三
結論から言うと、音月の選択は正しかった。
「貴様ら、いったいなんなんだ!」
門をくぐった直後、彼らは大軍に襲われた。
「悪くは思わないでくれよ、俺たちぁ負けたけど、せめておめーたちも負かすぜぇ」
「なに?!どういうことだ!」
普通は祝福をするものではないのかと音月は隣の会話に苦笑しつつ、ひたすら進む。がすぐに五人のパーティーに囲まれた。
「わるいが、ここは通せないよ」
音月はこんなやりとりを十回目から、数えを諦めた。
「パーティーを組まなかったのは正解でしたよ」
いま音月がいるとこはただの平原だが、ここで行っていることは彼らに対しまさに異常としか言いようがない。なぜなら、音月たちが百人近くはあるけど、彼らを妨害するものは感覚的で千人近くはいる。そしてなにより前へ進むを邪魔するのは妨害者だけではない。乱戦の中、妨害者を見分けることは困難のゆえ、同じ前進パーティーがぶつかって戦うことはありえないことではない。そしてなによりだ、こんな成り行きのパーティーじゃ、信頼も連携も期待できないし、結束も薄い。よほどリーダーシップをもつものがなければ、パーティーは容易く崩れる。さらにそこから混乱は生まれ、個人の判断を惑わすことになる。
「それじゃ、負けちゃってもありえますね」
五人に囲まれてもなお音月は冷静さを失わない。彼が考えているのは何の技で相手を倒すだけだ。それはつまり、音月の力量は彼らを超えているということ。
その音月の横から黒いドレスを着た少女が通り過ぎた。
「先に行ってますね」
魔球の雨が目の前の五人に降り注ぐ。
「うわっ」
「なんだ?!」
一瞬にして、五人は片付けられた。
「じゃね」
赤い髪を風に流して、少女はその周りの魔球とともに進んでいった。
「まるで嵐のようですね、いえ、実際嵐かも?まっ、僕としては手間が省けましたよ。僕もそんな技を使うほうが良いですか?いや、でもなんかキャラが被っちゃいそうですし。難しいですね、個性って」
なにを隠そう、この場を潜り抜けるのは音月にとって別に困難ではない、ただ、彼は出来る限り戦いを避けたかっただけだ。でも間違わないよう、さっきの引き分けは少女の強さと彼らの拘りが実ったものなのだ。
「でも、なんだか遅れすぎると何かを逃すな気がしますからね」
さっきの爆発の故、周り視線が音月のほうに集まっていく。
「その前、通させねばならないんですね」
その時、音月の足下に何かが浮かんできた。そして、音月の周りは妨害者たちに埋め尽くされた。
「いや、やっばり手間が全然省けてないです」
そういいながら、音月は真正面の人を打ち飛ばした、素手で。その人の周りも余波を受けて違う方向へ飛んだが、音月は止まらない。彼はすぐ隣の人を捕まえて、後ろからの魔法攻撃への盾にする。
もちろん後ろからの攻撃は温いものではなし、撃った人も躊躇いを感じない。よって盾にされた人はひどくすれば死ぬことになるだろう。しかし、確かめるやつは誰も居ない、少なくともこの瞬間では。ここはこういうところなんだ。
「どれだけ綺麗な言葉を並べようと、生き物は死んでしまいます。戦闘の中は特にそう、簡単な理由だけでも彼らは命を奪われかねません。ここもそういう場所ですよ」
そして音月は走り出した。その速さに周りの人たちは驚きを隠せないが、それでも彼らは手を緩まない。魔法が得意なやつは魔法を撃つや、格闘が得意な人は音月を止めることを試す。しかし遠距離攻撃は音月を捉えられない。そして目の前の人たちを踏み台にして飛べることも出来るが、音月はあえて彼らにぶつかる。一つ目の理由はいま空中に止まるのは危険だ、いままで魔法と飛び道具は音月の速さのせいで彼を捕られなかったが、ジャンプをしたら、その限りではなくなる。二つ目はさらに敵を引き寄せる可能性があるからだ。ぶつかってすぐに慣性を利用してその人たちの隙を通って背後の位置を押さえる。
もちろんそんなことをしてる時にも背後からの攻撃は止めなかったが、妨害者たちもまた統率された軍団ではなく、誰一人も音月を止めるために、命を差し出すような真似はしたくないゆえ、すぐに彼から距離をとった。
それを繰り返して、音月は彼らを抜け走り去った。




