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前科部!  作者: 蛇猫
前科者達との自然観察
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月の調べ


俺の名は上里祐也(かみさと ゆうや)何処にでも居る至って普通の高校生だ。


「おい、見ろよあれ。上里だぜ」


「うわ、マジか! 上里ってあれだろ?」


所属している部活も極めて一般的。


「そうそうそう、最近転校してきた生徒でいきなり前科部に入部したやつ」


トラブルも全く起こさない、極めて模範的な生徒だ。


「それに、あれだろ? 幻中の財布奪ったとか言う......」


「ああ、噂じゃあ財布を盗まれないようにと抵抗した山本を突き飛ばした挙げ句

 山本に濡れ衣を着せようとしてるらしいぞ」


性格も至って普通、勉学に励み部活に打ち込み友人達と青春を謳歌している。


「ひでえなあ......前科部に入ってるだけでもあれなのにそれじゃあ

 絶対友達とか居ないだろ」


「いや、本当に前科部の部員とたまに一緒に居るくらいで

 ガチで友達居なさそうだぞ」


平凡で平和な毎日を享受している。


「それにしてもヤバイよな、アイツ。転校してきて、前科部に入り

 近藤と喧嘩をするわ、佐藤と口論するわ......無茶苦茶だよな」


「それに今回の事件だろ? 陰キャっぽいけど結構目立ってるよな」


............おい其処、さっきから煩いぞ。後、一々俺のキャリアを解説するな。

俺は普通で平凡な高校生なの! 因みに俺は普通の高校生が主人公のアニメには

あまり感情移入できないのだが、恐らく自分と同じ過ぎるからだろうと考えている。

断じて自分と性格が違いすぎるからとかではない。


そんなことを一人考え、俺は男子二人の声を聞き取りながら目的の部屋へと歩を進めた。

俺はアニメで有りがちの難聴主人公にはなりたくないと思っているので聴力だけは良い。

目は悪いけどな、色んな意味で。


「まあ、目が死んでても誰に迷惑を掛ける訳でも無いし......良いか」


俺は基本的に人に評価されたいが為にファッションをしたりはしない。

まあ......半分自己満足で好きな帽子やカバンを買うことはあるが。

それに、服やズボンなどは変に女子力の高い親父さんが付いている俺は丸投げだ。


「そうね。そもそも、目が死んでいて悪いわけではないのだし

 目の良し悪しなんて物は人の価値観によって変わるもの」


「良く分かってるな。因みに俺はジト目が好きだぞ」


「それは貴方が蔑まれた目で見られたいという欲求の強い

 マゾだからでは無いの?」


「違う。いや、それも無いことも無いが、良いか? ジト目という

 ものはだな......待て、なにお前然り気無く俺の独り言に混ざってんの?」


独り言に混ざるって言うのも妙だけどな。


「私も此方の方に用が有るのよ。何か悪いかしら?」


「いや、別に悪いとは言ってないが......」


調月には何と無く近寄りがたい雰囲気が有る気がするが俺からすれば

結構遠慮無く会話できる人間の一人だ。理由は性格が似ているからとか向こうに

遠慮が無さすぎて遠慮する気が起きないとか色々有るのだろうが。


「そう、だったら良いわ。それにしても貴方......凄い知名度ね

 今日は何処に行っても貴方の噂をしている生徒を見かけたわよ」


調月が若干引いたように言う。


「それに関しては俺も困っているところだよ。今日も学食で井上とか言うのに

 絡まれたしな。.......盛大に煽っておいたが」


人の心を読むスキルは無いが、結構怒っていたんじゃないだろうか。


「あの男は私のクラスの生徒よ。あまり嫌な性格の人間ではないけれど

 猫を被った山本夢華に騙されているようね」


「ああ、やっぱりな。何と無くそんな気がした」


井上は確かに俺を殴ったりはしたが、それは山本が俺に濡れ衣を着せたからだ。

もし、俺が本当に山本を突き飛ばしたのなら山本を守るために俺を殴っても

仕方がないだろう。それに、他の野次馬と違って面と向かって文句を言いにきているし

どう考えても山本と釣り合う程の腹黒野郎ではないのは明白だ。


「さて、ここね」


そう言って調月が止まったのは、俺が財布の件で話し合いをするために

呼ばれていた部屋だ。


