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勇者大戦マグナレイド  作者: 青木のう
第2章 After 3 years
24/49

第24話 勇気の証明

「はあはあはあ……、あらかた片付いたか?」


 空腹の状態で魔力を大量に放出したからか、全身に疲れを感じる。

 《雷撃》によって敵を焼き払い、感電している隙をついて近接戦をしかけて始末した。もう〈マグナレイド〉の敵となりそうな相手は残っていない。


「よし、今のうちに逃げよう。皆は〈マグナレイド〉の掌に――」

(待てマグナ、そう簡単に逃がしてはくれないようだ)

「――新手!? 稲葉さんか!」


 ほとんど直感的にそう叫んだ。

 暗闇の中からぬっと出現したのは、まるで着物をまとった女性のようなフォルムの魔錬機(マギティファクト)だ。その機体から、魔力通信の声が響く。稲葉イオの声だ。


「黄色の魔錬機、お名前は?」

「〈マグナレイド〉だ」

「そう、それが松平君の……。その機体、渡すつもりは?」

「悪いが断る」

「そうですか。であればその機体、この私の〈毒蔦花弁(アルラウネ)〉が捕縛してみせます」


 その言葉と共に、戦いは静かに始まった。

 一歩、二歩、お互いに出方を窺いながら間合いをはかる。

 最初に動いたのは、長刀〈雷切〉を右手に構えた〈マグナレイド〉だった。


「悪いが俺はここで負けていられないんだ!」

「それはこっちだって同じ!」

「稲葉さんのギフトはこういう接近戦には無力なはずだ!」

「ギフトを持たない勇者が私を見くびらないで!」


 マグナは斬りかかり、イオは受け止めながらも問答する。

 そんな中《毒蔦花弁》の装甲が、まるで花開くように展開していく。


(何かくるぞ!)

「わかっている! ――チッ!?」


 危険を感じて跳躍するも、間に合わなかったのか鋭い痛みを右腕に感じた。

 何かの液体が〈マグナレイド〉に付着している。


「どうかしら? 『酸』の味は? 《薬物生成》ならこんなこともできる」


 花のように開いた二枚の装甲が、まるで植物の茨かムカデの様にウネウネとそれぞれ稼働している。先端には発射口のようなものが見える。そこから生成した薬品を放出したのだ。


「厄介だな……!」

(ああ、だがやれない相手ではないだろう?)

「もちろん! 合わせろレイド、《雷撃》!」

「キャ!?」


 ()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()

 彼女の知るマグナは無能勇者であるし、先ほど魔法を放った時彼女はまだ到着していなかった。その錯誤が彼女の対応を一瞬遅らせた。


 激しい稲妻の光を見たイオは、無防備な状態をつくってしまう。その隙をマグナはつく。彼は〈雷切〉を地面に突き刺すと、新たな魔法を唱えた。


「《武器錬成》! おらあああッ!」


 創り出したのは槍だ。それを槍投げの要領で投擲する。気づいたイオは『酸』を生成して溶かそうとするがもう遅い。威力はたいして減衰しないまま、茨の様なアームを射抜く。


 続けてもう一本投擲。魔錬機〈毒蔦花弁〉は、あっという間に無防備な姿をさらした。


「どうして!? その《雷撃》は瀬名さんの、《武器錬成》は川尻君のギフトだったはず! なんで松平君が!? まさか奪った!?」

「そうなのかもそれない……だが、恥じるような生き方はしていないッ!」


 マグナがなぜ二人のギフトを使えるのかは自分でもわからない。

 殺して奪っているのなら、セイラのギフトが使えるのはおかしい。

 信頼関係のようなもので受け継いでいるのなら、川尻のギフトを使えるのはおかしい。

 二人と違いギフトを得ることができなかった、柴田、平手、金森の三人はどうなのか?


