↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『恋愛しません!……って言ってるのに、攻略対象が近づいてきます』  作者: ルミ
第1章 恋愛しないはずの学園生活

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
83/102

その気持ちまで、隠さなくていい①

図書館へ通う楽しみが、一つ増えた。


……正確には、本以外にも楽しみができた、かな。


あれから何度か、昼休みにルシア様と顔を合わせている。

借りた本でわからなかったところを尋ねたり、授業で習った植物について話したり。


ルシア様は物知りだ。

けれど、何でもすぐに答えるわけではない。


「そこは、もう一度読んでみて」


そう言われて読み返すと、自分で気づくこともある。

わかった、と顔を上げたときに、嬉しそうに笑ってくれると、私まで嬉しくなった。


もちろん、笑われてしまうこともある。

主に、私が夢中になって話しすぎたときだ。


……だって、ちゃんと聞いてくださるんだもの。

つい、続きを話したくなるでしょう?


* * *


その日の放課後、私は図書館へ向かった。


予定していたアシェル様の個人授業が、王宮での急用で延期になったのだ。


連絡を受けたのは、午後の授業が終わる少し前。

迎えの馬車は、個人授業が終わる予定だった時刻に来る。


それまで、二時間ほどある。


……ふふ。

今日は、時計ばかり気にしなくて済みそう!


いつもの棚を抜け、窓際へ向かう。

銀灰色の髪を見つけると、自然に足が速くなった。


「ルシア様!」


声を抑えて呼ぶと、彼が顔を上げた。


「今日は、こんな時間なんだな」

「予定が変わったので。お迎えまで、ここで待つことにしたんです」

「そうか」


向かいの席へ目を向けられ、私も椅子へ手を添える。


「ご一緒してもいいですか?」

「もちろん」


鞄から本とノートを取り出す。

さっそく開こうとして、向かいの本が気になった。


「そちらは、何の本ですか?」

「古い土地の名前を調べていた」

「地名って、変わるんですね」

「君が読んでいる本にも、今とは違う名前が出てくるだろう?」

「あっ、そうでした!」


見せてもらうと、一つの森にいくつもの呼び名が書かれていた。


「全部、同じ場所なんですか?」

「そうだ」

「……本を読むだけでも、道に迷いそうですね」


呟くと、ルシア様が笑った。


「実際に行くよりは、安全だな」

「それは、そうですけど!」


つられて笑いながら、私はノートを開いた。


* * *


しばらく話したあと、それぞれの本へ目を戻した。

ページをめくる音が、ときどき重なる。


何か話さなきゃ、と考えなくてもいい。

気になることがあれば尋ねられるし、黙って読んでいても気まずくない。


……今日は、たくさん読めそう。


目を休めようと窓の外を見たとき、回廊に見慣れた姿を見つけた。


ノアだ。


隣には、一人の令嬢がいる。

書類を見せながら話しかけられ、ノアが足を止めた。


何のお話だろう。


令嬢が笑う。

ノアも、少し口元を緩めた。


胸の奥が、ちくりとした。


……まただ。


夜会でもない。

ただ、話しているだけなのに。


私だって、今ルシア様と本を読んでいる。

さっきまで、一緒に笑っていたでしょう?


それなのに、もう少し見ていたくなった。


「知り合い?」


声をかけられ、顔を戻す。

ルシア様も窓の方を見ていた。


「……ノアです」

「ああ」

「何のお話をしているのかなと思って」

「聞いてみればいい」

「聞くほどのことでも、ないんですけど」


そう答えて、少し困る。


じゃあ、どうして気になるの。

自分で自分に聞いても、返事が出ない。


「……こんなこと、気になるのおかしいですよね」


気づいたら、口にしていた。


ルシア様の視線が、私へ戻る。

私は慌てて言い足した。


「ノアが誰と話していても、普通のことなのに。私だって、いろいろな方とお話ししますし」

「うん」

「でも、楽しそうだなって思うと、少し……」


何と言えばいいのだろう。


嫌、ではない。

ノアが楽しそうなのは、嬉しい。


でも、何とも思わないわけでもなくて。


ルシア様が本を閉じた。


「寂しい?」


私は彼を見た。


「……そう、なのかもしれません」


声にすると、頬が熱くなった。


……待って。

私、本を読みに来たんだよね?


どうして、こんな相談を始めているの!?


「でも、あの方と話さないでほしいとか、そういうことではなくて!」

「わかってる」

「だったら、気にしなければいいのにって、自分でも思うんです」


ルシア様は少し首を傾げた。


「そう思えば、気にならなくなる?」

「……なりません」

「なら、仕方ないだろう」


あっさり言われ、私は瞬きをした。


「仕方ない、ですか?」

「寂しくなっただけで、誰かを責めたわけでもない」


……それは、そうだけど。


彼は私を見たまま続けた。


「楽しんでほしいと思っていても、自分といてほしいことはある」


本に添えた指が止まった。


自分と、いてほしい。


ノアを見つけると、声をかけたくなる。

面白いことを知ったら、聞いてほしくなる。


ああ。

そういうこと、なのかな。


でも、それって。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。