「俺も此処に呼ばれているんだが......本当に場所は此処か?」


「ええ、そうよ。私の方向感覚に狂いは無いわ」


そう言うと、滅茶苦茶フラグ臭がするんですが。


「入るわよ」


調月は俺にそう告げ、扉にそっと手を掛を掛けるとそのまま扉を開けた。


「失礼します」


「ああえと、失礼します」


俺は迷い無く、部屋に入る調月に少し戸惑いながら

調月に続いて頭を下げた。


「ああ、一先ず座ってくれ」


先に部屋の椅子に座っていた宗里先生が空いた席を手で指して言う。

そして、その横にはあの生徒指導の教師に幻中の姿もあった。

というか、調月が入っても何も言われないということはやっぱりあってたのかよ。

其処は盛大にフラグ回収をしてくれ。


「宗里先生、山本はどうしましたか?」


生徒指導の教師が宗里先生に聞く。


「ああ、少し遅れているみたいですね。もうすぐ来ると思いますよ」


「そうですか。それで、調月は何のために読んだのかも聞いてよいですか?」


生徒指導の教師はまた、宗里先生に質問をする。其処は俺も気になっていた所だ。


「今回の件に関しての証人として呼ばせて頂きました。

 詳しい話は山本が来てからにしましょう」


生徒指導の教師は少し首を傾げた後、頷いた。

調月が証人というのはどういう事だろうか


「すいません、遅れました!」


俺の疑問への仮説を考える思考は、勢い良く開いた扉によって遮られた。


「ああ、山本か。お前も此方に座ってくれ」


遅れたことへ慌てている山本に宗里先生は一歩引いたテンションで告げる。


「あ、はい」


山本は言われたとおり、席に座る。


「さて、話を始めようか。私と河村先生の二人で色々と調べて学食の

 監視カメラも確認したんだがな、どうもカメラからは死角になっていて

 監視カメラでは確認することが出来なかったんだよ、これが」


監視カメラというワードが出たことに、山本の表情が一瞬焦ったように

崩れたが、宗里先生の話を最後まで聞き安心したようだ。

しかし、宗里先生は『でも』と付け足し、


「此処にいる調月が、とある証拠を持っていた」


と、言った。調月はその言葉に眉ひとつ動かさない。


「証拠、とは?」


生徒指導は驚いたように言う。


「それを含めてご説明致します。実は昨日、調月からとある映像を

 放課後見せて貰っていまして......調月、見せてくれ」

 

宗里先生がそう言うと、調月は黙ってスマホを取りだしとある動画を再生した。

.......まさか。


『え? 本当にやるの?』


『大丈夫、大丈夫。あいつの事だから財布が無くたってどうにもしないって。

 それに、私達は互いにアリバイを証明出来る。あいつからしても私達が

 盗った証拠なんて何処にもないしね』


『うわあ、夢華ヤバあ......』


『じゃあさ、じゃあさあいつが戻って来ないか見とくね!』


『うんオッケー。宜しくねー』


・・・・・・・・・・・・室内が静まり還った。山本と生徒指導は目を見開き

幻中と調月は無表情、そして俺も同様を隠せていない。


続いて俺の物と思われる声が静寂に包み込まれている学校の一室に響き渡り

動画は少しのノイズと共に終了した。それを確認すると調月はスマホをしまい、


「いかがでしたか?」


と、山本に冷たく言い放った。


「こ、これは......」


生徒指導は信頼していた生徒の蛮行が明らかになってショックなのか

言葉を失っている。そして、何故か調月が得意気に『フッ』と軽く

笑みを溢した。


「出来ることなら、今日中に河村先生にも見せておきたかったのですが

 河村先生は昼から外に少し出払っていましたし、上里の件での調査も別行動

 だったので職員室でも出会うことがなく、遅れてしまいました、すいません」


「あの、調月、これは?」


俺は恐る恐る聞く。


「偶々気まぐれで学食の風景を撮影していたら偶々おかしな音声と

 おかしな生徒の行動が写し出されていただけよ。他意はないわ」

 

調月の回答に俺も言葉を失う。


「さて、山本夢華と言ったかしらこの映像を見た感想を頂けるかしら。そうね、出来れば40文字程度が良いと思うのだけれど」


「......ひぃ」


山本は呼吸を荒くして、恐怖に顔を歪ませた。当然だ。山本が犯したのは立派な犯罪である。その事が、冤罪をかけた相手と教師二人の前で明かされたのだからその焦燥感は凄まじいものだろう。


