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239話 暗愚二代


 ライアン爺さんの協力を得た俺たちは、当初の目的をほぼ達成することができていた。


 ギルドで売ろうと思っていた樹海産の素材はライアン爺さんの商会で全て買い取ってもらえたし、食料などの準備も任せることができてしまった。


 また、反乱に関する情報もかなり分かったのだ。


 やはり、北部の軍勢の数は少なく、少数精鋭で王都へと攻め上がったそうだ。


 その際、白い翼を持った神の御使いが反乱軍の味方をしたことで、相手は大混乱に陥ったらしい。


 それだけではなく、ドラゴンやワイバーンを反乱軍は使役しており、少数でも凄まじい強さを発揮したそうだ。


 確実にユイの力だろう。


 様子見をしていた北部の領主たちも、それによって反乱への参加を決めたという。


 少数で連戦連勝してしまう強さにもそうだが、神々しい姿の天使が手を貸していることも余程衝撃だったらしい。


 蜂起してからは、圧倒的な力で進軍を続けていた反乱軍だったが、現在は王都の直前の町を拠点として、国軍と睨み合っているようだ。


「南部の領主たちも反乱に対して軍の派遣を始めており、このままでは反乱軍が不利になると思われるのですが……」

「それでも反乱軍は動こうとしないのか?」

「はい。どうやら、手に入れた食料を北部の各地へと送ることを重視しているようですな」


 まあ、大義名分のためにも、北部への支援は疎かにできないってことなのだろう。


 このフーラも一応反乱軍の勢力圏ではあるが、あまり変化はないらしい。領主であるフール伯爵も反乱軍に参加しているはずだが、兵力も物資もさほど供出していないからだろう。


 また、食料不足も深刻ではなく、反乱軍からの食糧支援も送られてはこない。


 結果、いつもと変わらない生活が続くせいで、戦時という緊張が住民にはあまり伝わっていないようだった。


 樹海産の岩塩もちゃんと出回っているらしい。


「国王陛下が幽閉されたという話も聞いているのだが……。本当か?」

「それですか……。本当だと思います。我が商会にも、第一王子の家臣から接触がありましたから」

「ほう? どんな用件だったのだ?」

「北部への食糧輸出を止めろと言われましたな。その分、高く買うからと。詳しく聞く前に断ったら、無理やり食料を徴発されましたわ」


 第一王子の要請を断ったりして、大丈夫だったのか? ゼド爺さんも同じように思ったらしく、ライアン爺さんに尋ねている。


「それは、大丈夫だったのか?」

「はははは。うちの商会は食料品の扱いは主力ではないですからのう。それに、商売相手や冒険者たちには、王家のせいで食料が用意できないと吹聴してやりましたわい!」


 ライアン爺さんはそう言って笑っている。意外と平気だったらしい。


 王子サイドも大商会を完全に敵に回すのはマズいと理解しており、それ以上の無体は働かなかったというのも大きいのだろう。


「しかし、反乱が起きる前から、王子は食料を集めておったのか? なんのために?」

「そこは我々にも詳しくは……。しかし、相当無理をして、食料をかき集めておったようです。それが原因で、北部の反乱に繋がったわけですからな」

「そうか……」


 商会から食料をかき集めるだけではなく、北部へ重税を課したりと、聞いた通り南部優遇の政策を進めていたそうだ。南部からわいろでも受け取っていたのかね?


 しかし、この国も大変だな。


 幽閉された王様って、ロトスを無理やり閉鎖した奴だろ? 孤児を集めてきては、洗脳して少年兵に仕立て上げていた最悪の施設だ。


 これを閉鎖したこと自体は、悪くない。むしろ良いことだと思う。ただそのやり方がマズかった。


 ロトス生まれの一般常識のない少年兵が大量に野に放たれて、北部の治安が一気に悪くなってしまったのだ。


 しかも、使い捨ての戦力であったロトスがなくなったせいで、北部領主たちは急遽自前の兵力を用意しなくてはならなくなった。


 そのために新たな税を課さなくてはならなくなり、北部がさらに弱体化したらしい。


 ゼド爺さんはロトスの毒って言ってたな。何の対策もせず、ただ施設を閉鎖するだけで自己満足に浸った馬鹿王。それが幽閉された王だ。


 で、その息子が、北部に反乱を起こされた第一王子なわけで……。


 二代に渡って暗愚な王ってなると、国がヤバいんじゃないかね?


 そうして話を聞いていると、ライアン爺さんの部下がやってきて、革の袋を置いて行った。


 どうやら、素材の買取や、俺たちが頼んだ品物の準備が終わったらしい。


「は、早いな」


 まだ1時間くらいしか経っていないぞ?


「はははは。儂ら商人にとって、早さは生命線と言っても良いですからな!」

「無理をさせたようですまんなライアン」

「なになに、ゼド殿のためであれば、この程度のこと!」


 笑いながら、ライアン爺さんがその革袋を渡してきた。ジャラリとした音とともに、驚くほどの重みを感じる。


「これが差額となりますじゃ」

「え? こんなに?」


 革袋の中には、俺たちが頼んだ品物の代金を引いた差額が入っていたんだが、想像以上の金額が返ってきていた。


 金貨で100枚を超えているだろう。しかも、一部は大金貨であるらしい。


「品物が良かったですからのう。特にあの大蛇! あれは死の蛇と言われる伝説級の魔物でしたぞ! あれだけで、大金貨2枚とさせていただきました」


 さすが、樹海の深部でも凶悪な部類に入る魔物だな。想像以上に希少価値があったらしい。


「他も、樹海産の珍しい素材ばかりですからなぁ。好事家の中には、それだけでも高値を付ける者もおるでしょう。なに、我らも損はしておりませぬ。気にせんでくだされ」


 樹海産の素材は、この都市ではそれだけ評価額が高いってことらしい。


 樹海とはかなり離れている上に、冒険者も多い。ゼニディアなどと比べても、さらに高額査定であるようだ。


 あと、ゼド爺さんの仲間だし、色を付けてもくれたのだろう。


「本日は泊まっていって下され。その間に、反乱軍へと繋ぎを取りますので」

「何から何まですまんな」

「なに、樹海の産物で儲けさせてもらいます故、この程度はさせていただかなくては!」


 上手くユイと連絡が取れれば、一気に王都付近までは行けそうなんだがな。どうなるだろうか。


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