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勇者大戦マグナレイド  作者: 青木のう
第2章 After 3 years
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第17話 望まぬ再会

「行けえ! やっちまえ!」


 敵の魔錬機(マギティファクト)と対峙するマグナの耳に、怒鳴り散らす男の声が聞こえる。見ると村の中央に、一際豪華な装飾品を身に着けた山賊の男がいる。


「あいつが頭目か」

(そのようだな。だが先に魔錬機を対処すべきだろう)

「わかっている!」


 頭目まではやや離れている。先に魔錬機を対処しなければ背後をつかれる。マグナは一気呵成に敵魔錬機へと接近する。


「そこだ!」


 振り下ろされる棍棒を避け、刀を跳躍し、逆にこちらの刀をすっと入れる。スムーズに動かされた方によって上半身と下半身とが分かたれ、砂埃を上げて地に墜ちた。


「次ッ!」


 そのまま後方に蹴りをいれながら振り向く。勢いのついたキックは〈死食鬼〉の頭部にまともにヒットし、体勢を崩させる。後は簡単だ。そのまま刀をもう一度振るえばいい。いくら山賊が使うなまくら刀といえども、〈マグナレイド〉の膂力を用いればまるで豆腐を切るようだ。


 立ちふさがった三機の魔錬機は、瞬時に〈マグナレイド〉の前にスクラップと化した。もちろんレイドのサポートによるところもあるのだが、この三年でマグナも心身ともに鍛え上げられていた。その前には木端の山賊なんて障害にもならなかった。残るは――。


「さあ、観念しろ」

「ヒ、ヒイイ!」


 マグナが叫ぶと、頭目は顔を青ざめさせみっともなく這いずり回った。手下たちも我先に逃げようとする。


「逃がすか――」

「せ、先生えええっ!」


 マグナが動こうとしたのと、頭目が悲鳴のように絶叫したのは同じタイミングだった。それに呼応してか、一機の()()()()()()()が〈マグナレイド〉の前へと立ちふさがった。頭には水牛の様な角がある。


「先生、どうかお願いします!」

「ちっ、使えねえやつらだぜ!」


 頭領が拝み倒す牛角の魔錬機から声が聞こえた。まだ若い男の声だ。

 その声を耳にした瞬間、マグナの脳は揺さぶられた。聞いたことがある――いや、聞いたことがあるなんてものじゃない。この三年、その名はマグナの中でイライジャ・イオラオスと同じくらい煮えたぎる激情の対象だった。どこかで野垂れ死んだと思っていた。けれどこいつは――。


「お前……、川尻マサヤなのか……?」

「あん? 俺の事を知って……その声、まさか無能野郎の松平マグナか? ……へえ、てめえでも動かせる魔錬機があったんだな。補助輪でもついてんのか?」


 牛角の魔錬機――川尻マサヤはマグナの方へと向き直ると、心底馬鹿にした口調で答えた。マグナはあふれ出しそうな激情を抑えながらも、問答を続ける。


「川尻、なんでお前が山賊に――いや、なんでセイラを見捨てて逃げたんだ! お前が逃げたせいでセイラは! セイラは……!」


 あの戦いの最中、柴田、金森、平手の三人が〈紅艶魔王(アスモデウス)〉によって殺害されると、恐ろしくなった川尻はセイラを囮にして逃げ出したと言っていた。もし彼が逃げ出さずマグナの到着まで待つことができていれば、セイラの運命は変わっていたかもしれない。


「セイラ? 瀬名は死んだのか?」

「ああそうだ!」

「そいつはご愁傷様。けれど瀬名も馬鹿だな、あんな化け物に(かな)うわけないのに。賢い俺様は逃げたんだよ」

「お前……!」

「俺を恨むのか? だとしたらそいつは筋違いだ。第一、お前はあいつに勝てたのか? 勝てなかったから瀬名は死んだんじゃないのか?」

「それは……」

「だとしたら俺と変わらねえじゃねえか」


 マグナはイライジャに勝てなかった。それどころかセイラの犠牲によって命をつないでいる。それは彼女を犠牲にした川尻と変わらないように思えて、図星をつかれたようでマグナは言葉に詰まる。


「で、なんで俺が山賊しているかだったか? そんなの決まってやがる。全てが手に入るからだよ!」

「全て……?」

「ああそうさ! このクソみたいに素晴らしい世界にはルールなんてものがねえ。“力”を持っている奴が正義だ。金も、女も、“力”があればなんだって手に入る! そして俺にはギフトっつう“力”がある。へへ、異世界で大暴れなんて根暗野郎の妄想だと思っていたが、案外悪くねえじゃねえか」