「山本、この映像に映し出されているのはお前で間違いないな?」


宗里先生はその事実を全く気にせずに聞く。


「ちが......」


「あら、違うとでも言う気かしら? そう、なら仕方がないわ。

 宗里先生、通して良いですか?」


「ああ。入って来てくれ」


宗里先生がそう言うと、がらがらと音を立ててこの部屋の奥に

設置されていた扉が開いた。そして、其処には見覚えのある

二人の女子生徒が立っていた。


「此方、貴方と共に学食で食事をしていた村田さんと米山さんよ」


いや、何で調月がしきり始めているのかは分からないが、確かに

その女子生徒は山本と一緒に飯を食っていた奴等だった。

マジで呼んだのか......流石にこれには幻中も驚いた様子だ。


「宗里先生、彼女らは......」


「山本と同じ時、同じ場所に居たのなら調月の動画に映っているのが

 山本本人かどうか証明してくれるだろうと思いまして、呼んだ者達です」


「ふ、二人とも......」


山本は『友達』の二人なら自分に有利な証言をしてくれると考えたのだろう。

頬を緩ませていた......しかし。


「先生! 私達は山本さんに脅されていただけなんです。

 確かに私達は山本さんが財布を盗る手助けはしましたが......

 盗ったのは山本さんです!」


「そうです先生、それに楽しそうに動画で振る舞っていたのも

 逆らったら山本さんに虐められてしまうと思ったからなんです!」


山本の期待を裏切るかのように二人は口々にそう言った。


「え......」


山本は驚愕を越えて、哭きそうに呟く。


「つまり、お前たちは山本に逆らえば虐められるから言う通りに

 するしかなかった。楽しそうに振る舞っていたのはあくまでも山本の

 機嫌を損ねないようにするため、そう言いたいんだな?」


宗里先生が聞くと、お互い身を寄せあってコクコクと頷いた。

いやはや、友達とは尊い物だ。全く。


「山本、その事についてはどうだ?」


「違います! 二人とも私の大切な友達で虐めることなんてありません!

