第4話ぶたれた頬より義姉の心が痛そうだったので、一時同盟を組みます
無理にこじ開けるのも、どうかと思ってそっと手を離した。
「あぁ、もうふざけてんじゃないわよ!」
扉の前で、私は腫れた頬を撫でながらため息をついた。
怒るつもりはなかったが、あまりの不器用さに呆れと苛立ちが湧いてくる。ほっとけば間違いなく殻に閉じこもるタイプだ。前世でもこういう頑固な後輩がいた。
「開けないなら、お義父さまに『レイカお姉様が部屋で大泣きしてます』って報告し
に行くわよ」
ーーガチャン。
効果は覿面だ。目元を真っ赤に腫らしたレイカが、そっと扉を数センチだけ開けて覗き込んできた。
「....なによ。私を笑いに来たわけ?」
「まさか。ぶっ叩かれた被害者がわざわざ笑いに来るわけないでしょ」
ズカズカと部屋に入り込むと、レイカは気まずそうに視線を泳がせた。
私は極力刺激しないようにレイカと目線を合わせた。
「なんで私を叩いたりしたのですか?」
「別に、今までと一緒よ」
確かに間違ってはないけどさぁ、違うんだよぉ。水をかけられたりはしたけど、今まで暴力とかは振るって来なかったのに今回それが起こった理由を聞いてるのよ。
「今までと全く一緒だったんですか?」
「…」
レイカは黙り込んでしまった。自分自身で反省しているようだった。
「分かっているのならいいんですよ」
「なんなの。何が望みなの?」
「望みなんてないですよ。強いてゆうならあまり水をかけたりして欲しくないですね。次女たちに迷惑がかかっちゃうので」
「…」
あれ?何か触れちゃったかな?俯いて黙り込んでしまった。
人それぞれ怒るとき、悲しくなる時のタイミングは違う。私も前世で新社員の時よく上司の地雷を片っ端から踏んだものだ。
「あなた本当に変わったわね」
「そうですね」
そりゃあ、中身自体が変わってるのでね
「私は、あなたのことが嫌いよ」
「そうですね」
これはまた正直なこと。知ってたけど、改めて言われるとグッと心が抉られていく感じがする。
「あなたのことが大っ嫌いなの」
「そうですね」
できたらそれ以上言わないで欲しい。私はこの小説が好きだし、れいかのことも好きだから、そんなこと言われたら悲しいよ〜!
この気持ちを崖の上で白波が立つ中叫びたい。
「怒らないの?こんなことを言っているのに」
「怒りませんよ。悲しいですけど」
「じゃあ、言いなさいよ。言いたいことは言うって言ってたくせに本当に馬鹿じゃないの?」
あー言ったような、言ってないような?よく覚えてるねそんなこと
「今はレイカお姉様のターンなので何でもぶつけて、私がその話を聞くターンです」
「本当に何言ってんの?」みたいな顔をされたが、もうツッコミには疲れたらしい。
「遠慮なく言うけどいいの?」
「もちろんです!」
レイカは深呼吸したタイミングで色々と今までの出来事やその時の思いを私に教えてくれた。
小説である程度の状況は理解していたけど、心情まで詳しく描かれていなかったから、よりレイカのことを知れて嬉しかった。内心はとてもレイカのことを知れて、嬉しくて舞い踊っていた。
◇
「要するに、『めんどくさい社交界には出たくないけどお父様せいで行かなければならない』と」
「そんな風に言ってないわよ!」
「あーはいはい。『お父様に認めて欲しいけど、自分に自信がないから社交界が怖くて、八つ当たりしちゃいました』ってことね」
「そこまで言ってないわよ!!」
「えー!怖いから手伝って欲しいって!しょうがないな〜」
「どうやってそう解釈したのよ。呆れてくるわ」
「だったら、屈強なメンタルと対話術を教えましょう!」
「勝手に話を進めないでもらえます?」
「アー、ワタシシャコウカイノコトシラナイナー」
「タスケテクレナイカナー」
「それが本題なら、本当に呆れるわ」
「え〜。でも慰めたかったのは本当だよ」
レイカの涙も引っ込んできてくれて一安心してきたものまた、本当である。
「社交界のマナーなら教えてあげられるけど、あなた本当にそ対話術とか私に教えられるの?」
「任せてください!得意なので!」
「その自信はいったいどこからくるのよ」
結果的に私たちは社交界で助け合う同盟を組んだのであった。
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