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勇者大戦マグナレイド  作者: 青木のう
第3章 Cat & Mouse
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第28話 追跡者

「「佐々レイラ!」」


 入店してきた女性に、マグナとケンジは二人して立ち上がり叫ぶ。

 キュッとつり上がった目が、きつそうな性格の印象をあたえる女性だ。まあ実際の所、それは印象ではなくて事実なのだがとマグナは思う。


 彼らが同時に反応したのにはわけがある。彼女もまた、彼らと同じく元三年二組の生徒だからだ。三年を経て少女から女性になったとは思うが、おおまかな感じは変わらない。


「……?」


 佐々レイラは、突然自分の名前を呼ばれて驚いたような表情をしてみせると、マグナ達の方を向いてまた表情を変えた。


「あら? 誰かと思えば松平に……あんたは誰よ?」


 あんたというのは前野ケンジのことだ。だいぶ風体の変わったケンジの姿を観察すると、さっぱりわからないといった具合に首をかしげる。


「OH、お忘れかいYOU? オレは前野ケンジエーケーエーマッケンジー!」

「エーケー……? ああ、あんた前野なのね。あんたこんなに馬鹿っぽいやつだっけ?」


 彼女は前野ケンジの変わりようにさほど興味がないのか、「はいはい」と流して呆れた顔をする。一方のマグナはというと、佐々レイラを警戒し考えを張り巡らせていた。


(佐々レイラ……ここに現れたのは偶然か? いや、あいつは入店した時に「やっと見つけた」と言っていた。だとすれば……)


 気のせいではない。確かにそう言っていたはずだとマグナは確信する。

 彼女は誰か、もしくは何かを探してこの場所に現れたのだ。

 店の中には店主を除けばマグナ達しかいない。つまり狙いはマグナ達。


 彼女は前野ケンジをぱっとわからなかった。それが演技ではないとすれば、マグナを狙った可能性が高いことになる。しかし彼女はマグナの存在にも驚いているように見えた。だとすれば彼女が入店して最初に目線をやった人物は――。


「動かないで!」


 レイラの鋭い声が飛んだ。

 その相手は、彼女が入店して最初に目線をやった人物であり、レイラがケンジと話しているのを隙と見て、店から出ようと静かに出入口付近まで移動していた人物だ。


 レイラの声に、その人物は長い耳をピコピコと動かしながらも身体を硬直させる。

 そう、その人物とは(エルフ)種の女性で、ちょっと前まで料理をバクバクと平らげていた存在。ヴィヴィだ。


「まったく、やっと見つけたのにこれ以上手間をかけさせないでちょうだい」

「佐々、お前はヴィヴィを狙ってここへ来たのか?」

「ヴィヴィ? ああ、今の彼女の名前ね。そうよ、私はさる人物からの依頼を受けて、この子を回収しにきた」


 ヴィヴィはおそらく脱走奴隷だ。つまり佐々レイラは、ヴィヴィの元の主人から彼女の捕縛を依頼されたのだろう。行き場所のない勇者が傭兵もどきをするというのは、川尻マサヤや稲葉イオの例をあげなくてもマグナにはわかる。


 その当のヴィヴィはというと、すがるような目をマグナへと向けていた。一歩一歩と近づく佐々レイラに怯えながら、自身の自由が無くなる恐怖を顔に出していた。その口が「助けて」と動いた様にマグナには見えた。


「待て、佐々」

「……? 何よ松平、言っとくけど面倒だから邪魔をしないでよ? 旅の仲間だから連れて行かないでって感傷に訴えるつもりかしら?」

「仲間だからというのもある。だがそれ以上に、ヴィヴィは俺の目的に必要な存在だからだ。彼女がいないと俺の計画に支障がでる。だから連れて行かせはしない」


 このサルディアにまでたどり着いたのも、ヴィヴィの魔錬機(マギティファクト)の知識と魔法によるものだ。いま彼女を失うことは、マグナにとって大きな痛手だった。


 マグナの言葉を受けて、佐々レイラは邪魔されたことに怒ったのか、それとも言葉の意味を変に解釈したのかはしらないが、元々ツリ目がちな目をさらにつり上げて、キッとマグナを睨んで見せた。そして右手をしなやかに掲げる。