 つまりわからない。

 わからないが、少なくともこの能力のおかげで彼は生き残る事ができている。


「こんな世界に連れてこられて、わけのわからない勇者なんてものにされて、おまけに連れてきた国は滅びて彷徨うことになって、どうして松平君はそんなにまっすぐな事が言えるの!?」

「俺だってこの世界に来て無能なんて言われて、散々な目に遭った。でもそんな俺を真の勇者かもしれないと言ってくれた人がいたんだ! だから俺は戦えるし、自分を見失わないでいられる!」

「そんなの……そんなの私には無理だった。皆とはぐれて、一人で生きて行かなくちゃいけなくて、拾ってくれた親切なお婆ちゃんも病気になって、それでも生きる為にお金が必要で……」


 稲葉イオは堰を切ったように吐露する。

 誰にも言うことができなかった。誰にも相談する事ができなかった。彼女もまた、松平マグナと同じく孤独にこの地獄の様な世界を生き延びるために戦ってきたのだ。


「元の世界の時は地味でも幸せになれればいいと思っていた。大好きな本を読んで、公務員みたいな人の役に立つ仕事をして、それでいつかはそんな私にも素敵な出会いがあって……。でも私はもう違う! お金の為に、自分の為に、沢山の人を食い物にしてる! もう私は悪い女なの!」

「だとしたらどうする!? 断罪してほしいのか? 稲葉さんは殺されたいから俺を解放したのか!?」

「違う! 私は松平君を倒して、その魔錬機を売り払って、それでもっとお金を手に入れて、幸せになって、それで私の歩んできた道が間違いじゃない事を証明してみせるッ!」


 《毒蔦花弁》が――稲葉イオが向かってくる。既にボロボロだ。茨を破壊した以上、ほとんど戦闘能力はないと言っていいだろう。しかし向かってくる。向かってくる以上、彼女は元クラスメイトではなく壁だ。敵だ。


 壁が立ちふさがる以上――敵が迫る以上、マグナはそれを排除しなければならない。

 なぜなら彼が瀬名セイラとした約束を果たす為には、ここで立ち止まるわけにはいかないからだ。だから地面に刺さる〈雷切〉を引き抜き、天へと掲げた。


「雷雲よ、稲妻よ、貫け! 《雷光一閃》ッ!!」



 ☆☆☆☆☆



「マグナ、長時間《融合》しているけれど大丈夫? 疲れてない?」

「正直結構疲れているよクレア。もう少し距離を稼いだら、そこで休憩にしよう。それまでは持つはずだ」


 〈マグナレイド〉は夜明けの近い平原を疾駆する。

 掌の上には、クレアにセルマそれからヴィヴィ。

 奴隷商会の魔錬機を撃破した彼らは、セカンダの街へ向けて進んでいた。


(マグナ、何故《毒蔦花弁》にとどめを刺さなかった?)


 そんな中、心の中でレイドが問いかけてきた。

 あまり皆に聞かせたい話でもないので、マグナも心の中で念じる。


(とどめを刺した方がよかったか?)

(いいや、そういうわけではない。しかし彼女は自分で語ったように、あの川尻マサヤと同じく多くの悪行に手を染めていたはずだ。真の勇者を目指す君ならば、打ち倒すと考えるのが当然だろう)

(確かに奴隷制度に俺の倫理観はノーを突きつける。他人を動物みたいに扱うなんて、受け入れがたい。けれど――)

(けれど?)

(けれど、奴隷制度は武国では()()だ。稲葉さんは何も法に触れていない)


 バルディア武国において、奴隷制度は違法ではない。

 借金や戦争での捕虜など奴隷に堕ちる理由は様々であるし、中には奴隷狩りに捕まった哀れな者もいるが、制度としては合法だ。それで一つの経済を動かしている。


(俺がしたいのは世直しじゃない、成りたいのは独善的な正義の執行者じゃない。稲葉さんだって必死に生きた結果ああいうことをしているだけだ。それでも断罪を望むのであれば、それは俺ではなく彼女自身がするべきだ)

(そうか。私自身、君が自らの力を誇示して自分勝手な正義に走る人間なら協力してなかっただろう。君が殺さなかったのは勇気ある行動だ。救うことで勇気を証明した。これからも共に戦おう相棒よ)

(ああ、頼むぞ相棒)


 本当のところ一心同体のレイドには、マグナの心の内なんて全てわかっていたことだろう。しかしあえて言葉を交わすことを選択した、魔錬機の相棒にマグナは感謝した。


「マグナ、あそことか休憩に良さそうじゃない?」

「そうだなセルマ、あそこにしようか」

「やった! じゃあみんなでご飯ですね!? 私もうお腹ペコペコですッ!!」


 戦乱の地であるガルダナ大陸。ここでは日々多くの命が奪われ、多くの者が選びたくない選択をしながらも必死に生きている。そんな地獄の様な地で、松平マグナは勇気を示そうとしていた――。


読んでいただきありがとうございます!

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第2章 了

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第3章【2月15日】開始予定

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[一言] イオが毒マニアなJK、元JKだったら危なかった
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