の精神を逆撫でるのは結構癖になる。
「チッ......お前最低だな。人の財布を盗み、その財布の持ち主の友達が
盗まれないようにと財布を守れば暴力を使い、挙げ句の果てには
友達の財布を守ろうとしただけの女子に濡れ衣を着せる? 人としてどうなんだ?」
「そうだ、そうだ。最低野郎!」
「クズ! 死んでしまえ!」
「生きてて恥ずかしく無いのか!」
......もう、野次馬が集まってきたよ。学食に入っただけなのに
何故に此処まで言われなきゃならんのだ。俺は暴言程度では傷付かないが
やはりやっていないことで誹謗中傷浴びなければいけないのは不快だ。
それに、今回は井上が俺を徹底的に悪役に仕立てあげたせいで暴言の質が違う。
「最低で結構。元々自分が最高なんて考えるような自惚れ屋じゃないからな。
飯食わないといけないから、もう行くぞ」
俺は終始真顔で井上を相手して、小戸森が居る方へと向かっていった。
野次馬がまだガヤガヤ言っていたが、井上が解散するように言うと散らばって行った。
俺はその様子をみながら小戸森の座っているテーブルの椅子に座った。
「小戸森、遅れてすまん。色んな奴に絡まれててな」
俺は軽くそう言って、小戸森が気をきかせて事前に机に
置いておいてくれた水を飲んだ。
「.......あれをそのノリで絡まれてたとか言う先輩、ある意味凄いですよね」
小戸森は呆れたような諦めたような微妙な表情で言ってきた。
「俺としては別にあれくらいどうでも良いけど......小戸森的にはどうだ?」
俺の言葉に小戸森は首を傾げる。
「どう、とは?」
「死なないといけない、生きていて恥ずかしいクズと一緒に
昼食を食って良いのかってことだよ。ほら、俺みたいな奴と居ると
お前に色々悪影響あるかもしれないしな」
先程の野次馬の暴言で考えたことだが、嫌われている俺と居ることで
虐めが激化したり生まれたら目も当てられない。また今度、有馬や
部活の人たちにも言っておこうと思う。
「先輩......ボクのことをそんな人でなしと思ってた訳ですか?」
「は?」
「始めて、ボクと先輩が出会ったときに先輩が言ってた言葉です。
ボクが虐められてて前科部の部員だって、打ち明けたとき
顔色一つ変えずに先輩はボクのことを認めてくれたじゃないですか。
そんな先輩が少し濡れ衣を着せられて評判が落ちたからって関係を
断ち切るような人でなしじゃ無いです」
小戸森はジトーとまるで責めるかのように言ってきた。
「ああそう......ふーん、天使じゃん」
いや、マジで此処まで小戸森に受け入れて貰っているとは思ってなかった。
「うっさいです」
小戸森は顔を紅くして、顔を逸らした。そして、
「きっと、自然観察部の皆さんもボクと同じこと言うと思いますよ」
と少し笑って言った。
死ぬほど、更新遅れました。すいません! 1日に10分も自由時間が無いほど
忙しかったので許してくださいw 来週も滅茶苦茶忙しいのでまた遅れるかもしれませんが
失踪は死んだり、意識不明になったりしない限りしないので次回もまた見てください!
後、評価、ブクマ、感想は小説を書く上でとても励みになります。
現在は小説50話までに50ポイント達成を目標に頑張っております。
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