第二十話 死闘
富樫はアルゲンに向け出発した。
今やもぬけの殻となった宮殿会議室でセドリックは一人、青く光る窓を見つめていた。
「ようやくここまで来た…ここは僕しかいない僕だけの国だ。トガシ様、生きて帰ってこれるとは思はないで下さいね。」
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針のような日差しが肌にあたると数秒もせぬうちに思わず「熱い。」と言ってしまう。
そんな過酷な行軍の中で富樫は地図を広げていた。
「今俺たちがいるのが帝都から五十二キロ先のジューニスか。アルゲンまでは残り十二キロ…。オルゴ、隊員に伝えてくれ。「ここから先、警戒を怠るな」と、よろしく頼む。」
「了解しました。」
一方でアルゲンでは猛暑の中死闘が繰り広げられていた。
斧をもって血まみれになりながらも進軍を続ける決起軍に主戦派は恐れをなしていた。
しかし決起軍も疲れを出し始めていた。
そのすきを開ける間もなく主戦派は矢撃を行ってくる。
雨のような矢は市民の体を貫いた。
「うぐあっ…。」
一昨日まで笑顔でパンを焼いていた男も、来月に結婚を控えていた娘も今ではすっかり屍となっていた。
アルゲン駐屯地の内部では毎日のように隊員が埋葬作業を行っていた。
数日まで活気にあふれていたこの年も今では地獄絵図さながらの光景になってしまったのである。
若い隊員の中には毎日泣き叫ぶものが多くなった。
妻や最愛の人を失った者、家や財産を失った避難民。
こんな光景を一体だれが想像しただろう。
開戦から六日目。
アルゲン一帯は血生臭い霧に囲まれていた。
指揮では劣っているオウェリナ主戦派軍は未だ陣を退かない。
外壁に身を隠すアルゲン隊は冷や汗を流し、息を殺して小銃の持ち手をギュッと握り締めた。
毎日のように見てきた悲惨な光景…今更言葉などはなかった。
だが、
「おい皆! あの旗っ。」
「なんだ?」
「あれは、和解派の旗じゃないか!」




