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『恋愛しません!……って言ってるのに、攻略対象が近づいてきます』  作者: ルミ
第1章 恋愛しないはずの学園生活

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三人寄れば、お茶会日和!

学園生活、四日目。


放課後の談話室には、柔らかな午後の日差しが差し込んでいた。


「わあ……!素敵なお部屋ですね!」


リリアが、きらきらした目で室内を見回している。


「ふふ。ここは生徒同士の交流にも使われる場所ですの。お茶を楽しむには、ちょうどよろしいでしょう?」


そう言って微笑んだのは、ローゼリア様だ。


今日は三人で、約束していた薬草のお話をすることになった。

もちろん、それも楽しみなんだけど。


実は私、三人でお茶会ができることも、ちょっと楽しみにしていたのだ。


だって、女の子三人でお茶会なんて!

前世でも今世でも、こういう時間には憧れていたんだよね。


「セレティア様、こちらのお菓子も美味しそうですよ!」

「本当だ! わあ、どれから食べようかな」

「……お二人とも、まずはお茶をいただきませんこと?」


ローゼリア様が小さく笑った。


あっ。そうでした。

私たち、薬草のお話をしに来たんだった。


「リリアさん、ご実家は薬草を扱っているんだよね?」

「はい!小さなお店なんですけど、父と母が営んでいるんです。私も昔からお手伝いしていて」


リリアは嬉しそうに話し始めた。


季節によって採れる薬草の違いや、乾燥させると香りが変わる葉のこと。


私は思わず身を乗り出した。


「へえ!同じ薬草でも、保存の仕方でそんなに違うんだ!」

「そうなんです!特に湿気には気をつけないといけなくて」

「それは興味深いですわね」


ローゼリア様も、静かにカップを置いた。


「わたくし、薬草は書物で学ぶことが多いのですけれど、実際に扱う方のお話は新鮮ですわ」

「そ、そんな!ローゼリア様にそう言っていただけるなんて……!」


リリアが慌てて背筋を伸ばす。


「どうぞ、楽になさって。今日はお勉強ではなく、お茶会ですもの」


ローゼリア様は優雅に微笑んだ。


……うん。

やっぱり、素敵な方だなぁ。


最初は少し近寄りがたい雰囲気があったけれど、こうして話してみると、とても優しい。

それに、リリアのお話を聞く目が真剣だ。


「そういえば、ローゼリア様はどんなお花がお好きなんですか?」


私が尋ねると、ローゼリア様は少し考え込んだ。


「そうですわね……白い鈴蘭が好きですわ」

「鈴蘭!」

「ええ。小さくて可憐でしょう?けれど、見た目とは違って毒もあるのです」

「そうですね。鈴蘭は扱いに注意が必要です」


リリアが頷く。


「わたくし、そういうところも含めて、興味深い花だと思っていますの」

「なるほど……!」


綺麗なだけじゃなくて、ちゃんとその性質まで知っているんだ。


「ローゼリア様って、お花のことも詳しいんですね!」

「そ、そこまでではありませんわ。ただ、昔から植物の図鑑を眺めるのが好きでしたので……」


ローゼリア様が、少しだけ頬を染めた。


あれ?

照れてる?


「私も図鑑、大好きです!」


リリアがぱっと顔を輝かせる。


「特に、まだ見たことのない植物が載っていると、いつか実物を見てみたいなって!」

「……わかりますわ」


ローゼリア様が、思わずといった様子で身を乗り出した。


「本では色まで正確に伝わらないことがありますもの。実物を見られたときの嬉しさといったら……!」

「そうなんです!それに、珍しい薬草の中には、乾燥させると葉の色が変わるものもあって……!」


リリアが夢中になって話し始める。

けれど、途中ではっとしたように口をつぐんだ。


「あっ……! 申し訳ありません。私ばかり話してしまって……」


すると、ローゼリア様が首を横に振った。


「謝ることなんてありませんわ。……もっと聞かせてくださる?」

 

「……はい!」


リリアの顔が、ぱっと明るくなった。


「実は、うちのお店でも扱っている薬草なんですけど……」


再び楽しそうに話し始めたリリアに、ローゼリア様も嬉しそうに頷いている。


二人の声が弾んで、ふと顔を見合わせた。


「……ふふっ」

「あはは!」


つられるように、私も笑ってしまった。


なんだか、嬉しい。

少し前までは、三人でこんなふうに笑い合えるなんて思っていなかったから。


「セレティア様?」


ローゼリア様が、不思議そうに私を見る。


「どうかなさいまして?」

「ううん。二人とも楽しそうだなって思って!」


そう答えると、ローゼリア様が一瞬、目を見開いた。


「……そう、ですわね」


それから、ふわりと微笑む。


「わたくしも、とても楽しいですわ」


その笑顔があまりに綺麗で、私は思わず見惚れてしまった。


……ローゼリア様、笑うとこんなに可愛いんだ。


「私もです!」


リリアが嬉しそうに身を乗り出す。


「最初はすごく緊張していたんですけど、今はお二人ともっとお話ししたいなって!」

「私も!」


思わず即答してしまった。


ローゼリア様が、また小さく笑う。


「……お二人とも、本当に素直でいらっしゃるのね」

「えっ?そうかな?」

「ええ。少し、羨ましいくらいですわ」


その言葉は、とても小さかった。

けれど、どこか優しい響きがした。


しばらくして、テーブルの上のお菓子がすっかり少なくなった頃。


私は、ふと思いついた。


「あっ、そうだ!」


二人がこちらを見る。


「今度、よかったら私のお家に遊びに来ない?」

「えっ!?」


リリアが目を丸くした。


「セレティア様のお屋敷に、ですか!?」

「うん!もっとゆっくりお話ししたいし、お庭も案内したいなって」


それに、お母様もきっと喜ぶと思う。


……あ。

もちろん、お父様にも先に相談しないとね。


「ローゼリア様も、よかったら!」

「……わたくしも、ですか?」

「もちろん!」


ローゼリア様は、なぜか少し驚いた顔をした。

そして、カップに添えていた指をそっと離す。


「……ぜひ、お伺いしたいですわ」


その声は、いつもより少し柔らかかった。


「やった!」


私は嬉しくなって、両手を合わせた。


「それじゃあ、家族に相談してみるね!」

「わあ、楽しみです!」


リリアも嬉しそうだ。


そうだ。忘れちゃいけない。


「それに、我が家にはとっても可愛い猫がいるんだよ!」

「猫、ですか?」

「うん!ルゥっていうの。毛並みがすっごく綺麗で、ふわふわで……!」


思い浮かべただけで、頬が緩んでしまう。


「まあ……!」


ローゼリア様の目が、きらりと輝いた。


「猫ちゃんもいらっしゃるのね」

「ローゼリア様、猫は好き?」

「……ええ。実は、とても」


……おおっ!

今日一番の食いつきかもしれない!


「じゃあ、ルゥにも紹介するね!」

「楽しみにしておりますわ」


ローゼリア様が、嬉しそうに微笑んだ。

その隣で、リリアも笑っている。


私は二人の顔を見比べて、胸がぽかぽかするのを感じた。


学園生活が始まって、まだ四日目。

だけど、こうして一緒に笑える人が増えていくのは、なんだかとても幸せだ。


……ふふ。

今度のお茶会も、楽しみだなぁ。

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