邂逅
はい、後日談というか蛇足というか、そんな感じのやつが始まりました!
前科部をこれからも宜しくお願いします!
「なあ、幻中あ~」
「・・・何でしょうか」
「俺達って一応、付き合ったんだよな?」
「・・・はい、恐らくは」
恐らくはって何だよ。恐らくはって。
「なのに、進展が無さすぎやしないか? 雪加にも文句言われたぞ。『祐也は
私を振って玲奈と付き合ったんだからもっとイチャつけば良いのに』って」
「・・・そうですか。では、具体的にどのようなことをすれば?」
「デートとか」
「・・・デートであれば今日もこうして貴方の家に来ているじゃないですか。
私は家デート、というものがあると聞き及びましたが。......正解です。次は
四角三番の奇数を解いてみましょうか」
幻中は何が不満なのだと尋ねるかのように首を傾げて、お茶を啜る。
「いや、勿論、家デートもデートの内なんだろうけどさ。これってただただ
幻中に俺が勉強を教わってるだけじゃないか?」
文句を言うつもりなど毛頭ないのだが幻中は真面目に勉強を教えてくれているが
故に教え方がとても事務的で、とてもじゃないがデートという雰囲気ではない。
「・・・申し訳ありません。こういったことには疎くて」
「いや、俺もラノベやギャルゲーの知識くらいしかないから偉そうなことを言える
立場でもないし、幻中が謝る必要はないんだが。......少なくとも」
「グーテンターク! 玲奈ちゃんに少年!」
「部外者が当たり前のように入ってくる環境はデートには不向きだろうな」
俺は溜め息を吐いて、緑髪の少女を睨んだ。階段を上ってくる足音で誰かが
俺の部屋に来ようとしていたのは察知していたが、よりにもよってアンタか。
蜂須賀梓。
「・・・こんにちは。蜂須賀さ......。あの、急に抱きつかないで下さい」
「どうやって来たんですかアンタ。鍵は閉めてましたよ」
ナチュラルにゆりゆりしようとする蜂須賀に俺はジト目を送りつつ、そう言った。
はち×まもは最早、完全に一つの百合カプとして成立してしまったらしい。
「青ノさんに開けて貰ったよ?」
「私が合鍵を持っていることを努々、忘れるな」
スッと部屋の扉から顔を見せてそう言う雪加。まあ、何と無くそんな気はしてました。
「何の用だお前ら」
「私は玲奈ちゃんの情報があったから来ただけ!」
「私は昨日、玲奈と祐也が勉強会するみたいな話を立ち聞きしてたから
その情報をアズに教えて遊びに来ただけ」
「「いえい!」」
何じゃコイツら。
「・・・まあ、賑やかなのは良いことかと」
「賑やかというより、騒がしいだけなんだよなあ。それにほら」
俺が視線を扉にやると、パジャマ姿の蛇女が現れた。
「......騒がしいわね。もう少し、静かに出来ないの?」
「雪加と梓たんの足音が大きいせいで毒蛇が起きちゃったじゃねえか。後、調月
パジャマのズボンが滅茶苦茶ズレてる。もっと、危機感を持て」
眠そうに目を擦る調月に俺は溜め息を吐いた。
「めんどい」
「めんどいとか言うな。ほら、ズボン上げて」
俺は溜め息を吐きながら彼女のズボンの腰回りの部分を引き上げた。邪な気持ちは
全く浮かばないどころか、気分は保育士である。
「な、な、な、ななななっ……!?」
しかし、その様子を見て蜂須賀が顔を真っ赤にして声を漏らした。
「どしたん梓たん」
「どしたんも糞もねえよ!? 何故に毒蛇さんが少年の家に泊まってんの!?
ほんでもって、その距離感は何!? 女子のパジャマとかよう触れますなあ
おどれ!? 浮気なの!? ねえ、浮気なの!? 玲奈ちゃんというものが
ありながら毒蛇さんの体も堪能してますのん!? うっそやろお前!? 屑!