「ペラーザの山賊が急に力をつけたのは……!」

「その通り。雅国を脱出した俺が、使えねえ山賊共に力を貸してやったからさ!」


 川尻は〈単眼機(サイクロプス)〉を乗り逃げした。最初に一体の魔錬機、それも勇者が乗り込む機体があれば、戦場漁りをしなくても小規模の基地を襲って壊滅させることは可能だっただろう。だからこそ複数の魔錬機を運用できた。


「そうして築きあげた俺様の軍団を、よくもてめえは……! ふ、まあいい。なあ松平、俺の下につく気はねえか?」

「なに?」

「まったくの無能だと思っていたが、今のてめえは魔錬機を使える。俺の靴を舐めるってんなら手下にしてやらんこともない。どうだ? 美味い飯は食い放題、女は犯し放題、なんだって好きにし放題だ」


 中川あたりならともかく、特にマグナの心には響かない誘い文句だ。それは考えるまでもなく、炎に包まれた村――この地獄のような光景を見るだけでも明らかだ。


「俺がイエスと言うと思ったのか?」

「あん? 俺の魔錬機〈牛頭鬼(アステリオス)〉を見ろ。お前のへなちょこはかなわねえよ」

「へなちょこじゃない、〈マグナレイド〉だ。お前らは俺を受け入れてくれた村を燃やし、俺の恩人を傷つけ、俺が大切にしている子たちを泣かせた。お前をぶん殴る理由はあっても、仲間になる理由はない」

「そうかよ……なら死ねや!」


 叫ぶやいなや、川尻の駆る〈牛頭鬼〉が突進してくる。手には大振りの刀。


(マグナ、敵の魔錬機が来ているぞ!)

「わかっているレイド! ――ぐっ!?」


 脳内に警告の声が響く――そして瞬間、敵機の刀の切っ先がこちらをかすめた。かすめた右肩に鋭い痛みを感じる。重装型だと言うのに動きが早い。来るとわかっても対応できなかった。


(次が来るぞ!)

「ああ、だが攻撃は見切った!」


 マグナは刀を振るうと、そのまま振りかぶってきた敵機の腕に一撃。その握った刀ごと右腕を斬り飛ばした。〈牛頭鬼〉はたまらず距離を取り追撃を防ぐ。


「てめえマグナ! 無能勇者のくせにやるじゃねえかッ! だが俺がなんて呼ばれているか、お前も知っているよなあ?」

「“武器の勇者”……!」

「正解ッ! 《武器錬成(ぶきれんせい)》!」


 瞬間、何も握っていなかったはずの〈牛頭鬼〉の左腕にはトゲトゲとした凶悪な形のメイスが握られ、そしてあろうことか斬り飛ばしたはずの右腕も再生し、その手にも同様のメイスが握られた。


「再生……!? 魔錬機自体もか!」

「その通り! この俺の力も以前より高まっているんだよ! オラアッ!」


 攻守逆転。連続して振り下ろされるメイスをマグナは懸命に回避する。マサヤの攻撃に、かつてクラスメイトだったという情は全く感じない。ただ存在するのは明確な殺意だけだ。


「どうだ“無能勇者”ァ? この“武器の勇者”様の攻撃は!」

「ぐっ……!」

(マグナ、このままではまずいぞ!)

「わかっている!」


 そう答えながら、マグナは脳内に逆転の策を思い浮かべる。一心同体のレイドならこれで理解できるはずだ。


「終わりだア、無能野郎ッ!」


 〈牛頭鬼〉が迫る。「まだだ。まだ。ビビるなよ俺」とマグナは自分に言い聞かせる。まだ遠い。あと少し。川尻が勝利を確信して腕を大きく振りかぶる――その隙を彼は待っていた。


「《雷撃》ッ!」


 ――刹那、〈マグナレイド〉の右腕から一筋の雷光が激しい光とともに迸り、〈牛骨鬼〉へと直撃した。


「ぐわっ!? 何だ、魔法だと!?」

「ああそうだよ。お前も当然知っているよな? 風属性魔法の《雷撃》。どうだ? 痺れたか? 痺れただろう? 痺れるよなあ!?」

「な、なんでお前が魔法を!? それにその魔法は、瀬名の……! ぐおっ!?」


 稲妻によって痺れ動揺した川尻の乗る〈牛骨鬼〉に、マグナはすかさず足払いをして組み伏せる。手には再び刀を握った。その切っ先を〈牛骨鬼〉の操縦席のあたりに突きつけた。


「気になるよなあ? なんなら俺自身不思議だよ。……試してみるか?」

「な、何を……!」

「俺の能力をだ! 俺が戦場で死肉を食らう死体漁り(スカベンジャー)なのか、はたまたこの勇者大戦なんて馬鹿げた戦いを終わらせる“真の勇者”なのかを、お前の命を使って!」


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