 二人とも、本当に楽しんで盗ろうとしてたし......あっ」


アニメでも見ているのかと言うほど綺麗な墓穴の掘りかたである。


「はあ......俺、もう帰って良いですか?」


「すまん、もう少しだけ同席してくれ......」


呆れたように言う俺に、宗里先生は呆れたように山本を見ながら言う。


「そうです! 私が玲奈の財布を盗みました。それで上里君にバレたから

 咄嗟に濡れ衣を着せたんです! でも、コイツらを私が虐めたり

 脅してたって言うのは全くの嘘です!」


最終策、責任の分散。赤信号、皆で渡れば、怖くない理論。

大部分の非を認めて、一部非を認めないことで話に説得力を持たせて

信じてもらい、財布を盗ろうとしたのは自分だが周りも乗り気だったと

アピールをする。あわよくば、自分が財布を盗ったというところを

まるで三人で盗ったように錯覚させて論点をすり替えれるかもと言うオマケも狙う。

そんな自暴自棄にも見える山本が取った一手は偶々、この場に存在していた

毒のような中立の存在によって無効化された。


「一つ意見宜しいですか?」


「あ、ああ......」


展開についていけなくて放心状態の生徒指導は頼りなく調月に発言を許可する。


「山本さん? 今の言葉、特に幻中さんの財布を『貴方が盗んだ』

 という点は間違いないかしら?」


「は、はい」


蛇に睨まれた蛙のように山本は調月の覇気に圧倒されながらも答えた。


「つまり、今回の件に『上里祐也』は全くの無関係。いえ、むしろ校内で

 行われようとした犯罪を未然に防ごうとしただけ、という認識で良いのよね?」


「つ、つかつ」


「貴方は黙っていなさい」


調月は発言しようとした俺にそう言い発言を許してはくれない。

俺には一体、調月雹霞という人物が何をしたいのかが分からなかった。


「はい、そうです......」


やはり、山本は怯えきったように答えるが全くといって良いほど

同情心が芽生えない。二次元であれば割とどんな悪役にでも同情してしまう

たちの筈なのだが。


「ということらしいです、先生。この時点でこれはもう無関係だと思いますが」


「だから、人をこれとか言うんじゃない」


俺はすかさずツッコむ。


「ああ、そうだな。調月の言う通り上里の冤罪は晴れた訳ですし

 詳しい話は残された者だけで詰めることにして、上里と調月は

 帰らしても良いと思いますが、どうでしょうか?」


詳しい話とは恐らく、山本が脅してた云々の話だろう。

俺は山本の取り巻きが嘘を吐いているのだと思うが。


「そうだな。もしかすれば、また当事者として呼ぶかも知れないが

 一先ず調月と帰って良いぞ」


「分かりました。では、失礼します」


俺は生徒指導にそう言って言われた通り部屋を出た。


「どうも」


そして、それに続いて調月も部屋を後にした。コイツには聞きたいことが

山のように存在する。


「どうして、俺のことを助けたのか聞いて良いか?」


調月には、俺を助ける理由も義務も必要性も無い。そもそも、調月が

俺にプラスになることをするということ自体訳がわからない。


「......別に助けてなんかいないわ。自意識過剰が過ぎるわよ」


「は? だってお前......」


調月がしたことは明らかに俺の助けとなった。それを助けていない

というのはどういうことだろうか? 俺がそんな疑問を浮かべると

調月は、


「同じ校内に人の財布を盗むような犯罪者が居るのなら、教師に摘発するのが

 普通でしょう? 私はそんな人間と同じ空気を吸いたくないから証拠を録り

 教師に見せただけであって、あくまでも貴方のためではないわ。

 そのせいで貴方の冤罪を晴らす手伝いをしてしまったけれどね」


と、この間の俺を思い出させるような言葉を言った。


「いや、でもお前最後の方『上里祐也が犯人ではない』ことを

 必死に山本に認めさせようとしてたじゃん」


「皮肉なことに貴方の冤罪を晴らすことか、あの女を追い詰める

 一番の方法だった、それだけよ」


なんだこいつ、ツンデレかよ。いや調月に限ってそんなことは無いんだろうが。


「いやまあ、お前の行動原理が何であれお前が居なかったら本当に

 ヤバかった。ありがとうな」


もし、調月が居なければ、あの動画が無ければ俺は本当に

一生濡れ衣を背負って生きていかないといけなかったかもしれない。


「やめなさい、貴方に貸しを作ったつもりはないし、貴方に礼を

 言われる謂われも無いわ」


調月は長い髪をさっと払って、言う。

おお、格好いいな。アイツが見たら喜ぶんじゃないだろうか。


「さいですか......」


「それにしても、あの女と周りの生徒。中々面白い喜劇を見せてくれたわね。

 苦しめられていた当事者の貴方は特に面白かったんじゃないかしら?」


調月の言う、喜劇とは山本が取り巻きの連中と喧嘩を始めたことだろう。


「調月、流石にアレを面白いとかいうのは......」


「何? 悪趣味とでも言うのかしら?」


「......いや、滅茶苦茶分かる」


俺が山本に友達が居ないことを言ったとき滅茶苦茶ドヤ顔で自分には友達が

居るといっていたくせに、結局最後は仲間割れだ。面白くない訳がない。

性格が悪い自覚は有るにはあるが、それが上里祐也だ。仕方がない。

特に、やれ友達やら絆やらと薄っぺらい言葉で塗り固めた関係を誇りに思い

周りを見下すような奴が、最後はその友達に首を絞められるなんて

出来すぎたコントかとツッコみたくなる。


「ふっ......まあ、貴方にも少しはマトモな感性があるみたいね」


調月は本当に少しだが、笑みを浮かべた。


「いや、俺が言うのもなんだが、絶対俺とお前の感性は世間一般常識からは

 逸脱しまくってるぞ」


「貴方と私の感性が全て同じであるかのように、語らないで貰えるかしら?

 貴方の感性が異常なだけで、私は普通よ」


滅茶苦茶理不尽なことを言い出しやがった、コイツ。


「もういい......そう言えば、今日は火曜日で部活は無しか」


自然観察部は基本的に土日祝日休みの火曜日定休日という

ホワイトな部活だ。やる気がないとかは禁句。


「ええ、そうね。本当は貴方と同じ道を帰るのはへどが出るほど

 嫌なのだけれど仕方がないわね。早く帰るわよ」


「ああ、はいはい」


何故、俺はここまで罵倒されねばいけないのかと思いながらも

一応、調月に助けてもらったことを思いだし。調月と共に学校を後にした


どうも、さりげなく一週間分の更新をしていないのを無かったことにした

卑怯極まりない蛇猫です。色々と忙しかったのですが、また何時ものペースに

戻れそうです。それに気付きませんでしたが、前回で30話までいきましたね。

ここまでこれたのも皆様のお陰でこざいます。本当にありがとうございました。


目標の50話までに50ポイントが達成できるか不安では有りますがこれからも

頑張りたいと思います! ということで、応援していただける方は是非とも

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