「……そう、邪魔をすると言うのなら。舞え――」


 ビリビリとした空気を感じた。殺気だ。


「――(ラム)!」


 風を切り裂く音が聞こえた。だからマグナは、咄嗟に身をかがめた。

 その瞬間だった――。


 何か金属のようなものが、店の壁を突き破って飛んできたのだ。

 必死に観察して見ると、それは折れたカッターナイフの刃のような形をしていて、自在に空中を飛び回り店の椅子だとかテーブルだとかを切り裂いて回る。


「ブラザー、佐々レイラのギフトだYO!」


 ぎゅんぎゅんと風を切り裂く音に混じって、前野ケンジの叫びが聞こえた。

 言われなくとも攻撃を受けている以上、それが彼女のギフトというのはわかる。マグナは目線をやってテーブルの下に隠れたセルマとクレアの無事を確認しつつ、レイラのギフトを思い出す。彼女のギフト、それは――、


「――地属性魔法相当の磁力操作……!」


 その言葉を発するのと、佐々レイラの攻撃が止まったのは同時だった。


「そう、おバカなあんた達でもおわかりかしらこの力? 今のは警告、わざとはずしただけ。これ以上逆らうなら、こう」


 レイラはそう言って、自分の首に手をトントンと当てた。

 彼女のギフトは磁力を操る。なんらかの地属性魔法で固めた地中の金属から造り出した金属製の刃をその能力をもって操作する。それが佐々レイラの戦闘スタイルだろう。


「わかるわよね? 即座に首がさようなら。私は仕事が済めばそれでいいし、昔の馴染みで見逃してあげるから、そのまま這いつくばっていなさいな」


 言いたいことは終わったと、レイラはヴィヴィを連れて店を――と言ってももう既に壁もないくらいに壊れているのが――出て行こうとした。だからそれを阻止したいマグナは――立ち上がり駆けだした。


「フン、おバカね。舞え――(ラム)


 ふよふよと浮かんでいた刃が、空中に大きな弧を描いてマグナへと迫る。その行き先はそう――彼の首だ。もちろん食らえば即死は必定。しかし軌道がわかっているからこそ、できることもあった。


「《武器錬成》――〈雷切〉ッ!」


 マグナが作り上げたのは雷を切る刀。〈マグナレイド〉の時に作り上げたものと違って、当然人間サイズだ。彼はそれをもって、迫りくる刃をはじき返した。強い衝撃を受けながらも、身を守ることに成功する。


「――松平! 無能勇者のあんたがなんでそんな芸当を!?」

「話せば長い! ヴィヴィを返してもらうぞ!」


 レイラが驚愕に目を見開かせた隙をついて、マグナは駆け寄りヴィヴィへと手を伸ばす。彼女はぎゅっと、マグナの胸元に抱き着いた。柔らかな感触を感じるが、それを喜んでいる暇はない。佐々レイラは彼らを逃がすつもりはない。


「《雷撃》!」

「くっ……今度はセイラのギフト!? あんた一体……?」


 得意の《雷撃》を放つも、その雷光は体勢を立て直したレイラの刃に防がれてしまった。

 佐々レイラのつぶやいた言葉に、彼女が瀬名セイラと出席番号が連続していて名前も似ていたために、二人が仲良かったことをマグナは思い出した。


「逃がすもんですか! 舞い踊れ――(ラム)たち!」

「くそっ……!」


 レイラの力の高まりを感じた。すると彼女は新たに二枚の刃を作り上げ、合計三枚となった刃をマグナへ差し向けてきた。空中を不規則に動く三枚の刃を受け止める術は、マグナには存在しない。


「さあ、後悔はあの世でなさい!」


 三枚の刃が一斉にマグナへと向かい、その身体を細切れに切り裂いた――。

 もくもくと舞い上がる土煙が、いかにその衝撃が激しかったかを伝える。


「ふん、この私に歯向かうから三枚おろしになるのよ」

「本当にそうなのかYO?」

「なんですって……? いない!?」


 ――いない。

 土煙がおさまると、そこにあるはずのマグナの細切れの死体がなかった。

 レイラはハッと気がついて、前野ケンジの方を振りかえる。


「まさか――前野、あんたのギフト!」

「そうだYO。YOUが切り裂いたのは《陽炎》の幻影」

「じゃあ松平はどこに!?」

「ここだ!」


 そこはレイラにとって完全に死角となっていた方向だった。その方向からマグナは、佐々レイラに蹴りをお見舞いする。激しい衝撃を受けて、レイラは地面を転がる。


「さっきのお礼だ、刀では斬らなかった。だから退け、佐々!」

「くぅ……バカにして……! こうなったら!」


 レイラはそう叫ぶと、何か魔法を放った。

 すると次の瞬間、上空に何か巨大な物が現れた。魔錬機だ。


「私の《磁力操作》にはこういう使い方もある。さあ私の〈凶鳥烈女(ハルピュイア)〉が相手をしてあげるわ!」


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