悪魔! 玲奈ちゃん包丁持ってこい! リアル伊○誠やるぞ!」
「違う! 違うから! 誰かこの娘の危ない思想止めて!?」
「何だあ、やっぱり嘘だったんじゃない。中に誰も居ませんよ?」
この状況でそれは止めろ雪加。フリーダムかお前は。てか、お前がヤンデレ
やると妙にしっくり来るから怖いんだよ。
「蜂須賀さん、気持ちの悪いことを言わないで。私がこの男と関係を持った
事実は後にも先にも無いわ」
「何をおっしゃって仰有ってるんですか毒蛇さん! 少年とそういったことが
無いと言うなら、何故に少年の家に泊まってるんです!?」
「・・・あの、蜂須賀さん」
一人で興奮して荒ぶっている蜂須賀の肩を叩いたのは一連の誤解を静観していた
幻中だった。
「何じゃいっ!?」
「・・・調月さんは時々、お母様とのトラブルが有りましてその度に上里君の家に
避難しているのです。寝室も別室ですし、彼のお母様やお父様も夜は居るので
別に浮気などではありません」
幻中の言葉に俺達一同は揃って頷いた。
「これって、もしかしなくても梓たんが滅茶苦茶恥ずかしい勘違いを
してたってこと? うっそん」
「ドンマイアズ」
「ぐぬぬっ、梓たんとしたことが......」
蜂須賀はそう言って項垂れた。
「話は変わるけれど、祐也と玲奈は付き合い始めてから進展あった?」
「無い」
「・・・特には」
「青ノさんに聞いた話だとこの前のクリスマスも二人で過ごさずにあの部活の
メンバーと過ごしたらしいじゃん。この冬休みを利用してもっとラブラブ
チュッチュしなよ。この冬を逃したら来年は受験ですぜ?」
蜂須賀が幻中にキスを迫りながらそう言った。確かに彼女の言うことは一理ある。
俺としても幻中とはもっと恋人らしいことをしたいものだ。
「・・・考えておきます」
「「「煮えきらねえなあ」」」
俺、雪加、蜂須賀の声が重なった。
「・・・貴方までそちら側に回るのですか」
「だって俺は幻中ともっとイチャラブしたいんだもん。叶うことなら今から
幻中に向かってダイブしたい」
「おお、少年強い」
「そう言えば、貴方はこの前のクリスマスパーティーに参加していなかったわね。
幻中さんも参加したのだから、当然、貴方も来るものだと思ったのだけれど。
どうして来なかったのかしら」
そんなやり取りをしていた蜂須賀に調月が不意にそんな質問をした。その質問に
彼女は少し、バツの悪そうな表情を浮かべる。
「あ~、ごめん。本当はそっちのパーティーも行きたかったんだけどさ。
それより先に別のパーティーからお誘いを受けちゃってて」
「アズって私達以外に友達居たんだ」
「居るわ! めっちゃ居るわ! アズの知り合い馬鹿多いからな! 岬川の友達も
何人か居るし! あ、でも、玲奈ちゃんはそんなたくさんの友達の中でも特別な
存在だから安心して!」
「・・・あ、ありがとうございます」
「というか、アンタら含めて私の友達って個性派揃いなんだよなあ。一度で
良いから全員、集めてパーティーとかしてみたい!」
蜂須賀に個性派呼ばわりされる人間が何人も居るとは、この世界も広いな。
「それじゃあ、何時か、アズ主催で開いて」
「良いよ! 楽しみにしてて」
蜂須賀が笑顔でそう答えたとき、またもや誰かが階段を登ってくる音が聞こえた。
これは......三人だな。
「おーい、祐也、可愛いお客さんだぞ! って、うおおおっ、ハーレムかよ」
それは仕事から帰ってきた様子の親父と
「あはは、勘解由小路さんにメールで誘われて来たらしたでお父様とばったり
会っちゃってね。勉強会、やってるんだよね?」
「何で調月先輩はパジャマなんですか......。あ、こんにちわ」
俺の先輩と後輩だった。
「ちょい待てお前、俺を差し置いてこんなハーレム形成して許されると思って
んのかコラ。てかこれ、自然観察部の集まりだろ。自然観察部ってこんなハ
ーレム部だったのかよ! 羨ましいっ!」
「何言ってんのか訳分かんねえ! 後、別に俺が形成した訳ではなくコイツらが
勝手に集まってきたんだよ! おい、雪加、有馬と井上はどうした!?」
「誘ったけど、二人とも出掛けてた」
「タイミングわっる。いや、今、言ったように、井上と有馬っていう男子も
ウチの部活には居るんだよ! 別にハーレム部じゃねえ!」
俺がそう叫んで必死に弁明をすると、親父の後ろに物凄い殺気を放つ何かが現れた。
「せんぱあい、何が羨ましいんですかあ?」
上里紡、俺の母さんだった。此方も買い出しから帰ってきたらしい。もう状況が
カオス過ぎる。誰か助けて。いや、助けろ。
「ハ、ハロー、紡。愛のキスする?」
「ふんっ!」
「グハアッ!?」
子供とその友達と恋人の前でイチャつかないでくれませんかねえ、この夫婦は。
「紡……やっぱ、そうだ!」
そして、ナチュラルにイチャつくバカップルに蜂須賀が突然、何かを思い出した
かのようにそう叫んだ。
「「はい?」」
バカップルは同時に困惑の声を漏らして首を傾げる。
「上里徹也さんと上里紡さん! 私のこと覚えてませんか!? 梓です、蜂須賀梓!
母の旧姓は邪答院!」
「「……あ」」
バカップル二人はどうやら何かを理解したようだが、俺とその他自然観察部員は
何も理解出来ぬまま、ポカーンとしていた。




